第106話 卒業したその夜(ベラ視点)
遂に物語の点と点が繋がる・・・
「元気でね!ルー」
「ベラお姉ちゃん、元気でね〜」
「お手紙書いてね〜!!!」
家族皆んなが私とルーにお別れを言う。
今日は私にとってとても楽しみである日であると共にとても悲しい日である・・・私がこのCaReUeハウス学校を卒業する日なのだ。
しかし、私はこの日・・・否応なく分からさせられた・・・
私が知る現実は全て虚構であると─────
* * *
「────G・ティーチャー、どこに向かっているんですか?」
「フフフ、着いてからの秘密よ」
私は質問を投げかけるも、G・ティーチャーは笑いながらはぐらかす。
皆んなと別れてから約5分が経過し、今は校舎の周りにある森の中を歩いている・・・
そして、今しがた前方に柵が見えてきた。
これはCaReUeハウス学校を覆っている柵・・・
この柵より向こう側には行ってはいけないと度々G・ティーチャーが言っていた。
私はこの奥に行った事はない・・・私は
「柵が見えてきたけど、この先通って良いの?G・ティーチャー」
ルーが声を震えながらそう呟く。
ルーは怖がっている・・・当たり前だ、いつものこの時間なら校舎で皆んなと談笑しているのだ。
夜で歩いたりなんかはルーはした事がない・・・ましてや、森の中・・・いくら近くに私やG・ティーチャーがいるからといっても怖いに決まってる。
「目的地がこの奥にあるのよ。それにそんなに怖がらなくても何も出ないわよ。もしも何か出たとしても私とベラが貴女を守るわ・・・そうでしょ?ベラ」
「えぇ、そうよ。G・ティーチャーの言う通り、私が守るわ」
私がそう言うと、『ほんとぉ?ならだいじょうぶだねぇ!』そう言ってルーの顔から強張りが消えた。
・・・良いわね、やっぱり小さな女の子の屈託ない無邪気な笑顔は・・・ほっこりする
メイやナイ、スミヤがそんな顔をしようものなら不気味過ぎて背筋が凍るわ・・・やっぱりこれくらいの歳の子が可愛いわね。
・・・と、そんなふざけたこと考えてる場合じゃなかった。G・ティーチャーが先程放った言葉の方に要点を置かなきゃ。
『目的地はこの柵の奥・・・』
G・ティーチャーは確かこう言った・・・
さて、私はこの柵の奥に行った事は無いと言ったが、何があるかは知っている・・・
それは何故か・・・この柵の奥に内緒で入った馬鹿達が教えてくれたからだ。
その馬鹿達とは先程も話したメイ、ナイ、スミヤの3人だ。
彼等は3人とも私よりも2歳歳下の12歳・・・3人とも私に次ぐこのCaReUeハウス学校の優秀な子だ。
しかし、彼等は好奇心が旺盛過ぎるのだ(特にメイ)。
いつも校内を騒がし、起こる事件の約8割が彼等の仕業と言っても過言でも無いほどのわんぱくな子達だ(特にメイ)。
そんな彼等がある日、突然森にある柵の奥に行きたいなど言い出した。
もう一度言おう・・・彼等は優秀なのだ・・・私に次いで・・・しかし、彼等はネジが1本か2本・・・いや十本単位かもしれないが、外れているのだ(特にメイ)・・・
故に彼等にとってルールは守る為ではなく破る為と言わんばかりな行動をとる(特にメイ)。
今回の柵の奥が見たいと言い出すのも予想の範疇であった。
しかも、彼等は一度言い出した事はてこでも変えない、故に説得は無駄・・・私は手を貸すしか無いのだ。
・・・はぁ〜、最年長って辛いわ・・・でも、そんな日も今日で終わり・・・今度は彼等が最年長、私の辛さ・・・とくと味合うが良いわ・・・っていうか、味わいなさい!・・・と、話が逸れてしまった、話を戻そう。
彼等が言うには柵の奥には軽く10mは超える壁が存在するという・・・
まるで私達を守っているかのような高い高い壁が学校を囲っているのだとか・・・しかし、一箇所だけ異質な場所があるというのだ。
城────
彼等が言うには城があったらしい・・・
古い古城のようなモノが佇んでいたらしい・・・
遂に馬鹿になったか?
私は思った・・・
城が立ってる訳ないでしょ?だってメイ達が見たと言う方向に視線を移しても城は見えないのだから・・・
しかし、彼等は確かに見たと言い張った・・・その目には曇りなど一つもない・・・故に悲しいかな、彼等は集団幻覚でも見たのだろう・・・一度検査に行った方が良いわね、頭の・・・
そんな事を思い出しながら私とルーはG・ティーチャーに案内され、柵の奥へと入っていった。
そして、そこから歩く事約5分が経過した・・・目線の奥には・・・
城があった・・・
「はへ?」
思わず意味の分からない声が出てしまった・・・
それもその筈だ・・・先程まで・・・ほんの5秒前まで城など視界には映らなかったのだ。
いきなり現れたのだ・・・
いつ現れた!?幻覚か!?私は幻覚を見ているのか!?
私の頭は戸惑いでいっぱいであった・・・
「すっごぉぉぉい!!!大きいお城だぁ!!!」
「フフフ、凄い大きい城でしょう?」
「でも何で!?何でお城がいきなり現れたの!?」
ルーが確信に迫る質問した。
─────これはナイスだ!ナイスファインプレーだ!ルー!!!
私がそう聞いても良かったのだが、恐らく私が聞くとはぐらかされる危険性が大きくありそうだったからだ・・・何故はぐらかされるのかは分からないが、そう肌で感じたのだ。
事情を知らないルーは本当になぜ見えなかったのかを聞きたいだけで答えてくれるかもしれない・・・
「フフフ、それは秘密よ!」
秘密かい!!!言わないのかい!!!
私は心の中でそう叫んだ・・・
「・・・それにしても、ベラのあの表情から見るにこの城の存在は知らなかった・・・いや、正確には信用してなかったと言った方がいいのかしらね」
え?今何か言ったような?
瞬時にG・ティーチャーの顔を見るも、表情が読み取れない。
何だ?何を考えているんだ、G・ティーチャーは・・・
「さっ、そんなことより2人とも中に入って!案内するわ」
そう言ってG・ティーチャーは城の中へと入って行く・・・
そんなG・ティーチャーを見ながら私は後に続いて行った。
──────
────
──
古いな・・・
城の中を見た私の最初の感想はそれだ・・・
中はとても静かで人の気配は一切感じられない。
カツンカツンと大理石を歩む靴の音だけが鳴り響くだけの空間・・・
電球などは点いておらず、1mおきに蝋燭が並べてあるだけの空間・・・
そんな場所をある程度進むと、エレベーターが見え、私達はそれに乗った。
「さて、これで上がって行くんだけど、ルーと私は2階で降りるけど、ベラは5階に行っててくれないかしら?」
「どうして?」
「2階にルーの里親が来てるからよ。私もついて行かないと・・・ほらルー、緊張しちゃうじゃない?」
まー確かに、いきなり知らない人と仲良くなるのは難しいと思う・・・
「分かった・・・じゃあ、ベラ!新しい家族と仲良くね」
「うん!ベラお姉ちゃんも!!!」
そんな会話がありながらもエレベーターは2階に着き、G・ティーチャーとルーは降りて行った。
─────今、私は1人・・・
う〜ん・・・本当に1人の空間なんて今まで暮らしてきてあっただろうか?
私は背伸びをしながらそんな事を考える。
いつもいつも家族達に囲まれて騒がしい毎日だった・・・鬱陶しいと思った事は一度も無い・・・とても楽しい日々であった、今思い出しても自然と頬が緩む・・・
でも・・・まぁ・・・
まぁ・・・たまにはこういう1人で静寂を感じる時間もありね・・・
ピンポン────
そんな事を考えていると5階に着いたようだ・・・
ドアが開く・・・私は降りようとした時・・・目の前に女性がいた。
とても綺麗な女性だった・・・
こんな事言ったらG・ティーチャーに怒られるかもしれないが、G・ティーチャーよりも美しい女性・・・
「やぁ、ベラ・・・話はG・ティーチャーから聞いてるわ。ハウス卒業おめでとう・・・私の名前はベライザ・・・優秀な貴女に真実を告げに来たわ・・・この学園の真実を─────」
次回投稿は8月2日くらいになります。
本当は来週の金曜日に投稿出来たら良いのですが、恐らく無理だと思うので・・・
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