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第113話 依頼を終えて

連投じゃあああ!!!


追記:蛇王シャンディアを討伐した勇者を変更しました。

奈落の勇者→混沌の勇者。


設定的に奈落より混沌の方が色々と向いてるなと思ったからです。

「……すまぬ、年甲斐もなく叫んでしまって。して、本当にお主があの〝炎竜王〟なのか?」


「今はもう王などではない。自らは王の器ではないと気づかされたのでな」


 真っ赤な鬼のおじさんと赤髪チャイナ服のおねーさん。二人並ぶとなんか壮観だな……。


「長年冒険者とギルマスをやってきた中で最大級の驚きじゃ……。つい先日もカナンちゃんが〝獣王〟を討伐したばかりというのに……」


「獣王? もしやマルドティアスの奴か?」


「そうよ、王っていうには少し弱かったけれど」


 そういやあいつも七王だったんだっけな。もうとっくにカナンの栄養になってるが。


「マルドティアスは七王の中でも最弱……。とはいえ、大結界内の一大派閥を統べる程度の力はあったはずだ。それを倒していたなど、さすがは我が主!!」


「ドレナちゃんはアイツと違って話が通じるからいいわね」


「お褒めに預かり恐悦至極!! これからは更に役に立ってみせましょう!」


 ちょっと褒めただけでずいぶんと嬉しそうだな。ボーイッシュなルミレインとはまた違ったおねーさん感が台無しだ。ルミレインもルミレインで甘いものがあると台無しだが。


「獣王を倒した上に、()炎竜王ちゃんを味方につけたのねぇ。カナンちゃん、どこかの国と戦争やっても勝てそうねぇ……」


「ふふ、国なんて滅ぼしたっていいこと無いわよ」


「まあ、なんじゃ。カナンちゃんほどの強者をいいようにこき使いたい輩もおるからのう。そういうのに取り込まれぬよう、気を付けるんじゃぞ?」


 孫を心配するおじいちゃんの図。

 しかしカナンやオレをいいように利用しようとする連中か……。

 前にもオイカワとかいう奴がいたな。あれからアイツどうしたんだか。




 それからギルマス諸々の報告が終わると、状態のいいワイバーンの死体の提出やら今回の依頼としての報酬の受け取り手続きやら色々とやって、解放されたのは昼前くらいになってからだった。


 リナエリとクラッドさんとは今日は一旦解散した。討伐したワイバーンの数に応じた更なる報酬を後日支払われる予定だ。

 3人ともまだ当分はこの国に留まるつもりらしく、また高ランクの依頼があれば一緒にこなそうと約束した。


 ちなみに今日の夕方頃に手渡される依頼の報酬は現金だそうだ。500万ゴルドという、今のオレたちからしたら微妙な額だが。それでも大金には変わりない。



 その後のこと。




「ん~、新食感! これ美味しいわね!!」


「料理もこれほどまでに進化していたのだな……! 凄いぞイルマ!」


 目の前のどんぶりの中から黄色い麺をフォーク片手に啜り、頬をとろけさせる二人。


 オレたちは何を隠そう、何も隠してないが昼食にラーメンを食べに来た所である。

 お店の内装はというと、日本の古きよきラーメン屋といった風体で、地球に帰ってきたんじゃないかと勘違いしそうになりそうだ。


 そんなラーメン屋にチャイナドレスのお姉さんなど、様になりすぎではないか?


 肝心のラーメンはというと、これでもかというくらい濃厚な鳥の白いスープがこれまた美味い。うっひょ~。卓上調味料まである。倒しちゃダメだぞ。


「おーちゃんってこの〝はし〟っていうの使えるのね」


「ん、ああ。昔は日常的に使ってたからな」


 カナンも同じ〝鳥無双〟という名のラーメンを啜っているが、オレのがハーフサイズなのに対し、カナンは大人でも食べきれなそうな量をもう半分は食べている。


「あぁ、癖になりそうだ。素晴らしいな、この〝げきから〟というのは」


 一方のドレナスさんはというと、極辛というメニューを啜り唸っていた。

 血の池のように真っ赤なスープに具が浸されているその様子は、見ているだけで舌が痛くなってきそうだ。炎竜だから辛いの平気なのかな? というかむしろ辛さを楽しんでそうでもある。


 店長のおっちゃんがびっくりするくらいの食べっぷりでスープまで飲み干した二人は、まだ食べ終わってないオレを待ちつつ軽く会話をする。


「そういえばドレナちゃんのその服ってどこで手にいれたのかしら? 結界の中に仕立て屋さんがあったりするの?」


「ああ、これはワタシの魔力で作り出したものだ。昔は竜形態も人化形態も関係なく裸で活動してたんだが、姉さんがうるさくてね。今ではこの服、気に入ってるんだ」


 魔力で服を作る……?

 そんなことできるのか。まあ、魔霊形態のオレもなんかコートみたいの纏ってるしな。


「なかなか似合ってて可愛いわよ。私たちも同じ系統の服を持ってるから、ここを出たらお揃いにしてみない?」


「おお、それは名案だ! 二人にもこの服はとてもよく似合うと思うぞ!!」


 うーん、ガールズトーク。男勝りと思っていたドレナスさんにもそういう1面があると知れた所で、いよいよオレもスープを飲み干した。


「けふっ、ごちそうさま」


「きれいと食べれて偉いわねー。よしよし。という訳で、これから着替えるわよ!!」





 *






 腹ごしらえも済み、またあの半月状の霊峰へ向かうオレたち。


 オレを含めて全員、チャイナドレスで統一しているというなかなかな格好だ。カナンもけっこう似合ってるし。オレも……似合ってるんだろうなぁ……。


 それはともかく、目的地までかなり距離があり、ドレナスさんが竜形態になって飛んでいこうとしていたのでさすがに止めた。

 飛んだ方が速いとはいえ、そんな事をしたら騒ぎになるどころじゃない。


 なので前回と同様、列車とバスに乗って向かう事にした。


 そして目の前の霊峰の麓には、ひたすらに広大な荒野が広がっていた。舗装された道が、この場所に巨大な魔法陣を形成している。


 するとドレナスさんは、何かに気づいた様子だ。


「この感じ……もしやここは、嫉妬の蟒蛇(ハイドラ)を封印した地か?」


「あら、知ってるの?」


「知っているも何も、アレを封じたのはイルマと当時の七王全員だからな。アレは我らが総力をあげて戦って、ようやく渡り合えた化け物だった……」


 特級モンスター〝嫉妬の蟒蛇(ハイドラ)〟。

 準とはいえ特級を冠する魔物が8体集まっても勝てないなんて、特級モンスターの中でもかなり強い存在なのではないだろうか。ひょっとすると、黒死姫よりも……


 ともあれ、オレたちは先を急ぐ。


 そして霊峰の山体である黒い岩壁にたどり着くと、それに沿って進み、半透明な結界で塞がれた出入口にたどり着いた。


「ここはイルマセク様の御住まいの門。何用だ?」


 前に来た時には門番なんていなかったのに、今日は槍を持った若い男の人が構えていた。


「ちょっとイルマちゃんに用があってね。カナンとドレナスが来たって言えばわかると思うわ」


「カナン? ああ、先日の客人の娘とかいう」


「しかし、仮にお嬢さんがカナン本人だとしても、今は客人ではない。申し訳ないがここを通す訳にはいかない」


「くはは、良い度胸をしているな小僧。我が主を信じられないか?」


「ドレナちゃん、暴力はダメよ」


 門番を無理やり力で押さえ込もうとしていたのか、カナンに止められて分かりやすくしょんぼりしてる。尻尾が落っこちてるし。


 しかしなぁ、どうすれば信じてもらえるか……。ルミレイン経由でまたイルマのおっさんに手紙を送って、後日また来るっていう手もあるが。


 んー……。あ、そういえば。


「なあなあ、これってどうだ?」


 オレは頭を傾けて、ふとツインテールの左に飾られた髪留めを門番さんに見せてみる。

 蒼い龍を象った髪留めだ。


「こ、これをどこで……」


「イルマちゃんにもらったのよ」


「し、失礼しました! イルマセク様に報告して参りますので、そこでしばらくお待ちいただけますか?」


 態度を一変させ、門番の一人が結界の中の転移陣に乗って消えていった。イルマのおっさんにこの事を知らせに行ったのだろう。


「わかればいいのよ、わかれば」


 それから待つこと数分。それは、突然上空から降ってきた。



「くっはははははっっ!!! 待っていたぞ! カナン! オーエン! そしてっ、ドレナスよ!!!」


 なんだこのデジャブ。上から降ってきたイルマのおっさんは、ドレナスさんめがけて拳を打ち付けた。対するドレナスさんも拳でそれを受け止め、ニっと笑みを浮かべる。


「久しいな、イルマ! 100年間、会いたかったぞ!!」





 ――






「――まさかお前程のヤツが誰かに従うとはな」


 和風な茶室にちゃぶ台を囲んで話をする、おそらくこの国で最も力をもっている4人。


 話は、ドレナスさんがカナンに従っている旨から始まった。


「100年間、ずっと貴様への恨みを募らせ生きてきた。だが、それはワタシの思い込みが招いていた事だったと気づかせてもらったのだ。これからはこの娘の力になりたいと思う」


「ドレナスともあろうヤツをここまで丸くしちまうなんてな、カナンちゃんの方が俺より魔王に向いてるんじゃないか?」


「まだ従っていいなんて言ってないけどね……?」


 ずずっとお茶を啜り、一息つく。

 もっとピリピリするかと思ってたんだが、思いの外穏やかだな。


「して、姉さんは……元気にしているか?」


「ふっ、元気過ぎるくらいだぜ」


「それなら、良かった……」


 再び沈黙が訪れる。二人の口数は少ないものの、ドレナスさんの険の取れた顔を見れば、なんだか良かったと思えた。


「それじゃ、私たちはもう帰っていいのよね?」


「ならばワタシは姉さんに顔を会わせてから共に行くとしよう」


「そう急ぐな、今度は俺が聞きたい事がある」


 なんだよ、早く帰って主様(ますたー)と久々の温泉に浸かりたいのに。



「率直に聞こう。どうやって(・・・・・)結界の外に出た(・・・・・・・)?」


「ふっ……。結論から言うと、迷宮(ダンジョン)の空間超越能力を利用した」


「迷宮だと? だが大結界は……」


「イセナ大結界は、迷宮の権能すら阻害する。本来ならばな。しかし、外部からの協力者がいたのだ。

 そいつは自らを〝騎士〟と、名乗っていたよ」


 なんだか話がよくわからなくなってきた。

 が、とりあえず要点はわかる。


 ドレナスさん含むイセナ大結界に封印された準特級こと〝七王〟が、なぜ立て続けに外に出られているのか。


「……1年前、〝蛇王・シャンディア〟が結界から離れた湖上に出現し、〝混沌の勇者〟によって討伐された。


 その次は先日だ。大結界に面しているトゥーラムル王国領内で、このカナンちゃんらが獣王・マルドティアスを倒した。


 ――そしてお前だ。これらは全てその〝騎士〟とやらが仕組んだ事なのだな?」


「……そうだ。〝騎士〟は、七王に『迷宮の種』とやらを渡し、飲ませた。これを飲んでから我らは、迷宮をその場で生成しその権能を操る能力を得たのだ。

 我らはそれから各々結界に抵抗(レジスト)し、瞬間的かつ限定的な権能の穴を開けたのだ。そこへ針に糸を通すように、迷宮の根を外界へと繋げたまでよ」


 難しい話でついていけなくなってきたな。

 結界の外に出られた経緯はまだ一応は理解できてるが。


「なるほどね。それってつまり、どこかにあと4体、敵対的な〝準特級〟が潜んでるって事かしら?」


「そういう事だ、我が主よ。ワタシにはもう恨みなど無いが、他のヤツらは違う。イルマを恨み、復讐しようとする者もいるだろう」


 イルマのおっさんに挨拶しに来ただけなのに、大変な話になってきたな。


 ドレナスさん並みに強く、それでいて話の通じない魔物がどこかに迷宮(ダンジョン)を構えて潜んでいる……。


 〝心象〟を得た今のオレなら一体ずつなら倒せそうだが、複数体同時に来られたらさすがにまだ負けそうだな。


「イセナ大結界に自由に出入りできるのは、俺と俺が認めた者だけだ。その〝騎士〟とやらが結界を出入りしているという点、どうやら裏切り者が近くにいるみてえだな……」


 ふと、前回来た時にイルマのおっさんがルミレインに依頼していた事を思い出す。


 ――この国の上層部に、デミウルゴス教のスパイがいる……と。

次話でようやくイチャつかせられそう……(禁断症状)

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