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第115話 『誰を』『何匹』殺す?


「─────さて、遂に明日が決戦の日になるわけだが、既に『誰を』『何匹』殺すかは決めたのか?」


「・・・・・・はぇ?」


修行が開始されてから2日が経過し、土曜日・・・


寝る間を惜しんで修行に明け暮れるベラではあるが、未だアザートの肉体を破壊はおろか、傷一つ付けられていない状況にいる。


そればかりか反撃は攻撃される回数に応じると言う制約があるにも関わらず、毎度同じく中身がグチャグチャになるまで痛めつけられているのだ。


今日も今日とてグチャグチャにされた内部の回復を待っている中、不意に問われた質問に対して、つい素っ頓狂な声を出してしまったベラ。


「まぁ最低2、3匹は殺すのは当たり前として、問題は殺すタイミングだ。それが絶好であればあるほど相手の指揮系統は瓦解する。そうだな、俺ならば────」


「ちょっ!ちょっと待って下さい!!」









































ベラの突然の大声に闘技場内は静まり返る。


ベラの身体はまだ完全に再生されておらず、手足も未だ赤ん坊の大きさだ・・・しかし、それでもベラはそんな身体を芋虫のように這いずりながらアザートの元へと近づく。


「・・・何だ?」


「待って下さい!殺すって言いました?今、2、3人は殺すのは前提って言いましたか?そんな前提はおかし────」


「くはない」


アザートはベラがそう言い終わる前に言葉を被せる・・・そして、そのまま話し続ける。


「貴様・・・『まさか』だとは思うが、誰も殺さず相手を屈服させようだとか考えているのではなかろうな?」


「────ッ!」


その言葉に図星を突かれたかの様な顔をするベラ。


まさにその通りであり、心の中でも見られたのかというくらい正確に読まれていた。


そう、ベラはCaReUeハウス学校の家族の皆んなを殺す事は頭に無かったのだ。


己との力関係を把握させ、相手から降参させる・・・その様な作戦を考えていたのだ。


しかし、その全てをアザートは理解しているかの様な瞳でベラを見つめ、心底呆れ果てる。


「・・・おい、パープル女」


「・・・あっ!はい!はい!はい!何でしょうか?」


「お前は何匹殺した?」


「え?」


「2度は言わんぞ?『お前は』『何匹』『殺した』?」


アザートの威圧的な雰囲気を前に即座にその意味を理解するのにレナは1秒も経たなかった。


「あっ!はい!えーと!私は・・・確か・・・2匹殺しましたよ」


「なるほど、最低限かつ合理的だな。1匹目は相手を黙らせる為、2匹目は反撃する芽を潰す為・・・か。見かけによらず、中々狡猾じゃないか」


「え?・・・あっ、はい!そうなんです!そうなんですよね〜!あはははは!」


別にそんな事何一つ考えてはいない、ただ勢いで殺しただけである。


しかし、せっかくあのアザートという凶暴な・・・いつ殺してくるか分からないような奴が自分の事を褒めたのだ。


「(これはこれで気分が良いから、そのまま勘違いさせときますか)」


後でバレて半殺しにされたが、この時のレナはまだ知らない。


「そっ・・・そんなのって・・・おかしい!おかしいわ!何で殺すの!殺す必要なんか無いわよ!」


「貴様は何だ?馬鹿なのか?ベライザが言うに、相手はこの施設から脱出する為に命を賭けて貴様に挑んで来る。そんな奴等がちょっとやそっとで諦めるとでも?」


「で・・・でも!」


「諦めると本気で思っているのか?すぐに諦めてくれる、そんな甘っちょろい奴等が挑んで来ると本気で思っているのか?違う違う違う!奴等にとって勝利は『自由』への道・・・しかし、降伏する事は『死』だと考えているのだぞ?そんな奴等がおいそれと諦める?馬鹿か貴様は!」


アザートの鬼気迫る表情と言葉にベラは何も反論しない・・・いや、出来ない。


アザートの言っている言葉は全て正しいのだ、正しく言わば常識的な考えなのだ・・・が、そんな考えすら浮かばなかった己の甘さにベラは心底絶望する。


そんなベラの思考など興味無いと言わんばかりにアザートは話し続ける。


「自由を賭けた闘いに身を投じている奴等だからこそ、すぐに気が付く筈だ!貴様に殺意が無い事を・・・そうなれば貴様は終わりだ。奴等は絶対に降伏などしない!断言出来る・・・逆の立場でモノを考えてみろ、相手は自分達を殺す気は無い甘っちょろい奴が降伏しろと言ってくるのだぞ?そんな奴に貴様は降伏するか?」


しない・・・いや、する訳が無い────


そんな考えがベラの頭の中に生成される。


そりゃそうだ、相手は何をしても殺す気は無いのだから、降伏する意味が無いのだ。


降伏とは相手に恐れを抱き、自分達がこの先何をやっても勝てるビジョンが見えず、ただ犠牲が増えるだけ・・・


そんな状況に残された唯一の最終手段・・・それが降伏なのだ。


しかし、先程も述べたようにベラの考えているような作戦では前提が既に成り立って無いのだ。


「でも・・・でも・・・」


殺すしか降伏させる事が出来ないこの状況・・・しかし、ベラ自身は納得がいかない。


何か・・・何か別な方法がある筈だ、殺さなくても良い方法がある筈だ・・・


ベラは考えを巡られせる・・・しかし、方法が思い浮かばない。


どう足掻いても降伏させる為には犠牲が必要なのだ。


「(どうすれば・・・どうすればいい?私は・・・何をしたらいいの?)」









































「もういい」


「─────え?」


「決戦の日まで残りの時間は『誰を殺すか?』『何匹殺すか?』それについて考えろ。俺の修行は以上だ」


アザートはそう言って踵を返し、入り口へと歩い行った。


──────


────


──


「────さぁてと、アザート君!ヨグ君!どうなの!どうなの!ベラちゃんは明日の決戦生き残れそうかニャ?」


「はっきり言って無謀だな。殺せるだけの力は秘めているが、心の整理がついてないのだろうな・・・殺したくないそうだ」


「えぇ〜、それって結構不味くない?最悪ベラちゃん殺されちゃうじゃん!」


その日の夜、アザート、ヨグ、ニャルラ、ベライザの4人は明日に向けての最終確認をしていた。


しかし、アザートの話を聞く限りあまり期待できそうにない。


「まぁ殺された所でそこまでだったという訳ですから、別に私は構いませんよ」


「ほーう、随分と辛口採点だね。ベライザってもしかしてベラちゃんの事嫌い?まぁ戦いたくないとか言い出しちゃうからね〜。ベラって、甘ちゃん嫌いだし」


「別にそんなんで嫌いとかじゃありませんよ!私はそんな子供じゃありません!」


「そう?じゃあ、同じ『ベラ』って名前だから紛らわしいとか?ベラは私1人だけで十分みたいな?」


「割り切る事も大事だと言ってるんです!よくわかんない物語展開しないで貰えます!?」


ニャルラの悪ふざけなボケにも鋭いツッコミを入れるベライザ・・・調子は戻っているみたいだ。


「コントで盛り上がるのは大いに結構だが、もしアイツが殺された場合・・・どうするんだ?」


「え?あぁ、そういう時は私達が相手取るだけニャー」


「まぁ、そういう事になりますかね」


「そうか・・・それは中々────









































─────楽しみじゃないか」


次回投稿は来週の金曜日になります。

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