第109話 緑と黒とピンクと黄土の邂逅
金曜日はすいませんでした!
「ベラ・・・あれ?・・・ベラ?・・・べーラ?」
「─────え?・・・あっ、はい?何でしょうか?」
「何でしょうか?って・・・何ボーっとしてるのよ。ほら、自分からも自己紹介」
「はっ・・・はい!・・・ベ・・・ベラ・・・です・・・よ・・・よろしく・・・お願いします」
「・・・おい、本当に大丈夫か、この女・・・こんな怯えてる奴が殺戮など出来るのか?」
目の前で何の理由か知らないが、震えているベラに対し怪訝な表情をするアザート・・・
「多分・・・十中八九・・・アザートさんに対して恐れてるんじゃないかと・・・」
「・・・・・・」
「ヒッ!・・・ってか、それですよ!それ!!今僕に対し睨んでるその顔!さっきも彼女が出てきた時もしていましたけど、ヤバいですよ!!殺しに来るんじゃないかってくらいのオーラ出てますから!!」
「ニャハハハハ!私ですらアザート君怖いからね、特に命令無視して何しでかすか分からない点で。まぁ、ベラちゃん・・・だっけ?そんな強張らなくても良いニャ。見た目これだけど、気に触る事しなければ殺されないから、ニャハハのハ!」
「そ・・・そうなんですか・・・あはは」
逆に言えば気に触る事すれば殺されるって事?笑えないわよ・・・
今にもそう言いたげな表情を向けるが、それに気が付かない・・・いや、無視しているニャルラ。
「おおっと、私達も自己紹介しないとね。私の名前はニャルラ!よろしくー。そんで、こっちの黄土髪がヨグ君」
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「んで、さっきから名前が出てるけど、彼の名前がアザート君ニャ」
「・・・・・・」
ニャルラに紹介されるが、アザートは挨拶をせず、ジッとベラを睨んでいる。
「ちょいちょいちょーい!流石に無視はどうかと・・・ほら、ベラちゃん困ってるから!ほら、挨拶!」
しかし、ニャルラの言葉を聞いていないかのように・・・否、聞こえていないかのように、アザートはジーとベラを睨んでた。
そして、10数秒程睨んだ後、ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
「確かに潜在能力は高そうだな。だが、コイツは実戦経験はおろか、殺しをした事も無いのだろう?そんな奴が殺戮者?とんだ采配だな」
「まぁ、それが一応方針ですからね。それに経験が無ければすれば良い・・・でしょう?」
「何を言って・・・」
「さてと、役者は全員揃ったわ。ベラ貴女は1週間後あるモノ達と闘って貰うの・・・でも、貴女は戦闘の経験が0・・・だから、その道のエキスパートのニャルラさん達から戦闘の極意を教えて貰って1週間後に備えて貰うわ」
ベライザはようやく次のステップに進めるという顔をしながら説明を開始した。
しかし、約1名意味が分かっていないモノが・・・
「あっ・・・あの!たっ・・・戦うって・・・私が?」
「そうよ」
「え?あの・・・私戦った事なんて・・・それに多分戦う相手って十中八九バケモノですよね?」
「そうよ、だからニャルラ達に戦闘の極意を教えて貰うのよ」
「いや・・・あの・・・そんな戦闘の極意って1週間やそこらで習得出来るものなんですか?」
単純な質問・・・1週間やそこらで戦闘経験0の者が簡単に戦えるのか?
ベラの問いにベライザはゆっくりと視線をニャルラに移した。
・・・え?私に投げるの?
そう言いたげな顔をするニャルラに一抹の不安が生じる。
そして、ニャルラはそのまま腕組み深く考え、考え、考え、考え、考え、考え、考え・・・
グー!
親指を突き出した。
「うん!出来るみたいよ」
「いや、何よ!今の間は!明らかに『厳しいな〜無理だよな〜』みたいな雰囲気を醸し出してたでしょーが!!」
「いやいやいや、そんな事考えて無いニャ〜」
ニャルラはあっけらかんな表情をする。
しかし、ベラの不安は拭えない。
「それに私、異形なんですよね?異形の戦い方なんて普通分かりませんよね?」
「あら?そこは安心しても良いわ。だってニャルラさん達全員異形者だから」
「え?・・・マジ?」
ベライザの言葉を聞いたベラは恐る恐るニャルラ達に目を移す。
しかし、ニャルラ、ヨグの2人を見ても異形者には見えない・・・勿論、アザートは別だ。
「だから安心して彼等に戦い方を教えて貰いなさい。時間も限られてるし」
「は・・・はぁ・・・じゃあ、最後に一つだけ・・・戦う相手ってどんな異形者なんですか?」
「あら?異形者じゃないわよ?異形よ」
その言葉を聞いた時、ベラの頭の中は真っ白になった。
戦う相手は『異形』・・・異形者と異形の違いは昨日ベライザさん自身が教えてくれた・・・
異形者から産まれたモノが異形だ、私自身も異形である。
そして、ベラは知っている・・・他の異形がどんなモノなのか・・・
ベラは予感する・・・最悪の予感がベラの脳内を駆け巡る。
「あ・・・あの・・・異形って・・・まさか・・・」
「えぇ、貴女の元学舎・・・CaReUeハウス学校の生徒よ」
ベラの最悪の予感が的中・・・先程までの明るい顔が消えた。
「・・・い・・・嫌です・・・戦いたく・・・ありません」
「あら?戦いたくない・・・つまり、貴女はこれから大勢の人間が死んでも構わないと・・・」
「え?」
ベラは顔を上げる・・・何故ならベライザの言葉の意味が理解しかねるから・・・
「彼等はこの施設から逃げようとしている・・・だけど、逃げた先には何が待ってると思いますか?希望ですか?生ですか?それとも明日ですか?」
先程までの穏やかな表情では無い・・・鬼気迫る表情・・・それを前にベラは何も言えずにいる。
「違う違う違う!何も無い何もある訳が無い!あるのは阿鼻叫喚の地獄のみ・・・彼等が逃げ出す所為でこの地は再び赤黒く染まるのよ・・・今でも・・・思い出す・・・異様な空気・・・蔓延る強烈な異臭・・・そして、光景・・・全てが神経に障る・・・」
「ベライザ・・・」
「あれは・・・あれを・・・もう・・・私は見たく無い!!!気持ちが悪い!吐き気がする!!あれはこの世の地獄だ!!!ねぇ、貴女は想像出来る!?助けようと街に来た時、快楽の表情を見せながら何十人何百人もの人が『膿』へと変わる光景を!!!貴女には────」
「ベライザ、もう良いニャ・・・」
ニャルラはそう言い、ベライザの方に手を置いた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ニャ・・・ルラ・・・さん?」
「君の悪いとこだよ?そこは・・・少しばかりメンタルが弱いとこ・・・だから、12人の中でも最弱ってよばれてるんだからっと!」
ニャルラはそう言って、ベライザを持ち上げる。
「悪いけど、私はベライザを少し休ませるニャ。だから、ヨグ君とアザート君はベラちゃんの訓練よろしくねっと、ここでよろしくされても困るから・・・う〜ん・・・確か6号館が闘技場になってたと思うからそこで宜しくね」
「分かりました」
「あぁ」
「あと、ベラちゃん・・・確かに今まで過ごして来た子達と戦うのは抵抗あると思うけど、君が戦わないとダメだからね。そういうルールだから・・・そうじゃないと君自身の成長に繋がらないから・・・分かったニャ?」
次回投稿は金曜日になります。
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