第100話 母なる膿
100話突入!
加筆&修正をしました!
「────おい、地下なんか降りて一体何処に向かっている?」
「そう慌てないで下さい、すぐに着きますよ」
「そうだニャ、慌てない慌てない」
「そうですね」
アザートの不満の声とは裏腹にベライザ、ニャルラ、ヨグの3人は余裕ある雰囲気でアザートを宥める。
『口で説明するよりも見た方が早いですね、地下に行きましょう』
ベライザはそう言うや否や、アザート達を地下へと案内する。
数分前にベライザがいる28階に着いたというのに直ぐに地下に移動する非効率さに内心苛立ちを覚えるアザート・・・
そんなアザートの考えを他所にベライザはある質問を投げかけた。
「時にアザートさん、異形者の定義は知ってますか?」
「定義か・・・あらゆる負の感情が一つとなった時に変貌するバケモノの姿の総称・・・ではないのか?」
「流石はニャルラさんに認められている方ですね、ほぼ模範回答です。ですが、やや不十分ですね」
ベライザは称えるが、アザートの回答にはやや不備があるようだ。
「何が言いたい?」
「誰が変貌するんですか?」
「誰って・・・人間に決まっているだろう?」
「そう!その通りです。異形者の定義を語るに於いて重要なのは『人間が変貌する』という点なんです!」
誇らし気に答えるベライザとは裏腹にアザートは意味が分からないという表現をする。
「人間が変貌する・・・って、では何か?他の動物も変貌するのか?」
「ほーう、良いね!猫とか犬とかも異形化するのかニャ〜!これがほんとの獣型つってね!」
「えーーーニャルラさんは無視するとして、異形化するのは人間だけですよ。まぁ、私の言い方が不味かったのも分かりますが・・・」
「そうか・・・では何なんだ?」
「フッ、人間がバケモノに変貌した姿が異形者と呼ぶ・・・ならば、その異形者から産まれてくる者は?」
「─────ッ!?まさか!?」
何かに気付き、声をあげるアザートと同時にエレベーターは地下へと到着した。
ドアは開くが外は真っ暗闇で何も無────
いや、違う・・・
とてつもない邪気を放つナニカの存在・・・
辺りが暗く何も見えない・・・辛うじて視認出来るのはネオンのように深く深く赤黒く光っている事のみ・・・
だが、肌に直接感じさせるオーラがアザートの全神経を強張らし、警戒させる。
そして、アザートは邪眼*を発動させ、オーラの放つ元凶を視界に入れ─────
※邪眼・・・あらゆる遮蔽物を通り抜け目的の対象を視認する事が出来る邪神型特有の能力
「何だ・・・・・・あれは?」
パチッ
瞬間地下に光が宿る・・・ベライザが点けた。
ナニカの存在が明らかになった─────
赤・・・そのナニカはやはり赤であった・・・体長は約8m程ではあろうか・・・深い深い赤黒を帯びている─────
姿を例えるならジュクジュクしている膿・・・まるで液が吹き出してきそうな膿の集合体─────
錯覚か?己の意思か?膿の集合体が人を模倣する形をとっている─────
しかし、それは到底人間とは呼べない、獣とも呼べない・・・事葉に言い表せれないナニカ─────
まるで非現実な世界がこの地下を覆っているのだ。
「眠っている・・・のか?」
「えぇ、眠らせています。っていうか、起きたら大変な事になりますから・・・」
アザートの意識無い小さな呟きに笑みを浮かべながら答えるベライザ。
「一体何なんだ・・・コイツは?」
「異形者ですよ・・・彼女は・・・でも、唯の異形者ではないです。分かりますか?」
「・・・無生物型か?」
「流石・・・人間とも獣とも呼べない、まさにその姿は言葉では言い表せない無の異形・・・無生物型です」
無生物型・・・その存在を見た者は限りなく0に近い異形者。
単純にレアだから・・・ではない。
確かに無生物型は全ての異形者のtypeの中でも稀なtypeである。
そんな無生物型に出会うなんてまず無い・・・訳ではない。
人々は何度もその姿を目撃しているのだ・・・しかし、生き残りは0に近い・・・
そう、全員殺されるのだ・・・いや、殺された事実さえも感じさせない・・・視認した事実が消え去る。
故に人々・・・特にヨーロッパ方面の人々には語り継がれている・・・
『無生物型は厄災だ・・・すべからく死を受け入る事』・・・と
「何故、無生物型が此処に?」
「この無生物型・・・『母なる膿』は約55年前に産まれた異形者で、3番目の無生物型。当時は数万人もの死者を出して人類滅亡かと思われてたけど─────」
「そこに現れし救世主が私なのだよ!」
「・・・まぁ間違っては無いんですけど、当時はセフィラさん、ニャルラさん、オルフィスさんのトリオ時代でしたよね?何自分だけの手柄みたいに言ってるんですか?」
「いや、トリオ時代とか言わないでくれる!?あれは仕方なく組んでただけで実際は私とセフィラのコンビだったからニャ!オルフィスの野郎は勝手に付いて来ただけだから!」
「面白いですね、オルフィスさんも全く同じ事言ってましたよ。『ニャルラが勝手に付いて来ただけだ』と」
「あんやろー!!!やっぱ、次会ったらブッ殺す!!!」
その言葉に一度は沈静化していたニャルラの怒りが再度膨れ上がった。
「トリオって・・・コイツに協調性なんかあるのか?」
「アザート君には絶対に言われたか無いんだけど!?」
「まぁ、お世辞にも協調性があるとは言えませんでしたね。でも、あのトリオは長いアルカディア史の中でも最強と呼ばれてますから。トップ3が揃い踏みのトリオなんて完全に戦力の分散出来てなかったですけど・・・」
ベライザは物思いに耽るように話すが、アザートは話を聞いてある疑問が頭に浮かぶ。
「まるで直接見たかのような発言だな。お前一体何歳だ?」
「あら?私79歳よ」
「あら?聞こえなかったかしら?私来年で80歳なの」
そう再度言い放つベライザにアザートは困惑の顔を見せる。
「・・・どういう事だ?お前、人間・・・じゃないのか?」
「失礼ね、私は純粋な人間よ・・・って、知らないのね、アルカディアの事も。アルカディアの幹部はね、ある施術を行うのよ」
「ある・・・施術?」
「一言で言うなら・・・不老の施術よ」
次回投稿は来週の金曜日になります。
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