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第132話 心が破れた音がした


「解せない・・・といった顔だね」


「・・・っ!」


シェリー(仮)は突如かけられたニャルラの言葉に驚く。


「君はこう思ってるのだろう?アザート君にはダメージを与えられたのに私には与えられない・・・何故なのか?」


「・・・」


「簡単な話だよ・・・アザート君が手を抜いてただけ」


「手を・・・抜いていた?」


「う〜ん・・・厳密に言えば、それが彼の戦闘スタイルってやつかな?アザート君、基本的に防御に力入れてないからね・・・そうでしょ?」


ニャルラがアザートへと視線を向ける。


「・・・まぁ・・・そうだな」


 * * *


そう・・・以前にも説明をしたが、アザートは防御力0の状態で常に戦っている。


といっても防御力0はただ単に耐久力が0という事ではない。


異形者の肉体は硬く並の武器で倒すのは困難・・・更にアザート達のような邪神型にとっては攻撃と見なされない。


この大前提を潜り抜けた攻撃・・・


異形者の一撃、蠢くもの(スクワーム)、邪神固有武器、オリハルコン性武具、そして天才の一撃のみが初めて攻撃と見なされる、ダメージを与えられる、殺す事が出来るのだ。


しかしながら、これは攻撃を受ける側が防御力0の場合である。


ニャルラやヨグは防御力に力を入れる・・・故に致命傷など負わない、どれも多少赤くなったり、せいぜい擦り傷程度である(オリハルコン性、及び邪神固有武器は除く)。


先程のシェリー(仮)の一撃が擦り傷なのもそれが原因である。


 * * *


「つまり・・・何?私がどれだけ斬撃を繰り出したとしてもあなたにはせいぜい擦り傷程度が先の山と?」


「そう悲観しなくても良いよ。アルカディアの人達を除けば君は人間の中で2番目に強い、誇っていい・・・君は強い」


「そう・・・」


シェリー(仮)は思う・・・


勝てないのは最初から分かっていた。


目の前にいるこの人と私では天地がひっくり返っても勝てない・・・勝てる未来が見えない。


しかし、それでも立ち向かわなければならない・・・姉の為に。


「私にはやるべき事がある」


シェリー(仮)は剣を構えながらニャルラを睨む。


それは先程よりも更に洗練された構え・・・


気迫が・・・殺気が・・・彼女の身体から溢れ出す、先程よりも明らかに跳ね上がる。


それらを肌で感じるニャルラは少し押されつつも、口を開く。


「へぇ・・・まだまだこれからって訳ね。良いね、君の全力を見極めてあげるよ!!」


そして・・・










































ドゴォォォォッッ!!!










































シェリー(仮)が柱を斬りつけた事により、柱が爆音と共に崩れ落ちる。


凄まじいほどの爆風と破片が周囲に飛び散り、辺りは土埃と煙で覆い尽くされる。


「(これは目眩し!?・・・気配も消えた、煙に乗じて殺る気のようだね)」


ニャルラは現状を冷静に分析する。


が、ニャルラは全くの余裕の表情を見せる。


「(彼女知らないんだね・・・私達に目眩しなんて無意味だという事が)」


そう、ニャルラ達のような邪神型にはある特殊能力がいくつか備わっている。


その中の一つである邪眼・・・


能力発動中は生物を壁などの遮蔽物を無視して感知できるようになる。


これにより煙や闇に乗じて不意を突くといった敵の戦法が全くもって意味をなさなくなる。


「(・・・といってもなぁ・・・『邪眼発動!はい!終わり!』っていうのが面白いかって言うと・・・面白くない。この攻撃は彼女の全身全霊を掛けた一撃だ・・・それを邪眼で無意味にはしたくないねぇ・・・うん!ここは邪眼無しで対応しようじゃないか!)」


リスペクトが足りないよね!


そんな考えをしながらニャルラはシェリー(仮)の位置を肉眼と気配だけで探る。


だが、全くもって感知できない・・・先程までは位置を特定出来る程強く反応があったというのに・・・


つまり、それは裏を返せばそれだけ彼女が強く集中しているという事であり、ニャルラの考え通り最大限の力を込めての攻撃だということでもある。


全力で挑んで来る者にニャルラ自身は全力を持って答えねばならない・・・そう考える。


「(さあ!・・・いつでも来い!)」











































「馬鹿ね・・・」


そう呟きながらシェリー(仮)はある場所へと走りながら向かう。


シェリー(仮)は柱を斬り落とした後、気配を断ち、あの場から逃走した。


そう・・・彼女は最初からニャルラと戦う意志など持ち合わせてはいなかったのだ。


「(それにしても別次元の強さだわ、あの人・・・いや、異形者っていうべきかしら?)」


本気で戦う意味は持ってはいなかったが、全力で挑んだ・・・しかしながら、その全てがニャルラの前では無に等しかった。


「(人間の私が挑んでもほぼ100%返り討ち・・・かなう相手じゃない)」


シェリー(仮)はニャルラとの対峙を経て、改めて異形の者達だと再認識する。


「(まぁ、もう私には関係ないけど・・・オベロンがこの館から既にいない事は確認できた・・・これでお姉ちゃんを救える!)」


そう、シェリー(仮)がニャルラと相対していた本当の理由・・・それはただの時間稼ぎだった。


元々ニャルラ達が襲撃した事により警備達がそちらへと偏る、さらにオベロンが館から逃げ出す事により、館の警備など無となる。


そして、こららの事から意味するのは・・・


姉を救い出す事など造作も無いという事だ。


シェリー(仮)の目的は最初からただ一つ・・・姉を救い出す事だけなのだから。


「(でも・・・仲間・・・か)」




『シェリー(仮)ちゃん!君を仲間にする為だニャ〜!』




シェリー(仮)はニャルラから言われた言葉を思い出す。


「(フッ、仲間になれだなんてね・・・今度、お姉ちゃんと会いに行ってご飯でも奢って貰おうかしら?)」


そう冗談交じりに思いながら、シェリー(仮)はとある部屋の扉へと手を掛ける。


その部屋はいつも姉と話す為に使っている部屋だ。


「お姉ちゃん!オベロンが居ない!逃げるなら今よ!」


シェリー(仮)は叫ぶ・・・


しかし、返事は無い。


不審に思うも、あまり考えている時間は無い・・・


「お姉ちゃん・・・壁から離れてて」


そう言いながら、剣を抜き・・・


ギィィッッン!!!


壁を斬り裂く。


壁は崩れ、煙が部屋中に舞う・・・中の様子は未だ見えない。


しかしながら、異様な異臭が漂ってくる・・・


「お姉ちゃん!どこ!早く逃げるよ!お姉ち─────」










































見た─────



「ちょっと〜!シェリー(仮)ちゃ〜ん!遅くな〜い?焦らしてるの〜?焦らすのも作戦だと思うけど、焦らし過ぎて煙無くなってるよ〜!」


ニャルラはヤキモキしていた。


シェリー(仮)が攻撃を仕掛けてこないのだ。


もう煙はとっくに無くなっているのに、一向に攻撃してこないのだ・・・


「(う〜ん?何で攻撃して来ないのかニャ?もしかして逃げたとか?ハッハーーー!まっさかー!)










































────マジ?」


瞬間、ニャルラの全身から冷や汗が出てくる。


「じょ、冗談!冗談でしょ!?ここまでやる気にさせて逃げるの!?私をここまで楽しみにさせといて逃げる!?嘘でしょ!シェリー(仮)ちゃん!居るんでしょ!?」


ニャルラの小さな願いは虚しくフロア中に響いた・・・


しかしながら、響くだけ・・・返事は無い。


「えぇ!?マジで!?だって彼女の目的は────」


そう言いかけた瞬間・・・


その瞬間、冷や汗が戦慄へと変わる。


「アザート君ッ!!!」


そう叫ぶもコチラも返事が無い。


何事かと思い、振り向くも・・・


「ああ、アザートさんは今寝てますよ」


「この状況で!?柱壊れたこの状況で!?私が戦ってるこの状況で寝てたの!?」


ニャルラは急いでアザートを必死に揺さぶり起こす。


「・・・終わったのか?・・・何だ?随分と派手にブッ壊したな」


「私じゃないよ!シェリー(仮)ちゃんが柱をぶった斬った所為だよ!」


「何?あの女が?」


その言葉にアザートに疑問が生じる。


「(斬っただと?柱を?俺の身体を斬り落とす程の腕・・・当たり前か、だとすれば、何故あの女は・・・)」


「・・・って、そんな呑気な事言ってる場合じゃないよ!!彼女逃げちゃったんだよ!!」


「追いかければいいじゃないか?」


「逃げた先が問題なの!!多分お姉さんの所へ行っちゃったの!!」


「何だと!?」


瞬間、アザートですら戦慄する。


「不味いよ!あの様子を見るに彼女にとってお姉さんは心の支え!そんな彼女が今のお姉さんを見れば────」


「『黒獣』!」


ニャルラが言い終わる前にアザートは黒獣を発動させ、一直線にシェリー(仮)の元へと向かう。


それはこの現状が、この上なく絶望へと近い深刻さで溢れているからだ。


黒獣・・・放たれた一撃は超高速で動き、何人たりとも止めることは出来ず、標的を喰らう又はアザートが解除するまで貫き続ける刃と化す。


シェリー(仮)にまで近づくのに最も適した技である。


射程距離は20m前後、2、3回程発動させればものの数秒で到着する・・・


しかし・・・


3回目の発動直後、発動を一瞬後悔させる凍てつく負のオーラが・・・混沌とした負のオーラが・・・向かう場所から発せられているのを肌で感じ取った。


「(これは・・・)」


近づくにつれ漂う異臭・・・


「(これは・・・!)」


鼻を刺す肉肉しい異臭・・・


そして・・・黒獣が解除される・・・


それ即ち、到着だ・・・










































「・・・オトコ?オトコオトコオトコオトコオトコォォォ!!!ちょうだい!!!挿レテよ!!!ワタシにちょうだいよ!!!アナタの逞しいソレを!ワタシのアソコに!!ねぇ!挿レテよォォォ!!白くドロドロとしテェェ、あフれガ欲しインノよォォォ!!」


部屋には理性を失った獣の如く、四つん這いとなり・・・ 地面に涎を垂らしながら這いずり回る。


その『人間の女』の周りには糞尿とドロドロとし少し黄色がかっている白濁液が撒き散らかされていた。


しかし、アザートはその人間の女を一瞥する事なく、隣で立ちすくんでいる女に目を向ける。


シェリー(仮)だ・・・


「(・・・虚の・・・目?)」


アザートがそう感じた瞬間────










































ドバァァァァァァァァ!!!










































肉体全てが細切れとなる・・・


次回投稿は金曜日になります。


ブクマ登録をしてくれた方、評価をしてくれた方、モチベーションに繋がってます、本当に嬉しさと感謝でいっぱいです!ありがとうございます!

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