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第107話 語りかける膿(ベラ視点)


「───── 優秀な貴女に真実を告げに来たわ・・・この学園の真実を・・・」


「この学園の・・・真実?」


「えぇ、この学園・・・CaReUeハウス学校は研究所・・・ある存在を研究する為の場所です」


ある存在を研究する為の場所・・・?どういう事?意味が分からない?


「・・・何を研究しているんですか?」


「異形よ」









































「は?」


この人・・・ベライザさんの言っている事に私は直ぐには理解出来なかった。


異形・・・を研究している?一体何を言っているんだ?


異形・・・恐らく異形者の事を言っているのだろう・・・


でも、異形者なんて私が生きてきた14年間で一度も見た事が無い・・・


異形者なんている訳が無─────


その瞬間・・・私がそう考えた次の瞬間・・・ある思考が私の脳内を覆った。


とてつもない『考え』が私の脳内を駆け巡った。


いや・・・そんな事は無い・・・そんな事・・・あるはずが無い・・・


だって・・・そんな事があれば・・・根本から・・・私の人生が・・・覆ってしまうから・・・


「な・・・何を・・・言っているんですか?異形者・・・なんて私は・・・見た事ないですよ」


「あら?私は異形者・・・なんて一言も言ってはいないわ。異形者なんてこの学園にはいないわよ」


え?・・・いない?


異形者はいない・・・ベライザさんの言葉に私は安堵した。


良かった・・・私の考えが外れてくれた


私の考え・・・それは『家族の誰かが異形者であったという事』


しかし、ベライザさんは異形者はいないと言った・・・本当に良かっ────


「異形者はいないわ・・・異形がいるのよ」









































「い・・・異・・・形?」


一体この人は何を言っているんだ?


異形者はいないけど、異形がいる?


「異形者と異形は根本的に違うのよ。異形者は人間が人外に変貌した姿の総称・・・異形は異形者から産まれたナニカの総称・・・さて、これで私が何を言いたいか分かったかしら?」


『異形者は人間が人外に変貌した姿の総称・・・異形は異形者から産まれたナニカの総称・・・』


「私達の家族の誰かが異形・・・つまり、人間ではないナニカ・・・そして、私が呼び出されたという事は・・・私が・・・その・・・異形という訳ですか・・・」


そうだ・・・何故わざわざルーとG・ティーチャーとは別れたのか・・・


決まってる、私が異形だからだ・・・


今思えば思い当たる節は幾つもあった。


私だけが妙に優秀過ぎた・・・


テストではいつもどの教科も満点・・・


私は分からなかった・・・何故満点を家族の皆んなが取れないかを・・・


特に道徳テストだ。


あんなモノは満点をとって当たり前の問題ばかりが出題されているんだ。


しかし、皆は100点ではない・・・


私以外に100点を取るものはメイ、ナイ、スミヤの3人のみ・・・


そんな3人も他の運動と知能は100点ではない。


私が・・・私だけがおかしいのだ・・・


『家族の誰かが異形者であったという事』


とんだ馬鹿な考えだ・・・私が異形であるという可能性も入れないなんて・・・


いや、無意識に見て見ぬふりをしていたのであろう・・・なんて愚かなんだ・・・家族を・・・疑うなんて・・・


「・・・で、どうするんですか?」


「はい?」


「『はい?』って・・・私が異形なのでしょう?これから何をされるんですか?やっぱり生体実験ですか?良いですよ。私が死んで、それで家族達が平和に暮らせる毎日を送れる手助けになるのなら・・・私は良いです」


覚悟は決まった・・・怖くない・・・と言えば嘘になる・・・


でも、私が実験に協力して異形の研究が少しでも進むのならば・・・平和に少しでも近づくのなら・・・私は喜んで死ねる・・・


私は軽く目を閉じ覚悟を決めて、ベライザのことを見た・・・しかし、目の前のベライザは呆れたような顔をしている。


「あーーー・・・何か勘違いしてないかしら?確かに貴女は異形だけど、別に貴女を生体実験的な事をしようとかそんな事はしないわよ」


「え?そうなんですか?・・・って、サラッと私を異形だって教えるんですね・・・そっか、やっぱり私は異形なのか・・・」


予想していたとはいえ、だいぶくるものがあるな・・・うん、私は人間じゃなかったのか・・・


少しばかり感傷に浸っていた・・・しかし、次の言葉が私の心をかき乱した────


「それに貴女だけが異形の訳でもないし・・・」









































「え?」


予想外の言葉がベライザさんの口から漏れる・・・


私だけが・・・異形・・・ではない?


「え・・・他に・・・異形・・・が・・・いるんですか?」


「他にも何もCaReUeハウス学校に住む子達は皆んなある異形者から産まれた異形よ」









































え?・・・あ?・・・え?


『CaReUeハウス学校に住む子達は皆んなある異形者から産まれた異形よ』


『皆んなある異形者から産まれた異形よ』


『皆んな異形よ』


『異形よ』


頭の中でその言葉が何度もこだまする・・・


は?・・・異形?・・・私だけでなく・・・私達家族全員が・・・異形?


「う・・・うそ」


「嘘じゃないわよ。貴女だっておかしいとは思わなかったかしら?特に道徳のテスト・・・あんな簡単な問題・・・普通の常識を持っていれば100点以外取れる筈が無いのに皆んな取れてない事について・・・」


「あ・・・」


私が先程私が異形たる由縁に挙げたモノ・・・


「皆んなが100点を取れない理由・・・それは簡単よ、他の皆んなが異形の心を持っているから。人間の常識なんて彼等には通じないわ」


「え・・・じゃあ・・・何で?・・・何で私は満点を・・・」


「貴女が人間の心があるからよ。異形よりも強い人間の心を持っているからよ」


・・・私が・・・人間の心を・・・持っているから・・・


私がおかしいのではなく・・・家族の方がおかしかった・・・


その瞬間・・・私の心に・・・わだかまりが消えていくのを感じた・・・


何で・・・?何で・・・今、私は少し気分が良くなったんだ?


何で私は・・・『いい気味だ』そう感じた?


────皆んなお前の事をバケモノと思ってたからだ


違う!そんな事皆んな思わない!!!


────皆んな陰でお前の悪口を言っていた


違う!そんな事皆んな言わない!!!


────皆んなお前の事を恐れていた


違う!そんな事は・・・ない・・・


────ならば何故お前は歓喜した?


歓・・・喜?


────何故皆んなが異形だと分かった瞬間、お前は喜んだ?


よ・・・喜んで・・・ない


────いや、お前は喜びを感じた・・・今までお前の事を陰でバケモノと罵っていた奴等自身の方がバケモノである事実に・・・


うるさい・・・うるさい・・・うるさい!!!


何だ何だ!!!・・・さっきから私の頭の中で語りかけてくる奴は!!!


頭の中に浮かぶは赤黒い・・・膿・・・語りかけてくるは・・・膿・・・笑みを浮かぶ・・・膿・・・


何も知らない・・・お前が・・・私の家族の事を喋るな!!!・・・知ったような口を聞くなぁぁぁぁぁ!!!


「ラ────ベラ────ベラ!!!」


─────っは!


「ベラ!!どうしたの!?いきなり倒れ込んで・・・何かあったの!?」


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・いや、大丈夫です」


気が付くと私は地面に膝を付いていた・・・


滝のように流れ込む汗が私の心境を表す。


何だ・・・何だったんだ・・・アレは?


夢・・・ではないあの感覚・・・まるで心の中を見透かされているようなあの感覚は・・・


まだ脈拍が速い・・・未だにあの声が耳に残る・・・


・・・大丈夫・・・大丈夫・・・私は大丈夫・・・私は嫌われてなんか・・・無い・・・


「本当に大丈夫?何処で少し休む?」


「大丈夫です・・・ちょっと、嫌な事思い出しただけです。話・・・まだでしたよね?続けて下さい」


「・・・・・・分かったわ。じゃあ、もう直ぐ時間だわ。ついてきて、貴女達の・・・異形の・・・本当の姿を見せるわ」


「本当の・・・姿?」


ベライザさんはそう言うと、奥へと歩いて行った・・・


次回更新は今週の金曜日予定です。

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ありがとうございます!

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