表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ 出会い






「きょ、今日は日付が変わる前に帰れた……」



 俺――皆本みなもと雅彦まさひこは、典型的な社畜だった。

 毎日、この時間まで残業は当たり前。というか給料明細に残業代が書かれてないので、会社の傀儡もいいところだった。しかしながら何の取り柄もない男である俺は、今の会社を辞めたら行き場がない。食っていくためには、死に物狂いでしがみ付くしかないのだ。


 そんな中でも、今日は恵まれた一日だったと思う。

 上司からの嫌味攻撃も、平均と比べれば少ない時間だったし。それに何よりも、取引先からのクレーム処理もスムーズに行えた。


「……これなら、なにか趣味に時間を割けるかな」


 手短にシャワーを済ませた俺は、時刻を確認してそう考える。

 いつもなら深夜の二時~三時に帰宅し、五時起床のための準備を進めるところだが。なんと、今日はまだ日付が変わっていない。

 それなら、なにか楽しめることがあるはずだった。

 例えば古ぼけたパソコンを立ち上げて、昔やっていたオンラインゲームだってできる。俺は喜び勇んでコンピュータを起動し、マウスを動かした。


 ――が、しかし。


「う、そ……だろ……?」


 久々に開いたオンラインゲームの画面。

 そこに書かれていた文字は、信じられないものだった。


「サービス、終了……!?」


 ――そのゲームは、もう終わっていた。

 それも今から五年前に。それは俺が今の会社に入社して、多くの仕事を割り振られるようになった頃合いだった。


「………………」


 浦島太郎の気持ち、といえばいいのだろうか。

 自分が忙殺されている間に、世界は大きく変わっていた。ためしに普段は見ないテレビを点けると、ニュースがやっており、そこに並ぶ文言はどれも……。


「駄目だ、知らない言葉ばかり……」


 そうだった。

 俺は、完全に世間の流れから取り残されていた。

 アパートと会社の往復しかせず、他人との会話もなく、交流もない。そんな生活を続けること九年間。俺の目の前は完全に真っ暗闇になっていた。


 改めて絶望感が全身を包み込んだ。

 いいや、虚無感とも呼べばいいのだろうか。


「いったい、どうすれば――――ん?」


 それに、押しつぶされそうになった。

 その時だ。


「これは、深夜アニメ……?」


 俺の目に飛び込んできたのは、テレビに流れる映像。

 それはいわゆる深夜アニメと呼ばれているそれで、しかし何やら俺の知っているものとは少しばかり違いがあるようにも思われた。

 そう、例えば――。


「異世界転生……? なんだ、そりゃ」


 これまた、知らない単語。

 俺は少しだけため息をつきながら、その言葉の意味などを調べ始めた。すると検索に引っ掛かってきたのは、とある小説投稿サイト。

 そこではどうやら、異世界に転生して冒険する物語が流行しているらしい。

 しかも、主人公はみんな俺みたいな社畜ばかりで。


「は、はは……!」


 そこまで調べて、俺は笑ってしまった。

 本当に知らないことばかりで、なんだか涙がでてくる。


「でも、これなら……」


 だけども、そこで俺はふと思った。

 実は学生時代は文芸サークルに所属して、そういうものには一家言ある。

 これならもしかしたら、俺にも書けるかもしれない。今の仕事に頼らなくても、食べていけるかもしれない。そう思った。


 だから、すぐにサイトに登録して執筆フォームを立ち上げた。

 そして書き始める。


【――舞台は異世界。女神が統治するそこでは、人々がみな平和な暮らしをしており、誰もが笑顔を浮かべていた。しかし、その平和も長くは続かない。魔王が現れ、世界は混沌に包まれた……】


 そこまで書いてから、俺は手を止めた。

 そういえば、ヒロインをまったく考えていなかった。


「そうだな。とりあえず、この女神をヒロインにするか」


 そうとなると、容姿を決めなくてはならない。

 俺は再び画面に向かった。


【――長い蒼の髪に、金の瞳。絶世の美女といっても過言ではない顔立ち。スラリとした体躯ながら女性らしい身体つきをしている。服装は羽衣のような薄いドレスで、その存在感は見る者すべてを魅了する……】


 そして、そこでふと筆を止める。

 どうやら熱中している間に、寝る時間が近付いてきたらしい。


「今日はここまでにするか」


 俺はパソコンをつけたまま、その場に寝転んだ。

 意識はあっという間に、暗闇の中へ……。



◆◇◆



「――ま。……さま。創造主さま?」

「ん……」


 なんだろう。

 誰かが、俺のことを揺すっている。


「起きてください。ご飯が冷めてしまいますよ?」


 ふわりと、良い匂いが鼻腔をくすぐった。

 そこに至って俺はようやく、ゆっくりと目を開く。すると――。



「………………え?」



 俺は、目の前にいる人物に息を呑んだ。

 だって、そこにいるのは――。



「おはようございます――創造主さまマスター?」




 昨夜、俺が思い浮かべた人物、そのものだったのだから……。



 


初めましての方は初めまして。

あざね、と申します。

ラブコメ挑戦二回目! という感じです。


第一話は22時頃に!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ