ハンドガン
ロイスは次の日の早朝、森の中を彷徨ってた。
昨晩は腕の痛みでまともに眠りにつく事すら出来なかったが、応急処置セットのおかげで、なんとか痛みに耐え、歩く事が出来た。
ロイスは昨日の突然召喚された深緑のポーチを強くイメージすると、それと同じものを召喚する事が出来た。
勿論、ロイスにはそんな召喚する能力は無いし、なぜ召喚できるのかは理解は出来ない。しかし、今は生き残れるならそれでいい。
そしてもう一つ気づいた事があり、鑑定者としての能力が完全に失われていたのだ。
鑑定者の能力で、その辺の物を手当たり次第に探って見たが、前の様に価値を調べることは出来なかった。
ならば、鑑定者の代わりに得た能力。と考えるのが妥当だろう。
だったら、他にも召喚出来ないかと考える。
まず今欲しいものは二つ、まず一つが食料。
二つめに片手でも扱え、余り力を使わないでも扱える武器である。
ロイスが食糧の事を強く考えると、紙に梱包された乾パンが出現した。
1904年型乾麺麭
それがこのパンの名称?らしい。
次に片手でも扱える武器を強くイメージする。
すると、おそらく握る処らしいものが付いた鋼の塊が出現した。
握り手の部分は木製の板のような物で固定されており、なにやら銃に見られるような銃口と引き金がある。
と言っても、ロイスの想像する銃というのは火縄銃のようなマスケット銃であるのだが。
M1911A1 ガバメント
それが、この鉄塊の名称らしい。正直、どうでもいいー。
「なんだこれ? 鉄砲の機構がこれに詰まってるのか?」
乾パンは良いとして、ロイスの知る銃のように着火する為の縄が見られない、なんとも珍妙な道具ーーーそれがこの鉄塊を見たロイスの率直な感想である。
鉄塊を懐にしまい、ロイスは乾パンを口に含みながら、森の奥へと進んでいく。
「旨くも無いけど、不味くもない……」
ロイスは乾パンのなんとも言えないゴソゴソとした味にポツリと言葉を漏らす。
暫く、薄暗い森の中を歩いていくと、目の前に大きな池が目に入る。
ロイスは昨日から水を一切飲んでいないうえに、それに加え乾パンのせいで口の中の水分が奪われたのも相まって池に吸い込まれるように近づいていく。
ロイスは無我夢中で池の水をすくい、それを飲み干す。ロイスは満足するまでそれを繰り返す。
「はぁー、生き返るぅ……」
ロイスは1日ぶりに乾きが満たされた安堵から深い溜息が漏れる。
「はぁ……歩いても歩いても森だし、これからどうすれば良いんだよ……」
ロイスはかれこれ何時間も森の中を歩き続けていたが、一切森を抜ける気配は無い。
パルティアはこの森は半日もすれば抜けられると言っていた気がするので、もうそろそろ抜ける筈なのだが、その気配は一切ない。
「これから、どうしよう……今日はもう休もうかな……」
ロイスがそう思った矢先の出来事である。
「ギギャァ‼︎」
「ガァゥ!」
森の茂みの中から、深緑の肌を持つ子供のような化物である、7匹のゴブリンが飛び出してくる。
ゴブリンは凶暴な顔つきで、ロイスに標準を定める。
今にでもロイスに飛びつきそうな勢いである。
「ゴブリン……? シャドーウルフが倒されたから森に戻ってきたのか?」
ゴブリン程度なら、ロイスでも剣さえあれば難なく倒せる相手である。
しかし今のロイスは剣さえ無ければ、片腕は再起不能。相手は複数。
普通なら勝てるはずが無い、だがロイスの懐には武器?と思われる鉄塊がある。
「これ、使うしか無いよな」
ロイスは懐から拳銃を取り出し、ゴブリンに銃口を向ける。
「ギャャ!」
先頭にいる、ゴブリンの合図で一斉に突っ込んでくる。
ダァン‼︎ ダァン‼︎ ダァン‼︎
ロイスが引き金を引くと、その拳銃が炸裂音と煙を放つ。
銃弾はゴブリンの眉間や腹部の貫き、緑色の体液を撒き散らし、その場に倒れ崩れる。
「なんだこれ、連射できるのか⁈」
ロイスの知る銃とは、連射が効かず、次弾を放つまであり得ないほど時間がかかり、弓より射程も連射力も無い。
所詮は魔法も弓も使えない者が使用する武器ーーーそれがロイスの銃へのイメージである。
「グギャャ!」
「ガウッ!」
ゴブリンは先頭にいた三体の仲間がやられようと、構わず突っ込んでくる。
ダァン‼︎ ダァン‼︎ ダァン‼︎ ダァン‼︎ ダァン‼︎
ロイスはマガジンが空になるまでゴブリンに拳銃を撃ち続ける。
ゴブリンは銃弾を受け、バタバタと崩れ去りあっという間に全滅する。
「す、凄い……」
ロイスは予想以上の出来事に、唖然していた。
こんな武器を無制限に召喚できる能力ならば、それこそパルティアの全能に匹敵するようなチート能力である。
これがあればドルブだろうがミリシアだろうが倒せるくらいの自信が湧いてくる。
そして、その時ロイスは強く決意した。
生きて帰って彼奴らに復讐してやる、と