自分の役割②
鳥手一校は3回の裏にツーアウトながら大松の内野安打でランナーが出た。ここで打席に入るのは一年の武田だ。
武田:「よっしゃー!俺も続いてやる!」
声を出しながら打席に向かった。
小田嶋:「くそ、たかがバントで出塁したくせに盛り上がりやがって」
小田嶋は苛立ちからマウンドを足で掘った。
松林:(やべー。小田嶋イライラモード入りかけてる。ここで機嫌直しておかないと後でめんどくさいからな)
松林はタイムを取りマウンドに行った。
松林:「なぁなぁ」
小田嶋:「なんだよ」
小田嶋は松林の顔を見ずに不機嫌そうに反応する。
松林:「そういえば俺って、お前好きな女子のタイプ知らないんだけど、教えてくれ」
小田嶋:「は?!」
松林の言葉に驚いた。
松林:「だって、もしお前と好きな人が被ったら取り合いになっちゃうじゃん。だからここではっきりしておこうかなって思って」
松林はすました顔で話を続けた。
松林:「実際どうなのよ。どんな子が好きなんだよ」
最後にニヤッと笑い小田嶋に問いかけた。
小田嶋:「そ、そんなの今じゃなくていいだろ!!」
突然の予想外の質問に小田嶋は驚き照れていた。
松林:「なんだよー、おーしーえーろーよー」
松林はグイグイ聞いてきた。
小田嶋:「、、、、、子」
ボソッと何かをしゃべった。
松林:「ん?なに?」
松林が聞き返す。
小田嶋:「巨乳で、優しくて、大人っぽい女性がタイプだ、、」
少し恥ずかしそう斜め横を見ながら答える。
松林:「そういうタイプが好きなんだ~。じゃあ、ああいう人?」
そう言うと松林は指を指した。
小田嶋:(そんなタイミングよく俺のタイプがここにいるのか?!?!)
小田嶋はすぐにさされた方を見る。すると、そこには小田嶋のお母さんがいた。
小田嶋:「お前!!あれは俺の母ちゃんだ!!」
大声で指摘した。
松林:「あれまー、そんな大きな声が出るくらい嬉しかったのか。喜んでくれて俺も嬉しいよ。幸せにな」
松林はうれし泣きをするふりをして、左肩に手を乗せた。
小田嶋:「おい!違うって言ってるだろ!!」
小田嶋が必死に否定をしていると、その姿を見て、松林が笑い始めた。
松林:「おっけおっけ!今の話は忘れるよ!それより少しは気持ち落ち着いたか?」
笑いながら尋ねた。小田嶋はまだ不服そうな顔をしていた。
小田嶋:「ヒットを打たれたことに関しては何も思ってないけど新たにお前への苛立ちが芽生えそうだよ」
目を細めて、松林の質問に答えた。
松林:「それならよかった!お前のストレートはまだ打たれたわけではない。今のプレーは守備の準備不足、お前は悪くない。お前のストレートがどこまで通用するのか試すんだろ。なら次のバッターをお前の最高のストレートで抑えてやろうぜ!」
そう言うと笑い、松林はポジションに戻ろうとしたが。小田嶋に呼び止められる。
小田嶋:「おい!お前のタイプも教えろよ!」
そう言われると、松林は走りながら後ろを向き、
松林:「お前がこの回しっかりと0点で抑えたら教えてやるよ」
そう言うと、松林はポジションに戻り座った。
松林:(俺は小田嶋が気持ちよく投げれる空間を提供してやれればいい。そのためなら、嫌なことだってしてやる。)
「二番センター武田君」
武田:「お願いします!!」
武田は大きな声を出し打席に入った。
武田:「いくぞーーー!!」
小田嶋:(松林ありがとな。気持ちは落ち着いた。松林の言う通り、俺はこの試合で自分のストレートがどこまで通用するのか試してやる)
小田嶋はサインの交換をして、一塁ランナーを見てからセットポジションに入った。
武田:(一回の時の神山さんとの対決を見ている感じ、セットポジションになって、球速は下がっていた。あの球なら俺でも打てる。球をよく見て、バットを振りぬくんだ!)
武田は手に力が入るのを抑え、リラックスして小田嶋の投球を待った。
小田嶋は一度軽く呼吸をしてから、クイックで松林のミットめがけてボールを投げた。
武田はボールを見逃し、ミットの乾いた良い音が響いた。しかし、審判の手は上がらず判定はボール。
小田嶋:(ちっ、コースを狙いすぎた。)
松林:(大丈夫、ボールはしっかりきてるぞ)
小田嶋は返球を受け取り、もう一度足でマウンドをならした。
武田:(やっぱりだ。さっきよりボールが見える。今のでタイミングがしっかり計れた。ストライクゾーン近くにきたら迷わず振りぬいてやる。)
サインの交換が終わり、セットポジションに入る。武田に対して2球目を投げた。
武田は振りに行くも一塁ファールゾーンに打球は転がった。
武田:(ちくしょー。まだ捉えられないのか。もっと踏み込んで逆方向意識だ)
武田は構えて、小田嶋の投球を待つ。
松林:(セットポジションになれば球速も下がり、バットに当てられるのはわかっている。それでも抑えるようにリードするのがキャッチャーの役目だ)
小田嶋は武田に対いて3球目を投げ、武田は一塁側ファールゾーンにライナーで弾き返した。
小田嶋:(くそ、だんだん合わせられてきてる)
松林:(落ち着け、これだけ踏み込んできたんだ。コースを広く使っていくぞ)
松林は両手を大きく広げ、コースを広く使っていくジェスチャーを取った。
武田:(もう少し早く振らないとだめだ。次こそライト方向に打ち返してやる)
松林は武田のこの打席の打ち方を見て、インコースに構えた。
松林:(このコースなら、のけ反るか、振っても差し込まれて内野ゴロにしかならない。遊び玉は無しだ。次の1球で決める)
小田嶋は松林のサインに頷き、セットポジションに入った。
大松:(ランナーを全然見ていないな。これなら走れるかも、、、、、)
小田嶋は投球モーションに入った。その瞬間ランナーの大松が二塁に向かって走った。
「スチール!!!」
ファーストが、ランナーが走ったことを伝える。
小田嶋:(やべ、ランナーのことすっかり忘れてた)
小田嶋が投げるまでに一瞬の動揺が生まれた。たかが一瞬だが、それは小田嶋の投球には大きな誤差となった。
武田:(絶対にう、、)
松林:(!!)
小田嶋のボールはまっすぐ武田に向かってきた。武田は避けるように後ろを向いたが、背中にボールが当たった。
塚谷:「、、いたそう、、」
塚谷はうわーといった表情をした。
武田はすぐにバットを置き、叫びながら一塁まで走って行った。
武田:「よっしゃー!!」
一塁に着くとすぐに一塁コーチャーがコールドスプレーを武田の背中にかけた。
「痛くないの?」
一塁コーチャ―が心配そうに聞く。
「全然余裕だぜ!!」
武田が笑顔で答える。
小田嶋はやっちまったという顔をしている。
松林:(今はタイムを取らなくても大丈夫そうだな)
「3番ショート本田君」
本田が左打席に向かう。
小田嶋:(ここでこのバッターかよ)
心では少し焦りがあるが、表では本田のことを見下ろしていた。
本田:(いい目してるよほんと。だが、1年が作ったチャンス、3年の俺が潰すわけにはいかない)
本田はベンチにいる3年生の方を見る。
本田:(あと、試合に出られていない3年生もいる中俺は出させてもらっているんだ。ぜったいに打つ!)
本田は審判に一礼をして打席に入った。
松林:(このバッターには変化球も全部使っていくぞ。負けるのだけは勘弁だからな。手を抜くんじゃねーぞ)
小田嶋:(わかってるよ。絶対に打たせねーから安心してミットを構えろ)
小田嶋はこの試合で一番の集中力をここで見せた。
松林:(相手はストレートしか来ないと思っているはずだ。ここは緩い球でタイミングを外すぞ)
小田嶋はサインに頷きセットポジションに入った。クイックから1球目にカーブを投げた。
本田はタイミングを外され見逃した。主審の手は上がった。
「ストライーク」
本田:(いい変化球持ってるじゃん)
続く2球目、松林はインコースに構えた。小田嶋はクイックから足元に曲がっていくスライダーを投げた。
本田のバットは間一髪止めることができた。
本田:(なんてキレの良い変化球だ。もう少し高かったら、振りにいってたぜ)
本田は一度打席を外し、屈伸をしてから打席に入りなおした。
松林:(この球を振らないか)
カウントは1-1。次の球はアウトコースにストレートを投げたが、サード方向に強烈な打球がいくもファール。
本田:(際どいところばっかり攻めてくるな。これで追い込まれたぞ。際どいところも全部振りに行く)
松林:(カウントは1-2。カウントに余裕がある。ボール球を混ぜつつ、打ち取っていくぞ)
松林はアウトコースにボール球を要求したが、本田は見送り、カウントは2-2となった。
大松:(本田さん、俺はヒット一本でホームに絶対帰りますよ)
武田:(長打でホームに帰れるように、第二リードは大きく取るようにしないと)
2人は外野の位置を確認し、ヒットが出ればホームに帰れる準備をしていた。
小田嶋は一塁と二塁のランナーを見た。
小田嶋:(絶対に一人も帰さない。このバッターで打ち取ってやる。)
照葉バッテリーの決め球が決まった。本田もボールがくるのを待っていた。
小田嶋は二塁ランナーをちらっと見てから、投げ始めた。
小田嶋:(この球で決めてやる!!)
ボールはインコースめがけてきた。
本田:(ボールの軌道に合わせて振りぬく!!)
ボールは曲がることなく、まっすぐ来た。
本田はそれを迷うことなく振りぬいた。打球は高く上がり、ライト線に飛んで行った。
一日遅くなりすみません




