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第124話 白衣の死神


「(まぁ、動きにくさもハンデという事でいいだろう・・・さてと、暗殺者か・・・鬼が出るか蛇が出るか・・・ククク、楽しみだ)」


「おい、そこの黒いの・・・おい!そこの黒いの!お前だよお前!」


自分が声をかけられている事に気づいたアザートは振り返る・・・すると、サングラスに黒服の男が立っていた。


「(貴様の方が黒いだろ・・・)」


そう頭の中に浮かぶが、声には出さなかった。


もしもここにニャルラやヨグがいたならば、「これが成長!」と言って涙も流しかねないだろう。


「何か俺に用があるのか?」


「お前がダイアー様の護衛に任されたバリアントの人間だな?来るのが遅いぞ!警護の会議が行われるからパーティー開始の2時間前に来いと伝えた筈だ!」


「・・・?(そんな事聞いた覚えは・・・ニャルラの奴、伝え忘れたな)」


「早く会議室に来い!時間が無いんだ!!」


「必要無い」


焦る男とは裏腹にアザートは冷静に断わる。


「な・・・何?必要無い?」


「既にこの会場には5人の暗殺者がいる・・・そいつらを全員殺せば良い話だ・・・さて、ここで問題だが、前もって暗殺者を殺した場合は成功報酬はどうなるのだ?」


アザートは当然の疑問だ、と言わんばかりに話す。


「そんな話、今はどうでも良いだろうが!」


「良くないだろう?もしも前もって殺した所で貴様らに『それは暗殺者かどうか分からん、よって2倍はやらん』と言われたら嫌だからな」


「・・・チッ、まぁいい!仮にお前が暗殺者を殺せたら、俺が直訴して2倍にしてやる」


「オーケー、では殺すとしよう」


男はアザートのその答えを聞いた瞬間、スーツの中で銀の装飾銃を生成し、さも懐から取り出したようにみせた。


「おい!ちょっと待て!何だその銃!いや、今はどうでも良い!まさかだと思うが、それを今ブッ放そうとでもしてるんじゃないだろうな!」


「何か問題でも?」 


「大アリだ、馬鹿野郎!そんな銃ブッ放してみろ・・・パーティーは大混乱だ!殺るなら誰にも気が付かれないように殺れ!」


「なるほどな・・・善処しよう」


アザートはそう伝えると、早速暗殺者を始末しようと行動を開始する。


暗殺者は北に男が1人、西に男と女の2人、東に女1人、南に男が1人・・・全員が参加者に紛れているようだ。


「(手始めに・・・この1人から殺るか)」


アザートは西の男の方へ歩き出す・・・その際アザートは己の気配を全て遮断し、そのまま男に気付かれずに背後を取る。


そして、後ろから男の首を片手で掴み、へし折る。


「(まずは1人目・・・だが、まだ他は気が付かれていない。)」


先程首をへし折った男の影に隠れるようアザートは移動し、今度は女の背後に周る・・・


「ッ!?」


女は驚きの声をあげようとするが、その前に首をへし折られる。


「(これで2人目か)」


アザートは先程の黒服男に暗殺者の男と女の死体処理を頼み、そのまま残りの暗殺者殲滅へと向かう。



「(同業者の奴等が運ばれている!)」


「(一体誰が!)」


「(不味い・・・まさか気が付かれたのか!)」


2人の急な離脱により流石におかしい事に気が付き始める残りの暗殺者達・・・


しかし、アザートの気配が察知できない為、暗殺者達は何故2人が倒れた理由が分からないのだ。


殺されたのか?事故なのか?生きているのか?死んでいるのか?はたまた、これも奴ら2人の作戦なのか?


全くもって分からないのだ。


「(もしも・・・もしもあの2人が殺されたのだとしたら・・・このパーティー会場で誰にも気付かれずにそんな事が出来るのは余程の手練・・・いや!それよりも今はどうやってこの場を凌ぐかだ!)」


北側にいる男は必死に気配の正体が誰かを考える・・・が、分からない。


「(クソッ!理由を探ろうにも判断材料が少なすぎる・・・どっちだ!奴等2人の作戦か?それとも殺されたのか?)」


北側の男はそんな思考している中・・・










































また1人・・・今度は東側にいた男が倒れた。


「(なっ!またか!?)」


暗殺者は残り2人・・・北側にいる者と南側にいる者・・・


「(しかしながら、これで確定した・・・誰かが始末しているんだ・・・俺達暗殺者を・・・)」


男は思考する・・・しかし、それが最大の悪手である事はまだ分からない・・・冷静に考えれば分かるというのに・・・


「(まさか南にいる奴が・・・いや!それは無い!奴はあそこから動いていない・・・では誰が殺ったのだ────ッ!!)」



考える・・・男は必死に考えを巡らせる・・・しかしながら、分からないのだ。


そして、遂に・・・南の男も倒れた・・・










































その瞬間・・・男が倒れた瞬間・・・


急激な悪寒が北側の男を襲う・・・それはまるで悪魔の棲家へと裸で放り出されたかのような感覚・・・


まるで悪魔に睨まれているかのような感覚・・・


悪魔に殺される・・・感覚・・・


「(駄目だ・・・死ぬ!殺される!)」


気配は感じない・・・しかし、男には分かる・・・ゆっくりと近づいて来る者に・・・悪魔に・・・


「(逃げなきゃ!逃げなきゃ殺される!殺される!)」


しかし、男は動けない・・・


動く事さえ許されない・・・


まるで蛇に睨まれた蛙のように・・・


「(何で・・・何で俺がこんな目に合わなきゃならないんだぁぁぁ!)


「自業自得だ」


男は最期にその言葉を聞いた────


ゴキッ



最期の暗殺者を倒した後・・・パーティーは開催された。


パーティー中、別の暗殺者達が再び現れると思われたが、それ以降一向に現れなかった・・・


それはダイアーが現れても何も変わらず、パーティーはつつがなく行われ、そのまま何事もなく終わりを告げた。


そして、パーティーが終わり客が誰も居なくなった会場でダイアー達はアザートに感謝した。


「いやぁー!アザート君!本当にありがとう!報酬はちゃんと2倍にして振り込んでおいた・・・それにしても聞いたよ、たった1人で暗殺者を誰よりも早く見つけ、騒ぎを起こさずに殺したと・・・その姿、まるで人間業じゃないみたいだと・・・」


「・・・何が言いたい?」


「おおっと!勘違いしないでくれたまえ、別に私は詮索してる訳じゃない・・・ただその強さ・・・私はアザート君、君がこの街に住む暗殺者『白衣の死神』かと思っただけだよ」


聞き慣れない単語にアザートは訝しげな表情を浮かべる。


「白衣の死神・・・何だそれは?」


「知らないのかい?ああ、そう言えば君達は此処イギリスを拠点にしてる訳ではないから知らないのも当然か」


ダイアーはそう言いながら『白衣の死神』について次のように話した。


白衣の死神・・・それは此処数年前に現れた謎の殺し屋。


神出鬼没に現れ、次々と裏組織の連中やマフィア達を暗殺し続けている者。


しかし、その正体を見た者はいない・・・僅かな情報として、剣を使用している事、そして、白衣を身に纏っている事・・・


「白衣を身に付けている事から裏社会では『白衣の死神』という二つ名で呼ばれ恐れられているという事だ」


ダイアーがそう話し終え、アザートを見る・・・が、アザートは神妙な面持ちでダイアーを見ていた。


「・・・あ・・・あのぅ・・・何かおかしな点でも?」


「ソイツ・・・もしかして女か?」


「え?・・・そうですけど・・・よく分かりましたな」


アザートの暗殺者的中にダイアーは驚く。


「剣を使う・・・とか言っていたが、西洋の剣か?」


「そうです!そうです!もしかして、知ってるんですか?」


「あぁ・・・それなら知ってる・・・










































 後ろにいるぞ」










































「────え?」


ゾブッ!


ダイアーは間抜けな声を出しながら、ダイアーの上半身と下半身に永遠の別れを告げた。


「「「「ダイアー様!?」」」」


側にいた護衛の黒服が叫び、声を上げながらダイアーに駆け寄るも、既に絶命状態だ。


「誰だ!!誰がダイアー様を殺したァァ!!」


黒服達が振り返ると、その目に映るものがいた。


そこには紺色の髪に西洋の剣を持つ白衣を着た女が立っているのだ。


「「「「お前かァァ!!!」」」」


護衛4人が怒りで女に銃を向ける・・・そして・・・


「「「「死ねぇぇぇ!!!」」」」


バァァァン!!!バァァァン!!!バァァァン!!!


バァァァン!!!バァァァン!!!バァァァン!!!


バァァァン!!!バァァァン!!!バァァァン!!!


バァァァン!!!バァァァン!!!バァァァン!!!


計3×4発の弾丸を女に発砲する・・・


しかし・・・女は何食わぬ顔でその全てを剣によって弾き返した。


「あら・・・こんな奴にも泣いてくれる人はいるのね」


「「「「・・・黙れ!!!お前は死刑だ!」」」」


「はぁ・・・」


女はそうため息をこぼすと、一瞬で黒服達の目の前に現れ、剣を横に振るう。


たったこれだけ・・・たったこれだけで4人の黒服は肉片となり辺りに飛び散った。


残っているのは・・・アザートのみ。


しかしながら、この状況を見ていたアザートは・・・


パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


拍手をしていた。


「貴様が例の『白衣の死神』と呼ばれてる者か?」


「・・・そうみたいね、私は名乗った事ないけど」


「そうか、中々素晴らしい剣術じゃないか」


アザートはありのままに感じた事をただ述べた。


剣術でアザートが知っている者はアルバート・・・


しかし、彼女の剣はそれと勝るとも劣らない・・・それほどまでに素晴らしいかったのだ。


「あら、褒めても何も出ないわよ?これから貴方も死ぬんだから」


女はそう言うとアザートに向かって走り出し、そのまま剣を振り抜くが・・・その剣はアザートの銃によって止められた。


「ッ!?」


「中々素晴らしい・・・人間にしては、な?」


アザートはそのまま女の顔に蹴りを入れようとする・・・が、女はそれを紙一重で避け距離を取る。


「女の顔を蹴ろうとするなんて、そっちも中々素晴らしい性格してるのね」


「フッ、俺は平等主義者だからな・・・女だろうが子供だろうが殺す」


「随分な平等主義者ね・・・世界の差別主義者に聞かせてやりたいくらいだわ」


次回投稿は来週の水曜日になります。

ブクマ登録をしてくれた方、評価をしてくれた方、そして、読んでくれている方、モチベーションに繋がってます、本当に嬉しさと感謝でいっぱいです!

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