不死鳥
ロイスとフィリアがいる地点からしばらく進んだところにある小さな町、ローデンブルグはケレテレスと他の都市を繋ぐ中間地点に位置しており。
宿が彼方此方に立ち並び、ケレテレスに向かう兵士や冒険者が多く立ち寄る町でもある。
その数多とある宿の中でも最高級の一つとされる珠玉亭の一部屋にパルティア達ーーー不死鳥の姿があった。
煌びやかな部屋の中心に置かれた貴族が使うような豪華なテーブルに地図を開き、今後の方針を決める為ミリシア、パルティア、ドルブの三人が話し合っていた。
「ロイスが居なくなったお陰で計画よりだいぶ速いペースでケレテレスまで着きそうだな」
パルティアはそう呟く。
「別にいいんじゃねぇか? 早く着いたって……」
「そうも行かないのよ、ケレテレスからは勇者のパーティーと一緒に行くから時間を合わせないといけないからね」
ミリシアは飲んでいた紅茶のカップをテーブルに置き、答える。
「まぁ、それもそうだな……」
「でも良いんじゃない、ケレテレスそこそこ大きな町だし観光して時間潰すのも悪くはないわよ?」
「確かにそれはミリシアの言う通りだ……それについては良いんだがシルフはいつになったら起きるんだ? 丸一日以上寝てるぞ?」
パルティアは大きな部屋の片隅に並べられた純白のセミダブル程度のベットの一つに横になるシルフに目を向ける。
「そろそろ起きる筈よ、そんな強い魔法でも無いしね……」
「それで、起きたら暴れたりしないよな? シルフに暴れられたら流石に敵わんぞ?」
「そりゃ暴れるでしょ……暴れない方がおかしいわよ」
「おいおい……こんなところで暴れたら流石に困るぞ?」
「だから私がいつ目を覚ましても良いように記憶処理の魔法を使えるように気を使ってるんでしょ?」
「そうか……まぁ、その時は頼む」
「ええ、任せて」
ミリシアはパルティアの顔を覗き込む。
その顔は複雑な表情を浮かべており、何かについて深く考え込んでいる様だった。
「どうしたの? この町についてからあんまり元気ないわね」
「いやまぁ…… ゲデェリって知ってんだろ?」
「パルティアの師匠?」
「嗚呼……」
ゲデェリ・フォーカス
その名前はミリシアも知っていた。冒険者パーティー不死鳥の創始者にして、王国最高峰の冒険者、唯一無二の龍使いだ。
現在はゲデェリは行方不明で何処にいるかは分からないそうだ。
と言うのもミリシアはゲデェリと直接的な面識が無く、ミリシアとロイスが不死鳥に合流した頃には既にゲデェリは行方不明となっていた。
「ゲデェリは行方不明なんじゃないの?」
「そいやミリシアには言ってなかったな……実はローデンブルグの領主のところで雇われてるらしんだよ」
「それまたなんでなの?」
パルティアはそれに対して「俺も知ってたら苦労はしねぇよ……」と大きな溜息を吐く。
「まぁパルティアはゲデェリさん事が苦手だからな」
「苦手なのはお前だろ? 俺はあいつが大嫌いなんだ! ドラゴンさえ使えなければロイスと大差ない雑魚のクセに俺にいちいちいばりやがるからな」
パルティアはゲデェリに対して怒り、そして隠れて怯えてる様にミリシアの瞳にはそう映って見えた。
「それだから会いたくないって事? 昔の恩人なのに?」
「んまぁ……そうだな、取り敢えずこの話はやめにしよう」
「まぁそうだな」
二人の感じから察するにゲデェリに対していい思いはない様である。
特にパルティアはゲデェリに対して怯えてるとも言える程である。
親無しだったミリシアはこのスキルに目覚めるまで村中から迫害を受けていた、だからこそ他人の機嫌を読み取る能力に長けていた。
悔しいがこればかりはこの世界の誰にも負けない自信があるくらいには。
「まぁ取り敢えずシルフが目を覚ましたら移動する様にしよう」
「そうだな、それがいい」
「ええ、そうね、日が明ける前には起きるでしょうしね」
三人の会話はまだまだ続いた。




