34話
「イツキ、居るか?」
「ムルブさん?どうしてここに」
入口から顔を出したのは現討伐者ギルドのギルドマスター、ムルブさんだった。
ムルブさんは何かを話したそうにしていたがタイミング悪く俺達の夕飯が届き、食べ終わった頃にまた来ると言うので一緒にどうですか?と誘った。
「いいのか?邪魔しちゃ悪いと思うんだが…」
「大丈夫ですよ。それにまた来てもらうのも悪いですし」
「そうか?ならご相伴に預かろうか」
と会話を交わし、ムルブさんと共に4人で夕飯を済ませた。
食べ終わって一休みした頃、ムルブさんが話を切り出した。
「実はな、今日来たのはそこマンティコアの嬢ちゃんの件なんだ。最初の顔合わせの時にスラムを調べるって話をしただろ?
連れてこられたのは嬢ちゃんだから、主であるイツキにも話しておこうと思ってな」
「ありがとうございます。それで、ザクロを中に連れてきた人達は捕まったんですか?」
「結論から言うと犯人は捕まっていねぇ。イツキが言ってた3人組みを抑えたんだが、髭が生えた奴が衛兵に怪我をさせて逃げてな。
残り2人に話を聞いてみたが嬢ちゃんを連れてきたのがその逃げた奴だったみたいで特に何も知らないみたいだった。
まぁ、だからと言って事実確認が取れてねぇから今は留置所に入れられているが、何も無ければ出してもらえるだろ」
悔しげな表情を浮かべながら、自腹で頼んだエールを飲み干し帰る準備をしたムルブさんだったが、そういえばとイルルクさんが心配していた事も伝えてくれた。
散々世話になって起きながらイルルクさんに報告してなかったことを思い出し慌てていると、噂をすればとばかりに今度はイルルクさんが宿に来た。
無事だったかと喜ぶイルルクさんに平謝りしていると笑いながら背中を叩かれ、どうだった?と聞かれたのでしっかり討伐して装備を作った事を言うと、優しい目をして労ってくれた。
しかし、是非新装備を見たいと言われてしまい言葉を濁していると、残念そうな顔をしながら帰ろうとしたので悩みに悩んで見せることにした。
「流石にここで見せるのはアレな装備なんで…。ラルさん、空き部屋ってあるか?この機会に出来れば借りたいんだが」
「いやまぁ、昨日までの契約の人が居たから2人部屋で良ければあるけどさ。そんなにイツキの新装備、変なのかい?」
「ぐっ、出来れば触れないでくれ…。あるなら俺が借りていいか?」
「構わないけど…そうだ!あたしも見ていいなら貸したげるよ。どうだい?」
少し迷ったが1人2人増えても構わないかと了承し、ククル君とメアちゃんを送り出した後部屋に向かった。
「さてと…最初に言う事があります。まず1つ、気分が悪くなっても責任は取りません。次に2つ、出来れば笑わないで下さい。最後に3つ、俺の意思でこうなった訳じゃないのを頭にいれといて下さい。いいですか?」
注意事項らしきものを言うと部屋に集まった全員が頷くものだから、ザクロとユラちゃんはもう見たから大丈夫だろと言うと2人は照れ、ラルさん、ムルブさん、イルルクさんの3人は笑っていた。
「それじゃあいきますよ【装備解放】」
ミーミルさんから聞いた装珠石から装備を出すためのキーワードを呟くと石がグニャリと歪み、踊り子の服装になった。
相変わらずスースーする服に顔を顰めているとぶふっと笑い声が聞こえ、思わずジト目になりながら見るとムルブさんが吹き出し、イルルクさんは苦笑いを浮かべ、ラルさんはぽかんとしていた。
ため息を吐きながらムルブさんを睨むと、悪い悪いと言いつつも口の端がひくつき、再び笑いを零すので装珠石に戻す。
笑い転げるムルブさんの頭にイルルクさんが手刀をいれ、止めていた。
「あんまり笑ってやるなムルブ。あー、なんだ。別に似合ってねぇ訳じゃないからあんまし気にすんなよイツキ」
「大丈夫ですよ。ムルブさんはエールを呑んでましたからね。アルコールが多少入ってるから笑いが止まらないのも仕方ないですし」
「げっ!?イツキそれは」
「ム〜ル〜ブ〜ゥ〜?」
ちょっとした仕返しとばかりにエールの事を言うと顔を青ざめたムルブさんの肩をガシィッ!と掴みイルルクさんの説教が始まった。
10分を超えた辺りでさすがにかわいそうになり、まぁまぁと止めるとバツの悪そうな表情を浮かべ、すまんと一言言うとムルブさんを連れてイルルクさんは帰って行った。
「仕返しがちょっとキツかったかな?」
「仕方ないんじゃないかい?職務中に呑んじまったのはムルブさんなんだし。さて、あたしらもそろそろ帰ろうかね。
ユラは帰るとしてザクロちゃんはどうしたい?あたしの家でも構わないけどイツキと寝るかい?」
「ん…母とも寝たいけど、今日は父と寝る」
ラルさんに聞かれたザクロが答えると、よいしょと久しぶりにマンティコアの姿に戻った。そのまま俺の足元に来ると器用に俺の頭まで登り欠伸をした。
「ザクロも眠いみたいなんで俺もそろそろ寝ようかな。ラルさん、ユラちゃん、おやすみなさい」
「お兄さんおやすみなさい。明日起こしに来ますね」
「おやすみイツキ。起こしに来たユラを襲うんじゃないよ?」
「お母さん!?」
「襲わないって、じゃあまた明日」
久しぶりに弄ってきたラルさんに苦笑しながら返答する。最後にユラちゃんがラルさんを追いかけているのを見て笑い、扉を閉めた。
◇
「色々あったなぁ。そういえば、ロクさんをポケットに入れたまま装備しちゃってたけど大丈夫だったかな?」
マンティコア状態で眠り始めたザクロをベッドに下ろし、俺自身も自分のベッドに腰掛けて装珠石を入れているのとは反対のポケットに手を突っ込むと、ひやりとした感触と共にロクさんが出てきた。
「ロクさん、装備してた時大丈夫だったか?ごめんなぁ気遣わずに」
「ぴぎゅ?」
撫でながら謝ると何かあったの?と不思議そうに鳴くので今日あったことを話すと手(?)を伸ばし、ジェスチャーで寝てたから覚えてないと伝えてくれた。
「謎だなぁ…ふわぁ。ああ、俺も眠くなってきた。ロクさん、明日は出掛けような。おやすみ」
ロクさんに喋りかけながら寝転ぶと、ザクロが目を覚まし同じベッドに潜り込んできた。
マンティコア状態だからまぁいいかと、寝ぼけ始めた頭で考えザクロとロクさんを抱きしめながら一緒に眠った。
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