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第127話 黒い館に潜むシェリー(仮)


13時


ニャルラの仲間にする宣言から数日・・・


アザート達はシェリーもとい『白衣の死神』の情報をかき集めていた。


しかしながら、出てくるどの情報も真偽不明なモノばかり・・・


終いには『私が本人です!』という明らかな嘘も出てくる始末。


どうやら情報操作でもされている様であった。


「あーもー!全然情報が出てこないニャ!」


「確かに・・・ロンドンは比較的カメラも多いから情報とかすぐに得れると思ってたんですけど・・・全く出てこないなんて」


ニャルラとヨグが嘆く中、アザートはというと・・・寝ている。


「ねぇ、アザート君・・・寝てる場合じゃないよ!ほらほら、シェリーの情報を集めなきゃ!」


そんな声をかけられるアザートであるが、やはり起きる気配がない。


自分達が必死になって情報をかき集めていると言うのに、このアザートという男は寝てばかり・・・


ニャルラは怒りのボルテージがマックスになる・・・が、それでもアザートを叩き起こそうとはしない。


『情報が分かったら起こしてくれ、それ以外で起こすと殺す』


アザートは眠りにつく前に事前に伝えていた。


ここで叩き起こそうものなら、ニャルラとヨグは無事ではある(腕の1、2本飛ぶ)が、間違いなくアジトの家具が無事では済まない。


故に2人はアザートが寝るのを容認しているのだ。


それに居場所さえ知れば、アザートが迎えに行ってくれると言うのだ。


ここは我慢の時だ、そうニャルラとヨグは心に言い聞かせる。


「よし!こうなったら、調べ方を変えよう!『白衣の死神』で探して無いなら、別の視点から・・・ダイアーを殺したって事は、ダイアーが死んで得する人物、もしくは組織を調べれば!」


「おおー!・・・でも、ダイアーが死んで嬉しい人なんて沢山いると思いますが」


「確かにこの情報だけじゃ何とも言えない・・・でも、この情報プラス女の科学者を雇っている組織・・・と、調べれば・・・おお!結構絞れたんじゃないかニャ?」


ニャルラが見つけた情報にヨグは目を通すと・・・


その情報とは数十人女科学者の写真だ。


「成る程・・・後はこの写真の人達をアザートさんに確認して貰えば分かると・・・ニャルラさん!天才ですね!」


「ニャハハー!もっと褒めて貰っても構わないよ!この中にシェリーちゃんが・・・よし!じゃあ、アザート君起きて、出番だ────」


居ない・・・


振り返ると、さっきまで居たアザートが姿を消していた。


「え!?ちょっ!・・・え!?アザート君!?何処!?」


一通り部屋を見渡すが、居ない・・・


この部屋どころか、このアジト全体からアザート自身の気配が消えたのだ。


しかし、微かに残るアザートの気配の道筋・・・


それは外へと辿る道・・・


「え!?ちょっと!アザートさん外に行っちゃったんですか!?」


「まさか!話聞いてた!?ってことは、シェリーちゃんの居場所が分かったって事!?・・・流石アザート君!仕事が早〜い!仕事が出来る男!いや〜!でも私はアザート君を信じてたからね!うんうん!」


先程までのイライラは何処へやら・・・既にこの場に居ないアザートに対して褒めるニャルラ。


そんなニャルラを白い目でヨグは見つめていた。


──────


────


──


15時


「────この館か、随分と暗い雰囲気を醸し出しているな」


アザートはニャルラが示した情報の中からあの日見た紺色の髪の女を瞬時に見つけた。


そして、その情報が正しければこの黒い館にシェリー(仮)がいる事になる。


「(さて、何処から中に・・・)」


アザートはひとまず、館を一周・・・


館の周囲は4〜5m程の塀で覆われており、さらに所々にカメラが設置されてある。


「(・・・ここまで高い塀で囲う・・・つまり、他人には知られたくないナニかを隠している・・・という事か)」



アザートが館を一周している間も門は固く閉ざされており、裏門も見える範囲では確認出来ない。


「(さてと、侵入する方法は・・・)」


アザートの策はいつもの3つの方法・・・


1・・・門番から許可を得て侵入


2・・・隠れて侵入


3・・・派手に侵入


以上の3つだ。


さて、いつものアザートなら迷う余地もなく3を選ぶ。


しかし、今回は目的が違う。


いつもは敵の本拠地を殴り込みに行く・・・『敵を殲滅する』為に侵入する為、派手だろうが、見つかろうが、何しようが、関係ない・・・殲滅するのが目的だからだ。


しかし、今回は殲滅ではなく『仲間にする事』が目的だ。


その為、隠密行動が好ましい・・・アザートはそれを理解している。


因みにこれは己で理解したのではなく、ニャルラからだ。


『敵の殲滅以外は出来るだけ隠密行動する事!』


そうニャルラから小一時間程説得された後、渋々理解させられたのだ。


「(────となると・・・此処だな)」


ある場所で停止したアザート・・・そこは先程一周した時にカメラの死角である事を確認した場所だ。


しかし、ある考えが頭によぎる・・・


罠かも知れない・・・という事が。


普通に考えてこの場所だけ、カメラの死角が出来るなど不自然だ。


さらに敵がその事実も知らないという事も不自然だ。


つまり、この事実から・・・この死角は敵がわざと作った死角である可能性が非常に高い。


それはまるで、G・ティーチが城の門に用意した*二重の罠と同じだ。


* 8-表章 箱庭の園Q(81話及び82話)参照


「(罠なら罠で問題無いがな)」


ニャルラから『出来るだけ隠密に』と言われただけで、罠にかかって見つかるのはダメだとは言われてない。


なら、アザートは敢えて罠にかかる勢いで塀の上へと軽々飛び乗った。


「(さぁ・・・来い!)」










































しかし、アザートの意気込みも虚しく何も起きない。


何も反応しない、誰も出てこない、ただただ平和なだけな時間が過ぎる。


その事から分かる事・・・


罠など存在しない事。


「・・・チッ」


罠がある事に期待していたアザートであったが、それを裏切られた事が分かると、不機嫌そうに舌打ちをする。


「(・・・まぁいい)」


何も無かったならそれで良し・・・アザートは改めて塀から見る景色を確認する。


視線の先にはとても綺麗に手入れされてある庭が存在・・・そして、その庭の奥に佇む黒い館。


塀の外から見ても中々の雰囲気だったが、中から見ると、さらに威圧感が増す。


見るからに不気味な館ととても綺麗で華やかな庭・・・対照的な2つ


そんな場所に3人ほど見張りと思われる男がいた。


しかし、3人全員アザートに気づく素ぶりさえ見せない・・・


「(この見張りの質だ・・・本当に此処にいるか怪しくなってきたな)」


アザートの疑念は深まる。


あれ程の実力を持つ女が属する組織にも関わらず、アザートの気配にも気づきもしない見張り・・・


「(無駄足だったか?)」


そんな考えが頭によぎったその瞬間・・・





「・・・にしても、あの女本当に可愛げねーよな!」


「そうそう!ちょっばかし腕が良いってだけで調子乗りやがって!」


「あーあ、アイツの剣で斬られた傷まだ治ってねーよ!本当にムカつく女だぜ!」





「(女・・・?)」


見張りの男3人はそんな事を言っていた。

アザートは耳を澄まして話を聞く。





「はぁ〜・・・あの女犯して〜な〜」


「ギャハハ!お前そんな趣味があったのか?」


「当たり前だろ?性格はあんなでも、顔は良いからな。脳内であの女の白衣を何度俺ので汚したか、覚えねーよ」


「おいおい、お前は俺か?俺は脳内であの女の服を何度破いたか覚えてねーよ。嫌がるアイツを無理矢理に犯してな・・・」


「お前らスゲーな?俺なんか裸エプロンならぬ裸白衣の妄想しかしてないわ!」


「いや!お前の方がヤベーわ!」


「そうだ!どんな性癖だ!白衣だけ着させるって・・・」


「「エロくね?」」


「だろ?」


「「「あはははは!!!」」」





「(程度の低い会話だな・・・だが、今の会話から察するにあの女は此処に居るのは間違いなさそうだ)」


アザートは男達の会話を冷静に聞きながら、シェリー(仮)がこの館のにいる事を理解した。


「(だが、問題は何処にいるかだが────)」





「お!見ろよ、噂をすれば・・・あいつが」


「マジか・・・もうそんな時間か?おーい!×××××!」





見張りの一人が大声でそう呼ぶ・・・視線の先・・・


館の中を映る窓に紺色の髪の女に白衣を着た女・・・シェリー(仮)がいた。



シェリー(仮)は声をかけられてから約1秒後、声をかけられているのが自分であることを認識した。


「・・・・・・」


声の主が同じ組織に属するひとりであることは、かろうじて覚えていた・・・だが、名前も顔も、思いだされない。


彼女にとって、意味のない情報だからだ。


首を動かすことなく、チラッ、と声のしたほうに視線を向ける。

 

男が数人固まっている・・・


そのうちの1人の人物の顔に焦点が合う・・・しかしながら、彼女に声と顔が一致された情報として引きだされない・・・


それは残りの2人でも一緒。


彼女にとって彼等は興味の欠片も湧かない人物・・・それ以上でもそれ以下でもない。

 

それ以上の情報は彼女の頭脳には格納されていない。

 

一瞬、男達の顔を見てから、再び視線を戻そうとした・・・










































その時・・・










































「(・・・!)」


シェリー(仮)の焦点は急速に男3人の後ろに存在する男の顔に合わさった。


「(・・・アザート)」



男の1人が女に声をかける・・・


視線の先には目的の人物・・・シェリー(仮)がいた。


「(不味いな・・・)」


アザートに存在した先程までの余裕が消える。


「(この3人は俺の気配すら気付かない無能だが、あの女は別だ・・・気付かれる可能性が大いにある)」


男が声をかける・・・すると、一瞬の間を置いて、シェリー(仮)は視線だけをこちらに向けた。


だが、女の視線には、まったく感情がこもっていない・・・まるで興味も欠片も抱いていない様子。


「な・・・何だよ・・・その目は」

 

男の呟きが聞こえる。

 

声をかけた手前、何か話しかけなければいけない・・・が、シェリー(仮)の無感情な雰囲気に気圧されてしまっているようだ。

 

「(まるで貴様など眼中にないという目・・・意識的にやってるのか、無意識的にやってるのか知らんが、中々だな)」

 

シェリー(仮)の感情の全く入っていない視線にアザートは舌を巻く。


そして、その一瞬の間の後、女は視線を戻そうとする。


その時・・・


視線の先の女は驚いたように目を見開いた。

 

視線が固定される・・・アザート自身に・・・


「(不味い!やはり気付かれた!)」


瞬時に辺りを警戒するアザート・・・しかし、女は次のモーションを起こさない。


女はただアザートを見ていた・・・そして、口元が動き出す。


「・・・!」


口の動きが終わると、女はフッと笑みを浮かべ、窓枠から消えていった。










































「『ついて来て』・・・ねぇ・・・面白い」


次回投稿は来週の金曜日になります。

ブクマ登録をしてくれた方、評価をしてくれた方、そして、読んでくれている方、モチベーションに繋がってます、本当に嬉しさと感謝でいっぱいです!

ありがとうございます!

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