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31話



四腕狒々(クワトロゲラダ)を無事(?)撃破したと思ったらザクロが大泣きしていた。

わたわたと泣き止ませようとしたが泣き止まず、首に腕を回すように抱きつきながら泣き始めた為そのまま背中をさすった。


(懐かしいな。ザクロが子猫の時によくこんな風にして抱っこしていたっけ…)


それから小一時間程してから恥ずかしげにザクロが離れ、ちょっと気まずい雰囲気にはなったがロクさんが気を回してくれて四腕狒々(クワトロゲラダ)の素材を回収し辺りの探索に入った。


「まぁ探索と言っても…なぁ?」


「ん、埋葬するにしても数が多い。生きている人がいればいいけど」


「ぴぎゅ…」


俺とザクロが話し合っているとロクさんがユラユラと揺れながら足元に擦り寄ってきた。

あまり覚えていないが【舞踏】を発動出来た時にロクさんに変化があったみたいだったから疲れているのだろう。


ありがとうと伝えながら今やロクさんのお気に入りの寝床となっているポケットにしまい込む。


「ロクさん頑張った。帰ったら何かご褒美あげなくちゃね」


「そうだな。もちろんザクロ、お前も欲しいもの考えとけよ?」


「わ、吾はいい…役にたってない…」


しょんぼりとしながら肩を落とすザクロを説得し、欲しいものを選ぶ約束を取り付ける事に成功した。

遠慮がちにわかったと告げるザクロの耳が嬉しげに跳ねるのを横目に、俺たちは亡くなった人達が行こう(・・・)としていた場所へ進んだ。


「やっぱりあったか。遺体が一定方向に集まっているからもしやと思ったが…シェルターか?」


「ん、ここに隠れて助けを待つつもりだったみたい。でも…」


「ああ、ダメだったみたいだな」


ひしゃげた鉄の扉の前で話した俺たちは扉を乗り越え部屋に入った。

そこには逃げ場が無かった為か、外よりも悲惨なことになっている遺体に黙祷し奥へ進む。


「さすがに村人全員が入る為だろうけど広いな。部屋自体も結構あるしもしかしたら生き残りがいるかもしれない」


「ん、父ビンゴ。あの部屋から気配がする。人数は…3人?2人は気配が乱れてる、怪我してる?父、急ごう!」


ザクロが走り出した部屋へ入ると、そこにはなぎ倒された家具に押しつぶされた2人の男女と、その男女が守るように庇っている女の子が身動き出来ずに震えながら間に挟まっていた。


「ザクロっ、邪魔な家具を退かすからあの人達を頼む!」

「わかった!」


下敷きになった人達にこれ以上怪我をさせないように慎重かつ即座に家具を持ち上げ、そんな俺に合わせるように素早く3人を救い出したザクロを確認すると持ち上げていた家具から手を離した。


「大丈夫ですか!?ザクロ、アイテム袋からありったけポーションをっ!」


俺がそう指示を出す前にザクロはアイテム袋からポーションを取り出すと怪我が酷い2人に飲ませた。

使ったけど大丈夫だった?と首を傾げるザクロによくやったと褒め、この場所だと精神的にも衛生的にも悪いと感じ、親子だと思われる3人を担ぎシェルターから出た。


ピロンッ!


Lvが28になりました。


『炎魔法』『下位剣術』『感情炉 激怒』『黒鋼皮』『舞踏』『苦痛耐性』『恐怖耐性』のLvが上がりました。


ユニークスキル《強者の風格》が変質します…変質処理完了しました。

ユニークスキル《恐者の威圧》を獲得しました。


称号[土方の強者]が変質します…変質処理完了しました。

称号[恐者] を獲得しました。


称号[Sの証Ⅰ]が変質します…変質処理完了しました。

称号[Sの証Ⅱ]を獲得しました。



村の比較的キレイな家に親子3人を運び、父親と母親の容態が安定した頃になってレベルアップのアナウンスが流れる。

なぜ猿と戦い終わった後すぐには流れなかったのかと言う疑問が浮かんだが、保護した家族の子供が目覚めたので後回しにする。


襲われた衝撃で記憶が飛んだのか、混乱している女の子に話を聞こうとしたが、喋れないらしく怯えた表情を浮かべ辺りを警戒していた。

ザクロが大丈夫と声をかけ、四腕狒々を討伐したと伝えたら女の子は俺とザクロ2人だけで倒した事が信じられなかったのか目を見開き硬直した。


しばらくすると女の子の両親も目を覚ましたが同じく混乱していた為、ザクロと2人で事情を説明し今は安全な事を伝えると涙ながらに感謝された。


そうこう話すうちに日が暮れ始めたのでアイテム袋から携帯食を取り出し全員で食事を済ませた後、ザクロと俺は外で交代しながら見張りをし(父親も見張りをすると言い張ったが体力を失っていた事を理由に無理矢理納得させ3人で寝かせた)翌朝、体力が回復した3人と共に街へ戻った。


◆◇◆◇◆


「そうか…リーデ村がそんなことになっちまったのは予想外だ。報告ありがとよ、イツキ」


保護した親子を《緋色の架け橋亭》へ送った俺達は村が3人を残して全滅していた事を伝える為にギルドへ向かった。

ギルドでは既に連絡が来ていたのかムルブさんが待ち構えていて報告がある事を伝えるとギルド長室に連れていかれ現状を説明した。


「とりあえず領主様に連絡をしつつ俺らも動けるように準備はしておこう。イツキ、村の生き残りは《緋色の架け橋亭》に居るんだったな?ならこれを頼む」


ムルブさんはそう言うとさらさらと紙に何かを書き、封筒に入れ俺に手渡した。


「これは一体…?渡すのは構いませんが言えない物ですか?」


「あーー、まぁお前なら喋らんだろう。今回の事で村は無くなり身内も亡くなってしまっただろう?それは被害者遺族に対する補填金だ。あんまり公には出来ないがな。どこにでも馬鹿は居るだろう?」


裏がありそうなゲスい笑顔を浮かべながら喋るムルブさんに対し内心引きつつ配達を引き受けた。



「あの人達に渡す時、『受け取りは商業ギルドへお願いします』っと、伝え忘れないようにしなきゃな」


「ん、吾も覚えとく。早く届けてゆっくりしよう」


ザクロとそんな話をしながら宿に向かう。話をしていたらいつの間にか昼時になっていてチラホラ見える屋台からは美味そうな匂いが漂っていた。


「んー、美味しそう。(とと)(かか)達のお土産ついでにお昼ご飯買っていこう?」


「ああ、そうだな。手持ちは余裕があるし買っていくか!おっ、あの屋台なんかいいんじゃないか?」


指さした先には辺り一帯に香ばしい匂いが漂う串焼きの屋台だった。周りの屋台よりも並んでいる事から美味いことは確実だろう。


「嗅ぐだけでお腹減る。父、何本ぐらい買う?」


「そうだなぁ。あの親子におすそ分けするのも含めて50本ぐらい買うかな?あ、でもまずは俺達用に2本買おうな」


並びながらザクロと話しているとポケットからもぞもぞとロクさんが出てきた。


「おお、ロクさんお疲れ様。ゆっくり寝れたか?」


「ぴきゅ」


返事をしたロクさんはぷるぷると震えながら串焼きを見ていた。食べたいのか?と聞けば久しぶりの上下運動をしたのでロクさんの分も含めて53本買い、1人1本ずつ食べながら宿に向かった。


◆◇◆◇◆


「お兄さんおかえりなさい!」


帰りついた俺達が宿に入るとユラちゃんが走りながら勢い良く飛びついてきた。

両手が串焼きで塞がっていたが衝撃を無くすようにくるりと回りつつ、串焼きを片手に持ちユラちゃんを受け止めるとそのまま抱きついてきた。


「本当に無事でよかった…」


涙ぐむユラちゃんに心配をかけて申し訳ない気持ちと、幼女(ロリ)に抱きしめられていると言う現実で酷い顔をしていると食堂の方からラルさんが出てきてユラちゃんを抱き寄せた。


「お、お母さん!?」


「ユラ、嬉しいのは分かるけどいきなり抱きつくのはどうなのかとあたしは思うけどねェ」


苦笑しながら窘めるラルさんの一言で、顔を赤く染めたユラちゃんが「ごっ、ごめんなさいっ!!」と慌てながら接客に戻るのを見送った。


「やれやれ…一体誰に似たんだろうかねぇ?あたしも旦那もさっくりした性格なんだけど」


「は、ははは…。俺が色んな場所に言って心配かけてしまっちゃってますからね。

そうだ、これお土産です。保護して貰っている人達にも食べさせてあげて下さい」


腰に手を当てながらため息をつくラルさんに土産の串焼きを渡すと喜んでいたが保護している人達には俺から渡して欲しいと言ってきた。

どうやら慣れない人が来ると四腕狒々が化けてるんじゃないかと怯えてしまうみたいだった。

そういう事ならと2階の部屋に行き扉の向こうから声をかけると一瞬緊張した気配がしたが、恐る恐る扉が開き旦那さんが確認し、俺とザクロだと分かるとほっとした顔をしながら部屋に案内された。


「お疲れ様です、やっぱりまだ慣れませんか?」


「ええ…助けていただいた実感はあるのですがまだ少し…四腕狒々の擬態に騙されて食べられてしまった人達を思い出すんです。もしまたあんな魔物が現れたら…と」


そう喋りながら怯える旦那さんに奥さんと娘さんが寄り添う。どうにか手助け出来ないかと思っているとザクロが服を引っ張ってきた。

どうした?と聞くと【舞曲作成】スキルでこの人達を癒すことが出来る曲を作れないかと聞かれた。


「そうだな…試してみるか【舞曲作成】」


ピロンッ


スキル【舞曲作成】を使用しました。曲を作成します…失敗しました。


注意!作成する際はイメージを的確にして下さい!


「父、どうしたの?」


「いや、何故か失敗したみたいだ。イメージを的確にって言われたんだが…。ああ、そうか」


閲覧ありがとうございます

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