40話
今回の話は好き嫌いが分かれると思います。予めご了承ください。
空に飛び上がった下位飛竜が街の中心へ飛ぼうとする。引き留めるにはどうすればいいか。
「ザクロ、ロクさん。ちょいとどいてな」
「と、父?その柱…どうするの?」
ロクさんを抱き抱えたザクロが頬を引き攣らせながら質問する。それに対し倒壊した建物から引き抜いた柱を槍投げの如く掴んだ俺は、微笑みながら答えた。
「この世界は専用武器じゃないと致命傷でもダメージは入らないよな?でも肉体は怪我した状態にはなる……。ならこの柱を翼に突き刺したらどうなるんだろうな?」
「父…もしかして怒ってる?」
「まさかぁ。ただろくなダメージは与えられないし空飛んでてうぜぇしあからさまに人喰いだしなんかもうめんどくせぇからとりあえず落として殴ろうかなって」
「やっぱ怒ってる!」
そんな訳ないじゃんとにこやかに笑いながら全力で柱をほおり投げると、綺麗に下位飛竜の翼にぶち当たり、ギュアァ!?と悲鳴を上げながら落ちていった。落下地点に向かうと背中から落ち、落下の衝撃で出来た窪みにハマった下位飛竜がじたばたと蠢いている。
青龍刀化したロクさんを担いで下位飛竜の口元まで行き、口の中から脳髄に向けてロクさんを突き刺した。
「はぁーー、最初からこうした方が早かったか」
ビクンッと身体が跳ねた後、痙攣を始めた下位飛竜の口元から降りる。少しばかり呆気なかった気がしなくもないがまぁいいかと首を振る。
「しかしなんで前は使えてた魔法が使えなくなったんだ?職業が適正ではありませんつっても、使えてた時はただの踊り子だったんだが…」
「お兄さん!無事ですか!?」
「これは…イツキ君、君が倒したのか?」
よく分からない現象に答えの出ないまま歩いていると遠くの方からミーミルさんとユラちゃんが見えた。
「ミーミルさん、ユラちゃん!無事でよかった…。ラルさん達は?」
「お母さん達と一緒に避難してたんですけど、お兄さんが保護してくれた家族の女の子だけ居なくて…。知らない人が探しに行くより、多少顔見知りの、歳が近いわたしが居た方が大丈夫かなって」
「私は探したいと願ったユラちゃんの護衛だな。ラルにも許可はとってある。一応私も戦えるから心配はしなくていい」
胸を張りながら喋るミーミルさんから視線を逸らし、他の場所の被害状況を聞いてみる。幸い下位飛竜など大型の魔物が来たのはこの場所だけだったみたいで、その他の場所は強くても緑小鬼の上位種位しか出なかったみたいだった。
「それなら後は行方不明になった女の子を探し出して、避難するだけでいいのかな?」
「そうだな、街中の魔物は大体が警邏隊や討伐ギルドの面々が処理してくれているし、城門に関しては既に魔法使いによって新たな門が作られていた筈だ」
それなら俺もと、手伝おうとして違和感に気づいた。大量のレッドキャップは言っちゃ悪いが雑魚過ぎて経験値が足りなかったからレベルが上がらなかったにしても、緑小鬼やオーク、果ては下位とは言え飛竜やワイバーンを倒してレベルが上がらないのだろうか?
そして、その違和感の正体を俺は知っている…!
「ミーミルさん!ユラちゃんをっ、がふっ…!?」
「父!!」
下位飛竜の腹を食い破って出てきた魔物が俺の脇腹の3分の1を勢いのまま貫き、そのままユラちゃんに向かって行く。
ゆっくりと流れる時間の中でなんとか寄生虫みたいな形をした魔物の尻尾を掴み食い止めた思った瞬間、瓦礫から出てきた行方不明の筈の女の子が、黒く結晶化した腕で魔物を掴んでいた手を弾き飛ばした。
「なっ!?…にしてんだァァァ!!?」
「…………」
驚きと、それを超える怒りで叫ぶと同時に時が等速に戻る。黙りを決め込む女の子には目もくれず動こうとするが、膝に力が入らず無様に転ぶ。ザクロとロクさんも動いてくれているが、2人より先に魔物がユラちゃんと、ユラちゃんを庇うミーミルさんの2人を同時に貫く。
「クソがァァっ!!ザクロっ!ロクさんっ!絶対に、2人を助けろっ!!」
「分かってるけど、父がっ!父も…!」
泣きながらどうしたらいいか分からないといったザクロに、さっきまで無言で立ち尽くしていた女の子が襲いかかる。
「なんでっ…!クソっ、たかが肉を少し持っていかれただけだろうが!なんで動かねぇんだよ!!」
ギリギリと、歯が砕けそうな程食い縛っても動かない身体に苛立ちを覚える。
2人を貫いた魔物は体外に出たら死ぬ種類だったのか、ピクリとも動かずに居た。事切れた魔物の近くで、息が浅いがまだ生きている2人をどうにかしなきゃと焦りだけが募る。
そんな俺にロクさんが近づくのが見え、ロクさんにアイテム袋を託そうとする。ザクロもそれに気づきなんとか引き止めてくれていた。
だが、女の子がザクロの羽根に手をかけ一息にへし折る。
悲鳴をあげるザクロを無視し、そのまま羽根を持ちザクロをぶん投げると、素早くロクさんに近づきアイテム袋と共にロクさんを蹴り抜いた。
衝撃でアイテム袋が破け、中に入れていたポーションが他の素材と混じり合いながら地面に叩きつけられ割れていく。
何度目か分からない無力感と怒りで、頭がおかしくなりそうになるが、無常にもその時が来た事を視界の端に見てしまった。
さっきまで、浅く動いていたユラちゃんの体が止まっている。
自分も死にそうな怪我をしているのに、涙ながらに声をかけるミーミルさんが居る。
「ぎっ、グッ…がっ……!!」
視界がボヤけ、言葉を吐き出そうとしては失敗する。パキリと、とうとう歯が砕けた音が辺りに響く。
今の今まで邪魔をしてきた女の子は虚ろな目をしながら、まるで機能停止したかのように座り込んでいた。
ザクロはボロボロになった体を動かし、声にならない声を上げながら、割れた瓶に少しだけ残ったポーションをなんとか集めようとするが、罅の入った瓶からはぽたぽたとポーションが零れ落ちていた。
「ぴぎゅ…」
蹴り抜かれたロクさんが弱りながらズルズルと傍に近寄って来るのもそっちのけで嗚咽を漏らす。そんな俺に更に近寄り、ふるふると震えながらロクさんは青龍刀化した。
「……ぐっ…ぅ…、ろ、ロクさん…?なんで青龍刀に…」
伝わってくるまま青龍刀化したロクさんを握る。ぶるり、と1度だけ震えたロクさんの提案を受け入れたくは無かった。しかし現実的にも、可能性的にもそれが1番だと、ロクさんから説き伏せられる。
涙を流しながら、どうか恨んでくれて構わないと願いながら謝罪の言葉を口にした。
「すまない…すまないロクさんーーーー【舞踏】」
ピロンッ
スキル【舞踏】を使用しました。
曲を選んで下さい。
【黒狂化の詠】
【旅人の歌】
【闘猫踊】
【再生の謡】
【鬼人の舞】
「……【再生の謡】を選択」
ピロンッ
【再生の謡】を使用します。
戦闘スキル『自己再生』を入手しました。
戦闘スキル『周囲再生』を入手しました。
専用武器を確認…従魔【ロクさん】
使用回数4 残数0
使用回数に達しました。使用後 個体名【ロクさん】は死亡します。
「ああ…ちくしょう……やっぱりかよ」
閲覧ありがとうございます。
2023/03/19 再生の謡のスキル書き忘れてました。申し訳ありません




