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ローデンブルグ戦ー4



ロイスは暫く館内を歩き回り地下に行けそうな場所を探し回っていた。

 度々物陰などから飛び出してくる雑多な武器を持った傭兵達をその度に撃ち殺していく。



 時々無抵抗なメイドの姿を度々目にする事があったが、わざわざ戦闘する意思の無い者に危害を加えようとも思わないので、彼女達に関しては無視していった。



(……にしても、いくら探しても見つからない、隠してあるのか?)



ロイスは辺りを見渡してみると廊下の隅にひとつだけ本棚が置かれているのが目に入る。



普通これだけ大きな屋敷であれば、本を専用にしまっておく部屋があってもいいはずだ。

 それもひとつだけ廊下の隅に意味ありげに置かれているのだ。

 だからそれが何なんだ、と言う話かも知れないが、ロイスにはそれがどうも気になって仕方なかった。



ロイスは本棚をどうにか動かさないかと横に押してみる。

 本棚は見た目よりずっと軽く、対して力を入れずとも動いた。



(やっぱり……)



本棚どかした部分に地下へと下降する階段が姿を表した。



ロイスはMP40を構えながら階段を降りていく、階段内は光石が所々に散りばめられており、ぼんやりと明るい。



 乾いた石の音が階段を降るたびに辺りに響き渡る。

 その度にロイスの緊張感が高まっていく。狭い一本道で先程の黒尽くめ男のもう片割れが来たら勝てる自信は無い。



ゆっくりと階段を降っていくと、何がが呻き声を上げながら這い上がっていくのに気付く。



「あがぁ……あぅ……」



 それは無数の触手や鍵爪に覆われた辛うじて人型を保っている異形の化物だった。



「こんなモンスター見たことないな……そもそも屋敷の下に何故モンスターが……」

 


ロイスはMP40でフルオートで弾が無くなるまで撃つ。

 軽快な炸裂音と共に空薬莢が床に転がり、階段を転がり落ちていく。

 無数の弾丸は目の前の異形の身体を貫いていく、玉虫色の何でも言えない体液を辺りに撒き散らかしていく。



「あぅ……がぁう……」



しかし、異形は倒れる事なく、びくともしない様子でロイスの方へと迫ってきた。

 異形は無数の触手をしならせ、勢い良くロイスへと伸ばす。

 触手の速度は通常のモンスターのそれの比では無く、風を切り裂く音が聞こえるほどだった。



触手はロイスの右肩と左脚を貫き、下腹部をかすめる。



「う…っ…!」



ロイスの肩と脚に激痛が走る、左腕を噛みちぎられた時に比べれば、まだマシなのだろうがそれでも耐えられない程に痛い。



ロイスは触手を抜こうともがくが触手に無数の返しの様な針が生えており、抜こうにも抜くことが出来ない。



その時、異形の身体が腹部から頭部に掛けて真っ二つに裂ける、その裂け目の触手などの遮蔽物に隠された奥に縦長の人間の口をそのまま大きくした物が見える。

 怪物は触手を収縮させてロイスを引き寄せる。



「あ、へぇ? う、そでしょ⁈」



ロイスはこの異形の怪物が何をしようとしているのか察する。

 今まだ何度か死地を乗り越えてきたロイスではあるが、流石に此奴に飲み込まれて生きている気がしない。



「あがぁ……がぅ……」



口元までロイスを引き寄せると、口を更に横に大きく開く。

 ロイスはそこに咄嗟に柄付手榴弾を投げ込む。




ロイスが口に飲み込まれる一歩手前の瞬間で手榴弾が起爆する。

 ロイスは爆風に吹き飛ばされ、背後の階段に身体を思いっきり打ち付ける。

 その時に肩と脚を貫いていた触手が抜け、そこから血が溢れ出す。



「うぁ……痛い……」



 ロイスは回復ポーションを一気に飲み干し、傷を修復させる。



ロイスは眼前の異形の怪物に目を向ける。

 異形は手榴弾により上半身が吹き飛び、下半身だけになりながらもロイスへ向けてのろのろと歩いてきてくる。



ロイスは手榴弾を召喚し、異形にとどめを指そうと向かうとするが視界が揺らぎ、その場に倒れ込む。



(視界は揺らぐし……身体中は痛いし………次は無いかも)



ロイスはゆっくりと身体を起こし、既に目の前まで来ていた異形の下半身の切れ目に手榴弾を突き刺し、思いっきり蹴り飛ばす。



異形は階段を勢い良く転がり落ちていき、一番で扉を巻き込み大爆発を起こし、扉ごと木っ端微塵に吹き飛ばす。



異形がもう二度と起き上がらない事を確認すると階段を駆け抜ける。

 階段を降りた先は大きな地下室だった。



そこは薄暗いじめじめとした大きな石造りの部屋だった。

 先程の醜悪な怪物が無数におり、黒尽くめの男、小太りの貴族と思わしき格好の男の姿があった、恐らく小太りの男がこの地を収める貴族なのだろう。



ロイスがふと、後ろの方へ注目すると、柱にフィリアが縛り付けられているのが目に見える。



「フィリア‼︎」


「ロ、ロイス、気をつけて‼︎ 流石にロイスもこの化け物には……」



「やっと来たか、お前がゲデェリを殺した奴か……ふんっ、どんな勇しそうなのが来ると思ったら見るからに弱そうでは無いか」



ナールマンはロイスを見て嘲笑う。



「いいどのみち俺の最強の軍勢が敗れるなど有り得ない、嬲り殺しにしてやろう‼︎」



ナールマンがそう言うと、今まで静止していた異形の怪物達が動き出す。



(流石にこの数を相手にするのは無理だな……だったら……)


 

ロイスは何か相手の視界を遮れる物をイメージする。

 全体的には四角く、底部が丸みを帯びている鉄の塊が召喚される。



   

       M15 白リン手榴弾



と言う名称らしい、手榴弾と同様にこのピンの様な物を抜いて使えばいいらしい。



ロイスはそれをナールマンの真下へと投げる。



「なんだ、この鉄っころは?」



ナールマンは投げつけられた発煙弾を不思議そうにマジマジと見つめる。



    そして次の瞬間ーーー。



「ぶわぁ⁈」



発煙弾はモクモクと白煙を上げ、周囲を覆い尽くす。



「おげぇ‼︎ い、いでぇ、な、なんだごればぁ‼︎」



ナールマンの肌に白燐が纏わり付き、ナールマンの皮膚が爛れていく。

 その光景は煙に覆われて誰かしらが見た訳ではない、当然本人にも。

 しかし、その見た目はただでさえ醜悪な彼の容姿を更に醜く、痛々しいものへとしていた。



ロイスは口を手で押さえながらも、フィリアの元へと向かう。

 此方はナールマンの側と比べれば余り煙は届いていないが、此処も煙が充満するのも時間の問題だろう。



白燐がロイスの身体に纏わり付き、皮膚が焼ける様な痛みが走る。いや、本当に焼けているのだろう。



「ふ、フィリア‼︎ 大丈夫?怪我とかしてない⁈」


「私は大丈夫です……ロイスは怪我とかしていませんか?」


「うん、一応は大丈夫だけど……今は取り敢えず逃げよう」



ロイスは腰に下げていた短剣で縄を手側よく切っていく。

 その手つきは慣れた物で、あっという間に縄の全ては切り解ける、ロイスとて冒険者だナイフを使うのは慣れている。



「そうですね、にしても何ですかこの煙? なんかニンニクみたいな臭いが……」


「とりあえずこの煙は吸わない方がいいよ、皮膚についただけで爛れるみたいだし」



ロイスは腕の柔らかい関節部の皮膚が爛れているのを一瞥する。

 フィリアは咄嗟に口元に手を当てる、ロイスの腕を見て煙の危険性を理解したのだろう。



「早く行こう」



ロイスはフィリアの手を取り、階段の方へと走る。

 煙の中から、異形の冒涜的な怪物が姿を表すが、彼等に動きは無い。

 恐らく他人に命令されない限り動けないのかもしれない。

 ロイスは棒立ちする異形を無視し、階段のある筈の方向へ一直線に向かっていった。

2人は毒煙の充満する地下室から階段を駆け上がる。

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