春大
新しいマネージャーが来てから3日が経った。今日の先輩たちはそわそわしていた。なぜなら、今日は春大の背番号が発表される日だからだ。俺とスギタクも学校が終わったらすぐに部室に行き、ユニホームに着替えてグラウンドに出た。
塚谷:「明日が試合ってことは、今日背番号発表だよね。」
杉本:「そうだな。うちの監督夏大以外は、ほとんどの大会、前日に背番号を配るってねーちゃんが言ってたよ。」
塚谷:「もしかしたら、俺たちも背番号もらえるかも、、」
杉本:「ないだろ。100%ないとは言い切れないけどな」
俺とスギタクは笑いながらお互いを見合った。
練習はいつも通り行われた。まずは、アップをして、次にキャッチボール、ノック、バッティング練習をした。バッティング練習の間俺たちキャッチャーとピッチャーはピッチング練習をしていた。中田の球は少し捕れるようになっていた。入部当初はグローブに当てることもできなかった、スライダーとフォークは必ずグローブに当てられるようになり、30球の投球練習中の各球種1球か2球は捕れるようになっていた。西谷との練習の成果が少しずつ出てきた証拠だ。だが、1週間経ってもピッチング中の中田の違和感は無くなることはなかった。その違和感はピッチングの時だけだったので、鈍感と言われる俺でもなんとなくわかった。おそらく、俺がボールも捕れないくらい下手なのが原因だろう。自分でもわかっているのに、わざわざ傷つくことを中田に聞きに行く勇気は俺にはなかった。
塚谷:(絶対、完璧に捕れるようになって驚かせてやる。)
そう心に誓い俺は今日も中田の球を受けていた。
すべての練習が終わり、俺たちは川口監督のところに集合していた。
監督:「明日から春の大会が始まる。前にも言ったが、夏前の大事な試合だ。負ける気はない。冬からやってきたことを出してこい。」
「「はい!!」」
監督:「今から背番号を配る。名前を呼ばれた人は取りに来い。1番、、、、、」
監督は順番に背番号を配っていった。そして残り最後の一人、20番が発表された。
監督:「20番、小坪」
「「?!?!?!」」
小坪:「はい。」
みんなが驚いて小坪の方を見た。
監督:「以上だ。明日は8:30に集合、少し体を動かしてから球場に向かう。」
監督にあいさつをして、解散になった。
1年生たちは小坪の周りを囲んだ。
杉本:「小坪おめでと!」
武田:「一年代表として暴れて来いよ!」
みんながそれぞれの応援を小坪に送った。
そして小坪は中田の方を見た。
中田:「俺も夏大は背番号取ってやるから待ってろ。」
小坪:「うん。わかってる。」
2人は向き合いながら少しの間沈黙続いき、小坪は荷物を持って先に帰った。
塚本:(同じ一年で小坪は背番号をもらった。)
実力差は自分が一番わかっている。だが、同じ一年が背番号をもらっていることがうれしい反面、悔しい気持ちもあった。
塚本:「西谷!今日もやろうぜ!!」
西谷:「お、おう。」
塚本:(俺も、負けてられない。)
俺と西谷は今日も自主練をして行くことにした。
自主練も終わり、俺と西谷は部室で着替えていた。
塚本:「茨城の春大ってどういう仕組みになってるの?」
西谷:「あっそうか。塚谷は千葉出身だから仕組み知らないのか。」
西谷が茨城の大会の仕組みについて教えてくれた。
西谷:「まず、これは全国共通で大きな大会として、春の大会、夏の大会、秋の大会がある。次にそのやり方だけど、茨城は高校の数が100校以上ある。だから春と秋はいきなり、県大会じゃなくて、4つの地区に分かれて県予選をする。」
塚谷:「4つの地区?」
西谷:「そう。まず俺たちがいるのが県南地区。ここが一番の激戦区になってる。甲子園常連校の上総学園高校や、冨士代高校、鹿炭高校がある。あとは、県西地区、県北地区、県央地区に分かれていて、トーナメントで各地区ベスト4が県大会に進むことができる。」
塚谷:「なるほど。」
西谷:「まぁ、シードなら2回、ノーシードなら3回勝てば県大会に行ける。春の大会が重要な理由は県大会に行けば夏の大会シードを取ることができるから。夏の大会はわかっていると思うけど、シード以外茨城県全体で抽選があるから、シードを取ればいきなり二回戦強豪と当たる確率が減るから勝ちやすいってわけ。」
俺は改めてこの春の大会が重要なのを再認識した。
西谷:「まぁ、俺は自分の出ない試合には興味がないから、勝とうが負けようがどっちでもいいんだよね。応援はしっかりやるけど。」
俺たちは着替え終わり、部室を後にした。
・・・・・・・・・・
次の日俺たちは球場に来ていた。球場は何とも言えない雰囲気に包まれていた。
鳥手一校の試合は第二試合目。前の試合をベンチ外の人たちは見学していた。俺は高校野球を生で見るのが初めてで、選手の動きに見とれていた。
塚谷:(これが高校野球か。当たり前だけど中学生とは全然動きが違う。)
そんなことを思いながら試合を観ていた。一試合目が終わり二試合目の鳥手一校の試合が始まった。相手チームは流咲南高校だ。
試合が始まった。
初回から、うちの攻撃が爆発した。守備でも先発の金田がいい投球をして毎回3人で抑えた。5回終了時点で、10点差がつき一回戦はコールド勝ちをした。先輩たちの攻撃力のすごさを俺は知った。小坪は5番ファーストで出てツーベースを二本と打点は3点で、華々しいデビューを果たした。
塚谷:「今日の試合すごかったな。」
杉本:「次の試合も、その次の試合も勝って県大会進出だ!!」
俺とスギタクは盛り上がっていた。だが、その盛り上がりは一日で終わってしまう。
次の日、相手は昨日俺たちが観戦していた海浦水大高校との試合だ。
この試合は昨日と同じチームと思えないほど、うちの打線が快音を響かせることはなかった。こっちのエラーと相手の強力打線の前に先発に金田は3回で降板。次に出てきたのは3年の右のサイドスローの坂田だ。だが、流れを切ることはできず、7回終了時点で0-9、ルールにより7回7点差以上着いたので鳥手一校は1安打コールド負けとなった。その1安打は小坪の1安打だった。
学校に帰り、すぐにミーティングが行われた。
監督:「今日の試合はなんだ。」
俺たちに緊張が走った。
監督:「野手は投手が打ち取ったあたりをアウトにすることができず、投手はフォアボールでランナーをため、満塁になってから、フォアボールは出すまいと甘く入ったところを長打を打たれ、周りに声もかけず。打撃では長打を打とうと力みまくり、内野ゴロと内野フライの山。結局ヒットを打ったのは小坪の1本。2,3年生は冬の間何をしてきたんだ!!!!!」
監督の迫力に俺は後ずさりをしそうになった。
監督:「特に3年。お前らには時間がない。同じコールドなら1年生を全員出して負けた方がよかった。時間のある一年生はこれから伸びるかもしれないからな。」
監督は一呼吸置き、言い放った。
監督:「3年はもう練習に出てこなくていい。明日からの放課後練習は1,2年生をメインでやる。」
作者から:
春大の詳細を書かずにすみません。夏大を細かく書きたかったので(勝ち続けるのかすぐ負けるのかはお楽しみでw)、春大はすぐに終わらせました。これからも砦のカナメの応援をよろしくお願いします。




