失ったもの
骨→灰へ変更
詠唱を行うために息を整え、狙いを定めるが
簡単には捉えさせてはくれない
「何を考えているのかは大体わかる。わざわざその罠に乗ってやる義理はない。くたばれ、人間」
カインから飛ばされてくる魔術を避け、距離をとる。
「あんたの相手は私よ」
すかさずリリエが剣技を加えるが軽々と避けきる。
まるで未来が見えているかのように。
クロから放たれる【獄焔】も当たらない。
「【人智を超えし力を持たんとする圧政者を封じ、地獄へと落とせ!神封ノ鎖】」
魔方陣から出てきた鎖がカインを縛るが、あっさりと引きちぎられる。
「この程度か、、期待はしていないが心底呆れる。疾く失せろ」
「【世界の理を以って円環する、闇と光は決して交わることなく穿つ、存在を肯定せよ、"光闇ノ雷"】」
最高出力で【光闇ノ雷】をカインへ放った。
「やったの?」
「わかりません」
「く、く、、、くくく、くはははははははははっ!!」
カインの左腕は千切れかけていたが想像以上にダメージを負っていないことが見てわかる。
「う、そ、、、」
「俺をここまで追い詰めたのは人間では貴様が初めてだ。褒めてやる、そして死ね!」
カインは右腕を振り上げ、血が飛び散った。
しかしさその血は自分のものでは無い。
カインのものかと思ったがカインでもないようだ。
恐る恐る目を開けるとそこには心臓を貫かれたメリーが立っていた。
「メリー!?」
「かはっ、、ごぶ、じ、、、で、すか?ユウ、リ、さ、ま」
メリーは血を吐き出しながら声をかけてくる。
「何故ですか!」
「きまって、る、、じゃ、ありません、か、、、ごほっ、、わた、し、、はユウリ、、さまの、、メイ、ド、、」
「メリー、、、」
「そ、ん、、、な、、、、か、お、、、な、さら、ないで、く、だ、、さ、い、、わた、しはほん、も、う、、、で、す」
「僕もメリーと一緒に過ごせて幸せでした」
メリーはニッコリと微笑むと息絶えた。
涙がぽつりと落ちた。
こんなに悲しい思いをしたのはいつ以来だろうか。
この世界に来てからは初めてかもしれない。
そしてこの憎悪も。
「貴方は僕が撃ちます」
「さっきのはもう聞かんぞ、人間」
「【天と地は分かれ、海は流れ山は降り立つ、光と影はたゆたう存在消して交わらず世界に安寧をもたらすだろう、"森羅万象"!】」
その詠唱によって地面に裂け目が生まれる。
「憎しみに乗っ取られでもしたか、人間。それは弱さというものだ。諦めよ、貴様に道はない!」
もう一度【光闇ノ雷】を使おうとするが反動で手が痺れて動かない。
「ここが貴様の墓場のようだ。哀れに死に絶えろ!」
彼の斬撃をまともに食らう。
右腕と右眼に激しい痛みが走り、見ると右腕は斬り落とされ右眼も潰されていた。
「ユウリ!」
リリエが気絶から目を覚まし近寄ってくる。
「うぁ、、、」
傷口を抑え、痛みを堪えるが尋常ではない痛みが来ていまにも気を失いそうだ。
「ふ、まぁ今回はこれで終わりにしてやろう。本来であれば殺しているところだが見逃してやる」
カインはそう言うと去っていった。
メリーの遺体は燃やし灰にし、袋へ詰めた。
自分の傷は布切れで抑え、応急処置を施す。
クロとリリエには深い傷はないらしい。
「私の剣技が通用しなかった」
リリエは落ち込んでいた。
クロもメリーが死んだことで暗かった。
光が微かに見え、そこを抜けると広大な大地が視界に入った。