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第115話 ひさしぶりの温泉と

おーちゃんカワイイ

 微かに夕陽の色を残した夜空を眺めながら、オレたちはふよふよした気分に包まれていた。


「きもちいーねー……」


「ごくらく……」


 久々の温泉に思わず全身の力が抜けてゆく……。何日もテントで過ごしてたからなぁ、今日はきっとぐっすり寝れそうだ。


「ねえおーちゃん……」


「なあに主様(ますたー)?」


 ふと、隣で浸かってたカナンが後ろに移動して話しかけてくる。どうしたんだろうと思っていると、おもむろに背中に抱きついてきて……


「ひゃ!?」


「ふふ、やっぱりおーちゃんったら可愛い……!」


「ひゃう……あぅ……」


 後ろから裸でぎゅーっとからされたら、そんなの……そんなの……!?

 うああう、背中の感触のせいで頭の中のナレーションが追い付かない!


「ねえ、おーちゃん。最近お胸が膨らんできたんじゃない? お乳でも出るのかしら?」


「で、出ない……! まだ出ないもん……!」





 *






 宿に戻ってくると、何やらルミレインからラントおばあちゃんに頼んでいた伝言を言い渡された。


「〝実に面倒な事に、学園で教鞭を取る事になってしまった。そのせいで、そっちには週に一回程度しか戻れそうにない。すまない〟だそうだよ? ヒッヒッヒ……」


 声真似までするラントおばあちゃん、さてはノリいいな?


 それはともかく、数日はまたルミレインは帰ってこないらしい。つまり、カナンと二人っきり。


 だからこうして温泉の中で抱きつかれたり触られても問題ないのである。


 ……オレ的には大問題だが。



「あぅ……あぅ……」


 触られてどうだったかと言えば、別に特別何かを感じた訳ではない。ただふにふにしてるんだなと実感しただけだ。


 が、色々されたのはそこだけじゃない。耳とか尻尾とか、それはもう色々と。


 これで未だに一線は越えてないの、ほんとに奇跡なんじゃないかと自分でも疑うくらいだ。


「ま、ましゅ……おといれ行きたい……」


「あらら、連れていってあげるわ」


 いつものごとくのぼせてへばっていると、不意に尿意をもよおした。


 呂律が回らないし、尻尾を弄くられると腰が抜けてまともに歩けなくなる……。ので、屈辱的ながらカナンにトイレまで付き添いしてもらう他ないのだ。


「よしよし、慌てずゆっくりね。おーちゃん可愛いから」


「あうぅ……」


 そっと抱き上げられて部屋の外に。

 廊下を少し進んだ所にある小さなトイレまで、オレは子猫のように運ばれてしまった。


「だ、大丈夫……! ここからは平気だから!!」


「無理しなくてもいいのよ?」


「うぅ、へーき!」


 トイレの中まで入ってきて、浴衣の下のパンツまで脱がせようとしてきたのでさすがに抵抗する。油断も隙もあったもんじゃない……。



「ふぅ……」


 忘れずにお股を拭いて、パンツを上げて浴衣を整えて、水を流す。


 スッキリした気分で扉を開けると、微笑むカナンに出迎えられる。



 が――




「――ねえ、貴女がカナン?」


「えっ?」


 それは、銀髪の少女。

 オレたちの向かい側の部屋の扉から、顔を半分ひょっこり出して見つめる少女がいた。


 なんだこの子……、いつからいた? というか、なんだか異質な気配を感じるような……


「貴女が、カナン?」


「そう……よ?」


「わたしはエリカ……。貴女、エリカとお友達になるのです!」


「えぇ?!」


 な、なんだこの子!?


 銀髪の美少女……エリカは扉の裏から抜け出すと、こちらに凄い気迫で迫ってきた。


 ――ぱっと見た印象は、どこかのご令嬢かと思う雰囲気だった。


 年齢は中学生くらいか。

 艶々しい紫色のメッシュの入った銀髪はボブっぽい髪型で、ぱっつん前髪で右目を隠しどこかミステリアスだ。

 隠れていない左の瞳は、翡翠のように緑がかり、まるで宝石のようだ。


 宿の浴衣を纏っているあたり、同じ宿泊客か……?


「エリカは貴女たちが欲しいのです! さあ、お友達になるのです!!!」


「え、えぇ!? 待ってよ!」


 あまりの押しの強さに、思わずカナンすら引いてしまう。

 というか、欲しいって言い方……


「いけませんお嬢様! 困っているじゃないですか!!」


「でも、エリカこいつら欲しいの!」


「でも! じゃありません!」


 エリカが出てきた部屋の中からもう一人、女の人が出てきた。

 黒髪ロングでかなり高身長で……いや胸でっか!?


 浴衣の隙間からまろびでそうなくらいでかい。

 胸もそうだけど、スタイルやば……。ボン! キュ! ボン! じゃん。


 ルミレイン以上の怪物がいたもんだ……。


 いやいやどこ見てんだオレ。浮気はダメだぞ。


「けどマツリカぁ……」


「けどもありません! ……ごめんなさいね、お嬢様はあまり人と関わる機会がなくて距離感がわからないんです。わたくしがしっかり言っておきますので、どうか気にせずお部屋にお戻りください」


 マツリカ、というようだなこの人。


 なんだかこの人も変な気配があるような……。

 けど、二人の雰囲気はどこかで感じた事がある。


 ルミレインに似てるのか? うーん……


「エリカちゃん……エリちゃんだと被るし、リカちゃんって呼んでもいい?」


「許可するのです」


「いいわよリカちゃん、お友達になっても」


 エリカという少女に手を差しのべるカナン。

 しかしオレは、なぜだか嫌な予感を覚えた。


 《解析中……。

 個体名:エリカ・グロキシニア

 種族:悪魔人(デモノイド)

 強度階域:1……ザー……蝓� 繧ー繝ャ繝シ繝医が繝シ繝ォ繝峨Ρ繝ウ 螟「蟷サ縺ョ逾� 繝弱�繝�Φ繧ケ》



「うわっ?!」


「どうしたのおーちゃん?!」


「い、いやなんでもない……」


 な、なんだ今のは……? なにか、恐ろしい深淵に触れてしまったかのような、凄まじい悪寒を感じた……。


 コイツは、ヤバい。

 しかし、それを口にしようとすると、どうしてか喉元が詰まるような感覚に襲われる。


「ふふ……新しいお友達なのです! 何して遊ぶのです!?」


「……リカちゃん、悪いけど私たち疲れているから明日にしてけれないかしら?」


 オレの気持ちを察したのか、カナンは自然な感じで断ろうとする。


「むぐ……でも……」


「お嬢様、見た所お二人はかなりお疲れの様子。これではせっかくの遊びも楽しめないというものですよ」


 マツリカさんナイス!

 というかマツリカさんも違和感で言えば同類なんだが、話が通じるぶん安心感がある。


「マツリカが言うなら……仕方がないの。明日! ぜったいにエリカと遊ぶのです!!」


「うん、いいわよ。明日はいっぱい楽しみましょう」


 こうして、カナンは突然のお誘いを何とか断る事に成功したのであった。


 なぜなら、この後はお部屋でオレをいっぱい堪能したいから……だという。





 *








 夜ごはんも食べて、後は寝るだけ。ルミレインもいないので、二人きりでお部屋とお布団を占領できる。


 するとどうなるか。言わなくても分かるだろう。恒例のあれである。


「お~ちゃんっ!!!」


「うきゅ……むぎゅう」


 逃げられないようお布団の中でガッチリ両足でホールドされて、ぎゅっと抱き締められながら頭にすりすり。


「あぅっ、ましゅ、主様(ますたぁ)……」


「あぁ、おーちゃんは万病に効くわ……」


 髪をすりすり匂いをくんくん。それに紛れてたまに耳をぺろっと舐められたり、頭の角を優しく甘噛みされたり。


 意外と角を噛まれるのも弱いと判明し、思わず情けない声が漏れてしまう……。


「今日はいつもよりいーっぱいぎゅーってしてあげちゃうわ♡ 昨日のごほうびよ♡」


「ひにゃん……っ!」


 粘膜には一切触れず、けれどオレの弱いトコロは的確に突いてくる。


 まだ11歳というのに、半分オトナな事をシてくるのはなぜなんだ……。もしも無意識にこんな事をしてくるのだとしたら、それはもう男以上の狼だろう。


「ふふ……おーちゃんカワイイ♡ だーいすき!!」


「あぅ!? あうぅ~……」


 服の隙間から手を入れて、オレの尻尾の付け根をくりゅくりゅ……。

 それをされると腰に力が入らなくなってひくひくしちゃうからっ……。さっきもお風呂場でやったのに、またやり足りないみたいだ。


「どうして、こういう事を、オレにするの……?」


「あら? 嫌だったかしら……? 」


「えぅっ……嫌、じゃないけど……前から、気になってたから……」


 ひくひくして滑舌もおぼつかない状態で、ふと気兼ねもなく聞いてみる。


「なんでだろう? うーん、おーちゃんを見てるとね、胸の奥が温かくなって、からだがぞくぞくして、そして無性にめちゃくちゃにしちゃいたくなるのよ」


「あ、あぅ……」


「ふふ……色んな意味でね♡」


 歳相応とは言い難い妖しい笑みを浮かべ、いたずらは続く。


 けれどやっぱり、カナンにならこういうのされても全然嫌じゃない。

 むしろ……いいや、なんでもない。まだ否定したい自分が心のどこかにいる。


 それでも、この気持ちだけは言葉にしておきたくなった。


「お、オレ……主様(ますたー)が満足するんだったら、いくらでも……」


「私のため? うふふ……嬉しいわ。そんな可愛いおーちゃんは、いっぱい可愛がってあげないとね!」


「ひうっ……うぅ……」


 その白くて細い指先が当たるだけで、オレの体はびくっと反応してしまうくらいだ。


 ただでさえ膂力に天と地の差がある上に、今のオレは魔力不足で更に体を動かしづらい状態だ。

 まな板の上の鯉、お布団の上のおーちゃんとはまさにこのこと。


 カナンがほんの少し力むだけで、オレの体は簡単に壊れてしまうだろう。


「おーちゃんは私だけのもの……ぜったい他の誰のものにもならないでね?」


「あぅ……と、と、当然……」


 そんなほっぺをさりさり舐められてたら返事もしにくいじゃないかよう……。

 でも、これだけ色々な事をされても嫌な気は一切しない。


 めちゃくちゃな事をしているように見えて、オレが痛くないよう必死な力加減をしてくれているのだ。


 それが、たまらなく愛おしい。



 ――オレは主様(ますたー)の所有物。

 主様(ますたー)の為ならなんだって……。


 そんな思考が、オレの無意識下で蝕むように占領しつつあった。

エリカちゃんは一体何者なんでしょうねぇ。そんなことよりおーちゃんカワイイ(発作)


次回! おーちゃんおまたぶらっとの巻!!! 来週もまた見てくれよな!!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「で、出ない……! まだ出ないもん……!」エッチいですね [気になる点] もしコルダータちゃんが帰ってきたときどうなっちゃうんだろう
[良い点] おーちゃんかわいい!!!!!(久しぶりの挨拶)  110〜115話まで読みました!!!  うん、久しぶりに読んでも面白い( ◜ω◝ )  おーちゃんの領域て……心象をやっと見れて大満…
[良い点] おーちゃんカワイイ [気になる点] 強度階域1…どう見ても偽装です本当にありがとうございました。 [一言] エリカというどっかで聞いたことがある名前が出てきたので見てみたら45話にてルミレ…
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