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異魔の軛



ロイスが現在いる場所から西に向かい、更にミストリア王国領を超えた先にある小国、カルマクス公国。



その首都たるカルマ・ナーディアの郊外にひっそりと佇む古城がある。

 この古城はかつてカルマクス公国が所有していたが、20年前にある国際的に活動するある団体により買い上げられた。

 その古城のかつて大広間として使われていた空間に数名の姿があった。



「……と言う事で以上です、要約しますとミストリア王国の極東地域……すなわち魔大陸と接地する辺りで異常な程の魔力総量の激減が確認されました。この地域で何かしらの転移が発生した可能性が極めて高い、と考えられます」



眼鏡をかけた何処にでもいそうな平凡な顔つきの男が、テーブルを挟んだ先に座っている男に報告をしていた。



「それで、現在転移物若くは転移者による被害は確認されているのか?」



男は童顔で細身であったが、その発する声には貫禄が籠もっていた。



「現在、ミストリア王国極東支部が捜索に当たっていますが現状では確認されていません」


「そうか……しかし、前例から考えるに何かしらの転移が行われたのは確実だろう、警戒を強めた上、大規模な調査部隊と有事の際の鎮圧部隊を派遣した方がいいだろうな」



「と言うことは俺らの出番ですかい?」

今まで黙って部屋の壁に身体を寄せていた三十代前半程の筋骨隆々の大男が口を開く。



「そうだなオルグ、君の指揮する我が異魔の軛の最高戦力たる大隊の力が必要になるだろう」



オルグと呼ばれた筋骨隆々の男は、久しぶりに良い戦いができそうだ、と呟き肩を鳴らす。



「それで今回の事変については現地に私も同行する」


「それはどうしてですか、いつもの様に此処で待っていれば良いんじゃないんですか?」


「そうした方が良いのだろうが、この国の連中が……な?」



あ男のその言葉にオルグは納得した様にこの国の無能貴族は……と溜息を吐く。



「勿論、私単独で行動するつもりは無い、護衛にリアをつけるつもりだ」



男の比較的側に居たロングソードを背中にかけた女性が一歩前に出る。

 長身でボブカットの栗色の髪で、額の少し上辺りに二本の角が生えており、それが人間では無いことを示していた。

 


「サイモン団長。お言葉ですが何故この様な小国の言いなりになっておられるのですか? この程度の国なら異魔の軛の総力を尽くせば、こんな不快で無礼な国なんて滅ぼす事も容易い筈です」



リアと呼ばれた女性はふと疑問に思った事を質問する。



「人類……いや、この世界を守るべき我々が国を滅ぼしてどうする? それに滅ぼした後のメリットとデメリットを比べれば圧倒的に後者だ」


「それはそうですが、このまま言いなりになるおつもりですか?」


「無論、打開策はある、それ故にも私も同行する必要があるのだ、本当は本部を別な支部に移せれば良いのだが、そうも行かないからな」


「団長がそう言うのであれば私は何も言いません……無駄口が多くすいませんでした」



リアはそう言うと、表情を何一つ変えず一礼する。

 彼を護衛する立場の自分からすればこの古城に留まって欲しいのだが、彼を止めようとも思わない、彼の判断が間違っている事などそうそうありなどしない。

 


「それでオルグ、兵力を集めるのにどの程度かかる?」


「一日……いや、半日もあればなんとか」


「そうか、ではオルグは大隊の招集を頼む、明日の夜明けと共にミストリア王国を目指す」


「それで、対象は殺してもいんですかい? それとも捕縛? 或いは……」


「それは状況次第、と言った所だな。敵対的なら粛清、友好的なら和平、もし私達の手に負えない場合はかの聖龍王様(調停者)の御意志に任せるとしよう」


「そうですかい、あの常識知らずの馬鹿勇者の時と同じと……」



オルグのその言葉を聞いたサイモンはふっ、と鼻で笑って見せる。

 別にオルグの事を嘲笑っている訳では無い、どちらかと言えば自分に向けたそれだ。



「あの勇者のほど生温い者であれば良いのだが……兎も角、相手が穏便である事を祈るしか無いな」





 今から400年前に異世界から転移してくる強大な力を有した物、人、若くは化物に対抗する為に結成された組織ーーー異魔の軛。

 その19代目団長であるサイモン・ファルザールはいずれ来るかもしれない戦乱に懸念を抱いていた。

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