35話
翌朝、ザクロのお腹の音で目が覚めた。
相当お腹が減ったらしくにゃーにゃーと鳴く為、ロクさんも真似をしてぴぎゅぴぎゅ鳴いていて笑ってしまった。
そのタイミングで扉がノックされ、開けるとユラちゃんが立っており、おはようとお互い挨拶をして皆で食堂に向かう。
「ん、今日の朝ご飯も美味しい。母は良い母になる」
「まだ本格的には作れないけどね。一応お兄さんと、い、一緒になりたいと思ってるから」
「ん、吾も協力出来ることは協力する。昨日ミーミルの所で話したような…」
「待って待ってザクロちゃん!それは内緒って約束でしょ!?」
わきゃわきゃと喋る2人の会話をなるべく聞かないようにしながらロクさんと朝食を食べていると、ラルさんがおはようと近づいてきた。
「ユラっ!あんた仕事があるんだからいつまでも喋ってるんじゃないよ!イツキの嫁になるならちゃんとしなっ!」
どうやらまだ仕事が残っていたのにザクロとお喋りを始めてしまっていたみたいだ。慌てて仕事に戻るユラちゃんに気をつけてと手を振り見送る。
頭が痛いねェと項垂れるラルさんにお手柔らかにと伝え、食べ終わったザクロとロクさんを連れて市場に出掛けた。
「ザクロとロクさんにこの間の四腕狒々を討伐した時のお礼をしようと思うんだけど、何か欲しいものはあるか?」
と聞いてみるとロクさんは頭の上でみょんみょんと嬉しそうに伸び縮みし、ザクロは遠慮がちにだが頷いた。
活躍出来なかったのに、と気にしているザクロの頭をわしわしと撫で回しながら市場を歩くと、ロクさんが入っていたビスマスを売っていた露店を見つけた。
ロクさん的には実家の気分なのか、露店を見てぴぎゅ!とひと鳴きしたのでザクロに見てもいいかと訪ね、寄ってみる事にした。
「あの時はビッサーラを捕まえるためにまじまじと見れなかったが、改めて見ると色んな鉱石やインゴットがあるな」
「ん、綺麗。父、これ何?中に針が入ってるけど、この人が作ったの?」
ザクロが目をキラキラさせながら指差す方を見ると、大小様々なルチルクォーツの結晶が並んでいた。
加工品じゃなくて天然物だと教えると凄い、と一言呟きずっと眺めていた。
「気に入ったなら買うか?」
「うん…うん、欲しい。吾はコレがいい」
真剣な表情を浮かべながら指さしたザクロが選んだ結晶を見てみると、小ぶりな大きさの単結晶と呼ばれる物で周りの水晶に比べ目を引きつけるような雰囲気を醸し出していた。
「お目が高いねお嬢ちゃん、それはついさっき入荷したばかりの品物で流れの討伐者から買い取ったもんだ。
頭も欠けてないし、石自体の透明度も高くて中に入っている金針も明るい色をしてるから、値段は大銀貨3枚と張っちまうけど、ここまでの代物は中々出回らないよ」
ニカっとした笑顔が特徴的なおじさんの店主がザクロに話しかけ、俺と目が合うと片眉を上げた後ああ!と声を上げた。
「あんちゃん、虹色鉛買っていった人だろ?今日はこんなべっぴんさん連れてデートかい?隅に置けねぇなぁ!」
「確かに虹色鉛は買いましたけど、この子は恋人じゃないですよ」
そうなのか?と首を傾げる店主に、家族ですと言うと妹だと思ったのかそれ以上は聞いてこなかった。ただ、買うかどうかは聞かれたので買いますと伝え代金を渡し、布に包んで貰って受け取った。
ザクロに渡し、嬉しげに頬を緩めるのを見ながら、頭の上に陣取るロクさんに欲しいのは無いか?と聞くと銀細工を売りにしている露店に向かってぴぎゅっと鳴いた。
「銀細工か…前も銀細工だったけど、いいのかロクさん?」
「ぴぎゅ?」
何が?とでも言いたそうなロクさんに、まぁいいかと思いながら露店に向かい、商品を眺める。
指輪や腕輪、珍しいものだと全て銀で作られた熊の木彫りが大銀貨1枚で置いてあった。
ロクさんはその熊の木彫りを見た途端、びょんびょんと激しい上下運動をし始め店主を驚かしてしまい、すみませんと謝ると気にしないでと笑われた。
ロクさんが熊の木彫り(銀製)を欲しがったので迷惑料込の大銀貨2枚で買わせてもらい、お釣りを受け取り店を後にした。
「父、それなに?ロクさんが欲しがった物だけど吾は前世で見たことある気がする」
「これなぁぁ、多分だけど他の転生者か転移者の仕業だと思うんだよな。ロクさん、これあげる前に鑑定していいか?」
みょんみょんと了承を得られたので鑑定してみると
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〔名称〕荒ぶる赤熊の像
〔階級〕希少級
〔用途〕無し
〔状態〕良好
〔相場〕星銀貨1枚
〔説明〕
孤高の彫金家、タロウ・ナカハラが作り上げた赤熊の純銀総仕上げ像。赤熊が荒々しくカミツキシャケを狩る様子を見事に表現している。材料の中に妖精銀が10%から15%程含まれている。
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と案の定、転移者らしい人が作ったものだった。自由に作っているなぁとザクロと話し、ロクさんに渡すと再び、もにょもにょと身体に取り込んだ。
身体は大丈夫なのかとも思うが、ザクロもロクさん本人も何も言わないので大丈夫なんだろうと納得し、ゆったり市場巡りをしていると、おーいと呼ばれた。
「どうしたんですかムルブさん、昨日も会ったのに。もしかして3人目の人が見つかりました?」
「いや、違ぇ。てか見つかってよかったぜ…。《緋色の架け橋亭》に言ったら市場に向かったって言ってたからよ、急いで来たんだ。イツキ、今から時間はあるか?」
「まぁ多少ならありますけど…何かあったんですか?」
そう聞き返すと真面目な顔をしながらムルブさんは、おう、と答えた。汗を拭いながら暑そうにするムルブさんに、近くの露店の飲み物を買って渡すと一息に飲み干す。
カップを露店に返してきたムルブさんはガシガシと頭を掻き、言いづらそうにしていたがため息を1つ吐いて喋り始めた。
「領主様がな、イツキに会いたいんだと。今討伐者ギルドまで来られてる」
「そうですか…それじゃあ今までお世話になりました。これからもお元気で。逃げるぞザクロ!」
踵を返し、走り出そうとしたら先回りをされてしまった。脳内に有名な某ゲームの画面が出てくる。
「イツキは逃げ出した。しかしまわりこまれてしまったってか」
「あ?何言ってんだ?てか逃げんなイツキ!頼むから!」
「嫌ですよ!領主って事は貴族でしょ!?初夜税とか重税を課す代名詞の!俺かかわり合いを持ちたくないんで!」
テンプレな貴族のイメージを伝えるとムルブさんはギョッとした顔でどんな偏見してんだ!?と驚いていた。
「いや確かにそんなのも居るには居るがうちの領主様は大丈夫だから!だから頼むってイツキ!助けると思ってな?なぁ!?」
「ちょ、わかりましたから顔面の圧が凄いんで一旦離れてもらっていいですか!?はぁ…本当に真面目な方なんですね?」
圧に負けて質問すると真面目ちゃあ真面目…かな?と不安な回答を貰ってしまい余計に逃げたくなったが、俺の想像するような貴族では無いことを念入りに押されたので会うことにした。
てか逃げられないように腕を掴まれてたしね!!
閲覧ありがとうございます。風邪引いておりました。申し訳ありません




