第116話 決戦の音楽は鳴り響く 裏
今更ではありますが、
前回の章『箱庭の園Q』の Q は『Question』の Q です。
今回の章『箱庭の園 T』の T は『Truth』の T です。
決戦当日の日曜日 朝9時
「決戦の時間まで残り30分・・・誰を何匹殺すかは決めたか?まさかだとは思うが、決めてない、決められないと宣うつまりではないな?」
「・・・まさか、もう決めたわよ。誰を何人殺すか・・・」
アザートは笑みを浮かべながら、挑発的にベラに問いかける。
しかし、ベラはそんな事は意に介していない様子だ。
「(ほーう、今日は一段と冷静だな・・・まるで覚悟を見めたかのような目をしている・・・本当に家族を殺す覚悟が出来たのか?昨日の様子からは考えられないが・・・)」
「何だ、アザート君がめっちゃ脅かすから、戦う覚悟も無いただの臆病者かと思ってたけど、中々肝が据わってるじゃないかニャー」
「あれ?昨日あれだけ焦ってたのにどうしたの?ベラ」
「何も・・・ただ覚悟が決まっただけよ、何か問題あるかしら?」
「いや・・・何も・・・無いですけど」
昨日の態度からあまりの豹変ぶりに訝しげに感じるレナではあったが、何処がおかしいか尋ねられても特に思い浮かばない。
「まぁ、細かい事はいいんじゃない?ベラもようやく己の使命が分かってくれたって事で・・・っと、G・ティーチから連絡が来たわ『出発した』って・・・じゃあ、レナは仕事場に戻って良いわよ」
「分かりました!では、ベラさんご武運を!」
レナはそう言って仕事場へと向かって行った。
「それじゃあ、私達も行くとするかニャ、メイちゃん達に早く会いたいしねー。出発出発〜」
そう言ってニャルラ、ベライザ、ヨグの3人は足を進めて行った。
それを後ろから続くベラは誰にも気付かれないように、そっと呟いた・・・
「何が使命よ・・・人殺し連中のくせに・・・」
「なるほどな・・・」
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♫〜〜〜♫〜〜〜♫〜〜〜
「・・・おい、ちょっと待て、何だこの音楽は?」
「何か神聖な場所感溢れる壮大な音楽が流れてるんだけど・・・」
歩いて僅か数分・・・しかしながら、アザートとベラは耳に入るある音楽に触れられずにはいられなかった・・・
特にアザートはこの音楽が何の音楽ではあるか知っているようだ。
「あら?アザートさんはこの曲知ってるのかしら?」
「そう言えば、アザート君は日本出身だったニャ〜、じゃあこの曲がセ○エイ高原のBGMって知ってるのかニャ〜」
「いいですよね!そのBGM!私その曲聴くとテンションが上がるんですよ!後々、BGMと言えば、ゼ○ダの伝────」
ベライザはしばらく話しながら歩いた後、ある場所で足を止めた。
其処はこの5日間、足蹴なく通った闘技場の入り口手前の二手に分かれる廊下であり、右に進めばそのまま闘技場へと繋がる。
「うん?進まないのか?」
「さてと、突然だけどベラ・・・貴方に質問をするわ」
「質問・・・何ですか?」
「あらあら、そんなに警戒しなくてもいいわよ。簡単な街角アンケートとでも思ってくれたらいいから。貴女がもし戦うとしたら、『闘技場』か『城下町』どっちで戦いたい?」
「え?」
あまりにも唐突な質問・・・ベラの頭は一瞬フリーズした・・・しかし、すぐに頭をもう一度回転させて己の意見を述べた。
「そんなの・・・『闘技場』に決まってるじゃない」
「へぇ・・・その理由は?」
「理由?そんなの遮蔽物が無いからに決まってるでしょ?城下町って言うからには家々が立ち並ぶ場所・・・そんな所で戦ってみなさいよ・・・邪魔で仕方ないわよ」
「ふーん、異形化した時の事を考えての貴女の意見ね・・・ありがとうね。じゃあ、アザートさん・・・貴方ならどっちにしますか?」
ベライザは次にアザートに問いかける。
「俺はどっちでも構わん・・・と言いたいが、まぁ普通の奴なら100%『城下町』を選ぶ
「・・・何でよ」
「うん?何故貴様が怒る・・・俺はこう言った『普通の奴』・・・と、何だ?貴様は普通だと言いたいのか?」
「・・・いや・・・そうじゃない・・・けど・・・」
『普通の奴』・・・ベラは一瞬考えるが、己が普通では無い事はここ数日間でいや、という程教えられた・・・反論する言葉が出ない、出てこない。
「貴様の場合は異形化すれば身体が肥大化するが故、攻撃するにあたり家などの遮蔽物が邪魔になる・・・貴様の言った通りだ、何も間違ってはいない・・・しかし、それは身体が肥大化している者からすればの話だ」
「・・・・・・あ」
「気付いたようだな・・・では、普通の奴なら?普通の身体の大きさの奴なら?貴様が邪魔と言った遮蔽物全てが戦闘において、大きなアドバンテージを生む事となる」
遮蔽物が多いと言う事はつまり、その分奇襲攻撃が通りやすいのだ。
奇襲攻撃は力無き者が力ある者への喉元を掻き切る事が出来る最大の手段の一つであると言っても過言では無い。
「不意を突くことが出来れば大抵の者は殺す事は可能だ・・・勿論、貴様程度では直ぐに殺されるな・・・だが、良かったではないか?貴様は闘技場を選んだ・・・戦いの場は闘技場だろう?」
「いや、全然違いますが・・・」
「・・・え?ちょっと待って・・・え?戦う場所は闘技場か城下町なのよね?」
「えぇ、そうですよ」
「え?・・・で、私に聞いたわよね?どっちがいいかって」
「確かに言ったわ」
「私は闘技場と答えた・・・で、戦う場所は?」
「多分、城下町じゃないかしら?」
何を言っているんだ?この女は・・・
ベラは細い目を向けながらベライザを見る。
「ちょっ!何よその目!私言ったわよね?ただのアンケートだって!ねぇ、ニャルラさん!」
「まぁ・・・言ったねぇ・・・」
「そうよ!言ったわよ!っていうか、どう考えても貴女の方が強いのに何で戦う場所指定出来るとでも思ってるのよ!メイ達が選ぶに決まってるじゃない!」
じゃあ最初から紛らわしい問いかけをするんじゃないわよ!
ベラの頭はベライザに対する罵倒の阿鼻叫喚でいっぱいいっぱいだ。
そんな事を考えているのもお見通しか、知らずか、ベライザはそーっとベラから距離を離れて咳払いを一つした後、話し出した。
「ゴホン・・・アザートさんが言った通り、メイ達は恐らく・・・まぁ、ほぼ100%城下町で戦う事を指定するから先に向かうわよ・・・モタモタしてメイ達と鉢合わせなんかしたら大問題だから」
そう言ってベライザ達は闘技場へと続く右の廊下ではなく、左の廊下へと歩いて行った。
そして、数分後・・・大きな扉を前に着き、ベライザはその扉を開けた。
「・・・凄い景色」
扉が開いたその先は大きな街が広がっていた。
その大きさは軽くベラが住んでいたCaReUeハウスの校庭を越える大きさであった。
「こんな大きな場所があるなんて・・・これが外の世界」
それに街をリアルで観るのは初めてであるベラににとってそれは大きな衝撃でもあった。
「さてと、外の景色見て感動を受けてる所悪いけど、そろそろメイ達が来るわ。貴女見られたら不味いから、アザートさんはベラを連れて・・・えーと・・・あそこ。あそこの部屋で最後の確認してくれる?」
アザートとベラはそう言って、ベライザが指定された部屋へと入って行った・・・因みに、ニャルラとヨグはメイ達を一目見たいのだとか・・・
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「さて、一つだけ言っておこう・・・今の貴様では100%誰も殺せない」
「何を言っているの?」
「貴様は戦う覚悟は出来ていても、殺す覚悟が出来てない、今の貴様は有象無象の雑魚と同じだ」
「────っ!」
何も言い返せないベラ・・・何故なら事実だから・・・
そう、ベラは戦う覚悟は出来ても殺す覚悟がまだ出来てないのだ。
「有象無象の雑魚である貴様と明確な目的・・・自由を勝ち取るという目的がある奴等・・・果たしてどちらが勝つのだろうな?
此処で断言しよう・・・
貴様が100%負ける」
次回投稿は来週の水曜日になります。
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