全国レベル③
俺は神山さんの言葉に驚いた。たしかに経験をしてはいるが、一年以上前の話だ。もともと俺は小学校から、中二の夏までキャッチャーだった。しかし、チームの都合上サードになってからは、サードしかやってこなかった。
神山:「わかったな。」
西谷:「待ってください。」
神山:「なんだ。」
西谷:「俺はピッチャーです。中学の頃は、バッテリー交換としてキャッチャーをやっていました。ですが、ずっとエースナンバーをつけてやってきました。俺はピッチャー以外やりません。」
まわりにいた一年はその発言に驚いた。
塚谷:(まだ練習始まって1日目なのによくコーチにそんなこと言えるな。)
神山:「わかった。だが、今日はキャッチャーもやってもらう。わかったな。」
西谷:「、、、、、わかりました。」
神山は部屋から出ていった。
中田:「お前すごいな。いきなりあんなこと言って。」
西谷:「いや、俺ピッチャーのほうがやりたいし。」
中田:「まぁでも、今の発言でたて突いたと思われて、ピッチャーもやらせてもらえなかったりして。」
中田は笑いながら西谷のほうを見た。
西谷:「いや、それはさすがにないだろう。そんなことにならないで欲しい、、、、」
西谷の表情はそんなに変えなかったが、中田の発言で少し焦った様子だった。
・・・・・・・・・
1時になり、午後の練習が始まった。午後は内野、外野、バッテリーに分かれての練習だ。俺と西谷はバッテリーの練習に加わることになった。バッテリーは川口監督のところに集まっていた。
監督:「お前たちは、ピッチング練習をしてもらう。2,3年生はいつも通りにやってくれ。俺は一年生を見る。1年生は1年生同士で組んでくれ。」
そういわれると、2,3年生はブルペンに向かった。一年生は少し離れたところにあるもう一つのブルペンに向かった。
塚谷:「俺硬球でキャッチャーなんか初めてだし、変化球なんか捕れる気がしないんだけど、、、」
西谷:「俺はキャッチャーなんかやる気ないから。そうなると、俺たちの代のキャッチャーは塚谷で決まりだな」
西谷がまるで人ごとのように笑いながら俺に向かって言ってきた。ピッチャー希望は中田、中川、新庄、西谷の4人だ。最低でも2人受けないといけない。
塚谷:(最低でも二人、、、、。西谷はキャッチャーもやるから、絶対俺が受けないといけないからあと一人か。中田の球だけは受けたくないな。朝のキャッチボールを見てる感じ、結構速かったからな、、、。)
そんなことを考えていると、後ろから誰かに声をかけられた。
??:「塚谷。俺の球取ってくれよ。」
後ろを振り返り俺は絶望した。そこには、絶対に球を捕りたくないと思っていた中田の姿があった。いやいや、いきなりあんな球捕れるわけない。
塚谷:「いや、俺でいいの、、、?」
俺が中田に尋ねる。
中田:「だって、西谷はキャッチャーやらないんだろ。それなら、今後キャッチャーをやらないやつに捕ってもらうより今後試合でバッテリーを組むかもしれない塚谷に捕ってもらったほうがいいでしょ。」
もっともな理由だ。中田のその理由を聞き断る理由が見つからず、顔には出さないが渋々中田とピッチング練習をすることになった。
シュッ。ドン。シュッ。ドン。
軽く投げているのにこの球速。捕れないことはないが、人のグローブと久しぶりのキャッチャーミットでいい音で捕ることができない。なぜ人のグローブを使っているのか?それは、俺がキャッチャー専用のグローブ、キャッチャーミットを持っていないからだ。野球には数種類のグローブがある。ピッチャー用、キャッチャー用、内野用、ファースト用、外野手用だ。俺はもともとサードだったので、内野手用のグローブしか持っていない。そのことを話すと、先輩が使っていないキャッチャーミットを貸してくれた。
シュッ。ドン。
塚谷:「ナイスボール。」
中田:「じゃあ肩温まったからもう座っていいよ」
塚谷:「わかった。」
そう言い俺はマスクをして座った。中田は俺が捕球体制のことを確認すると、振りかぶり始めた。中田の大きな身長をめいっぱい使い、左足が着いたと思った瞬間、球がうねりをあげながら俺のミットに吸い込まれていった。
ドン!!
川口監督は中田の球を見ると、立ち上がりブルペンを出て行ってしまった。監督が出て行った後も普通にピッチング練習が行われた。俺は少し驚いていた。自分が思っていた以上に中田のストレートをとれていることに。監督が出て行ってから3球投げた後、監督は戻ってきた。その手にはスピードガンが握られていた。
監督:「中田。お前のMAXは何キロだ。」
監督が尋ねると、
中田:「たぶん、130キロ前後だと思います。」
中田は答えた。監督はその言葉を聞き、スピードガンを構えた。
監督:「投げてみろ。」
中田はその言葉を聞き、投球動作に移った。
シュッ。ドン。
監督:「今のは130キロだな。」
監督のその言葉を聞き、俺はまた驚いた。同じ中学のピッチャーは120キロがマックスだった。130キロなんか見たこともなかったが、俺はそれを今捕っている。
塚谷:(こんな速い球を捕れるなんて楽しい、、、、)
俺はそんなことを思っていた。だが、それの気持ちは恐怖へと変わる。
監督:「球種は何がある。」
中田:「カーブとスライダーとフォークです。」
監督:「塚谷。今中田は何球投げた。」
塚谷:「今5球投げました。次で6球目です。」
監督:「そうか。中田、今日は20球で終わりだ。10球投げたら変化球も混ぜていけ。塚谷、10球投げたら俺に声をかけろ。」
塚谷:「わかりました。」
そういうと、監督は隣で投げている中川のほうを見に行った。中川は右投げの球速110キロ台で変化球はカーブとスライダーの少しサイドスロー気味の変則ピッチャーだ。ちなみに、中田は右投げのオーバースローの本格ピッチャーだ。
中田は5球投げ、変化球を投げる球数になった。俺は監督を呼び、捕球体制に入った。
中田:「最初はカーブ。」
塚谷:「オッケー。」
シュッ。
中田の投げたカーブは大きく弧を描き俺のミットに収まった。中田のカーブは縦に大きく割れるスローカーブだった。
塚谷:「ナイスボール。」
中田:「次スライダー」
シュッ。
中田の投げたボールは直線的にきた。
塚谷:(これじゃ曲がらない)
そう思いストレートを捕るイメージで捕球をしにいった。すると、ベースの手前で急激に曲がり、ボールは後ろに転がっていった。俺は捕れなかった。
塚谷:「ご、ごめん。」
中田:「はいよ。」
塚谷:(まさかあそこから曲がってくるとは思わなかった。あんなにまっすぐの軌道から曲がってくるのか。)
中田:「次、フォーク。」
そう伝えると、中田は投球モーションに入り、投げた。
シュッ。
塚谷:(この球は絶対取ってやる。)
ストン。
球が目の前でワンバウンドした。俺の反応が一瞬遅れ、ボールをまたこぼしてしまった。
塚谷:(畜生。軌道を読んでたのに遅れた。)
中田:「わりー。少しすっぽぬけたわ。」
そう言い、俺が中田にボールを返しピッチング練習が続いた。
・・・・・・・・・
全員ピッチング練習を終えた。結局中田のストレートとカーブ以外捕ることもワンバウンドを止めることができなかった。正直すごく怖かった。ここから曲がってこないだろうと思うところから急に曲がったり、落ちていく。予測していても取れない球。
次に受けた、西谷は、球速は120キロ前後の右投げのオーバースローだ。球種はストレートとカーブ、スライダー、フォークだ。中田と全く同じだ。だが、中田ほどの球速はないがほかのピッチャーと比べ物にならないくらいコントロールがよかった。構えたところにビタビタきていた。西谷が中川の次に受けていたのは新庄だ。新庄はこの学年唯一の左ピッチャーで球種はカーブとスライダー。特にスライダーは横から見ていてもとても曲がっているのがわかるほどだった。
その後、俺と西谷は2,3年生のキャッチャーの先輩とキャッチャーの練習をした。3年生のキャッチャーは午前中のバッティング練習で守っていた、浅水さんだ。顔から性格がいいのがすごく伝わってくる。2年生のキャッチャーは山上さんと、尾田さんだ。山上さんはすごくかっこいい顔をしている。尾田さんは、なんというか迫力がある。ちなみにグローブを貸してくれた先輩は尾田さんだ。ありがとうございます。
ポジションごとの練習が終わると、1年生は監督のところに集合していた。
監督:「一日お疲れさまでした。明日もまた練習があるので今日は先に上がってゆっくり体を休めること。まずは、高校野球に慣れることが君たちの目標だ。君たちには本当に期待している。以上。」
監督の話が終わり、監督にあいさつをしようとしたその時、
監督:「あっ、あともう一つ。小坪、入学して1週間後にある春の大会に出れるように準備をしておけ。以上」
「「、、、、、、、?!」」
小坪:「はい。」
その後監督にあいさつをして、俺たちは先輩たちの邪魔にならないように帰っていった。




