38話
遅れてすみません
次の日は朝早くからザクロとロクさんを連れて依頼を処理しに向かった。久しぶりのラハの森は前に比べ騒がしく、あちこちで争いが起きているのを見ると、現場での喧嘩を思い出す。
「だいぶ様変わりしたな…、おっと。緑小鬼の群れの斥候か、よっと」
「ゲギャッ!?」
こちらに気づいたゴブリンの群れの斥候に近寄り手早く首を折ると、足を掴んでボーリングの如く本隊のゴブリン達に投げ込んだ。
荒々しい俺のやり方にびっくりしたザクロが大丈夫?と聞いてきたが最初、何の事か分からなかった。
少し考えると四腕狒々の時みたいに、吐かなかったからだと分かったので答える。
「確かに地球での俺なら人型であるゴブリンの首を折るなんて無理だったと思うぞ。
でも今は耐性スキルが上がったのもあるし、何よりこの世界で死にかけたからな。自分や仲間が死ぬより敵を殺す方が楽だ。
というか今更じゃないか?前にゴブリンの討伐があった時も蹴り飛ばして爆散させたじゃないか」
「そうだっけ?とりあえず、父が気にしてないならいい」
ザクロと会話している最中も緑小鬼やレッドキャップ、スライムや緑小鬼長等が襲いかかってきた。
「父、やっぱりおかしい。普通なら父みたいな人族を優先的に狙うって本能にあるから、こうはならないはずなんだけど」
と尻尾の毒針で緑小鬼長を仕留めながら、スライムの核を踏み潰すザクロの言う通り、どの魔物も一様に興奮していて同じ種族での連携は多少取れているものの、1番の獲物である人間より他種族の魔物と争い始める奴も居た。
「やっぱりスタンピードが始まるのか?異常だよな」
「ん…でも違和感がある。なんとも言えないけど、凄く気持ち悪い違和感」
魔物を片付けたザクロが匂いを嗅ぎながら嫌そうに首を振り、早めに依頼を済ませ帰ろうと提案する。了解、と返事をし手分けして薬草を集め、レッドキャップの《希少種》や《特異種》はどうするかと話すとこの森に来てから1番大きな気配がした。
振り向くと見た目はレッドキャップだが頭が紫色をしており、《希少種》かと思ったがよく見てみると紫色の中に黒くなりかけている場所があった。嫌なものを感じたので【鑑定】をしてみると案の定レッドキャップ《異形種》と書いてある。
「また《異形種》かよ…この短い間に出過ぎじゃねえか?つかこんなステータス有り得るのか?」
「強い?吾には強く感じないんだけど…」
すぐにでも攻撃出来るよう姿勢を引くくしながらも困惑しているザクロに、レッドキャップのステータスを教える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〔名称〕レッドキャップ《異形種》
〔名前〕ーーーー
〔性別〕無し
〔LV〕19
〔危険色〕白★★★
〔種族〕魔植物
〔固有スキル〕吸収Ⅱ
〔固有スキル〕異形進化Ⅰ
〔固有スキル〕変態Ⅰ
〔固有スキル〕逃げ足VI
〔固有スキル〕紫霧IV
〔固有スキル〕青霧IV
〔固有スキル〕同族徴収Ⅹ
〔スキル〕水魔法
〔スキル〕癒魔法
〔生命〕54
〔魔力〕172
〔体力〕56
〔剛力〕17
〔俊敏〕294
〔守護〕3
〔知性〕ーー
〔魔法〕癒 水
〔幸運〕7
〔精神〕4
〔説明〕
レッドキャップ《亜種》の異形種。改造された際にリミッターを外された為パワーは出るが、ゼロに何を足してもゼロである。
改造された際に知性は失っているが周りの生物を捕食して身体的特徴やスキルを奪える。
たまたま傍に居たレッドキャップ《希少種》を捕食しているが、元が弱い為そこまで脅威では無い。
〔称号〕
[不運][非力][異形者]
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「……めちゃくちゃ弱い?」
「だいぶ弱いな。そして説明欄がひでぇ」
ロクさんに青龍刀化してもらい仕留めようとすると目の前のレッドキャップは口を開き、見覚えのある魔法陣を浮かび上がらせた。
驚く俺と、警戒するザクロを尻目に、レッドキャップは絶叫した。舌打ちをしながらすぐさま首を刎ね、仕留めたが遅かった。
「やっぱりか!ザクロっ!気を引き締めるぞっ!」
「分かった!」
「「「「「「「「コキャァァァア!!!!」」」」」」」」
森の奥からザワザワと大量のレッドキャップが鳴き声を上げながら迫って来た。【黒狂化の詠】を使うが迷ったが、ほぼバーサーカー状態になるので今の戦闘には向かないと思いやめる。
「1匹1匹が弱いとはいえ、こうも連続すると腕が痺れてくるなっ!」
青龍刀モードのロクさんを振るう度に辺り一面に辛い匂いが漂う。既に30体は切ったと思うが未だ減る気配は無い。
どうにか乱戦に使えるスキルが無いか脳内でピックアップしていると、ザクロが【舞曲作成】で新しいものを作ればいいと閃いた。
それに頷き、【舞曲作成】を使うとレベルがⅩだったからか3曲程出来た。すぐさま【舞踏】を発動し、登録された曲を確認する。
増えていたのは【闘猫踊】【再生の謡】【鬼人の舞】の3曲だった。説明欄を見る暇は無かったので分かりやすい【鬼人の舞】を発動する。
ピロンッ
【鬼人の舞】を使用します。
専用武器を確認…従魔【ロクさん】
使用回数2 残数2
戦闘スキル『鬼の力』を入手しました。
戦闘スキル『軽業』のLvが一時的に上がります。
戦闘スキル『舞踏』のLvが一時的に上がります。
耐性スキル『貫通守護耐性』のLvが一時的に上がります。
次の使用可能時間は5分後です。
【黒狂化の詠】の時程じゃないが脳内で音楽が響き渡る。曲が進む度に力が漲り、更に『軽業』と『貫通守護耐性』のレベルが上がっている為か、レッドキャップの固有スキル『赤霧』をくらってもさほど痛まず、『軽業』のお陰でその『赤霧』もくらう前に避けれていた。
「おーーらおらおらおらおらぁっ!!ッふぅーーっ、気分は承○郎だぜ」
「…承○郎?あ、父が昔見てたアニメのキャラ?」
「YES、 I am!俺が大好きなアニメのキャラだっ!また見てえが無理な話だけどっ!てか今回は自動戦闘モードじゃなかったな!」
「ん、確かに。珍しいね」
雑談を交わしながらなんとか押し寄せてきたレッドキャップ達を片付けた。丁度【鬼人の舞】の効果も切れ、一息つくとスライムに戻ったロクさんがずるずるとレッドキャップ《異形種》の死体をを引きずってきた。
「ん?…ん、ロクさんが装授石に取り込んだら?だって」
「いやまぁ俺が倒したけどな?ミーミルさんの話じゃ、あの装備来てからじゃないと素材吸収出来ないみたいだぞ?流石にここだと恥ずかしいんだが…」
暗に嫌だと言ったがロクさんにもザクロにも今すぐと言われ、渋々【装備解放】をし踊り子衣装を身に纏うと手早くレッドキャップ《異形種》を取り込む。
誰も来ないでくれ、と願うが流石に今の戦闘を誰にも気づかれなかったとはいかず、騒ぎを聞きつけた他の討伐者に装備を見られ俺のメンタルは無事死んだ。
視界の端に《自家発電》の文字が見えたがスルーして装備を解除し、レッドキャップの山から戦闘中に時折戦った《希少種》や《亜種》《特異種》等を掘り出した。
◇
「すんすん。父、何かが焼けてる匂いがする」
レッドキャップの持ち帰り分をアイテム袋に詰めていると、不意にザクロがこんな事を言い始めた。
どこか別の場所で魔物の使えない素材を焼いて処分しているんじゃないかと聞けば、眉間に皺を寄せながら辺りの匂いを嗅ぎ、違う!と叫んだ。
走り出したザクロの後をついて行くと街に向かう街道に出てしまい、そこでようやく燃えている物が街だと気づいた。
閲覧ありがとうございました。




