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第91話 奥に潜む混沌

「───── 1発でも撃ち抜けば私達の勝ちだよ!皆んな相手の攻撃に気を付けて・・・行くよ!」


「「「「うん!!!」」」」


““ドガガガガガガガガガ!!!””


私の掛け声の直ぐ後、凄まじ銃音が鳴り響く100発を超える弾丸の雨霰・・・


その全ては異形者の頭を目掛け止める事なく吸い込められていく・・・が────


「シィィィィィィャャャャャ!!!」


全てを・・・頭を貫く筈の弾丸全てを鎌のような腕が触手のようにうねりながら弾き返した。


な・・・!?


「はっ!?」


「マジか!?」


「嘘!?」


「バケモノかよ!?いや、バケモノだった!!」


皆んなも驚きの声を上げる・・・


無理もない・・・本来ならば1発は確実に喰らっていたであろう攻撃全てを弾き返されたのだ・・・


あり得ない事象を前にして人間が次にとる行動は決まっている。


硬直だ────


「「「テク!!!」」」


「あっ────」


一瞬の硬直・・・それを見逃すほど敵は甘くなかった。


この瞬間・・・最も距離が近い私ではなく、敵はテクの首を取ろうとしたのだ・・・


そうは・・・そうは・・・そうは・・・そうは・・・そうはさせない!!!


ギィィィィィィィィ!!!


凄まじい金属音が鳴り響く・・・


私の蠢くモノと異形者の鎌との間に煌々と光る火花が舞う。


「「「「メ・・・メイ姉ちゃん!!!」」」」


ギリギリ・・・本当にギリギリの時間だった・・・


が、なんとか間に合った!!!


ぐっ!・・・で・・・でも・・・いっ・・・一撃が・・・重い!!!


ガン!!!


「はぁはぁ!!!」


「メイ姉ちゃん!!!大丈夫!?」


「うん・・・なんとか」


なんとか敵の一撃を逸らす事に成功はしたものの一瞬でも判断が遅れていれば、その一瞬は私を斬り裂いていた・・・それほどの相手だ!


メイは衝撃で少し地に手を着いていたが、すぐさま体勢を立て直す。


敵の攻撃を真正面から受け流すのは無理だ!確実に手数が足りない!


「皆んな!一旦ここは体制を立て直─────」


ゾクッ──────


メイがそう言い終わる瞬間・・・


敵の異形から発せられる禍々しい空気がメイ達を覆い包んだ。


まるでその空気は地獄のモノであるかのようにすら感じさせられるモノだった・・・


覆い包んだ空気に触れたメイ達の身体は強張りを見せる・・・


その一瞬の隙を異形が見逃す道理は持ち合わせている事は決してない!












































ガァァァァァァァァァァン!!!












































「う・・・うぅぅ・・・こっ・・・ここは?」


なんだ・・・今の一撃は・・・一体何が起きたの?


メイの目の前に映るは青空と瓦礫の山々・・・


先程の異形の一撃・・・それはメイ達がいた家を破壊させた一撃だったのだ・・・


怪我は・・・うん?何故かは知らないけど、擦り傷だけで大きな怪我はしてない、骨も折れてそうもない・・・いや、今は自分の事より!


「ラクト!ミフネ!リムリン !テク!皆んな!生きてる!返事して!!!」


メイは大声で家族の名を叫んだ。


「う・・・う〜ん、だっ・・・大丈夫だよ」


「私もなんとか」


「俺もなんとか」


「私も平気」


皆んな各々メイの呼び掛けに応じ、一箇所に集まった。


良かった!皆んな無事で本当に良かった。目立った怪我もしてないみたいだし。


・・・・・・でも、おかしいな。あれほどの一撃だ・・・擦り傷ぐらいで済むとは思えないけど・・・っと、それよりも!


メイは瞬時に周囲を見渡した。


その理由は言うまでもなく、敵の位置を把握するためだ。


しかし、見渡しても敵は見渡らない。


「皆んな気をつけて!どこから攻撃が来るか分からない!皆んなで背中を預けて周囲を観察して!」


「「「「うん!」」」」


メイ達はそう言って、銃や剣を手に持ちながら臨戦態勢を保つ。


何処!?一体何処に行ったの!?


あの大きさだ・・・瞬時に隠れるなんて事は出来ない筈だ・・・一体何処に消えた!!


再度周囲を見渡すも、敵の気配は感じられない・・・


目に映るはまだ破壊されていない家と破壊された家の瓦礫のみ・・・


東西南北、周囲を見渡すが、誰もいな──────


いや・・・!!違う!!しまった!!!


コンマ数秒後、メイが理解する。


まさか!?こんな状況で・・・こんな状況なのに・・・


何で!!!何でもっと早く気付かなかった!!!


奴のいる場所は─────












































『この一瞬で異形は何処に隠れたのか?』


メイ達は懸命に異形の位置を探ろうとしていた・・・


その探り方が荒かったのか?


いや、違う。


例え1週間前から戦闘の訓練を始めたとしても、隠れている者を探るのは『かくれんぼ』といった遊びを興じる子供にとって言わば、自分達のテリトリーと言っても過言ではないだろう。


そして、CaReUeハウス学校の生徒達の一番好きな遊びが『かくれんぼ』なのだ。


先の訓練においてでも、それによって磨かれた才能は遺憾無く発揮されていた。


例を上げるならば、気配を読み取る才能や気配を消す才能といったモノだ。


一瞬の瓦礫の音や影の動き等・・・熟練されたテクニックを前にして、図体のデカい異形が隠れる事など出来るだろうか?


メイ達の敗因は大きく分けて2つ。


1つはやはり敵を舐めていた事だ。


確かに、気配を読み取る才能は素晴らしく、並の相手では直ぐに見つかる・・・しかし、それが通じない相手もいる・・・そう、異形だ。


異形は気配を消す技術は所謂ライオンなどが獲物を仕留める時と同様だ。


命を刈り取る為に自身の気配をシャットダウンするのだ・・・お遊びで手に入れた気配を消すのとでは練度が違う・・・


そして、2つ目・・・コレがメイ達の最大の敗因と言っても良いだろう。


それは・・・帰するに『探し場所が悪かった』これに尽きる。


さっきと言ってる事が違う?


いやいや、違わない。


探し方が悪かったのではない、『探し場所』が悪かったのだ。


まぁ、言い方を変えれば荒かった・・・と言っても差し支えは無いのだが、メイ達の名誉の為に言っておこう。


彼等の探し方は素晴らしかった。


もしも、彼等が探る場所に異形が隠れていたのならば、見つけるのは確実だったのだ。


ならば、何故彼等は発見出来なかったのか?


彼等は隠れる場所を『人間の延長線』において探していたのだ。


そんな意識では見つかる訳もないだろうに・・・


東西南北あらゆる場所を彼等は探した・・・もう探す場所は無い?


いやいや、あるだろう『あと一つ』。


その方向を見れば確実に見つけていた。


赤ん坊だってその方向を見れば1発だ。


何せ初めから異形は全身丸見えの状態なのだから・・・


異形が居たのは─────












































「─────空だ!!!」


メイはそう叫ぶが、時すでに遅し・・・


空に・・・その距離2mまで近づいていた異形と対峙していたメイは意識が飛びそうになる程の身の毛もよだつ空気を喰らう。


それが・・・言い表すのは・・・


「アァァアァァァァアァァァァァ!!!」


メイの叫び声が周囲を覆い尽くす・・・


2本の鎌のような腕がガッシリとメイを掴んだのだ。


さらに、鎌の表面は鋭いギザギザの突起で覆われており、もがけばもがくほど皮膚に突き刺さる。


これはいくら防護服を着ているからと言っても防げる類のものではなかった。


メイは身動きは取れる事もなく、悲鳴を上げるだけと化した。


あ・・・もうダメだ・・・


「「「「メイ姉ちゃん!!!」」」」


ごめん・・・皆んな・・・死─────え?


死を覚悟したその時・・・視線の先には・・・ナイとスミヤ達がいた。


“““ダァァァァァン!!!”””


瞬間・・・計200発を超える銃弾の雨が異形に向け降り注がれた!


「!?!!!!?!??!??!!」


異形にとってこの攻撃はまさに不意をつかれたと言わんばかりだ。


無理もない、先程とは違い明らかに作戦の類などでは無いのだ。


1つ間違えれば仲間を撃ち抜く可能性すらあるこの状況・・・しかし、その可能性を臆する事なく攻撃を与えようとする強い意志が確かにそこにあった。


その時、その瞬間、異形の腕が緩んだ・・・


「「メイ!!!今がチャンスだ!!!いけぇぇぇ!!!」」


ナイとスミヤがそう叫ぶや否や一瞬で腕の拘束から抜け出す。


右手に掲げるは(蠢くモノ)・・・


「これが!私達の!人間の力だぁぁ!!!」


ゾブッ!!!













































斬りつけられた異形の頭は地に落ちた。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ」


5秒が経過する・・・












































10秒が経過する・・・












































30秒が経過する・・・


「か・・・勝った・・・の」


ようやく1人・・・リムリンが声を出す。


異形は頭が切り離され、血がドクドクと流れ出しているのみ。


動き出す気配・・・いや、生気が感じられない・・・つまり・・・つまり・・・


「わ・・・私達の・・・私達の・・・私達の勝利だ!!!」


『うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』


喜びの声が城下町中を囲んだ。


やった・・・勝った!・・・これで私達は自由─────あれ?


グラァ・・・


切り詰めた空気が抜けたせいか、身体に力が入らない。


ヤバ・・・倒れ────


「おっと、大丈夫?メイ」


倒れるすんでのところでナイが受け止めてくれた。


「ナイ・・・ごめん、ありがとう」


「いや、謝るのはこっちだよ。メイにキツイ役回りをしてしまって・・・」


「あぁ、本当だぜ。トドメは俺が刺すつもりだったんだけどな。良いとこ取りやがって」


スミヤが戯けながら答える。


本当、スミヤは変わらないな。さっきまで生死を賭けた闘いをしていたのに・・・


よし、身体のふらつきも大分良くなった。


「ナイ、もう大丈夫だよ。支えてくれてありがとう」


「いやいや、こちらこそ」


「じゃあ、行くか・・・G・ティーチャーの元に」


「うん、行こ────」


ゾクッ────


瞬間、周囲に黒々しいオーラが立ち込み出した・・・


なんだ?おかしい?明らかに空気が変わった


私達は戸惑いを感じていた。


ナニカがおかしいのだ・・・ナニカが・・・


すると・・・


カッカッカッカッカッカッカッカッ


何者かが近づく足音が聞こえ出す。


私達は音のする方向に視線を移そうと身体が動く・・・


しかし、動く最中・・・とんでもない警告音が身体中から聞こえてくるのを感じられた。


前みたいの嘘の警告ではない・・・


本物の・・・本能がこう囁いている・・・


『見てはいけない・・・姿を捉えてはいけない・・・』


・・・こう囁いている。


これからその目に映るであろうナニカから発せられるオーラ・・・嫌だ・・・見たくない!見たくない!誰か助けて・・・


メイは振り返りながらそう叫ぼうとするが、声にはならない。


そして、時すでに遅し・・・身体を止める事は出来ず、近づいて来る者の姿をついぞ捉えてしまっ─────


「な・・・んだ・・・」


視界に入った途端、身体が硬直する・・・


眼前に映し出されるモノを表す言葉・・・簡単だ。


それはまさしく混沌を制す悪魔─────


恐らく次回で8章最終話

メイ達は自由を手にする事が出来るのか?


次回投稿は来週の水曜日になります。

ブクマ登録をしてくれた方、評価をしてくれた方、そして、読んでくれている方、モチベーションに繋がってます、本当に嬉しさと感謝でいっぱいです!

ありがとうございます!

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