第131話 異質 VS 天才
あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします!
「・・・ニャラララ!良いね君、凄く良いね。ますます気に入ったニャ。シェリー(仮)ちゃん・・・君を必ず・・・仲間にする!」
そう宣言するニャルラの目には今までのようなふざけた態度は一切含まれていない・・・
確固たる意思がその目に宿っている。
「・・・我を通す、訳ね」
シェリー(仮)はニャルラからの眼差しから、ニャルラの意思を感じ取り、息を少し吐く・・・
そして、腰にある剣をゆっくりと引き抜き・・・ニャルラに剣先を向ける。
「私も私の我を通す・・・あなたの意思を通したいなら・・・私の我を曲げてみることね」
「フフフ、言われなくてもそのつもりニャ!・・・と言うわけだから、ヨグ君とアザート君はそこらで見てて」
そう言いながら、ニャルラは手を振るいながら、2人を離れさせる。
「あら?3人で挑まなくてもいいの?」
「え?・・・あぁ!いいのいいの私1人で・・・っていうか、流石の私も人間の女の子1人に対してバケモノ3人寄ってたかってボコボコにリンチする程鬼畜じゃないニャ〜」
「へぇ・・・そう。でも、そこの彼は不満そうよ」
「え?」
そう言うシェリー(仮)の視線の先には少し納得のいっていない表情をしながらニャルラを見るアザートがいた。
因みに隣にいるヨグはというと、『戦わずに済んだラッキー!』といった表情をしている。
「ちょっ!アザート君、何その怖い顔!ダメだよ!そんな顔して訴えかけても代わってあげないよ!」
「訴えかけていない、元々こんな顔だ」
「そう?・・・まぁいつものブッ殺す戦いなら代わってあげてもいいけど、今回は違うからね・・・今回は────
屈服させる戦いだから」
ゾクッ!
瞬間、シェリー(仮)の全身を悪寒が走る。
理由は分からない・・・しかしながら、目の前に居る存在から、何かとてつもないナニカを感じ取った。
そのナニカを一言で言い表せるとしたら・・・
『異質』・・・
シェリー(仮)の眼前に存在する女から放たれるオーラはあまりにも異質なオーラ。
以前アザートと対峙した時に感じたオーラは邪悪なオーラ・・・何もかもが黒く塗りつぶされた圧倒的邪悪なオーラ・・・
それがアザートであった。
しかし、今回のニャルラと呼ばれる女から発せられるオーラはそれとはまた違う。
いや・・・確かに、邪悪なナニカを帯びている事には違いない・・・しかし、アザートの邪悪さと比べると、ニャルラの邪悪さはどことなく変化がある。
アザートが放つは、恐怖という概念をそのまま具現化したかのような邪悪さである。
対し、ニャルラのモノはこの世のありとあらゆるモノを強引にまとめるように凝縮したようなそんな歪なオーラである。
その異質さがシェリー(仮)に恐れを抱かせる。
しかし、そんなシェリー(仮)の本能的直感を嘲笑うかのようにニャルラは微笑む。
それは、まるでシェリー(仮)の恐怖心を煽り立てるように、ニャルラは微笑んでいる。
そんなニャルラを見てシェリー(仮)は剣を強く握り締める・・・
「(何?・・・この感じ・・・まだ戦ってもいないのに・・・)」
ニャルラの異質さに気圧され、後退りしてしまいそうな身体であるが・・・
「(だからといって・・・私は逃げない!)」
無理矢理抑え込み、再びニャルラを睨みつける。
そんなシェリー(仮)を見て、ニャルラは更に微笑む。
「本当に良い目だニャ・・・じゃあ、やろうか?」
その言葉と共に互いが消えた・・・
そして、次の瞬間─────
シェリー(仮)がニャルラに切りかかる。
その速さは常人では捉えきれず、視認する事も叶わない一撃・・・瞬きをした次の瞬間には勝敗がついている一撃だ。
常人ならば・・・
シェリー(仮)の剣がニャルラの首元に触れる寸前、ニャルラはシェリー(仮)に足払いをかける。
「・・・クッ!」
シェリー(仮)は唐突な足払いでバランスを崩しかけるものの、なんとか態勢を立て直す。
そして、すぐさま攻撃を仕掛けようとするも・・・既にニャルラはいない・・・
が、直ぐにシェリー(仮)は背後のニャルラを視認する。
視認直後・・・眼前には鋭い手刀の突きが差し迫る。
シェリー(仮)は首を傾け、その突きを避ける・・・が、それは一度だけの一撃ではない。
間髪も入れぬ、突きの連続がシェリー(仮)を襲う。
突きをギリギリで避けていくシェリー(仮)であったが、それはいずれ限界がくる。
そして、その限界は音もなく這い寄る。
ブシュ!
「───ッ」
シェリー(仮)の顔に腕が掠る。
その一瞬・・・ほんの一瞬・・・ほんの刹那の間であるが、硬直したのをニャルラは見逃さない。
その刹那の瞬間は時として永遠になる事がある・・・
この時もまたそう・・・
「(不味い!)」
即座に身の危険を察知したシェリー(仮)はニャルラから距離を取るように背後へ飛び退くが・・・それよりも速く背後に回るニャルラ。
そして、背中に蹴りを打ち込み、シェリー(仮)が地面へと勢いよく叩きつけられる。
ゴロゴロと転がりながら、勢いを殺すシェリー(仮)・・・が、その時には目の前にはニャルラの拳があり・・・
ドゴッ!!!
何とかシェリー(仮)はその一撃を剣でガードするも、何という重い一撃・・・
ガードした剣から伝わる衝撃はシェリー(仮)の剣を伝い、シェリー(仮)の身体全体へと伝わる。
剣を通して伝わる衝撃に全身の骨が軋むような感覚にシェリー(仮)は襲われる。
そして、その一瞬もニャルラは見逃す筈も無く・・・瞬時にシェリー(仮)へと近づき、次なる一撃を喰らわせようとする・・・
が、それは罠!
ニャルラがシェリー(仮)に迫り、剣の射程圏内に入った瞬間・・・シェリー(仮)は再び剣を強く握り、首元へ・・・
繰り出されるは目にも留まらぬ速き斬撃!
ブシュ!!!
その斬撃がニャルラの首元へと襲った・・・
が、しかし・・・
「・・・硬すぎよ・・・あなた」
首元からツーッと血が流れる。
シェリー(仮)の剣がニャルラの首に傷を負わせた証拠だ。
だが、それだけ・・・たったそれだけで剣による傷は浅く、致命傷には至らない。
そんな自分の斬撃が通用しなかった事に悔しさを抱くシェリー(仮)とは裏腹にニャルラは震えていた。
痛みからでは決してない・・・これは・・・ただ・・・単純に・・・
「凄い!本当に凄いよ!私に傷を付けさせるなんて!」
感激・・・感激をしているのだ。
「・・・舐めてるの・・・かしら!!」
そして、再度シェリー(仮)がニャルラへと斬りかかる。
それは先程と同様・・・その剣速は残像が見える程であり、凄まじく速い。
一瞬で己の射程距離内へと侵入したシェリー(仮)は再度喉元へ剣先を突きつける・・・が、
パシッ!
「この剣が凄いのかニャ?」
シェリー(仮)の剣をニャルラは片手で掴む・・・
「───ッ!」
信じられない光景を目の当たりにし、言葉を失うシェリー(仮)であるが、瞬時に思考を切り替えて剣を引き抜こうとするも、ビクともしない。
そして、シェリー(仮)の剣を受け止めたまま、ニャルラはニヤリと笑い、奪い取った。
「・・・ふむふむ、なるほどなるほど・・・へぇ〜、本当に特別な素材とか、そんなんじゃなくて唯の金属の塊だニャー!これで私達異形者の身体を傷付けるなんて、本当に凄いニャー!!!」
ニャルラは興奮した様子でシェリー(仮)の剣を見つめる。
「返してくれるかしら?」
「ああ!ゴメンゴメン!」
シェリー(仮)がそう言うと、ニャルラは直ぐに剣をシェリー(仮)に投げ渡す。
そして、渡された剣を手に取り、シェリー(仮)はすぐさま距離を取る。
「(にしても・・・)」
シェリー(仮)は距離を取りながらもある不可解な事実に思考する。
「(本当にアザートと同じ異形者なの?硬すぎる・・・さっきの攻撃も通常なら首を落とせた筈なのに・・・擦り傷程度)」
そう・・・ニャルラに対してダメージが通らなさ過ぎるという事実だ。
以前、アザートと対峙した際には確かに硬かった・・・しかしながら、これ程硬く・・・
これ程までにダメージが通らない事もなかった。
現にシェリー(仮)の剣はアザートの腕は勿論、首を落としたのだ(直ぐに再生はしたが)。
しかし、今回目の前にいる敵はどうだ?
全くもってダメージを受けていない・・・いや、避けられている事もあるが、それ以前に刃が通らないのだ。
更に先程唯一与えた擦り傷も既に綺麗さっぱり跡も残らず再生されているときた。
結論を付けるのは簡単だ・・・アザートよりも目の前にいるこの女が強いのだろう。
しかしながら、それにしてはいささか腑に落ちない点がある。
この女とアザートが天と地ほどの差があるとは考えにくいからだ。
この女の方が強いのは間違いないのだろう・・・
しかし、数字にして考えてみれば、
ニャルラの実力が100として、アザートは90〜95程といったところだろう。
差はあるが、決して覆せないといった差ではない・・・決して天と地ほどの差がある訳ではない。
「(だったら何故────)」
「解せない・・・って顔だね」
次回投稿は2日後、金曜日になります。
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