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『七行詩集』

七行詩 531.~540.

作者: s.h.n

『七行詩』


531.


貴方は私の本になる


貴方の歩く道を辿り


貴方の表情を見つめ続け


私はそれを 記録する


野原を彩り 風香らせる 草花と


貴方は同じく 呼吸している


太陽の下で 貴方は最も 力強く生きている



532.


実らぬ恋は 涙とともに 土を肥やし


愛はただそこに在り続ける


受け取る貴方が居なくては


私の手から 溢れるばかり


こぼれた先の 地面に咲いた 花を摘み


花束にして いつか貴方へと贈りたい


貴方に会って 届けたいものが沢山ある



533.


私が画家であったなら


ただ在るがままに 貴方を描くことができたなら


それは時代の名画となるでしょう


私が詩人であったなら


生まれる言葉は 貴方が駆けた 野に咲く花


それらを集め 花束にして贈りたい


貴方がいた場所に これだけのものが咲いたのだと



534.


窓際の鳥が 羽ばたいたら


二人で出かけ 戻らず旅をしてみたい


世界からは 逃げられないと 分かっているけど


私は知っている


真実は それだけではないということ


二人は互いから 決して逃げ切れないことも


他の何者も 二人を引き裂けないことも



535.


私にはわからない 人を知ろうと思うなら


固く結んだその口から


一体 何を聞き出せば良いのか


貴方は私ほど 多くを話してはくれない


けれど 流れを作る 落ち葉の中で


詩だけを探して 拾ったような


貴方が教えた言葉を 私は口にしている



536.


奇跡は起こり続けている


一つの奇跡に 未来は作られてゆくから


それは貴方が生まれた頃に起き


貴方を知った頃に起き


私は支配されるように


あるいは導かれるように


必然の未来へ 道を辿る



537.


いつか魂で 結ばれる日まで


大地に祈りを捧げます


雨が降れば 滝を作る石段のように


露を吐き出す 森海のように


ひび割れるまで 苔のむすまで


古くから変わらぬ風景とともに


貴方とずっと 暮らしたいと



538.


次々と 想い溢れるこの部屋は


広がり続ける宇宙のよう


その宇宙で 貴方を失ったとしたら


途方もない距離を見渡し


再び見つけ出すことは できるでしょうか


私はいつから この部屋に浮かび


貴方に会えず 漂っているのか



539.


アルプス小屋に日が射せば


人の手では 決して生み出せないであろう


銀色の世界が 窓の外に広がっている


私があげられないものは


それが広がる場所まで 見に行きましょう


あの美しい山の麓まで


鉄道は続いたのだから



540.


真冬の闇の中でも


存在を 知らせるライトを持っていてください


私にだけ分かるように


宝の在り処を 知らせる印をつけてください


それを見つけて 閉じ込めることも


失うこともないように


重ねる手から 零れることのないように




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