第110話 嘘つくと・・・死?
「────にしても中々だな、闘技場なるモノまであるとは・・・」
「え〜と、アザートさんは確かこの施設には初めて来たんですよね?それだったら確かに驚くのも当然ですね、私も初めて内装を教えられた時はびっくりしましたし、まだ知らない場所も山程ありますしね」
「へぇー、レナさんでさえ知らない場所もあるんですね」
「勿論!何だかんだ私も外に出て3年目!まだまだ新人さんですからね」
アザートとヨグ、そしてベラの3人は6号館にある闘技場に向かってる最中、レナと出会い一緒に行くこととなった。
というのも、ニャルラが途中でアザートとヨグの2人では流石に心配であった為にレナを送り込んだのは内緒の話・・・
「それにしてもあの優秀なベラと仕事出来るなんて光栄だな〜。また宜しくねー」
「・・・何だ貴様ら知り合いか?」
「え?・・・あの・・・その・・・私・・・貴女のこと・・・知らないんだけど・・・」
「・・・だそうだが?」
「え?・・・・・・あ!・・・いや〜知り合いっていうか!・・・あの〜・・・その〜・・・そうそう!G・ティーチャー!貴女のことはG・ティーチャーからきいてたの!うん!だから知ってたの!」
いきなり取り乱したレナにアザートとベラは不審な目を向ける。
何かを隠そうとはしているのは明白なのだが、レナは嘘笑いを浮かべるだけ・・・
そんなレナにアザートは別角度から質問した。
「優秀・・・と言ったが、コイツは優秀だったのか?」
「え?・・・あぁ、はい!ベラが住んでた所・・・名前はCaReUeハウス学校っていうんですけど、そこでテストが行われてるのはご存知ですか?」
テスト・・・あぁ、確かベライザが言っていた知能、運動、そして、道徳を測るテストのことか・・・
アザートは瞬時に理解し、頷く。
「ベラね・・・そのテストが毎回全教科100点なんですよ!凄くないですか!?」
「ほーう」
「それは凄いですね」
「いや、それは・・・まぁ・・・そう・・・ですか?」
ベラは顔を赤くし、その表情を見せまいと手で隠す・・・
家族達からはよく褒められてはいたが、今日初めて会った者から褒められるのは初めて・・・
恥ずかしくて謙遜する事が出来ずにいた。
「本当凄いですよ。私もね、体力テストの方はいつも100点だったんですけど、知能の方がね、いつも悪くて・・・最高でも85点くらいしか取れなくて・・・」
「え?」
レナの言葉に沈黙が走った・・・
レナ自身も『え?何!?何かまたヤバい事言った!?』みたいな顔をしてオドオドした様子・・・
自分が発した自白のような言葉に未だ気付いてはいない。
その中で唯一・・・アザートとベラの2人に気付かれずに『あちゃー』と言わんばかりに頭を押さえているヨグの姿が・・・
「・・・お前も何だ・・・ナントカ学校の生徒だったのか?」
「え?・・・あ!・・・いえ・・・特に・・・そんなことは・・・」
「え!?そうなの?でも、私14年間通ってたけど、貴女は見た事も覚えもないんだけど・・・」
「そっ・・・そうですよね!?そうです!そうなんです!わっ・・・私のこと知らないですよね!?はっはっはっはー!本当に何を仰いますやら・・・」
レナはそう言って先に進もうとする・・・アザートとベラの2人を視界に入れず・・・
しかし、すぐさまアザートはレナの前に立ち止まり、行手を阻んだ。
「あ・・・あの・・・じゃ・・・邪魔───」
「貴様────、
────何を隠している?」
アザートの赤く鋭い眼がレナの動きを封じる・・・
レナはまるで金縛りに遭っているかのように動けない・・・
「────返答によっては・・・」
ゆらりと揺れるアザートの左腕・・・その掌の虚空から微弱な黒と銀の粒子・・・
その粒子はだんだんと集まっていく・・・
あるモノへと生成されていく・・・
銃の姿へと変化してい─────
「あ!この先まっすぐ行けば、もう6号館に着きますよ!!期限が1週間しか無いんですから早いとこ修行しないと!」
ヨグの言葉がアザートが醸し出している黒々とした雰囲気をかき消す・・・
ズ・・・ズズズズズ・・・
アザートはゆっくりとヨグを見る・・・その眼は先程と同様な鋭く光る赤色・・・
しかし、それに臆することなくヨグは見つめ返した。
ここで目を逸らせば自分・・・いや、レナが殺される事は雰囲気からして明らか・・・
1秒たりともアザートから眼を離せずにいた・・・
そして、1分・・・ヨグからしてみれば何時間経ったか分からない・・・それくらい経過した後、アザートはゆっくりと前を向いた。
左手には何も無かった・・・既に降ろされていた。
「・・・さっさと行くぞ」
アザートはそう言うと再び歩き始めた・・・
そんな様子を側から見ていたベラもそれに続き、後を追う。
「あ・・・あぁぁ・・・あ・・・」
放心状態のレナに素早く駆け寄りヨグは小さく声をかけた。
「本当に危なかったですよ!・・・記憶操作の事は今はまだベラさんには知られてはいけない事なんですから!」
「は・・・はひぃ・・・ヨ・・・ヨグさん・・・マジでありがとうございます・・・走馬灯見えましたよ、花畑見えましたよ」
「えぇ、えぇ、分かります・・・アザートさん、割とマジで殺しに来てましたからね・・・あの人・・・下手に嘘つけば、問答無用で殺しますから気を付けて下さいね」
「さ・・・先に言ってて下さいよ〜〜〜!」
──────
────
──
CRU施設・ドイツ支部は本館及び計6の別館に分かれている・・・
その中の一つ・・・6号館は闘技場となっている・・・
一般的には異形及び職員の訓練所として使用される。
見た目は平たく言えばローマにあるコロッセオを小さくし、改築した・・・と言えば良いのだろうか?{Googleで調べると何か地面?が迷路みたくなっていて、?となった(あんま歴史知らない)が、此処では平地という事で}
「なるほど・・・これは中々素晴らしいな」
「でしょう!これ全部ベライザさんが設計したそうですよ」
「だろうな」
アザートはレナの言葉に同意しながら辺りを見回した・・・
「(辺り360度見通しが良く、障害物が無い・・・不意打ちや隠れながら攻撃するといったヒットアンドウェイ等の作戦が意味を成さない構造・・・つまり、完全なる己の力のみが勝敗を決める場・・・と言った方が良いか)」
「さて、じゃあ時間も惜しいんでそろそろ鍛錬を始めちゃいましょうか?・・・って、私も他人に教えるとか初めてで・・・ヨグさんはあります?」
「いや・・・前もそうでしたけど、こういうのはニャルラさんが鍛錬メニューとか考えてくれて・・・う〜ん・・・アザートさんならどうします?」
ヨグはひとしきり考えたが、結局何も思い浮かばず、アザートに聞いてみた。
実際の所現在進行形でアザートに修行を受けて貰っているヨグからしてみればアザートが一番こういう事に対して分かっているだろうと考えたからだ。
「・・・鍛錬・・・ねぇ?」
アザートは見回していた目をベラへと集中させる。
緊張・・・
ベラの頭の中にはその2文字が覆った。
無理もない先程の理不尽としか言えない沸点のポイントを見せつけられたのだ・・・
何が引き金で殺されるか分かったもんじゃない。
ベラは何も言葉を発さず、ただ直立不動状態を保っている。
「あっ・・・そういえば大事な事言うの忘れてた。戦闘中は常に異形化する事が義務付けられてますから・・・一応正体バレたらマズイんで」
「なるほど・・・なら、まず異形化しろ」
アザートがそう命じてから30秒が経過する・・・
しかし、ベラは直立不動状態を解かない。
「?・・・早くしろ、異形化しなければ何も始まらないだろう」
2度目の命・・・しかし、最初と変わらず、ベラは直立不動状態を解かない・・・少し小刻みに震えているのは気のせいだろうか?
「おい、本当に何をしている?さっさとし────」
「────せん」
「・・・あ?何か話したか?」
アザートは耳に手を当て、再度話すのに促す。
「あ・・・あの・・・出来ません」
「出来無い・・・何がだ?」
「え・・・えーと・・・
・・・異形化?っていうのが」
アザートとベラの間に風が吹く・・・
唖然・・・
アザートの顔は唖然といった表情だ。
アザートだけではない・・・ヨグとレナも『あ、そう言えばそうだった』と言わんばかりに後悔の表情を見せる。
ベラもそうだ・・・『やっちまった』みたいな・・・『殺される!』みたいな表情でアザートの顔を見る事が出来ず、目を強く瞑っている。
そんな各々が醸し出す雰囲気の中・・・あるモノが口を開いた。
「そうか・・・出来ない・・・か」
アザートはそう言い、手を前へと掲げる・・・そして、一言口にした。
「黒獣────」
瞬間・・・アザートの腕が黒い獣へと姿を変え、猛スピードで前方にいる者・・・
ベラ─────
の後ろの観客の席へと一瞬で移動・・・その後、アザートは元の姿へ。
「え?・・・ちょっ?・・・え?」
「え?何が起きて?」
「?????」
ベラは勿論、ヨグ、レナの2人も何が起きたか分かっていない様子・・・
「おい、男女とパープル女・・・基礎はお前等が教えろ」
そういうや否やアザートは眠りについた。
「パープル女って・・・100%髪で命名された・・・」
「でも、まだ分かりますよね?僕なんて男女ですから、完全に蔑称ですから」
次回投稿は金曜日になります。
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