表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/41

30話

ザクロ視点


『失敗した 』


焦げた血の匂いをこびりつかせながら、さっきまで(わあ)の首を締めていた魔物を目や鼻から血を流しながらバラバラに切り刻む(とと)の姿を見て、(わあ)の頭に浮かんだのはその一言だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


吾は(ぜんせ)から父の家族だった。


前の吾は今より身体が小さくて、父と形も違う生き物だった。


ある日、吾を産んだ母が吾に〖身体の弱いお前を連れていく事は出来ない〗と言って、他の兄妹だけを連れて吾の前から居なくなってしまった。

吾は置いていかれないようにしたけど母から威嚇され、諦めてさまよった。

お腹が空いてフラフラになりながら母を呼んでみたけれど、母も兄妹も来なかった。


どうしようも無くて歩いてた吾の前に、凄く大きくて吠えながら走る物が勢いよく走ってきて、もうダメだと思ったけど父が慌てて拾いあげてくれて吾は無事だった。

お腹いっぱいのご飯や吾と同じ形の家族や父と同じ形の家族が沢山居て、吾はここに居ていいんだと思った。

それ以来、吾は父が大好きでよく擦り寄ったり膝に乗ったりして甘えてた。


でもそれからしばらくして父が何年も忙しそうにして、中々会えなくなってきた。

吾も歳をとって身体の自由があまりきかなくなった。今まで吾と同じ形した家族達が、先に旅立つのを見ていたから眠たくて、目を閉じそうになる吾はもう死ぬんだと理解していた。


父に会うために吾も頑張って生きたけど、前よりも吾の身体が小さくなって、結局父に会えないまま吾は父と同じ形をした家族達に見守られながら眠った。


せめてまた撫でて貰いたかったって思いながら眠った吾だったけど、しばらくふわふわとした感覚がしたと思ったら凄く大きい、吾とそっくりだけど尻尾の形が違う生き物が目の前にいた。


その生き物は吾を見ると


〖黒い毛並み…忌み子か〗


と呟いた後大きな前脚を振り下ろしてきた。

その生き物の目が、吾を産んだ母と同じ目をしていたのを見て混乱しながらも吾は逃げ出した。後から思えば、あの生き物は今の吾の母だったのだろう。


吾はまた捨てられた。


その事実に絶望していても否応無しにお腹は減る。しかしこの世界での狩りは難しくて食べることが出来なかった。

ある日いい匂いがする方に向かうと茂みに肉の欠片が落ちていた。


怪しかったけどお腹が空いていた吾は肉の破片にむさぼりついた。食べ終わった後に眠気がきてそこからの記憶は無いから、やっぱり何か肉に入ってたんだと思う。気がつけば吾の首を毛むくじゃらの雄が蔓で締め上げていた。


そこからは逃げて逃げて、逃げた先に父が居て。夢なんじゃないかと何度も思った。吾はまだ(ぜんせ)に居て死ぬ前の夢だと。


でも起きて父の顔を見る度に夢じゃないことを確認して…。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「守れると…思ったのに」


前の吾の体じゃなくて、父と同じ体で…強いはずの体で守っていてくれた父を次は吾が守れると思ったのに。


「これじゃあ…守られていた前よりも…」


なまじ、父に似た体を手にしたからこそ感じる無力感が吾を責めている。

動かなきゃいけないのに言う事を効かない体に苛立っていると、魔物を消し炭にした父の手から青龍刀状態のロクさんがかしゃりと音をたて落ちると同時に、グラリと後ろに倒れ始めた。


「ッーーーー!!」


今になってやっと動かせるようになった体に苛立ちを覚えながらも倒れた父を支え、そっと寝かしつける。ロクさんもスライムに戻り慌てて父にかけつけた。


「父…っ!父…っ!どうしようロクさん、血が止まらない…!」


寝かしつけた父の目や鼻から血が流れ、特に最初噛まれた首筋は肉が抉れ、溢れるように血が滴っていた。

パニックになっていた吾にロクさんは冷静にアイテム袋から父が奥の手と言っていたポーションを飲ませた。

不味いのか分からないが意識が無いながらも呻き始めた父の傷がみるみる無くなる姿を見て安心した吾に新しいポーションを渡した。


「あ…ありがとうロクさん。でもこのポーション、父に使いたい…」


吾がそう言うとロクさんからやれやれとした雰囲気が伝わってきた。吾がボロボロだと父はまた自分を責めると言われ渋々と口にする。

あまりの味に吾も呻くがロクさんから心配しているような感情が流れてきた。


「ん…大丈夫。これ凄い不味いだけ…」


ロクさんと話しているとまだ呻いていた父がガバッと起きると青白い顔でアイテム袋から水を取り出して飲み出した。


「げほっ、なんだこれまっず!?…っ、そうだ、ザクロ!大丈夫か!?」


げほげほとえずいていた父が吾の姿を見た時、吾は泣いてしまった。

父が無事だった事と吾自身の弱さに。


慌てる父の前で吾は誓う。


もう絶対に父をこんな目に会わせないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ