第108話 背けてはいけない現実(ベラ視点)
この回でベラ視点は終了・・・
少し歩くと、別のエレベーターがあり、そこに私達は乗った。
ベライザさんが押したのは2階・・・その階は・・・ルーとG・ティーチャーが降りた階・・・
「貴女達の異形の場合・・・ある時間が経過すると、人間の姿を保てなくなるの」
「え?」
突然ベライザは話し出した・・・
人間の姿が保てなくなる?
「それは・・・どういう?」
「今までの記憶が全てなくなり、人を襲うという事しか思考出来なくなる・・・いや、しなくなるのよ」
「そんな・・・その・・・異形の姿に変貌する・・・期間は・・・決まってるんですか?」
「いえ、こればっかりは個体差があるわ。まぁ、ほぼ全員がどの道理性が保てないモノは12歳までには変貌するわ」
そんな・・・事が・・・
12までには・・・バケモノの姿になるなんて・・・
「・・・って、あれ?私は?」
「言ったでしょう?貴女は特別・・・理性を持つ事が出来た異形・・・」
「私が・・・特別な・・・個体・・・」
ピンポン────
エレベーターが2階へと到着した・・・
「さて、今の話・・・貴女は優秀だから私が本当の事を言ってると分かると理解してくれてると思うんだけど・・・まぁ、事実確認は大事だから・・・貴女にはその目で見てもらうわよ・・・貴女達の本質を・・・」
「え?・・・何を言って────」
戸惑い・・・私はベライザさんの言葉の意味を理解出来かねている時・・・
「さて、ルー、貴女の里親が到着したわ。私も同席したいけど、さっきからトイレ我慢してるの・・・私がいなくても良い子にいるのよ』
「分かったぁ!!」
こっちには気付いていない・・・ガラス越しでG・ティーチャーとルーが仲良く話し合っていた。
里親・・・そういやルーはまだ6歳・・・
どんな方がルーの里親になるのだろ────
いや、違う・・・
ベライザさんはさっき言ったではないか・・・
『私達全員が異形である』・・・と
ならば一体どういう事だ?
異形に里親など必要があるのか?
ルーだけ特別な実験が開始されるのか?
その時・・・ベライザさんのもう一つの言葉を思い出す・・・
『どの道理性が保てないモノは12歳までには変貌するわ────』
12歳までには異形の姿に変貌する・・・
ルーは理性を保つ事が出来ているのか?
頭の中でそんな疑問が生じるが、瞬時に答えが返ってくる・・・
そんなモノ決まっているじゃないか・・・
ルーが理性を保つ事が出来ているか、出来ていないか・・・
そんなモノは火を見るより明らかだ・・・
ルーは────
「やぁ、私が里親のレオン・・・ルーちゃんよろしく・・・」
ある男がルー達がいる部屋に入ってきた・・・
その時・・・ある悪寒が身体中を駆け巡った・・・
何か・・・来る・・・
何かが顕現される・・・
突如、重く・・・暗い空気が辺りを覆った────
この感じ・・・神経全体から感じ取れる不快感・・・
感じた・・・今さっき頭の中で味わった・・・負のオーラ・・・
そのオーラが・・・そのオーラが・・・
─────いや、違う!そんな筈は無い!
ある訳が無い!!!ある筈が無い!!!
でも、何で!何で!!何で!!!
「・・・人間?・・・人間・・・人間!・・・人間人間人間人間人間人間ニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲン!!!オトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコオトコ!!!」
────ルーから発せられてるの!!!
顔は・・・ルーだ・・・でも・・・でも・・・でも!!!
あれは・・・あれは・・・あれは!もう・・・もう!ルー・・・じゃない!!!
ルーから放たれたオーラがを理解させる・・・
ルーが話す言葉が否応無く理解させる・・・
ガラス越しから目に映るルーの・・・ルーの・・・ルーの身体全体から全てを理解させられる・・・
6歳の身体では・・・既に無い・・・
いや、人の形すら言えないナニカ・・・
肉と骨が剥き出しとなった手足・・・
その手足が異常に伸び、4本で身体を支える・・・
腹も同様にまるで皮膚が抉り取られたように臓器が丸見え・・・そこから肉がボトリボトリと絶えず地に落ちる・・・
唯一ルーの原型を留めている部位・・・それは前述した通り、頭だけだった・・・
頭だけがルーをルーたらしめるモノだった・・・
もう・・・無理────
「背けちゃいけないわ」
「────え」
目を瞑ろうとしたその時、ベライザさんは言った。
「これは目を背けてはいけない事よ・・・これから起きる事を決して目を背けてはいけないのよ。今起きている事、そして、これから起きる事は貴女にも起こり得る事だった・・・貴女は運で『こっち側』にいるのよ」
「・・・運」
「貴女が努力したからこっち側に居るわけではないの・・・何か一つ・・・そう何か一つ選択肢を間違えていたら貴女は『あっち側』にいたの・・・貴女は偶然という奇跡によって貴女でいられたのよ」
偶然という奇跡・・・
その言葉で理解した・・・
私が・・・私自身が・・・理性を失っていたかもしれない
私自身が『ああなっていた』かもしれない・・・
そう考える・・・すると、自然に私は前を向いていた・・・
「そう、これはせめてもの贖罪なのよ。ルーの・・・先にああなったモノ・・・そして、これからああなるモノへの贖罪なのよ・・・」
「ニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲン・・・・・・ニンゲンンンンンンンンンン!!!」
ルーが・・・いや、ルーでないナニカがレオンという男に襲いかかる・・・
が─────
ブチン
一瞬だ・・・一瞬だった・・・
一瞬でルーの頭が飛んだ・・・
頭を亡くしたナニカは糸が切れた人形の様に生気を失い倒れた。
「あ────」
その時見たルーの顔・・・私は一生忘れはしないだろう・・・
ルーは・・・ルーの顔は・・・
笑っていた・・・
「・・・・・・」
「・・・お疲れ様。今日はもう良いわ、ゆっくり休みなさい。明日から忙しくなるからね」
「・・・はい・・・あの・・・明日から何を?」
「詳しくは言えないわ・・・まぁ、一つ言えるとしたら・・・『殺戮者』になる・・・かしらね」
「・・・殺・・・戮・・・者」
──────
────
──
次の日・・・私は昼前に起きた・・・
昨夜の光景が頭から離れず、夜中々眠れなかったから・・・
明日がこんなに憂鬱になるのは初めての事・・・寝不足気味この上ない・・・
しかし、気だるい身体を無理矢理起こし、私はある場所に向かっている。
何でもベライザさんが昼に本館の地下に来いとの事・・・
今、私はエレベーターに乗り、その地下へと向かっているのだ。
何しに行くのだろう・・・地下に・・・そういや、昨日ベライザさんが何か言ってたな・・・
確か・・・『殺戮者』とかだっけ?
ピンポン─────
そんな事を考えていると、到着した様だ。
ドアが開────
その者が視界に入った途端、身体が硬直した・・・
昨日の・・・ルーから放たれたオーラよりも更にドス黒いオーラ・・・
身体中からとんでもない警告音が鳴り響いているのを感じ取る・・・逃げろ!と神経が伝えてくる・・・
「グッドタイミングで来たわね。紹介するわ、彼女の名前は『ベラ』・・・彼女が今回の主役と言っても良い・・・察しが良いアザートさんなら分かる筈だけど改めて言うわ。彼女が今回のクーデターをブチ壊す殺戮者よ」
ベライザさんが何か言っているようだが、今の私には何も耳に入らない・・・
ただただ眼前にいる黒いコートの男に恐怖を感じていた・・・
視認しただけで分かる・・・この男は・・・
悪魔だ─────
体調不良のため今日の投稿は見送らさせていただきます。
次回投稿は早くて日曜日、それか月火のどちらかになります。
お待ちになって下さった皆様には大変申し訳ございません。
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