第95話 【速報】バリアントと呼ばれる人殺し集団について
『─────さて、次のニュースですが・・・皆様は「バリアント」と呼ばれる集団をご存知でしょうか?彼等はニューヨーク州に存在すると言われている異形者を駆逐する組織です』
『民ハンじゃないんですか?』
『いいえ、確かにここまで聞くと唯の民間ハンターと何等変わりないと思われてしまいますが、彼等の正体は何と異形者なんです!』
『えぇぇぇぇぇ!?』
『マジでぇぇぇぇ!?』
『何だよそいつ等!?』
『どういうこと!?』
司会者やコメンテーター含め、数多くの人が(随分とわざとらしい)驚きのリアクションをあげる。
『異形者が営む会社・・・怪しい匂いがプンプンしますね』
『はい!まさにその通りです!!彼等、人を殺してるんです!!!』
『えぇぇぇぇぇぇ!?』
『マジかよ!!』
『最低だな!!』
『人殺し集団って事かよ!』
またもや(わざとらしい)リアクションをとる芸能人達・・・
『その話本当なんですか!?』
『はい、この映像を見て下さい』
そう言って司会者が見せたある映像・・・それに写っているのは黒いコートを身に纏う若い男と16、7位の金髪少女、その2人が歩いている映像だった。
『・・・これがなんなんですか?』
『はい、実はこの映像の10数分後・・・この少女の遺体が発見されたんです』
『え?』
『そして、何よりもこの男・・・バリアントの職員なんですよ』
『嘘・・・だろ』
これには皆が絶句した・・・演技かもしれないが・・・
『そして、この男はまだ捕まってないみたいなんです』
『警察・・・いや、協会は何をやっているんだ!!!』
『早く、この男を捕まえろ!!!』
『即刻全員駆逐されろ!!!』
『異形者なんてやはり我々人間の害悪でしかないのだ!!!』
出演者が全員ヒートアップ状態となって皆が言いたい放題になっていき、流石に不味いと思ったのか・・・
『プツン・・・・ピーピーピーしばらくお待ち下さい』
♫〜♫〜♫〜
優雅な音楽と共に映像が切り替わった。
「・・・さてと、どうしようか?」
「どうしましょう?」
「どうでも良いのでは?」
テレビが切り替わり、数秒後・・・ニャルラ達は声を漏らす。
しかし、アザートとの言葉によってニャルラの思考のダムが決壊する。
「どうでも良い?んな訳あるか・・・んな訳あるか!んな訳あるかぁぁぁ!!!どうすんの!!ねぇ、これどうすんの!私達が悪みたいに取り上げられてるんだけど!!!」
「まぁ、世間一般的に見たら僕達悪なんですからしょーがない所もありますけどね。作戦も失敗でしたしね」
「作戦?なんか企てていたのか?」
アザートがヨグに問いかける。
「助けたじゃん?自殺しそうだった青年。彼を助けて好感度爆上げ待ったなし作戦・・・良い作戦だと思ったんだけどニャ〜」
「フッ、大失敗だったな・・・作戦としては、だ。だから、こっちに槍を向けるのは止めろ」
「大体誰のせいでこうなったと思ってんの!!!」
ニャルラが槍を持ちながら大声を上げた。
「・・・誰のせいだ?お前か?何かやったのか、男女」
「何で僕なんですか!?どー考えてもアザートさんでしょ!?」
ヨグが驚きと戸惑いを感じながらアザートに反論する。
当たり前だ・・・ヨグは何一つ問題行動は起こしていないのだから・・・というか、本当に何もしてない。
「そうだニャ!テレビでも言ってたけど、金髪少女ってフレイヤの事だよね!」
「フレイヤ?・・・ああ、あの捨て駒女か」
「アザートさん、その覚え方はちょっと・・・」
フレイヤ・・・それは以前アザートを殺そうとしたアークとルイの仲間?奴隷?だった女。
詳しくは7章の第70〜72話参照
「何故バレたのだろうな?人気のいない裏路地で殺した筈だが・・・」
「そりゃ、殺す数分前は普通に人通りのいい場所通ってたからね!そりゃ、カメラにも映るよ!殺すのがダメとかじゃなくて、やっぱり殺し方に問題があったんだよ!!!」
「まぁ・・・ほぼ晒し首・・・でしたからね・・・街灯に・・・ズボッ!って・・・瞳孔ギンギンに開いてたし・・・血だらけだし・・・」
ヨグはあの光景を思い出し、アザートの事を少し引いた。
ヨグが少し引く・・・1年前のヨグではドン引きしていたが、今や少しだ。
それは何故か?それはこの1年共に過ごした事である事が分かったからだ。
アザートは別に意味も無く残虐な行為をしている訳ではないという事だ。
前述した晒し首にも意味があっての行動だ。
晒し首にする事でメディアが世間に流し、それを媒介として敵側に暗に情報を与えた・・・
『次は貴様がこうなる番だ』
この情報を見た者は深層心理に否応なく刻み込まれる・・・恐怖の感情を・・・
これがアザートなりの先手なのだ。
アザートは知っているのだ・・・恐怖という感情が戦闘において最強の武器である事を・・・
恐怖は戦闘において一瞬の迷いを生じさせる、怯みを生じさせる、正常な思考を妨げる。
これはアザートの戦闘全てに通ずるものなのだ。
・・・まぁ、だからと言って倫理的にどうだ?と言われると何も言えない。
「はぁ、過去の事を振り返っても仕方ないニャ。あれがアザート君の良いところでもあるからね、敵に容赦がないという所がね・・・まぁ、どの道これ以上此処には居られないしね」
「という事は拠点移動ですかね」
「まぁね、ほとぼりが冷めるまで違う国のアジトに行くニャ!これを機にメインアジトを変えても良いしね!」
そう言って、ニャルラは笑いながら世界地図を出した。
「僕はオーストラリアとか良いと思うんですけどね」
「おぉ、良いねぇ!でも、ユーラシア大陸の方も捨てがたいんだよね」
「南極大陸でも良いんじゃないか?」
「ヨグ君、無視だよ、無視無視。アザート君の事は無視しよう無視。ごめんなさいと言っても許してあげないもんね〜」
「ガキかお前は、小学生か」
そんな言い争いが繰り広げられている中・・・
プルルルルルルルルルルル
「ンニャ?電話だ電話だ・・・ハイハイ、こちらバリアントのニャルラですけど」
『よぉ、人殺し集団バリアント。調子はどうだ─────』
ブツン!
「誰からだったんですか?」
「うん?ああ、間違え電話間違え電話。また変なおじさんがかかってきたニャ」
プルルルルルルルルルルルル
また電話がかかってきた。
ブツン!
ニャルラは出たと思えば、すぐさま切った。
「何をしているんだ、お前は?っていうかこの流れは前にもあったぞ」
アザートは不審な目を向けながら問う。
プルルルルルルルルルルルル
間髪入れずにまた電話がかかってくる。
「だぁーーー!!着信拒否してるってのに分かんないのかニャ、お前は!!毎度毎度携帯からじゃなくて固定電話から掛けてきやがって!!!」
ついにニャルラはキレて電話相手に怒鳴った。
『ならば、固定電話を買い換えれば良いだろう?今の電話は番号が出る筈だぞ?』
「うるさいな!大きなお世話だニャ!この電話が気に入ってるんだよ!っていうか何なの!何か用なの!」
電話の相手・・・それは言うまでもなくEF協会の局長・オルフィス=デルノードだ。
『いやいや、テレビ見たぞ?なかなか痛快じゃないか。人殺し集団さんよ』
「ブッ飛ばすよ?本当にブッ飛ばすよ?」
『まぁ、聞けよ?知りたくはないか?誰がお前らの事をメディアに売ったのかを・・・』
「え?・・・まさか黒幕がいるの!?」
黒幕・・・オルフィスのまさかの言葉にニャルラは驚きの声を上げる。
それもそうだ、ニャルラ率いるバリアントは腐っても(?)世界機関だ。
ある程度の不祥事や問題などはもみ消す事は簡単だ。
では何故アザートとフレイヤが一緒に映る映像が出回ってしまっているのか?
リークした黒幕がいる事は必然である。
「一体誰ニャ?」
『俺だよ』
「・・・・・・は?」
『俺だよ、俺。いやぁ、前々から思っていたのだよ、我が国アメリカにお前等は不必要だとな・・・フッ、上手くいって本当に良か────』
ブツン!
「・・・す・・・殺す!絶対にアイツ殺す!ブッ殺してやる!!!」
「ニャルラさん!?落ち着いて!?今殺ったらバリアントの信用が地の底に落ちますよ!」
「元から地の底では?」
「アザートさん、シャラップ!!!」
今のニャルラは一触即発状態だ・・・
何の言葉で爆発するか分からない・・・アザートの軽口も聞き逃せないかもしれない。
そんな緊迫状況下(ヨグだけそう考える)中・・・
プルルルルルルルルルルルル
再び電話が鳴り、しめたと言わんばかりにニャルラは電話取った。
「良いかよく聞けよ!ブッ殺してやるからな!!!」
『・・・・・・え?あの?ニャルラさん?私何かしました?』
「・・・・・・」
『あのぉ?ニャルラさん?どうしたんですか?』
電話口から聞こえてくる声は憎い憎い男の声ではなく、女性の声・・・
ベライザのものであった。
ようやく冷静になったニャルラの思考は1つだ。
やっべー、間違えちった・・・
次回投稿は来週の水曜日になります。
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