36話
ムルブさんに連れられて討伐者ギルドに来た俺達はそのままギルドマスター室に向かった。今誰が対応しているのかと聞けばイルルクさんが領主様の対応をしているらしい。
現ギルマスのムルブさんが何故対応せずに迎えに来たのかと聞けば、領主様がイルルクさんと話したい事があるらしく、代わりに迎えを頼まれたみたいだった。
そうこう話していると部屋の前まで来てしまった。ムルブさんが1つ咳払いをしてノックをする。
「ご歓談中すみません、ムルブです。例の討伐者を連れてまいりました、失礼します」
どうぞと幼い声が聞こえ、ムルブさんが扉を開け、中に入ると男の子とイルルクさんが対面式のソファーでテーブルを挟むように向かい合う形で座り、男の子の後ろには騎士然とした男性が1人立っていた。
男の子は俺を見るとにこやかに微笑み片手を上げながら挨拶をし、イルルクさんは申し訳無さそうに目を伏せた。
「君が噂の討伐者君か、僕はアルバン・エッツォ。この街の領主をさせて貰ってるよ。あ、エッツォが家名ね。とりあえず、座って座って」
「イツキ・キサラギと申します。ご挨拶が遅れて申し訳御座いません。庶民なもので無作法をお許しください」
イルルクさんの隣に座ってから畏まった言い方で挨拶を返すと、イルルクさんとムルブさんから驚いた雰囲気が伝わった。
地球で社長の知り合いの社長達と飲み会やらなんやらがあったからとは言えず、黙っていると領主が笑いながら気にしなくていいよと言った。
「イルルクにムルブ、彼、中々良いじゃないですか。本当に田舎者ですか?」
「本人もそう言ってますしギルドタグ作る際も特に問題の報告は無かったのですが…」
「ふぅん…。ねぇ、イツキ君…だっけ?君、家名があるけど親族に貴族でも居た?」
何かを探るように聞いてくる領主の心配事を察した俺は高祖父に居た気がすると答えると、そうなんだと笑い、イルルクさんとムルブさんに退室するように促した。
ムルブさんはおかしいと感じながらも貴族からの命令には逆らえないのか出ていったが、イルルクさんは領主を睨みつけていた。
「おい…イツキは俺のお気に入りだアルバン。俺が大丈夫だって言ってんのに、一体何をしようてんだ?あぁ?」
「いやですねイルルク、僕と君の仲じゃないですか。そんなに睨まなくても、分かってくれますよね?」
睨むイルルクさんに騎士が苛ついたのかカチャリと剣を手に取ったのでイルルクさんに大丈夫ですよ、と答えた。
心配気にちらと見たイルルクさんだったが、俺の顔を見ると鼻を鳴らし口の端を上げると分かったと部屋から出た。
「イルルクさんもムルブさんも居なくなりましたよ。それで領主様は俺にどんなご用件でしょうか」
「うん?んー、急に態度が変わったね、まぁいいか。君、さっきの高祖父にって話、嘘でしょ」
「何故?高祖父と面識でもありましたか?」
「いやいやまさかぁ。僕、生まれてすら居ないから。ただ、キサラギって家名の貴族はこの国には居ないんだよね。居るのは隣国のディンベルラ帝国、だったかな?」
「もし仮にその隣国だとしても俺からしたら、そうなんですね、としか言えませんね。少なくとも俺は庶民ですし」
やはりと言うべきか密偵か何かと勘違いしている領主に庶民と言い張る。まぁ実際庶民だし隣国あるのも初めて知ったよ。
しかし当の本人はそう思わないみたいで不機嫌になりながら誤魔化さなくていいよと言った。
「君がイルルクに言った方面に村なんて1つも無いんだよね。イルルクは君が気に入ったから深くは追求しないらしいけど、僕はほら、貴族だからさ。なるべく隣国からの密偵は排除したいんだよ。分かるでしょ?」
「はぁぁぁ、密偵なんかじゃねぇよ、庶民だよ庶民。27万リルを1日で稼いで目を輝かすぐらいにはさぁ、分かるっしょ?」
「貴様ァ!!さっきから何なんだその口調は!?イルルクとか言う元ギルドマスターか知らん奴もそうだが、領主様は貴族だぞ!?そのような無礼な態度で良いとでも思っているのか!!」
「知らねぇもんに知らねぇと言って何が悪ぃんだよ馬鹿が!!頭かち割ってスライムでも詰めたら柔らかくなるじゃねぇのか!?」
面倒臭くなりながら適当に答えると、我慢ならないとばかりに騎士が怒鳴りつけた。
負けじど怒鳴り返すと真顔になり剣を抜いたので先手必勝とばかりに素早く立ち上がり剣を横腹から殴り折った。驚く騎士の胴体を強めに殴ると軽く吹っ飛び泡を吹いて意識を失った。
「なっ、き、君は何をしてっ、うぶっ!?」
「うるせぇよダボが。人が違うつってんのに間違った事ばかり言いやがってよぉ。排除したいのは分かるがよ、違ぇもんは違ぇんだよ?な?」
頬を挟み込むように握り、現場仕込みのドスを効かせながら話すと涙目になりながらも、でもと言い始めた。
「でもでもだってなんぞ知るか!!そりゃ確かにな、俺は嘘をついていた。命の恩人のイルルクさんを騙すようなマネをしちまっている。だけどなぁ、あの人に不利益になるような事はしねぇし、したくねぇとも思っている!それじゃあダメか!?あ"ぁ!?」
「そ、そりぇでいいでふぅ〜…」
「父、父、涙目だから許してあげて。まだ子供」
ガクガクと揺らしながら脅すとザクロからストップがかかった。舌打ちしながら離すと息を切らしながらソファーに寄りかかり涙目で睨みつけてくるが、お"ぉん?と、ニャ○ちゅうみたいなダミ声を上げ睨み返すとサッと目を逸らした。
ザクロから小さい子を虐めるなんて…と言われたが訂正する。
「こいつ、多分俺より歳上だぞ、ザクロ」
「「えっ」」
驚くザクロだったが1番驚いていたのは領主だった。なんでと呟く領主を無視しているとザクロから鑑定したの?と聞かれた。
「してねぇよ。ただ、俺のロリショタレーダーに引っかからなかったからな」
「…出た、無駄に高性能な父の変な能力」
「うるへ」
ザクロが呆れた顔をしていると、違うと呟き声が聞こえた。領主を見るとボロボロと泣いていたが、オッサンが泣いてもなぁと言うと急に立ち上がった。
「わ、私はまだ107歳だ!お前達人族年齢だと18歳だから決してオッサンでは無い!!」
「急に叫ぶな。あと107歳とか嘘だろ」
「ひっ!?お、お前がオッサンとか言うからだろうがっ!あと107歳は嘘では無い!か、かかか鑑定でもしてみればいいだろ!人族に私が鑑定出来るものならな!」
「OK、分かった【鑑定】…あ?マジかよ、種族妖精、年齢107歳…」
「何故見える!?」
見えたら見えたでぴーぴー泣くので、黙らす目的でまた頬を掴みながら鑑定結果を読む。そこにはこう書かれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〔名前〕アルバン・エッツォ
〔年齢〕107
〔種族〕妖精 《ホビット》
〔性別〕男
〔職業〕大地魔術師
〔生業〕伯爵 領主 上級貴族
〔LV〕48
〔生命〕178
〔魔力〕611
〔体力〕97
〔剛力〕88
〔俊敏〕39
〔守護〕17
〔知性〕290
〔魔法〕大地
〔幸運〕103
〔精神〕117
〔装備〕
上質な服 上質なズボン 妖精銀の杖《特異級》
〔戦闘スキル〕
《鑑定妨害Ⅶ》《大地魔法VI》《威圧Ⅱ》
〔耐性スキル〕
《苦痛耐性IV》《恐怖耐性IV》《絶望耐性Ⅲ》
〔日常スキル〕
《鑑定Ⅴ》《目利きⅤ》《舞踏Ⅲ》
〔ユニークスキル〕
《大地の気まぐれⅡ》
〔獣魔 配下〕無し
〔称号〕[妖精族からの使者][領主][愛国者][上級貴族][伯爵]
〔固有スキル〕《大地の手助けVI》
〔加護〕妖精王の加護
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぅん、大地魔法は種族特性なのか?てかこんなので伯爵かぁ…、なんかショックだな。もうちょい威厳があると思ったんだが」
「ぐむ"っ!?む"ーっ!!」
じたばたと暴れるので手を離すとシャカシャカと距離を取り、懲りずにキッと睨みつけてきた。
更に口元をもごもごさせながら杖を取り出したので攻撃だと判断した時、しまい込んでいたポケットからいつの間にか飛び出していたロクさんが杖に飛びついた。
俺とザクロが、あっ、と思った時には杖を飲み込み、妖精族の貴族は唖然としていた。
閲覧ありがとうございます。中々書きたい場所までいけません…。本当はこの話で行く予定だったんですが大体3000字程にしたかったのでもう少しかかるかもです




