まだ平和。
なお、何時もはENDから構想を練る作者ですが、今作は一発ネタなので打ち切りENDになる可能性大です。
「試験的に職業システム導入したからー、観察してるから適当にしててねー」
という、神様の雑な神託が全生物の脳内に送り込まれてからしばらく、世界は職業システムとやらに適応していた。
調べようと思えば教会に赴いて自分がなんの職業に適しているかを教えてもらえるし、技能とやらのお陰で専門知識が無くても感覚的に色々出来たりする。
んで、俺は『魔法戦士』になった。
職業適性値は低かったけど、『魔導師』よりかは高かった。
ぶっちゃけ魔法を使ってみたい一心でなった。今は後悔している。
一度決定した職業を変えられなくはないけど、お布施がお高い。とてもではないが手を出せないので、俺は村の自警団になった。
「『斬撃』『斬撃』『火球』『斬撃』!! おらそこ! ビビんな! 村に押し入られるぞ!!」
今現在、俺は自警団を率いて村にやって来た山賊一味を迎撃している。
村育ちの男共はなんとも拙く、頼り無い。けど数は居るのでなんとかなっていた。
それに、今日は強力な助っ人が帰郷して来ている。
「バルト! さがって!」
一条の銀閃が走り、寝癖頭のまま山賊共の中心地に降り立ったのは幼馴染みの少女だ。
肩程の長さで切り揃えた銀髪を揺らし、聖剣と言われている得物を引き抜く『聖勇者』。
彼女は敵地の中心で猛烈な勢いで回転した。すると、聖剣から風圧が発生し、山賊一味が残らず吹き飛んだ。
「瞬殺かい」
「物騒な事言わないで、殺してないわ。死んだとしても打ち所が悪かっただけ。わたし、悪くない」
あっけらかんとした調子で宣う幼馴染み。
相変わらずな様子に、思わず鼻で笑ってしまう。
「ふっ。変わんないな、クリス」
「当たり前よ。一年や二年で変わるもんですか」
「いんや、分かんないぞ。もしかしたら陥れられて民衆に石を投げられたりしたらお前らぶっ殺してやる! って殺戮者になってるかも知れないし」
「うっわ」
「またはそこらのクズ野郎に弱味を握られてヒーヒーされたり、危険な薬物を使われてアンアンしたり」
「ぞっとするわね」
「後は普通に恋したり」
「なんでその発想が一番に来なかったの?」
「寧ろ世界を見て回ってるのに何一つ変わらないクリスの方が不思議なんだけど。一体世の中の何を見てたのキミ?」
「さぁ? わたしが『聖勇者』だって明かすとみんなへへぇーして何処も変わらないからじゃない」
「何故明かすのか、これが分からない」
「だって! 宿代がタダになるのよ! うちに何人居ると思ってるの!? 八人よ八人! しかも内五人は馬車待機で働かないし! 宿代だけでどれだけ掛かると思ってるの!?」
「世知辛い……。世知辛いよぉ」
勇者でもお金には苦労するらしい。
気絶してピクピクしている山賊共を縛り上げ、荷車に放り込んでいく。
最寄りの町までは大体半日掛かる。途中で山賊が目を覚ませばどつき、町の警備隊に引き渡して褒賞金を貰い、また半日掛けて引き返す。
という、貧乏くじを引いてしまった。
「えぇー、俺、一番頑張ったのにこれもやるの? えぇー……」
「まぁ、いいじゃない。わたしも付いて行ってあげるから。そんでそのままメンバーと合流するから」
「いやお前はゆっくりしてろよ、なんの為の帰郷だよ」
「勇者に休息はないの。ほら、行こ」
強引に手を引かれて、村の外に連れ出された。
十数人が詰め込まれた荷車だが、『魔法戦士』の腕力なら余裕だ。
クリスと雑談しながら、荷車を引く。
休息目的じゃないなら、こいつはなんの為に帰って来たのだろう?
今日の一言。
作品情報のタグで不穏感を醸し出すスタイル。