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33話



「こんなにも強い反応は初めてだ…それにこの色は…」


魔力と光の勢いが収まり、ミーミルさんの手のひらの上に置いてある装珠石は話に聞いていた物とは違い、深く深く濃い緑と妖しく煌めく黒の2色で構成されていた。


「話に聞いていた森のような優しい緑…じゃないですよね?もしかして素材に何か問題がありましたか?」


不安になりながら質問するとミーミルさんは首を横に振りながら口を開いた。


「いいや、素材のせいじゃない。それに失敗した訳でもない。喜べイツキ君、予想以上の出来だ。階級ランク夢幻級ファンタズマ、それも最上位の代物だ!私も初めて見たぞ…!」


滴り落ちる汗をちろりと舐めながら説明してくれていたミーミルさんだったが段々と興奮し始めていった。自分の手で夢幻級ファンタズマを作ったのは初めてだったみたいでしきりにお礼を言われてしまった。



「こちらこそお礼を言わなければいけないと思うんですが」


「そんな事は無い!いいかいイツキ君!夢幻級ファンタズマと言うのは私達みたいな一般の鍛冶師からしたら正しく夢なんだ!

元々ダンジョンからのレアドロップや妖精族のごく一部の種族しか作れなかった代物で人族が作れるようになってからまだ100年も経っていないんだよ!

ああ、私はなんて幸運なんだろうか!久しぶりに里帰りでもして自慢したい気分だよ!」


相当嬉しいのか破顔の文字が似合う笑顔で話を続けるミーミルさんだったが、そろそろ俺自身の限界が来そうだった。

どうやって落ち着いて貰うか迷っていると、ユラちゃんとザクロが装珠石を実際に使ってはどうかと助け舟を出してくれた。


「それじゃあイツキ君、使ってみてくれるかい?使い方は簡単だ、強くイメージするんだ。その最初のイメージで装珠石の形は決まるから自分の姿を想像して欲しい」


助け舟の甲斐あって落ち着いたミーミルさんから使い方を聞きながら装珠石を渡された俺は、言われた通り自分を思い浮かべた。


夢幻級ファンタズマの最上位…、最高の装備だ…。どんな装備になるんだ?出来れば踊り子のイメージが消えるようなカッコ良い装備を…。そう、あんなフリフリやスケスケの装備じゃなく、鎧のような…。布や金属の輪じゃなく硬い篭手を…。あっ、あ"ーーーッ!?待て待て待て待て!!違う!踊り子の装備じゃなくてーーーーッ!!)


「そっちじゃなぁぁーーいッ!!」


「「「!?」」」


手に持った装珠石がグニャリと形を変えたかと思えば素早い動きで俺を包み込んだ。

みるみるうちに服の感覚が無くなり代わりに薄い布や金属の冷たい感触があったと思ったら、想像してしまった格好になっていた。


「こんな、こんな筈じゃ無かったのに…」


絶望しながらも改めて自分の装備を見渡す。パッと見はアラビアンナイトのような服装だが全体的に生地は薄く、ベストの様な上着を着ただけの上半身には見たことあるような文様が刻まれており、少し動いただけでひらひらとめくれてしまう。


ズボンは鳶職のニッカポッカのようなダボッとした形だが、後ろが透けるような薄さの赤い布で出来ていて、股間部分はまるでボディービルダーのパンツような物で隠れている。


また、腕や足に金属で出来たブレスレットが巻かれ、少し動くだけでシャランと音が鳴り、何故か腰に巻かれた布だけはちゃんとした厚めの布だった。


あまりにも酷い自分の姿に思わずしゃがみこみそうになるがズボンが透けているためしゃがむことすら出来ず、半泣きで立っていると視線を感じた。


「あっ。え、えーっと…そのぉ…」

もじもじしながら頬を染め目をそらすユラちゃん


「ふ、ふむ。それがイツキ君の望んだ姿なのだね。ま、まぁ似合っているのでは無いか?」

なんとも言えない表情を浮かべながら耳を赤くするミーミルさん


「ん、ととカッコイイ」

純粋な目でむふっと自慢気なザクロ


と三者三様の回答を頂いた。俺は気が遠くなるのを抑え、どうにかして元の服に戻らないだろうかと考えるとグニャリと踊り子の服が歪み、次の瞬間にはさっきまで来ていた服と装珠石に戻った。

3人から『ああっ!』と言われたが聞こえない振りをし、装珠石をポケットに押し込み店の隅に体育座りで納まる。


一瞬脳裏に【旅人の歌】を自分自身に使ってみようかとも思ったが、使えば最後また恥ずかしい思いをするだけだと察し無言で落ち込んだ。


それからしばらく落ち込んでいたが、メンタルが回復してきたので立ち上がる。外を見ると少し日が傾いていた。

1時間ぐらい経っていたみたいだ。そういえば3人はどこに行ったのだろうかと探すと奥の部屋から話し声が聞こえた。


何故か悪寒が走ったので内容は聞かずに、わざとらしいぐらい足音をたてて近づくとガチャリと扉が開きザクロが顔を出す。


とと落ち着いた?」


「大丈夫だ、取り乱しちまってごめんな」


ザクロに誤っていると後ろからミーミルさんとユラちゃんも出てきた。しかし気まずさで顔を見れずにいると2人から謝られたが、別に謝るような事じゃないと伝えた。


「しかし…望んでいないのなら何故踊り子の衣装をイメージしたんだい?イツキ君の事だからちゃんとした装備にするものだと思っていたんだが」


「踊り子を払拭出来るようなカッコイイ装備にしようとしたんですが、逆に踊り子の衣装のイメージが強くなってしまって」


ミーミルさんの疑問に対して答えるとそれなら仕方ないなと苦笑された。考えるなと言われれば言われる程、考えてしまうのはどの世界でも共通のようだ。

途中、横で頷くユラちゃんの顔色をちらと確認し、2人共踊り子の衣装を着た俺にさほど嫌悪感は無いようで安心する。

そのまま2人を連れ、《緋色の架け橋亭》に戻った。



「おや、3人ともお帰り!早速飯にするかい?」


宿に帰り着くとラルさんがパタパタと動きながら聞いてきた。あまりにも忙しそうだったので夕飯は断り、代わりに手伝いを申し出た。

ラルさんは最初、大丈夫だと断っていたが、団体客が来たのを見ると少し悩み、頼ってもいいかい?と聞いてきたので勿論と返した。


流石に接客は出来なかったので俺は皿洗いや掃除、ユラちゃんは受付でククル君のサポート、ザクロはメアちゃんに教えて貰いながら配膳をしていた。


食堂から客が居なくなった頃、手伝ってくれたお礼にとラルさんが夕飯を奢ってくれるらしいので、俺達3人はテーブルに座っていた。


「ユラちゃんもザクロもごめんね。一緒に手伝って貰っちゃって」


「元々わたしの実家ですし、大丈夫ですよお兄さん!」


「ん、楽しかった。気にしないでとと


わいわいと話しながら夕飯を待っていると、入口から呼び声がした。

閲覧ありがとうございます。もしかしたら主人公の装備は近々Twitterにてイラスト出すかも知れません(分かりにくかった為)


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