表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/168

第122話 笑顔いっぱいバケモノいっぱい腹も膨れて良い感じ!

第9章 開始!


イギリス 首都ロンドン 


辺りは人々が寝静まる闇夜の時間・・・


そんな街中で一際暗い雰囲気を醸し出す黒い館が存在────


その館の中のある窓ひとつない部屋・・・その部屋はまだ明るい。


部屋にいるのは女・・・紺色の髪をした女。


女は白衣を見に纏い、顔色を変える事なくただひたすらにパソコンを使用している、ただひたすらに手を動かしている。


────あれからどれぐらいが経過しただろうか?


女が時計を見ると、既に時刻は7時を回っていた。


「・・・いけないわね、この部屋で研究すると時間感覚が狂うわ」


外の風景が見えない密封された部屋に篭っている所為で、女はよく徹夜をしてしまう。


しかしながら、ここが一番研究に集中出来る部屋である事を己は理解している。


故に女は睡眠よりも研究効率を優先したのだ。


「・・・こんな生活してたらお姉ちゃんにまた怒られるわね・・・フフ」


そう言いながら女は部屋を後にして、シャワー室へと向かう。


シャワーを浴びた女はそれからまた白衣を着て、先程の部屋とは別の方向へと向かった。


「・・・お!良い香りがすると思ったら、×××××じゃねーか。どうした、昨日は男と寝たのか?」


「・・・・・・」


「おいおい、無視はねーじゃねーか?じゃあ今夜は俺と寝てくれねーか?」


女は男の事など見向きもせず、そのまま立ち去ろうとするが、男はそれを許さない。


女の前に立ち塞がり、行手を阻んだ。


「なぁ?いいだろう?俺は中々上手だぜ。俺のテクでお前を快楽へと堕として─────」


「これ以上邪魔するなら、その自慢の腕切り落とすわよ」


「な─────!」


瞬間、男の腕に冷たい薄い鉄の刃が触れる。


それは何か?


剣だ・・・西洋剣とでも言うのだろうか?


その剣が男の腕に触れている。


女は先程まで何も手にしていなかったのに・・・


「じょ、冗談だせ!本当×××××は冗談が通じない女だな!ほら、もう退いたぜ!」


男はそう言いながら女の前から移動した・・・軽口を叩いていて、余裕があるように見えるが、内心はかなり焦っている。


「・・・・・・」


女は退いた事を確認すると鞘がある腰に戻してそのまま一言も話す事なくその場を後にした────


女はある場所へと向かっている。


それはほぼ毎日日課となっている。


女は目的の場所に近づくにつれ表情の変化こそないが、身体が軽くなってきているのが感じ取れた。


先程、糞みたいな奴に話しかけられた所為で苛立ちも今はすっかりと無くなっている。


そして、しばらく館を歩き回ること数分・・・


ようやく目的の部屋へと辿り着いた。


「・・・フゥ」


女は一呼吸間をおき、呼吸が整うのを待ってから部屋の中へと入っていった。


部屋の中は狭い・・・4畳あるかないか・・・とても質素な空間で奥には壁にピッタリとくっ付いた机と椅子・・・机の上にはマイクが置いてある。


女はそのまま椅子に座りマイクの電源を入れた。


「お姉ちゃん、おはよう。今日も元気?」


『・・・×××××、おはよう。お姉ちゃんは元気よ』


天井についてある別のマイクから別の女の声が聞こえてくる・・・少し音にノイズがあるようだが、これはマイクが古い所為だろうか。


「そう・・・良かった」


『・・・×××××の方こそ、また徹夜したんじゃない?』


「何で分かったの?」


『・・・貴女のお姉ちゃんだからよ』


女は驚く・・・が、それと同時に笑みが溢れる。


お姉ちゃんだから・・・


これほど嬉しい返しは無いと感じる位に女は嬉しかった。


それから他愛もない会話を数回繰り返した女は時計を見る。


「じゃあ、お姉ちゃん・・・私そろそろ行くね」


『・・・・・・』


「お姉ちゃん、待っててね・・・私が絶対に此処から出してあげるから」


『・・・えぇ、待ってるわ』


女はそう言ってマイクの電源を消して部屋を後にした女の顔は先程の柔らかい表情ではなく、無表情である。









































「・・・わたしが絶対に助ける」


女はそう言って部屋の前を去って行った・・・


──────


────


──


同イギリス ロンドン市内


少し寂れたマンションの一室でアザートとヨグはイギリスのソウルフード『フィッシュ&チップス』を食べていた。


「ほう、初めて食べたが、中々の味だな」


「でしょう!アザートさんはイギリスに・・・っていうか、海外旅行した事無いんでしたよね?やっぱり、国が代表とする料理にハズレはないですよ。他には・・・『イングリッシュ・ブレックファスト』とかも美味しいですよ」


時刻は午前11時なった頃・・・


昼食にはまだ早い・・・かと言ってこのまま何も食べずにいるのも中々辛い。


そこでヨグはアザートが初めてのイギリスという事で少し空腹を満たす事が出来るフィッシュ&チップスを作った。


一応ヨグはヨーロッパ圏出身であり、この辺りの国の料理は大体作れるのだ。


因みにニャルラはアジトで1人事務作業をしている・・・


バリアントの本拠地ニューヨークはほぼ出禁状態(アザートの所為)になっていて、先週まで1週間程ドイツで*別の仕事をしていた。


*8-裏章 箱庭の園 T より参照


そのお陰で書類仕事等が溜まりに溜まっているのだ。


「そうそう、ニャルラさん・・・今日で確か3徹だった気が・・・」


「1週間程仕事も何もしないで食べて寝て食べて寝てを繰り返していた罰だ。7徹ぐらいして貰わないと割に合わんな」


「あはははは・・・ニャルラさんの精神が死んじゃいますよ」


ヨグがそう渇いた笑いをした、次の瞬間────


ゾワッ!


「「────ッ!」」


背筋が凍るような視線をアザートとヨグは感じ取った。


繰り返すが、今の時刻は午前11時・・・季節は6月・・・


にも関わらず、冷たい空気が部屋全体を包み込む。


先程まで窓から入っていた日差しも消えた・・・否、窓の外が真っ暗となっている。


辛うじて部屋の明かりは灯っているが、バチッ・・・バチッ・・・と、今にも消えそうな音を立てている。


重ねていうが、この電気も先程まではそんな様子も一切見せなかったものだ・・・何ならこの部屋に着いた時に新しい物と交換したのだ。


この異常過ぎる現象・・・通常ならば、恐れ慄くのが人間だ・・・


しかしながら、2人はそんな表情はおろか、そんな思考すらしていない・・・何故なら彼等は人間ではなく、バケモノ・・・異形者だから。


「ようやくか・・・ようやくお出ましか・・・」


「えぇ、朝の6時から居るというのに全く姿を表さないから、ガセかと思いましたよ・・・で、どうします?この気配からして恐らく、敵は玄関の外に居る思いますが・・・」


「では、行って来い・・・俺は食事中だ」


「いや・・・いやいやいやいや!おかしい!絶対におかしい!僕の方が先輩なのに!」


ヨグはそう悪態つきながら玄関へと向かった。


そして、ヨグの眼に映る玄関・・・まず間違いなくこの凍るような視線の元は此処なのだ。


「ふぅ・・・よし!行きますよ!」


ヨグはそう自分を鼓舞すると、ゆっくりと玄関に近づき、ドアノブに手をやり、回す────










































「(いや・・・これは罠だ!)」


瞬間、左眼の視界の端で何か動くモノを捉えた・・・


それはドアの左側にある小さな窓・・・人間が通り抜ける事は不可能な小さな窓・・・しかし、頭ならどうだろうか?


視界の端で蠢くモノの正体に意識を向けるが、身体は既にドアノブを回し、開ける動作に差し掛かっている。


「(くっ!動作を変えようにも、コンマ5〜8秒程掛かってしまう!)」


そんな思考を巡らせている時、蠢くモノの正体が分かった。


「(首だ!一瞬長くて気が付かなかったが、間違いない・・・首だ!)」


しかし、首が長いだけに頭が見えない・・・首だけしか視界には映らない・・・


「(一体・・・何処に─────)」


「ヒッカカッタヒッカカッタヒッカカッタヒッカカッタヒッカカッタヒッカカッタヒッカカッタ!!!」


次の瞬間、猛烈な叫び声が耳元をつんざく・・・


白い顔に耳まで裂けた笑みを浮かべながら狂ったように笑うモノが右眼に映る・・・


そのバケモノは恐ろしく不気味な笑みを浮かべながらゆっくりとヨグの首をが噛みちぎ─────


ゾブッ!









































斬り落とされた・・・









































首が斬り落とされた・・・









































バケモノの首が斬り落とされたのだ。


バタッ!


玄関に突っ立っていたであろう身体が倒れる音がする・・・


それはそうか・・・頭が失ったのだ。


残った身体など糸が切れた人形のように身動きが取れなくなるのも当然だ。


・・・誰が斬り落としたのか?


当然ヨグだ・・・ヨグは既に己の武器・*デスサイズを生成していた。


*ヨグ自身が無から再生出来る武器・・・詳しくは『登場人物紹介』にて参照


ヨグの動作を変える時間は約コンマ5〜8秒掛かる・・しかしながら、たいていの相手ならこの時間で十分なのだ。


しかもこのバケモノ・・・殺しを楽しんでいたのか、攻撃モーションが異常に遅かった。


遅い方が相手に恐怖を与えれることを知っているのだろう・・・しかし、ヨグのような者達には完全に悪手の行動。


1秒さえあればいい・・・1秒さえあれば敵を殺せるのだ。


斬り落とされたバケモノの表情は笑っている・・・恐らく死んだ事など知る由もなく殺されたのだ。


「ふぅー、まずは1体・・・後は─────」


ヨグはそう言って元いた部屋に戻ろうと視線を移した瞬間・・・


「・・・・・・」


先程まで何もいなかった廊下に黒髪の少女が立っていた。


ただの少女ではない・・・瞳がまるで絵の具か何かで塗り潰されたかのように真っ黒だった・・・


見つめていると吸い込まれそうなくらい何もない黒・・・


「・・・・・・ア」


少女が小さく呟く。


すると、腕が現れる・・・


ヨグを中心とする全方位から無数の血塗られた腕が現れる・・・


「オ兄サン・・・遊ボ・・・遊ボ遊ボ遊ボ遊ボ遊ボ遊ボ遊ボ!!!」


ニィィィィィィィ


この少女もまた耳まで裂けた笑みを浮かべる・・・すると同時に無数の腕が動き出す。


「(速い・・・今度の攻撃は先程よりも速い─────)」


無数の腕がヨグに襲いかかり、自由を奪────









































ゾブッ!


われる事もなく全ての腕を斬り落とすヨグ。


「・・・エ?エ────」


ゾブッ・・・ゴトッ!


間髪入れずに少女の首が地に落ちる。


落ちた少女は何が起こったの?と言った表情のまま絶命する。


「これで2体・・・他は何処に────」


「ギャァァァァァァ!!!」


ヨグがそう辺りを見渡そうとした、その時・・・アザートがいるであろう部屋から断末魔のような叫び声が響き渡ってきた。


「・・・なぁんだ、あの部屋にも隠れてたんですか」


ヨグはそう呟きながら部屋に戻る・・・すると、ちょうど半身が破壊されたバケモノの頭を素手で潰しながらフィッシュ&チップスを食べているアザートがいた。


「(うわぁ・・・よくその状況で食べれますね)────って、後ろ!」


今度はアザートの後ろに1mはあるであろう血塗られた女の顔が出現する。


しかし・・・


ドバァァーン!!!


けたたましい銃声が部屋全体を覆う。


誰が発生された銃声か?


勿論、アザートだ・・・アザートが後ろのバケモノに目を向けずに銀の装飾銃を生成して撃ち抜いた。


その時間僅かコンマ3秒・・・


撃ち抜かれた女のバケモノは一瞬にして肉塊へと姿を変える。


「・・・これで4体・・・依頼終了か」


アザートがそう口にすると窓から太陽の光が再び照らされ、数分前の明るい部屋へ・・・


元の雰囲気の部屋へと戻る・・・









































部屋中が血だらけ肉塊だらけという点を除いて─────


次回投稿は来週の金曜日になります。

ブクマ登録をしてくれた方、評価をしてくれた方、そして、読んでくれている方、モチベーションに繋がってます、本当に嬉しさと感謝でいっぱいです!

ありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ