"魔神"の『願い』
前回、僕は迷宮から出たあとに"魔神"ルーフィア・ベアトリクスに遭遇し、
彼女の住まう城へ連れてこられた。
犬ことブラックウルフのクロは召使いに撫でられて喜んでいる。
こいつの中身は変態おじさんではなかろうかと疑ってしまう。
「いやぁ、驚いたのう。まさか、"黒神"とやり合ったというのに右腕と右眼を失って生き残るとは、、、」
「何故か逃がされました」
あの男がなぜ僕たちを仕留めきらなかったのか分からない。
あのまま殺すことだって可能だったはずなのに。
「あやつの考えなんぞ、神でもわからぬわ。だが忠告はしておくぞ。次は必ず殺しにかかってくるじゃろう。目を合わせる前にすぐ逃げろ」
「出来るならそうしてますよ」
「確かに、あやつから逃げ切ることは出来んな。そんなお主にいいものをくれてやる」
とルーフィアはいきなり唇を重ねてきた。
息が苦しい、夢にまで見たキスなどではなく。
「ちょ、ルーフィア様っ!!」
そこで気を失った。
目を覚ますとルーフィアは完全に酔っていた。
少し焦点がズレ気持ちが悪くなる。
潰されたはずの右眼があり、右腕も生えている。
「成功したみたいですね。ルーフィア様の"願い"が」
「"願い"?」
「代々"魔神"のみが持つ能力です」
鏡を借り自分の顔を見ると右眼の瞳が赤色になっていた。
「その通りじゃ、げぷっ」
「なぜ僕にこれを?」
「さっき言ったままじゃ、妾はあの"黒神"が苦手なのじゃ。もしまたお主があやつと戦うなら倒して欲しいの思ってのう。勝手なのは承知じゃ」
「いえ、僕も"黒神"をこの手で倒したいですから」
「妾はお主に3つの力を与えた。1つ目はその眼、その眼は神の眼じゃ。未来を見ることが出来る。2つ目はその指輪じゃ、その指輪はお主の傷を自動治癒するが使い過ぎれば壊れる。3つ目は錬金術じゃ、その錬金術はお主が頭で考えたものを生み出すことの出来る力じゃ。なんでも生みだしてくれる訳では無い、命はもちろんのこと、複雑な構造をしているもの、お主が知らぬものは作れぬ」
「さすがにこんなには貰えませんよ」
「何度も言わせるでない。妾が勝手に押し付けておるのじゃ!。そうじゃなぁ、一つだけ妾の願いを叶えてくれんかの?」
頭をバシッと叩かれた。
「ええ、もちろんです」
「種族差別と争いをこの世界からなくしてくれ。それが妾の願いじゃ」
「分かりました。できる限りのことをやります」
「お主のような人間は嫌いではないぞ。愉快で楽しい」
1度見た時の笑顔とは違うそれこそまるで心の底からそう思っているような感じがした。
不思議とその願いを叶えたいと本気でそう思った。