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第116話 エリカちゃんと遊ぼう!

前半おーかわ、後半エリかわ

 お腹の下がキリキリ痛むこの感じ……。

 まさか、もうあの日が来たのか? 前回が2週間前だったからもう少し先だと思ってたんだが……


 明け方くらいに目が覚めてまず感じたのはそれだった。


 しかもこれ……いつもより重くね?


 実は今回で4回目なんだが、2回目以降はほとんど辛くなく量も少なく、全く気にならないくらいだった。


 けれどなんか……1回目の時みたいに痛いし体が重いし……それになんだか心が切ない……


「むにゃ……おーちゃん?」


 う、カナンを起こしてしまったか。けれど、おトイレ行くならホールド状態のカナンを起こさなきゃいけないので仕方ない。


「うぅ、アレが来たかも……。いつもより重い……」


「あらら……」


 カナンにはほんと申し訳ないが、初めて来た時みたいに体が重くてまともに立ち上がれない。仕方がないのでまたおトイレまで付き添ってもらうことにした。


「まだ暗いのに、ごめん……」


「いいのよこれくらい」


「あうぅ……」


 肩を支えられながら頭を軽く擦られて、一層胸の奥が切なくなってくる。


 そっと便座の上に座り、ぱんつを降ろす。

 当然カナンは扉の外だ。


「うわ……」


 暗くて分かりにくかったけど、下着のみならず浴衣まで少し汚してしまっていた。


 これくらいなら【清浄】で何とかなるけど、やはり少し罪悪感がある。


 なんでこんな急に重たくなったんだ?


 最近やたら胸が膨らんできたのと関係があるのか?

 それか、昨日魔力を使い果たしたからか。


 なんにせよ、辛い。

 お腹の内側からブスブス針で刺されてるみたいに痛い。それだけじゃない、凄まじく体が重たいし頭も痛い。


「大丈夫おーちゃん?」


「うぅ……数日くらい動けないかも……」


 けっこうな量だが、紙を下着の中に入れたのでこれで少しは落ち着けるだろうか。


 幸いなのは、しばらくはカナンは宿に籠ってお勉強する腹積もりだったことか。


 またカナンに支えられて、お部屋へ戻る。


 その時、昨日エリカちゃんが出てきた部屋の扉が視界に写りこんだ。


「しん、えん?」


 近頃辛うじて文字が読めるようになってきたので、扉の上に刻まれた文字をなんとなく解読してみる。


 オレたちの部屋が〝星の間〟なのに対し、そこは〝深淵の間〟と書かれていた。








 *







「うぅ……甘いものが食べたい……」


 朝になり、重たい瞼を開いて感じた事がそれだった。

 今回に限らず、女の子の日が来ると甘いもの食べたくなるのはなんでなんだろ。女の子の体というものは色々と複雑なんだな。


「あら、朝食が出てきたわよ」


「食べる……」


 机の上に、いつの間にか朝食が用意されていた。


 地味に食欲もある。けど立ち上がろうとするとお腹が痛むので、ゆっくりと……。


「痛たたたっ……」


「無理しないでおーちゃん。ほら、私が食べさせてあげるから」


「あうぅ……。そう、する……」


 はい、あーん。

 もぐもぐ、おいしい。


 そんなやりとりをして、時間をかけてゆっくり朝食を食べ終わる。ちなみにお魚がメインのヘルシーで和風な朝食だった。


 うーん、少し物足りない気分……。けどお腹は満たされてるし、とりあえずはこれでいいや。


 その後は、あらかじめ買っておいた辛さを軽減する薬を飲んで横になる。


主様(ますたー)……お腹さすって……」


「ふふっ、いいわよ」


「はふう……」


 カナンの手が、オレのお腹を優しく撫でる。

 それだけでなんだか痛みが和らいだ気がして、安心する。


 そしていつの間にか、うとうと眠ってしまっていたのだった。




「んにゃ……?」


 寝心地が悪くって、ふと目が覚めた。

 あれからだいたい二時間くらい経っていたようだ。


 確か血行が悪くなると一層辛くなるんだっけ。紙を取り替えるついでに少し体を動かしてみようかな。


 そう思い、起き上がる。


 すると、オレの足の先でなぜかうずくまっているカナンが目に入った。


「どう、したの? 主様(ますたー)……」


「来たのよ……吸血衝動が……」


「今……?」


 なんてタイミングなんだ。ただでさえ貧血中のオレではカナンに血をあげるのはちょっと危険だ。

 回復薬(ポーション)で血を増やすというのは、外傷で失ったものにだけしか適応されない。

 だから、この生理現象にはあまり効果は無いのである。


 しかも、あらかじめ小瓶に入れて収納していたストック分はドレナスさんと戦った時に飲みきってしまっている。昨日も帰ってから疲れてすぐ寝ちゃってたし……


主様(ますたー)……?」


「うぅ……」


 もぞもぞと動いて、四つんばいのままゆっくりこちらに近づいてくるカナン。


 鼻をくんくんさせ、やがてオレの足の間で動きを止める。


 ……まさか


「私……おーちゃんの血の匂いに、耐えられない……」


 貧血のオレから余計に血を奪わず、それでいてカナンの吸血衝動も満たせる方法……。


 確かにソレ(・・)は合理的に思えるけど、だけど……!


「ま、待って主様(ますたー)……」


 ソレはつまり……つまり!?


 ダメダメダメダメダメ!!!

 ソレだけはまだ(・・)ダメ! お嫁に行けなくなっちゃう!!


「い、いつもみたいに首から吸って……! お願い……」


「む、無理……ごめ、んね……」


 口からぽたぽたヨダレを垂らしながら、オレの足の間に手を伸ばして――


 もうダメか……諦めかけたその時に、扉を跳ね開けそれは来た。



「エリカとーっ! 遊ぶのです!!!」



 ……え、え、エリカ!?


 ち、なんてタイミングで来てくれたんだ!?


「遊ぶの……え? な、なんなのです? なんなのですかこの状況??!」


 端から見れば、オレの股に顔を近づけて何かをしているカナンの図。


 それを見て、顔を真っ赤にしているエリカちゃん。


 なんだこの修羅場。


「あ、あ、遊んでたのよっ!!」


「そう! 主様(ますたー)と遊んでただけ……!!」


「す、すぐ済ませるからちょっとだけ廊下に居てね!?!」


「わ、わかったのです……。友達以上の関係、凄いのです……」


 何か凄い誤解をされているような気がするが、ひとまずエリカちゃんを部屋の外に待機させた。


「少し気が逸れたわ……。おーちゃん、一応聞くけどどっちがいい(・・・・・・)?」


 カナンはオレの首とお腹の下の下の方を交互に見てそう聞いてくる。


 そんなの一択しかないじゃないか。


「く、首から!」


「そうね……ちょっと残念」


 残念!?

 いや汚いじゃん、そんなのより新鮮な方がいいよ!! とは思ったものの、なぜか心のどこかでオレも残念と思ってしまっていたのであった。


 それからオレは、回復薬(ポーション)を用意した上でカナンに首を噛ませて血をあげた。


 カナンが飲み終わる頃には意識も朦朧してしまっていて、よくは覚えてないが一応すぐに回復薬(ポーション)を飲ませてもらったらしい。


 回復してからは自力で下着を【清浄】して、ナプキンも換えて……。カナンの目の前でやる事になったが、さっきはしゃぶりつかれそうになったんだ。もはや羞恥心など無いに等しかった。


 そのおかげで辛うじて一命はとりとめられた。死んでても時間経てば復活するけどな。


 最初からこうしていれば良かったんじゃね? という疑問は置いといて、後はエリカちゃんの相手もしなきゃならなそうだ。



「……もう入っても、いいのです?」


「いいわよ、済んだから」


 銀髪で片眼を隠した美少女……エリカちゃんが、申し訳なさそうに扉から恐る恐るこちらの様子を伺う。


 やがて問題無さそうだと判断したのか、申し訳なさを振り捨てこっちにどてどて駆けてきた。


「今度こそエリカと遊ぶのです!!」


「うん、何して遊ぶのかしら?」


「何をして……? 弾幕ごっことかどうなのです?」


「弾幕……? おーちゃんの事もあるし、あまり体を動かす事はしたくはないわね」


 弾幕ごっこって、どこぞの同人ゲーかよ。

 いやまあこの世界なら本当に「弾幕ごっこ」ができてしまいそうだけど。


 なんにせよ、問題の弾幕を出せるオレが動けないのではできそうもあるまい。


「ふむむ……。その程度なら、エリカがよく効くお薬をあげるのです。友達のよしみなのです!!」


 エリカは床に手をつき……いや、自分の影に(・・・・・)手を入れて、何かを取り出した。


 オレの【次元収納】みたいなもののようだ。

 その手には、赤い丸薬がひとつつままれていた。


「口を開けるのです! これを飲めばどんな病も治るのです!!」


「ちょ……せめて主様(ますたー)の手から飲ませて……」


 強引にオレの口をこじ開けて飲ませようとしてくるので、必死に抵抗して拒否する。なんだかオレの口にモノを入れていいのは、カナンだけしか許せない自分がいるのだ。


「リカちゃんそれちょうだい。私がおーちゃんに飲ませるから」


「……わかったのです」


 あーんと口を開けてカナンに丸薬を入れてもらう。

 そもそもそれ、飲んで平気なやつなのか?



 《解析中……。神霊秘薬(エリクサー)。どんな傷や病もたちまち癒すという伝説の霊薬》



 ……は?


 伝説の、秘薬……?


 見間違いか? なんかとんでもないアイテムが出てきたような気がするんだが……


「んむっ!?」


 そうこうしている内に、口の中に丸薬を押し込められてしまう。


 味は……無味無臭だな。良薬口に苦しとはいうが、良薬全てが苦いとは限らないもんな。


 なんだか深く考えたら恐ろしい事になりそうなので、水を含んで心を無にして薬を一気に飲み込んだ。


「……ん?」


 飲み込んだはいいが、なんだこの感じ?

 お腹の中がぽかぽかしてきて、痛みがどんどん消えていく……?


 体の重さも頭痛も、数秒後には嘘のように消えていた。


「なんだ、これ?」


「おーちゃん?」


「よし! 治ったから遊ぶのです!!」


 おいおい、弾幕ごっこは嫌だぞ。だいたい辛さは取れても魔力が……


 あれ? 魔力が、満タンになってる……?


 えぇ……、どうやらオレはとんでもないものを飲ませられてしまったようだ。


「エリカは弾幕ごっこしたいのです!!」


「私はもっとゆっくりした遊びがやりたいわ。おーちゃんはどう?」


「オレも、体や魔力を使わない遊びがいいな」


 全快したとはいえ、まだこの生理現象は続いている。そもそも散々戦った後なのだからゆっくりしたい。疲れてなくてもくつろぎたいのだ。


「むぐぐ……仕方ないのです。なら、〝ジョーカーゲーム〟をやるのです!」


「ジョーカーゲーム? どんな遊びなの?」


「ふっふっふ、それはこのトランプを使ったゲームなのです!!」


 影からトランプの束を取り出し、エリカちゃんは自信満々にジョーカーゲームとやらのルールを解説してくれた。


 同数のカードを配り、それぞれ順番に相手の手札を抜いて自分の手札と同じ柄でペアになったらそれを捨てる。先に自分の手札を全て捨てきれた者が勝つというゲームだ。


 その中には1枚だけジョーカーが仕込まれており、これを最後に持っていたものは必然的に負けとなる。


 要するにババ抜きだな。


「なかなか楽しそうね」


「エリカはジョーカーゲーム得意なのです!! いざ勝負なのです!!!」


 そんな訳で、オレたち3人は修学旅行のテンプレみたいに、ババ抜き……もといジョーカーゲームを始めるのであった。














「ぬ……ぬぐぐ……」


「ふふふ……こっちね? よし、上がりよ! おーちゃん頑張って!」


 カナンが一番最初に抜けた。

 そして、オレもあと少しで上がりだ。


 一方的エリカちゃんはというと、なかなか苦戦しているみたいだった。


 だって、めっちゃ表情に出るんだもの。ジョーカーを取ろうとすると嬉しそうになり、他のを抜こうとすると涙目になる。

 一番負けに近いのはエリカちゃんだ。


 得意なんじゃなかったのかよ……。


「エリカの番なのです……」


 エリカちゃんがオレの手札から1枚、スペードのジャックを抜いた。


「やったのです!!」


「良かったなー」


 すごく嬉しそうだ。


 ……これ、なんだか勝っても罪悪感すごそうだな。それに、負けたら何をするかわからないし。泣かれて弾幕ぶっぱなされても困る。


 次はオレの番だ。


「……」


 エリカちゃんの手札はあと5枚。一方オレは4枚だ。

 ジョーカーは向こうが持っている。


 うーん……。これかな、ジョーカー。


 あ、すごく嬉しそうな顔してる。これだな。


「お、ジョーカー」


「ふはは! 引っ掛かったのです!!」


 よし、ジョーカーを取れたぞ。後はそれとなくジョーカーを引かせないよう誘導してと。




 ……





「エリカの勝ちなのです! エリカはやっぱり強いのです!」


「わー、負けちゃったー(棒)」


 多分マツリカさんとしかやったことないんだろうな。気を使って勝たせてあげてるといったところか。


 それからオレたちは他にも色々なトランプのゲームを夕方になるまで楽しんだ。



「そろそろおしまいね」


「名残惜しいけど、仕方ないのです……」


 ふと、寂しそうな顔を浮かべるエリカちゃん。


「そんな顔しなくても、また遊んであげるわよ」


「ほんと? エリカ、下僕はいても遊んでくれる友達はいなかったのです。……ありがとう、のです。楽しかったのです!」


 カナンよりも少し歳上の見た目をしているのに、精神はかなり幼く思える。


 最初は恐ろしく思えたエリカちゃんだったが、打ち解けた今はもうそんな風には思えなかった。


次回! おーちゃん誘拐される!! デュエルスタンバイ!!



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― 新着の感想 ―
[気になる点] ふと気になったけど、オイカワに従ってたあのデブ準特級の人化だったりしない?
2023/09/15 07:30 退会済み
管理
[気になる点] 色々察した エリカ 昔ルミちゃんみたいなクール系嫌いそう。嫌いじゃなくても淡々と流されてムキーってなりそう。仕返しにお菓子とりそう ルミナエル 子供っぽい子供嫌いそう。お菓子取られたら…
2023/09/15 07:29 退会済み
管理
[一言] 7女神って 深淵、大地、明星、大海、豊穣、後なんでしたっけ。
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