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第94話 憎むべきは・・・

10日ぶりの投稿・・・

皆さんお久しぶりです。

まぁ、何はともあれ、新章開幕!

『────速報が入りました!ニューヨークシティの×××××ストリートで「死んでやる」と叫びながらマンションのベランダから飛び降りようとしている男性を住民が通報・・・現場は未だ緊迫した状況が続いており────』













































「・・・×××××ストリートか・・・よし、ヨグ君、アザート君・・・行くよ」


──────


────


──


×××××ストリート


「もう嫌だ!!!こんな世界もう嫌だァァ!!!死んでやる!!!死んでやる!!!」


『やめなさい!!!そんな事しても家族や君の大切な人が悲しむだけだ!!』


男が屋上で叫びながら今にも飛び降りようとしているのを必死で警察は拡声器を持ち、止めているが・・・


説得の言葉が男の地雷を踏んでしまった。


「家族?大切な人?・・・そんなの・・・そんな・・・皆んな殺されたんだよ!!!異形者に!!!」


『な・・・・』


「なんだよ・・・俺が何か悪いことしたのかよ・・・なぁ!!!俺が何か悪いことしたのかよ!!!何で俺がこんな目に遭わなきゃならないんだよ!!!・・・異形者だ!?異形者が全部ぶち壊したんだ!!!」


『それでも・・・それでも君が死んだら亡くなった家族が悲しむ!!!だから、死ぬのはやめるんだ!!!』


諦めることなく説得を続ける警察・・・そして、その辺りを包み込む大勢の野次馬、辺り一帯は大混乱に陥っていた。


「えー、こちら現場です!新情報が入りました!男は異形者に家族を殺されたと話しており、それが今回の騒動の原因だと言うことが分かりました!やはり、異形者は我々人類にとって悪である事は間違い無────」


「はい、ゴメンね〜。ちょっと通してニャ〜。はいはい、そこ邪魔〜通れないよ〜」


突然、テレビカメラの前にピンク髪と黄土髪2人が横切り、そのまま説得する警察官の側まで歩みを進めていく。




「えっ?!?ちょっ!?誰!?」


             「危ないですよ!!」


        「近づいたら男に刺激を与えてしいますから!!!」


   「てか、コイツ等どっかで見たことあるな?」




「良いから良いから、ちょっと通してね!」


「だ、そうです。すいません、通してください」


『─────生きてりゃ良い事があるから死んだらダメだ・・・ってアンタ等誰!?』


「まぁまぁ、落ち着きなよ。私達はここで待機してるだけだからニャ。何にもしない何にもしない。ほら、続きをどうぞニャ〜」


ピンク髪の女は構うなと言わんばかりに手を振った。


そんな2人組を目の前にして辺りの皆、同時に同じ事を頭に浮かぶ・・・


何なんだコイツ等は─────


──────


────


──


「おい、何なんだ!お前等!!!俺を馬鹿にしてんのか!!!とっと消えろ!!!」


「大丈夫!大丈夫!私達()()何もしないから安心して続きをどうぞニャ!」


「続きも何もねーんだよ!!!つーか『今は』って言ったろ!結局邪魔する気満々じゃねーか!!!」


「あっ!?やっべー!今の無し!今の無しの方向でお願いニャ!」


「何が無しの方向だ!!!」


いきなり目の前に現れた謎の2人組(特にピンク髪)の謎行動&謎言い合いで元々ヒートアップしていた頭がさらに燃え上がった。


あの女舐めてやがる!完全に俺の事を舐めてやがる!!!


本当は飛び降りなんて出来っこないだろうと高を括ってやがる!!


・・・あぁ、良いさ!!!やってやる!!!


死んでやる!!!俺はやる時はやる男なんだ!!!


見てろ!!!あの女の目の前に落下して死んでやる!!!


そして、一生消えない傷を負ってしまえ!!!


そう思いながら、ベランダの手すりを握りしめ身体を乗り出そうとする・・・










































しかし・・・










































・・・クッソ!


クッソ!クッソ!クッソ!クッソ!!!


何でだ!!!何で!!!何で身体が動かない!!!


前に体重を傾けるだけで良いんだ!!!


傾けたらもうこの腐った世界から抜け出せるんだ!!!


しかし、思いとは裏腹に身体は動くことはなかった。


何でそれが出来ない!!!


何で!!!何で!!!何で!!!何で!!!


クソ!!!クソ!!!クソ!!!


動け!!!動け!!!動け!!!動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け!!!


思考は身体を動かそうとしている・・・しかし、身体は言う事を聞かず、動かない─────


「どうした?飛ばないのか?」













































「─────ッ!?」


背後からの突然の声に勢いよく振り向く・・・


視線の先にはソファに脚を組んで座る黒いコートに身を包んだ男の存在。


「な・・・何だ、お前!!!どっから入って来た!?いつからそこに居た!?」


「何処からも何も玄関に決まっているではないか?そして、着いたのはつい先程だ」


謎の男は笑みを浮かべながら答える。


何だ!?何なんだこの男!?・・・いや、まさか!?


「お前!!警察だな!!!俺を捕まえようとしているな!!!」


「警察?いや俺は警察ではないな」


「じゃあ、誰なんだ!!!」


「・・・お前が憎んでいる者・・・とでも言おうか」


男はそう口にした・・・不敵な笑みを浮かべながら・・・


俺が・・・憎んでいる者?


俺が・・・憎んで・・・いる・・・者・・・













































あ─────













































次の瞬間、頭にあるモノが浮かんだ・・・


俺が憎んでいる者?・・・そんなの・・・そんな者・・・1人しかいない・・・


「お前・・・異形者か」


「ニィィィィィ」


肯定と言わんばかりの笑みを浮かべる男・・・


それが目に映ると同時に俺は男に詰め寄った。


「お前か!!!お前が殺したのか!!!俺の家族を!!!」


「貴様の家族?悪いが()()貴様及び貴様の家族の事など知らん、今日初めて知った」


「じゃあ何故俺の前に現れた!!!何しに来たんだ!!!」


俺は声を荒げる。


何なんだ・・・この男・・・一体何なんだ!!


「貴様が面白い事を言っていたからな・・・『異形者がぶち壊した』・・・と」


「だから何なんだよ!!!何で俺の家族が異形者に殺されなきゃならないんだよ!!!理不尽だろ!!!」


「確かに理不尽だな・・・それもそうだ、異形者は理不尽な生物だからな。理性も無く、目に映る者全てを殺す・・・いわゆる生物兵器だ」


男は笑いながら答え、さらに続ける。


「だが・・・貴様・・・何か隠している事があるのだろう?本質を隠しているのだろう?」


「・・・何を言ってる?」


「貴様の話からするに家族全員が殺された・・・この家の状況を見るに恐らく此処で殺された・・・違うか?」


「それが・・・どうした?」


俺は瞬間、後退りした・・・


何だ?・・・何か妙だ・・・何だあの目は?


まるで全てを見透かされているようなあの目は何だ?


「先程も言ったが、異形者は理不尽な生物だ・・・目に映る者全てを殺す生物だ・・・理性が無い限り」










































はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・


ダメだ・・・あの日を・・・思い出してしまう・・・ダメだ・・・


「おかしいではないか?理性の無い異形者が何故マンションの4階にあるこの家に入った?見渡せば活きのいい人間等たくさんいるにも関わらず、何故わざわざこの部屋に入った?答えは簡単だ・・・貴様の家族を殺した異形者は理性が存在したのだ」


はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ダメだ・・・気分が悪い・・・吐き気がする・・・


しかし、そんな俺の事などお構い無しに男は喋り続ける・・・真実を・・・


「理性がある異形者が殺すターゲット・・・それは誰か?決まっている・・・自分を異形の姿に変えた奴・・・つまり、復讐の為。そして、それは誰なのか?此処まで言えば分かるな?いや、貴様は分かってるな」


俺が理解している事・・・この男は気付いていた。


「では、逆に異形者は誰だったのか?貴様はこう言った・・・殺されたのは家族と『大切な人』と・・・つまり、貴様の家族に異形化させられ、家族を殺した者・・・それは─────貴様の恋人だ」













































 * * *


思い出すは血塗られたあの日────あの光景────


『ユイ・・・何で・・・』


『ゴメンネ・・・ゴメンネ・・・ゴメン・・・ネ』


醜い姿になって父さん、母さん、妹を食い殺すユイの姿・・・


 * * *




「貴様が本当に憎んでいる者は異形者・・・ではなく、異形化させた貴様の家族だろう?」


俺が・・・もっと・・・もっと早く気付いていればユイは化物何かにならなかったのに・・・


アイツが・・・アイツ等が・・・アイツ等のせいで・・・


何度も絶望した・・・何度も恨んだ・・・何度も悲しんだ・・・しかし、成れなかった。


ユイと同じ異形者には成れなかった・・・


異形者には成れない・・・この意味が俺の胸を刺した。


だから・・・だから・・・俺は・・・


「だから、貴様は死のうとしたのか」


「そうだ・・・それが・・・俺に出来る・・・唯一の償いだから・・・」


「良いぞ」


えっ?


「死ね・・・では、死ね。早く死ね。何をしている?それが償いなのだろう?ならば早く死ね」


男の顔を見た・・・


ゾクッ!


さっきまでの笑みが消えていた・・・


まるで小石を見つめるかの様な目で自分を見ていた。


「・・・あ・・・あぁ・・・あぁ!死んでやるよ!!!」


俺はそう叫ぶと再びベランダに行き、手すりの外に立った・・・後は飛び降りるだけだ。


『───って、おい!何をやってる!!!死んだらダメだ!!!悲しむ者がいるんだぞ!!!死んだらダメだ!!!』


外の警察が何やら叫んでいるが、今の俺には何も聞こえない・・・


もう飛び降りるだけだ・・・そう、飛び降りるだけだ・・・


死ぬ事が・・・ユイにとっての唯一の償いなんだから・・・


だから・・・飛ばなきゃ・・・飛ばなきゃ・・・ならないのに・・・


何で・・・何で!何で飛べない!!


何で・・・いざという時に・・・身体は動かないんだ!!!


何で!!!何で!!!何で!!!何────


「早く飛べ」


バシッ


・・・えっ?


背後からの衝撃を受けた。


瞬間、目の前に青色が広がった・・・


白が何一つない青色が広がった・・・


あぁ・・・これは・・・これは・・・


「あ・・・あ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


落ちていく瞬間・・・ようやく俺は理解した・・・


死にたい、消えたい、そんな事言いながらも心の中ではこう思ってたんだ・・・










































生きたい・・・と─────










































「・・・哀れなヤツだ」


──────


────


──


死んだ・・・のか?俺は・・・


死んだよな・・・だって4階から落ちたんだ・・・死んでるに決まってる・・・


落ちる瞬間・・・あの男に落とされる瞬間・・・俺は後悔した・・・


生きたいと思ってしまった・・・


いや、後悔とかも全て御託だ・・・俺は最初から死にたくなかったんだ・・・


だから、最期の最後まで俺は飛び込めなかったんだ・・・


償いとか言いながら・・・俺は結局自分の命の方が可愛かったんだ・・・


俺は・・・俺は・・・


う・・・うぅぅ・・・俺は最低の男だ・・・


「おーい・・・大丈夫かニャ?」


「え?」


誰かの声が聞こえ、目を開ける。


いや、今気付いた・・・俺、目を開けてなかった・・・


目を開けると、そこにはピンク髪の女の顔が・・・


この女・・・さっきの・・・謎の女・・


よく見ると俺はその女に横抱きされていた。


「助かったのか・・・俺を・・・助けてくれたのか・・・」


「ニャララー!その通り。いや〜、無事で何より何より・・・自分で立てる?」


「は・・・はい・・・」


そう言って俺は地面に足をつけた。


生きてる・・・俺は・・・生きてる・・・


「あ・・・あの・・・ありが────」




「キャァァァァ!!!思い出したァァァ!!!」


    「コイツ等は異形者だぁぁぁ!!!」


          「そうだ!!!思い出した!!!」


「あの人殺し集団のバリアントだぁぁぁ!!!」


  「死にたくない!!!」


         「ギャァァァ!!!殺される!!!」


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


                 「人殺しだ!!!」


「逃げろ!!!」


      「殺されるぅぅぅ!!!」




周囲の人間がいきなり騒ぎ出す・・・


何なんだ・・・コイツ等・・・いきなりうるさくなりやがって・・・


「あちゃー、バレちゃったニャー。行くよ、ヨグ君」


「ま・・・待って下さ────」


立ち去ろうとする女を俺は止めようとした所、女はこちらに振り向き、何かを思い出したような顔た。


「あー、忘れてた忘れてた。君」


「は・・・はい!」


「まぁ、アレだよ、アレ・・・なんか良い事あるよ、生きてりゃ・・・でも、()()無いから」


そう言って、ピンク髪の女は黄土色の人(恐らく異形者)と共に消えていった・・・










































辺りは未だ人々の叫び声が鳴り響く・・・


俺に話しかけてくる奴も来る・・・


しかし、俺はソイツ等の声は届かなかった。


『なんか良い事あるよ、生きてりゃ』


その言葉だけが俺の心に何度も木霊する・・・


・・・もう少しだけ・・・生きてみようかな。


俺は静かに思った────


次回投稿は来週の水曜日になります。

ブクマ登録をしてくれた方、評価をしてくれた方、そして、読んでくれている方、モチベーションに繋がってます、本当に嬉しさと感謝でいっぱいです!

ありがとうございます!

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