紅白戦②
3年生の引退がかかった紅白戦は2回の表を迎える。
この回の先頭打者は、6番の関根からだ。だが、3年生はピッチャーの山本の前に3者凡退で終わってしまう。
金田:「ごめん。」
浅水:「いいんだよ。お前はピッチングに専念しろ。点は俺たちが取ってやる。」
2回裏。
2年生の攻撃は、藤川からだ。藤川は右バッタ―ボックスに入る。
浅水:(二年はこの回7番から始まる。1番の佐藤には絶対回さないようにしよう。)
この回の金田は一回とはうって変わり、7,8,9番を三振で抑えた。
久保田:(くそっ。)
3回の表。
この回は浅水からだ。
浅水:(ピッチャーの金田が頑張って投げているんだ。キャッチャーの俺がそれに答えないでどうする。)
浅水は初球、インコースのまっすぐを、レフト前に持っていった。
山上:(ここから、上位に戻るから先頭は切っておきたかったがしょうがない。)
山上:「ノーアウトランナー一塁。内野ゲッツー態勢、外野は深めに。」
その指示により野手陣は陣形を変えた。
山上:(ランナーの浅水さんは決して足の速い人じゃない。盗塁は無警戒でいいだろう。ここはバッター集中!)
山本はサインに頷いた。高橋に対して初球インコースにスライダーを投げるもボール。二球目外にストレートを投げボール。
山上:(山本、ランナーは気にするな。高橋さんは上位打線の中でも打ち取りやすい人だ。ここはしっかり勝負してこい。)
山本は三球目をインコースの厳しいところを投げ、ストライクを取った。次に同じところからひざ元に落ちるスライダーを投げ空振りを奪った。
高橋:(チッ、追い込まれちまった。ここでランナーを進ますことができないのが、最悪なことだ。なら、俺が取る行動は一つしかない。)
山本は山上とサインを交換し、五球目を投げた。
山本:「?!」
高橋はなんとバントの構えをしていた。打球は一塁側にしっかり決まり、送りバントを成功させた。ベンチに戻ると、
逆井:「よくツーストライクからバントしたな。」
高橋:「悔しいが俺より後ろにいるバッターの方がいいバッターだからな。負けたら終わりなんだ。プライドがどうとか言ってられないだろ。」
ベンチにいた三年生は驚いていた。高橋は少し短期ではあるが負けず嫌いで、プライドの高い男だ。その男が自分のプライドよりもチームの勝ちを優先した。逆井は打席に入ろうとしている本田に声をかけた。
逆井:「この回まずは同点に持っていくぞ!」
本田はその言葉にうなずいてから打席に入った。
山上(本当に野球ってうまくできてるよな。回したくないバッターを来てほしくない場面で来るようになってる。)
山上は笑った。その本田に投げた初球。ストレートがミットを構えた位置より少し浮き強烈なゴロが一、二塁間に飛んで行った。だが、佐藤のダイビングキャッチで一塁はアウトになってしまう。
山上:(政太助かったぜ。)
ツーアウトランナー三塁。ここで3番の龍神。
山上:(この人も長打がある。ここは外野を下げておこう。てか、3年生は5番まで長距離バッターなんだけどね。)
山上は外野を下げ、長打を防ぐようにした。
だが、それが逆に裏目に出てしまう。ツーストライクワンボールから投げたチェンジアップに合わせられ外野の前に落ちるポテンヒットになる。これで2-2の同点。続く次のバッターは神山だ。
山上:(ここは流れを切る意味を込めて、勝負を避けちゃだめだ。攻めてこい!)
初球インコースに入ってくるスライダーを神山は見逃さなかった。
カキーーン!!!
山・山(!!!!!!)
高々と上がった打球は、ポール際に飛んで行った。ホームランかと思われた打球はわずかに切れてファールになった。
朝野:「あ、あぶねー」
佐藤:「すげー飛んだな」
2年生はその打球に惚れ惚れしていた。
佐藤:「まぁ入らなきゃ意味がないけど。」
神山:「インコースに来たから少し力んじまった。だが次は仕留める。」
神山は打席に立ち、構えた。
山本はアウトコースに逃げるスライダーを投げボール。次の球は同じコースにチェンジアップでファール。もう一球同じ球を投げるが、見逃されてボール。
山上:(よし。これだけ外の遅い球を見せられたら、インコースには手が出ないだろ。)
山上はインコースにストレートを要求した。山本は少し心の中で動揺したが、山上のミットを信じて投げることにした。山本はセットポジションから、クイックでミットめがけて投げた。
山上:(なっ!少し真ん中に入ってくる。やられる!!!)
神山:(もらった。)
神山の打球は強烈なライナーとなった。しかし、運悪くサードの正面に飛び、サードの菊地が捕りスリーアウトチェンジ。
朝野:「菊地!!よく捕った!!」
菊地:「いや、マジで打球早すぎて怖かったわ!!」
二年生は盛り上がりながら、ベンチに戻っていった。
逆井:「どんまいどんまい。次の打席頼むぜ。」
そう言うと、神山を守備に送り出した。
塚谷:「にしのや~、今試合どんな感じ?」
打撃練習の交代で西谷に聞く。
西谷:「三回表終わって、2-2」
塚谷:「そうか。あれ、逆井先輩出てないんだ。」
西谷:「なんかこの間の春大でフェンスに直撃しながらファールフライ捕ったのあっただろ。あれで肩の打ちどころ悪くて、今投げれないんだって。」
塚谷:「そうなの!?知らなかった。」
俺は試合に目を向ける。
塚谷:「正直どっちが勝つと思う?」
西谷:「今の雰囲気、現状から言うと、、、、」
俺と西谷の意見は一緒だった。
3回裏
先頭の佐藤がバスターでサード強襲のヒットを打ち、すかさず盗塁を試みた。判定はセーフだった。
佐藤:(浅水さんは、ストップはうちのキャッチャー陣で一番だと思うけど、スローイングはそうでもないんだよね)
続く野間もライト前に打ち、ランナーは一、三塁になった。
監督はじっとこの試合を見つめる。
浅水はタイムを取り、金田に声をかけた。しかし、流れは止めることができず、菊地にもセンター前を打たれ2-3となった。続く朝野にはフォアボールを出してしまった。
佐藤:「ここから、金田さんは崩れるな。」
山本:「そうだね。金田さんいい球持ってるのに、心が弱いからいつも途中から崩れるんだとね。調子に乗った金田さんは止められないけど、、、、。本当にもったいない人だよ。」
金田はタイムをとり、キャッチャーの浅水をマウンドに呼んだ。
金田:「俺これ以上投げたらチームの迷惑になっちゃうから坂田と変わる。」
浅水:「本当にいいんだな?これが高校最後のマウンドになっても。」
金田:「ああ。」
浅水は金田の顔を見た。
浅水:「わかった。だが、坂田の肩ができるまでは投げてもらう。」
そう言うと浅水が坂田に目線で合図をした。坂田はその合図を受けピッチング練習に向かった。
坂田:「お~い、つかたに~。」
俺は振り返る。
塚谷:「はい。坂田先輩どうしましたか?」
坂田:「3年生のキャッチャーは浅水しかいないから、俺の肩つくるの手伝ってくれない?」
俺は坂田先輩にそう言われ、アップをするため先輩についていった。
ブルペンからグラウンドは見えないが、2年生の歓声が何回か聞こえてきた。アップが終わり、坂田先輩はグラウンドに急いだ。俺もバッティング練習しているゲージに急いで戻った。
ゲージに行く途中、グラウンドを見ると2年生の攻撃が終わったところだった。だが、俺はスコアボードを見て驚いた。スコアは2-7になっていた。
塚谷:「スギタク!」
俺が呼ぶとびっくりしたようにこっちを見る。
杉本:「びっくりしたな!驚かすなよ!」
俺は息を整え質問をする。
塚谷:「この回何があったの?」
杉本:「朝野さんがフォアボールで出たところまでは見てただろ。そのあとの山上さんがまたツーベースを打って、松本さんはファーストゴロでワンアウトランナー二、三塁。次の藤川さんがツーランスクイズを決めて、この回5点目。続く久保田さんはセンターフライで今チェンジになったところ。」
塚谷:(回は中盤に入りこの点差。このままいけば、3年生たちは、、、)
自分が三年生だったらと考えると、悔しい気持ちが出てきたが、俺は3年生の引退を覚悟した。




