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4話



目の前の板に浮かぶ文字をひたすらに見つめる。しかし結果は変わらなかった。


踊り子


どこからどうみても踊り子としか書いていない。踊り子って言ったら某竜探索に出てくる色っぽい女性キャラを思い出すが、この世界だと違うのだろうか?


男でも案外踊り子になれたり?やっぱり踊り子だから後方支援型なのだろうか?


…現実逃避はやめよう。この世界では踊り子は女性のみ見たいだ。その証拠にテキトー受付嬢の顔が盛大に引き攣っている。

いや、実は激レアな職業(ジョブ)でびっくりしてるだけかも知れない。


「あんた、実は女だったりする?」


「…いえ、れっきとした男です」


「そ、そう…」


激レア職業(ジョブ)の可能性は潰えた。

やっぱりそうだよなぁ…踊り子だもんな…


「ええっと…男で踊り子ってやっぱり珍しいんですかね?」


「聞いたことないわ」


受付嬢さんこっち見て喋ってくれません?あ、やっぱりいいです。受付嬢と一瞬目があったが、Gが集った三角コーナーを見た時みたいな顔している。


(はぁ〜、これから魔物と戦う時とか踊るように戦わなきゃ行けなくなるのだろうか。またはパーティー組まなきゃ行けないとか?

まず男の踊り子とパーティー組むような人っているのだろうか…)


考えても仕方ないと思い、職業(ジョブ)は踊り子にして剣やメイスとかを使うと決めた。職業(ジョブ)さえ設定していれば魔物にダメージ与えられるんだ、大丈夫だまだ慌てる時間じゃない。


そう自分に言い聞かせながら職業(ジョブ)を《踊り子》に設定した。


…格好良いのがよかったな…


「終わったんならさっさと退いてくれない?気色悪い…」


(こいつはこいつで職務放棄だしその態度はあんまりじゃね!?)


「あ、それとギルドタグは明日ぐらいには作っとくから。今日はもう上がる時間だし」


結局受付嬢は最後までちゃんと接客をしなかった。討伐者はギルドからしたら一応客になるんじゃないのか?はたまた身内?


それとも俺だけこの態度なのだろうか…

そんな事を考えながらギルドを出たら、イルルクさんから話しかけられた。


「おう、イツキ。職業(ジョブ)は設定出来たか?」


もしかしたらイルルクさんなら、今までも男で踊り子が居たか知っているかもしれない。そう思いついた俺はイルルクさんに聞いてみた。


職業(ジョブ)は設定出来たんですが…踊り子しか無くてですね。今まで男で踊り子っていまし「居ねぇ」あ、はい。そうですか…教えて頂きありがとうございます」


(やっぱり居ないのか。てか即答て…)


軽く落ち込んでいたらさすがに即答したのが悪いと思ったのか、気まずそうな顔をしながらイルルクさんが励ましてくれた。


「まぁ元気だせイツキ。職業(ジョブ)なんざ後から増える事だってある。適性があればな。

なに、イツキは初見で四腕狒々(クアトロゲラダ)の脳天に槍を突き刺せたんだ。職業(ジョブ)さえ設定していればあのまま倒せたかもしれねぇ。これから頑張ればいきなり槍術士とか槍聖になれるかも知れねぇぞ?」


そんなイルルクさんの慰めに気分が浮上した。我ながら単純だとは思うが、現代社会で仕事をしていたら褒められるなんて事は滅多にない。だから嬉しかった。


(それに槍聖とか格好良いな。こうなれば槍を使って行くしかないな)


そうにやにやしながら考えていたら、イルルクさんから残酷な事実を教えられた。


「ちなみに使える武器は職業(ジョブ)によって異なる。槍使いが剣を持っても職業(ジョブ)未設定と変わらねぇから気を付けろよ」


(なっ!?)

「そっ、それなら踊り子では槍を使って戦っても?」

「ダメだな。ダメージ無しだ」


そんな、槍聖の夢が…落ち込みながらも自分のステータスを思い出す。

ステータスには菩薩の幸運と書いてあったが、本当なのか疑わしくなってきた。職業(ジョブ)が踊り子しか無いのに幸運とはこれいかに。


これで踊り子の武器が良くなかったら完全に終わってるぞ…と呟く。


「すみませんイルルクさん。踊り子の武器って何がありますか?」


「あー…すまん。俺自身、踊り子の討伐者を見た事が無いからよく分からん」


それならばこの世界の踊り子は普段なにをして生計を立てているのだろう?流石に死活問題なので聞いてみた。


「なら普段踊り子の人ってどうやって稼いでいるんですか?」


「ああ、確かに気になるよな。その為に生業がある訳だ。討伐者に向かない職業(ジョブ)の人達が主に商人や農夫、船員や猟師って具合にな」


なるほど。全員が討伐者って訳じゃないもんな。それなら踊り子はどんな武器を使えばいいだろう。そうこう考えてたらいきなり背中を叩かれた。


「イツキ!そうゴチャゴチャ考えんな!使える武器が何なのかまだ分からねぇんだ。まずは魔物じゃなくて害獣狩りや薬草採取をしてから踊り子でも使える武器を探しても遅くねぇ!

一応護身用の片手剣とかは討伐専門ギルドが貸し出してくれる。薬草採取も普通じゃねぇからな。何せ小さい魔物ぐらいなら食っちまう食動植物だ。ほとんど魔物に近いからいい練習にもなる。何事も経験してからだぞ!」


イルルクさんはそう言いながらバシバシ背中を叩いてきた。気合いを入れるつもりで叩いてくれているんだろうが…ぶっちゃけ痛いです、イルルクさん。


ピロンッ

《貫通守護耐性》を入手しました。

《苦痛耐性》《危険察知》のLVが上がりました。


あ、LV上がった。それに《貫通守護耐性》って…。どんだけ強く叩かれてんだ。


「あ、そうそう。イツキは今日だけだがギルドに泊まれ。それと四腕狒々(クワトロゲラダ)の売却金の金貨1枚と大銀貨3枚の2割、大銀貨が2枚、銀貨と赤銅貨が1枚ずつな」


お金はありがたい。しかし貨幣価値がイマイチ分からないな。


「あの…イルルクさん。これってどれぐらい価値があるんですかね?」


「うっそだろ!?イツキがいた村はどんだけ田舎なんだ!?」


「ま、まだ物々交換が主流の小さい村でして…山の奥深い所にあるんですよ」


「あー、たまにあるよな。なんでそんな場所に村が?みたいな所。金が使えないからあんまし好きじゃあねぇなぁ…というかイツキって体力すげぇあるんだな。山奥にある村から逃げてきて気を失ったものの起きたと同時に四腕狒々(クワトロゲラダ)と戦闘出来るなんてなぁ…」


(やべっ、流石に無茶な設定だったか)

「あ、あはは…あ、あのそれでどのくらい価値があるんですかね?」


「おお、そうだったな。とりあえずパン一つが銅貨1枚だな。銅貨が50枚で銀貨1枚に交換出来るぞ。あと一般的な宿は1泊素泊まりで赤銅貨1枚だな」


上手く誤魔化せたみたいだ。その後、イルルクさんから聞いた感じだと大体銅貨1枚当たり100円ぐらいかな?そして現在の貨幣価値はこうなるらしい。


鉄貨=50

銅貨=100

大銅貨=500

赤銅貨=1000

銀貨=5000

大銀貨=10000

星銀貨=50000

金貨=100000

聖金貨=500000

光金貨=1000000

黄金貨=10000000


庶民が一般的に使うのは鉄貨から銀貨。商人や大商人、貴族が使うのが銀貨から聖金貨。王家が使うのが大銀貨から光金貨。

黄金貨ともなると国家予算を組む時にしか使わないらしい。ちなみに更に上があって神金貨って言うのがあるみたいなんだが、これは貴族に任命される時に渡される証みたいな物らしく普通は見る事はないそうだ。


(これだけでかい金額だとなんかもう意味わかんねぇな?しかも1枚で100万とかだろ?ジンバブエドルかよ)


そんな事を思わず考えてしまった俺は悪くないはず。とりあえず教えてくれたイルルクさんにお礼を言わなければと思い感謝を伝えた。


「気にすんな。最近はお前さんみたいな礼儀正しい奴が居なくてなぁ…元ギルマスだとくっっっそ生意気な新人にちょくちょく喧嘩売られたりするんだよ。その度にはっ倒すんだが、まぁ良い気分じゃねぇわな。

それに比べたらお前さんは少し常識に疎いが教えてて気持ちいいから楽な方だよ。ま、なんかあったら俺を頼れや。じゃあなイツキ、討伐頑張れよ!」


そう言いながらイルルクさんは大通りに消えていった。

やっぱりイルルクさんは渋くてサバサバしていて、よく任侠映画とかに出てきそうなカッコ良い叔父貴って感じだ。


「あれがシブメンってやつか。凄い破壊力だな。さてと、俺も一応踊り子として使えそうな武器が無いか探してみるか。防具も探さなきゃな」

閲覧ありがとうございます

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