第121話 不老不死
第8-裏章 完結!
半年もかかっちまった(Qを入れたらもっと)・・・
加筆しました!
あれから何分が経過しただろうか・・・
アザートは既に元の姿を微塵も感じさせないほどに肉塊と化していた。
あれだけ不気味だった顔もとうの昔に破壊されている・・・
しかし、メイ達はまだ撃ち続けていた。
完全操られているかのようにただ引き金と引くことしか出来なくなっていた・・・
そんな状況も遂に終わりを迎える・・・
────ダダダダダダ───ガチッ!
ガチッ!ガチッ!ガチッ!ガチッ!ガチッ!
そう・・・弾切れだ。
1人が弾切れになると次々と弾切れになっていく・・・
ガチッ!ガチッ!ガチッ!ガチッ!ガチッ!
しかしながら、しばらく弾切れであるにも関わらず引き金を引き続ける。
ガチッ!ガチッ!ガチッ!ガチッ!ガ────
そして、弾切れから数分後・・・ようやくメイ達は正気に戻った。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・うぅ!・・・おぇぇぇぇ!!!・・・はぁ・・・はぁ・・・み・・・皆んな・・・大丈夫?」
メイ達は絶え間ない吐き気と目眩を振り払いながら問う。
「う・・・うん・・・」
「な・・・ん・・・とか・・・」
「だ・・・い・・・じょう・・・ぶ・・・」
他の奴らも次々と声をあげる。
しかし、声からも分かるように皆、まだ恐怖に包まれているようだ。
そんな彼らを安心させる為にメイは声をあげる。
「ほら、見てよ皆んな!悪いヤツはもう姿形も無いよ!もうただの無力な肉片になったんだよ!私達が勝ったんだよ!だから、皆んな安心し────」
「─────本当にそうか?」
◆
「え?・・・は?・・・うそでしょ?」
目の前の現象を前にしてベライザは頭が理解を拒んでいた。
その現象とは何か?
アザートが再生した事である。
「うん?どうしました?ベライザさん」
「どうかしたかニャー?」
しかしながら、アザートが再生する事などニャルラとヨグからしてみれば普通・・・何も当たり障りもない現象だ。
特に疑問に思う余地も無いほど当たり前の出来事なのだ。
「どうしたもこうしたも、何よあれ!!明らかにおかしいでしょ!?あの再生能力は!!!」
「えぇ〜、特におかしくなくない?あれくらいアザート君なら再生出来て当たり前ニャ〜」
「そうですね、だってまだ地面には肉片散らばってるじゃないですか・・・アザートさんは燃やされて*灰になっても再生出来るんですから」
* 第6-2章 『バリアント殲滅作戦その2』より参照
「灰から再生って・・・ヨグ、貴方それもし自分が灰にされて再生出来るとでも思ってるの?」
「何を言ってるんですか?出来るわけないでしょ」
「貴方が何を言ってるのよ!!!」
ヨグの言葉に激怒するベライザ・・・
無理もない・・・無理もないが、ヨグはボケてるのではなく真面目に答えているのだ。
そんな事もベライザは理解しているからこそ、ベライザは怒っているのだ。
「まぁ、ベライザが怒るのも無理ないニャ。そもそもの前提としておかしいからね、アレ」
「前提がおかしい・・・と言うと?」
「ヨグ君、時に君は通常時と戦闘時の防御力はどれぐらい?限界値が100として」
突然のニャルラの言葉にヨグは意味を理解出来ずにいた。
防御力?限界値?
いきなりゲームや漫画みたいな設定を持ち込まれても困る・・・ヨグは頭の中でそうツッコミを入れる。
「んニャ?ちょっと分かんなかった?じゃあ、え〜と・・・オーラで説明すると通常時が攻防力『10』で、戦闘時は『堅』してるから攻防力『50』みたいな?」
「またハ○ターハ○ターじゃないですか!!もういいですから!後、絶対レナさんに教えたのニャルラさんですよね!?」
「うん、面白いって勧めたらレナちゃんハマってね」
「・・・ちょっと、盛り上がるのは結構だけど、早く進めてくれないかしら?」
ニャルラとヨグの盛り上がりについてこれてないベライザは静かに話を進めるように促す。
ベライザは未読者なのだ・・・
「ゴメンゴメン・・・で、どうなの?ヨグ君」
「・・・まぁ、そうですね・・・自分の場合は通常時30くらいで、戦闘時は60くらいの防御力ですかね」
「うんうん、そうそう普通はそれぐらいの防御力纏ってるんだニャ〜」
「・・・それで?ヨグの防御力は分かったとしてあの再生力の説明はつかないわよ」
ベライザは未だニャルラの言葉の真意が掴めていない、それはヨグとて同じだ。
「さっきも言ったけど、だいたいおかしいだよね・・・ヨグ君さぁ・・・異形者になってさぁ・・・あそこまでのダメージ負わされた事ある?・・・あっ!アザート君からは除いて」
「え?・・・あんなダメージ受けた事なんてありませんよ。それはニャルラさんもでは?僕達は邪神型ですし、まずダメージ受けな────あれ?」
「─────ッ!」
ヨグとベライザが両方同時にある矛盾に気付く。
そう、決定的におかしな矛盾が存在しているのだ。
「そう!アザート君は何であんなダメージを受けているのか?私達と同じ邪神型であるというのに」
そう・・・おかしな話なのだ。
ニャルラもヨグもあれほどのダメージを負った事はほぼ無い・・・受けたとしてもそれは強敵と相対した時のみだ。
しかし、アザートは出会った敵・・・弱い強い関係なく全ての敵に対して同様なダメージを受けている、これをおかしいと言わずして何になる。
「何故アザート君がダメージを受けているのか、考えられる答えは1つ・・・アザート君はわざと攻撃を受けている・・・防御力0の状態で」
「はぁ!?『わざと』!?『防御力0の状態で』!?何でそんな訳分かんない行動してるの、あの人!?」
「うーん、理由は2つあるけど・・・1つはヨグ君なら分かるんじゃないかニャ?」
そう言ってニャルラはヨグに話を振った。
その本人ヨグは少し考えながらある結論に至る・・・それは以前も言ったようにアザートと何日も共に暮らしてきて分かった事だ。
「恐怖を与える為・・・ですか?」
「その通り!!」
「恐怖?」
ベライザはまだピンときてない。
そんなベライザの為にニャルラは補足する。
「恐怖は何事にもおける最強の武器となる事はベライザも知ってるでしょ?アザート君はそれを理解しているからわざと攻撃を受けているんだニャ」
「・・・・・・」
「ほら、今アザート君が再生した時・・・あの子達皆んな恐怖に呑まれてるでしょ?ベライザ、君だってね?」
「・・・確かに」
そう、確かにアザートが再生した時、得体の知れない恐怖を感じた・・・まさかそれがアザートの狙いだったとは知らなかった。
「私とヨグ君も最初アザート君の再生見た時は流石に感じたよ・・・恐怖。凄いよね、彼・・・恐怖という武器をあんなにもコントロール出来ている者を私は見た事無いニャ」
「・・・でも!それは一歩間違えれば己の命すら危ない諸刃の剣・・・やはり危険過ぎるのでは?」
「そこら辺は心配しなくても大丈夫だよ。何故なら2つ目の理由があって、アザート君は────
不老不死だから」
ニャルラの言葉に先程まで怒っていたベライザの顔が無表情へと変わる。
先程までの騒がしかった空気がニャルラの言葉で冷たくなった。
「・・・それ・・・本当ですか?」
数十秒が経過し、ようやくベライザが声を出す。
「うん、マジだよ・・・まぁ、アザート君自身まだ気が付いてないけど」
「・・・そんなの・・・あり得るんですか?不老不死って・・・それは・・・そんなのは・・・いや、やっぱりあり得ない!」
「まぁ、確かに私も最初はそう思ってたよ・・・でも、今は確信に変わってる・・・彼、アザートはセフィラさんに続く『2人目の不老不死者』だ」
「────ッ!?」
ニャルラは目を光らせてベライザに話す・・・それは先程までのふざけた態度ではなく、不敵な・・・射るような眼差しに変わっている。
「さらに彼は未だ進化を続けている・・・今は私の方が強いけど・・・時が経てば私でも勝てなくなる・・・そして、その時・・・彼が暴走した場合・・・勝てるのはセフィラさんだけになる」
「・・・・・・」
─────
────
──
メイ達の降伏で戦いが幕を終え、アザートはニャルラ達がいるモニター室へと帰還した。
「おい、終わったぞ・・・この後どうするんだ?・・・何かあったか?」
「・・・うん?何でも無いニャ!それにしてもアザート君、君はいつもやる事がエゲツないね。3匹の内2匹が降参してるんだったら受け入れてやれば良かったのに」
「ああいう輩は一度痛い目見ないと分からん奴だからな・・・しっかりと心の中に刻みつけておかないとな・・・己の所為であると」
「いやー・・・その姿勢に感服・・・って言いたい所だけど、それ意味ないニャー」
ニャルラは申し訳なさそうな声でアザートに話す。
「何故だ?」
「これからベライザが仕上げの記憶操作に移るからニャー・・・ねぇ、ベライザ」
「・・・え?・・・あ・・・はい!そうです!最後の仕上げに向かわないと・・・えーと、彼らは今は・・・まだ城下町に立ち尽くしてますね」
ベライザはそう言ってモニター室から外へ出てメイ達がいる場所へと向かった。
「─────1 2 3・・・9 10 11人っと・・・全員居るみたいね。さて、勝負に負けた貴方達にはやって貰う事があるわよ。全員1列に並びなさい」
「・・・お願いします!!!僕はどうなってもいい!だから、他の家族には手を出さないでくれ!!!」
「そうだ!俺もどうなってもいい!だから頼む!頼むからこれ以上家族を殺さないでくれ!!!」
ベライザの言葉にナイとスミヤは声をあげる。
メイはというと立ち尽くして完全に抜け殻状態である。
「「頼むから────」」
「2度言わないわよ?1列に・・・並びなさい」
ゾクッ────
ベライザの鬼気迫る表情を前にしてナイとスミヤは恐れをなしてベライザの指示に従った。
「・・・ふぅー、さて1列になったわね・・・あぁ、怖がる心配はないわ、殺しはしないわよ─────
殺しは・・・ね」
そう言ってベライザは徐に懐から杖を取り出した。
それはまさに某魔法映画に出てくる杖であった。
「(この女・・・何をしようとしている?)」
「んー・・・じゃあ・・・そうね・・・まずは・・・『思考を放棄しなさい』」
瞬間・・・ベライザが口にした瞬間・・・
メイ達全員の表情が意思を失っているかの如く虚ろで弛緩する。
まるで洗脳を受けているかのように・・・
「フフフ、皆んないい子ね・・・じゃあ、お願いは・・・『この1週間に起きた事全てを忘れる事』そして、『ベラ、ルー及び、テク、アメリ、マイ、カナタの存在全てを忘れる事』良いわね?」
『・・・はぁぁぁい』
「・・・まさか!?お前」
「アザート君は気付いたみたいね・・・そう、ベライザが今やってる事・・・それは『洗脳』ニャ」
「洗脳・・・だと?」
ニャルラの発言に驚きを隠せないアザート。
「ベライザが持ってるあの杖・・・ただの杖じゃないニャ・・・アルカディアの幹部が持つ武具・オリハルコンの杖ニャ」
「オリハルコン・・・確か、アルバートが何か言ってたような・・・」
『異形者にはただの武器ではあまり効果がない。貴様らの様な輩にはなおさらな・・・しかし、効果的な武器もある。一つは貴様ら、邪神共が生成する武器。一つはオリハルコン・・超金属の武器。どちらも我々には縁の無い代物だ』
「オリハルコンは特殊な魔力が宿る金属・・・その魔力が持ち主に最適化された武具に変化するニャ。ベライザの場合は杖・・・そして、魔力が宿るというようにあの杖にも魔力が宿っているニャ」
「それが洗脳の力・・・という訳か」
「とっても何でもかんでも洗脳出来る訳じゃないニャ・・・条件があってそれは『彼女の所有物である』それが条件ニャ」
ベライザのオリハルコン性武具・絶対服従の杖
・杖を洗脳したい相手に向け、操りたい内容を言葉にしながら振ると能力発動
・能力条件としてベライザの所有物である事
ここで言う所有物とはCRU施設ドイツ支部に携わる職員、異形全てである。
「なるほど・・・あのパープル女が隠してた事が分かった」
「パープル女?」
「レナさんの事ですよ」
「ああ・・・」
そんな風にアザートとニャルラとヨグが雑談しているとどうやらベライザの仕事は終わったようでメイ達は虚ろの目をしながら建物内へと帰って行く・・・
「はい・・・という事で、これを持ちまして『CRU施設異形クーデター』が終わりました!ニャルラさん、ヨグさん、そしてアザートさんどうもありがとうございました!」
「いやいや、アメリカに居ても私達指名手配されてるし、ドイツに来て・・・ベライザに会えて良かったニャ〜!」
「はい・・・私もこの1週間中々楽しかったですよ、ニャルラさん。またクーデターが起きたら呼びますよ」
「ほえー、まぁ私に任せるニャ!」
「今回ニャルラさん何もしてないですよね?」
「ヨグ君〜?何か言った〜?」
ニャルラとヨグ、ベライザが談笑している中・・・アザートはゆっくりと歩を進めるメイ達の後ろ姿を見ていた・・・
「(中々残酷だな・・・死んだ仲間の存在を忘れて生かされるなんてな・・・)」
「・・・さん・・・ートさん」
「(まぁ、俺には関係ないが・・・)」
「・・・ザートさん・・・アザートさん!」
「何だうるさい、殺すぞ?」
「いや、これからニャルラさんドイツの美味しい物食べ歩きに行くって、早く行かないと置いて行くって」
「あぁ、今行く・・・ベライザと言ったか、ではな」
「えぇ、アザートさんもまた」
そう言い残した後、アザートはニャルラがいる方向に向けて歩きだした。
そんな中1人になったベライザはふとニャルラとの会話を思い出す。
* * *
『さらに彼は未だ進化を続けている・・・今は私の方が強いけど・・・時が経てば私でも勝てなくなる・・・そして、その時・・・彼が暴走した場合・・・勝てるのはセフィラさんだけになる』
『・・・・・・じゃあ、これ以上強くなる前に殺すって事?』
『何でそうなるのかニャ!殺すんじゃなくて暴走しないようにするの!』
『暴走しないようにする?』
『うん!もし暴走したらセフィラさんが出向いてアザート君の事殺すじゃん?それじゃあ駄目だよ!アザート君は私の大事な仲間だから・・・仲間殺されないようにするのは当たり前じゃん!』
* * *
「・・・フッ、あの誰にでも噛み付いてセフィラさん以外信用してなかったニャルラさんが仲間・・・ねぇ・・・
人だけじゃなくて異形者も変わるのね」
次回投稿は明日(出来るかな?)になります。
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