対ドラゴン全滅兵器 ロケットランチャー
ロイスはもっと何かを召喚することは出来ないか実験してみる事にした。
まずは、片手で扱えて、更には連射できる武器をイメージした。
モーゼルM712機関拳銃、と言う武器が召喚された。
先程召喚した鉄の塊に似ていたが、これは相違点として下部に細長い鉄の箱が付けられていた。
おそらくここに弾が込められているのだろう。横のボタンを押すと箱を外すことができたので、弾が尽きた時ように鉄の箱を四つほど召喚しておいた。
次に、もっと破壊力のあるーーー例えば爆発系魔法の様な物をイメージする。
そうすると、木の棒の先に鉄の塊がついたメイスの様な武器が召喚される。
紐のようなものが付いており、恐らくこれを引っ張ってぶん投げれば良いのだろう。
M24型柄付手榴弾、このメイスみたいな武器の名前らしい。
「試しに使ってみるか」
ロイスは紐を引っ張り、それを少し離れたところの木に手榴弾をぶん投げる。
ロイスが投げた手榴弾は木の近くに落ちる。
それから暫くすると、手榴弾は爆発を起こし、木の幹を木っ端微塵にする。
「す、凄い……上位魔法に匹敵する威力だぞ⁉︎」
ロイスは手榴弾をもう三つほど召喚する。
それを腰に差し、手には機関拳銃を装備する。これならば、ゴブリン程度がいくら襲ってこようと安心であろう。
ロイスはそれから2、3時間程度歩くと、だんだん木が薄くなり、平野へと出る。目の前には川が流れており、その奥にはどこまでも平らな大地が続いている。
「流石にこの腕じゃ川は渡れないよな……川沿いを歩いて行くか」
流石に、この腕を水につけるわけには行かないので川沿いを歩いて行くことにした。
ゴツゴツとした石が転がる河原を歩いていると、正面に数人の人影が見える。
何やら罵声を浴びせているようだったので近くの岩陰に隠れて様子を見ることにした。
「うっ……やめて、離して!」
「やっと捕まえたぞ、手間かけさせやがって‼︎」
ロイスがよく見ると、少女が数人の男に取り囲まれていた。
少女はロイスと同程度の年代で、ブロンドの長髪に、エルフのような鋭角の長い耳を持つが、それはエルフのそれより一回り小さくより鋭利だった。
エルフ以外の種族若しくはエルフの亜種と考えるのが妥当だろう。
「領主様の元から逃げ出すとは、愚かな小娘め……奴隷になる身を助けてくださったと言うのにな」
男達のリーダー格らしき魔導士風の男が少女に向かい言い放つ。
「あんな奴の言いなりになるなら、奴隷の方がマシです‼︎」
「恩知らずめ、まぁいい……連れて行け」
「はっ」
取り巻きの男達は少女を押さえ付けようとする。
少女は抵抗するが、その抵抗も虚しく男達の力の前にはねじ伏せられてしまう。
(どうする? どうすればいい、この状況……)
その様子を岩陰で見ていた、ロイスはどう動くべきかを考える。
明らかに目の前の少女は嫌がっており、どこからか逃げ出してきたのだろう。そして、今にでも連れて行かれそうな状況である。
普通なら、助けるのが王道的と言ったものだ。
ロイスも仲間に見捨てられ、この様である、尚更だれかを見捨てるなどしたくは無い。
だが、どう見ても彼女が訳ありなのも明白だ。面倒ごとに巻き込まれたく無いと言うのも本心だ。
(たしかに、逃げるのが最善……でも、此処で逃げたらあいつらと一緒だ!)
ここで見なかった事にしたら、ロイスを見捨てたパルティア達と何が違うのかーーー全くの一緒だ。
それに今自分には強力な力があるのだ、例え面倒な事に巻き込まれようと何とかなる程度の自信はある。
「おい、放してやれよ……嫌がってるだろ?」
ロイスは機関拳銃を片手に岩陰から飛び出す。
「あん? なんだこの餓鬼?」
リーダー格とその他の男達はロイスを一瞥する。
「今大人しく帰るなら俺は何もしない、けどあんたらがこれ以上やるって言うなら殺すしかなくなる……」
「この餓鬼、頭がおかしいんじゃねぇのか?」
「そうみたいだな……お前ら適当に殺しておけ、たっく……面倒くさい」
「はっ」
数人の男達は命令を下されると腰にかけていた剣を抜き、ロイスへと切り掛かってくる。
ロイスは手に握っていた機関拳銃ーーーモーゼルM712を向かってきた男達に対して引き金を引く。
ダッダッダッダダッダッダンダッダッダッダダッダッダダ‼︎
と、軽快な炸裂音が響き、向かってきた男達の身体に鉛玉が次々と貫通し、男達はあっという間に肉塊と化す。
「な、なんだ‼︎ それはマジックアイテム? 魔法? いや、スキル?」
最後に一人残ったリーダー格の男はあまりの出来事に困惑していた。
しかし、それも一瞬の出来事ですぐに彼の顔には狂気的な笑みが浮かぶ。
「ははっ……! これは面白い、面白いぞ‼︎ 冒険者時代を思い出すわ! せっかくだ、名乗ってやろう、俺の名前はゲデェリ、ゲデェリ・フォーカス、龍使いとかつて呼ばれたものよ……」
「ゲデェリ⁉︎」
その名前はロイスでも知っていた。
数年前、突如姿を消した伝説的冒険者で、Sランクスキル【召喚師王】を保有する者である。
そして、ロイスの所属している……と言うか所属していたパーティー、不死鳥の創設者だったりする男だ。
「その反応、俺のことを知ってるようだな……まぁ、訳あってここの領主様に従ってるんだよ、そんなのはどうでもいい‼︎」
ゲデェリがそう言うと、彼の付近に大きな魔法陣が展開し、そこから黒い鱗を持つドラゴンが姿を表す。
「お前のその力なら、俺を楽しませてくれるよな⁉︎」
「嗚呼、やってやるよ……」
ロイスは機関拳銃のマガジンを入れ替えると、すかさず黒龍の片方に照準を合わせる。
「ガァァアアァァ‼︎」
黒龍は咆哮をあげるとロイスに向かい突進してくる。
ロイスはそれに機関拳銃のフルオートで喰らわせる。
銃弾は騎士の鎧にも匹敵すると言う黒龍の鱗をパスパスと貫通し、血液があたりに飛び散る。黒龍は怯み、その場に倒れ伏せるが致命傷にはなってないようである。
「食らえ‼︎」
ロイスはすかさず、腰に差していた手榴弾を怯んでいる黒龍に投げつける。
その次の瞬間、大爆発を起こし黒龍の肉を鱗ごと破裂させる。
それが致命傷になったのか、黒龍はピクリとも動かなくなる。
「なんだ、なんなんだ? その能力は‼︎ まるで異世界から来たとか言う勇者並みに強いんじゃねぇか⁈」
ゲデェリは嬉しそうな無邪気な笑みを浮かべる。
ゲデェリはそして確信する、この男なら俺の相棒のいい餌になるとーーー。
「合格だ‼︎ お前は最高だよ‼︎」
「どう言う意味だ?」
「お前は俺の相棒の餌として合格したんだよ‼︎ お前程の強者はあの弟子以来だ‼︎」
ゲデェリがそう言い放つと、先程より何倍も巨大な魔法陣が展開し、そこから優に三十メートルはあろうか巨龍が姿を表す。
「この威厳ある姿を見よ‼︎ これこそが、Sランク冒険者パーティーそのものに匹敵すると言う生ける災害! 古代龍だ‼︎」
ゲデェリは嬉しそうにそして誇らしげに、そう語る。
「ん、とっ……めちゃくちゃ強そうなドラゴン殺せそうな武器っと……」
ロイスがそう強くイメージすると、メイスみたいなのがぶっ刺さった鉄の筒が召喚される。
RPGー7
と言う武器らしい。
「どうだ? 抵抗なく食われると言うなら痛みな……!」
ドッガァァアアァァァァン‼︎‼︎
その瞬間、凄まじい爆音が響き渡った。