24話
お待たせしすぎました。この話より前の話をガラッと変えてあります。
「おかしい」
俺は昨日、ラルさん宅に事情を話して猫同伴で泊めてもらった。
「これは夢だな」
飯を食べて猫を撫でて、部屋のなるべく暖かい所に寝床を作り昨日は寝た。部屋には俺と猫しか居なかった。鍵も掛かっていたはずだ。
「じゃなきゃ全裸な幼女が足元に丸まっている筈が無いよな」
困惑していた。知らん幼女が同じベッドにいるんだから当たり前だ。寝起きで頭が回ってないのもあるが、のんびりし過ぎた俺はノックと鍵が開く音と共に修羅場を迎えた。
「お兄さん朝で…誰ですかそれ」
「……おはようユラちゃん。誰なんだろうなこれ」
「〜〜〜っ、お母さぁぁぁん!!!お兄さんが浮気したぁぁぁぁぁ!!!!」
一瞬能面の様な無表情になったユラちゃんの問いに俺は焦って間違えてしまった。ユラちゃんの無表情は崩れ、大きな目に涙をいっぱい溜めながらラルさんを呼びながら駆け出そうとした。
「ちょ、ちょっと待ってユラちゃん!?誤解だよ!?」
咄嗟に腕を掴んでしまったが、勢い余ってユラちゃんをベッドに引っ張ってしまった。更に不幸は続くもので…
「アンタ達朝からうるさいよ!一体何して…」
「ラ、ラルさん…」
ラルさんは乱れたベッドと裸の見知らぬ幼女、引っ張った拍子に服がはだけ、泣いているユラちゃんと寝起きで服がぐしゃぐしゃに乱れた俺を見ると手に持っていたマチェットみたいな包丁を肩に乗せた。
「イツキ、何か言い残す事はあるかい?アンタの故郷は何処か知らないが、一時的にとは言えユラの旦那候補だったんだ。無理してでも届けてやるよ」
「待て待て待て待て、ラルさん誤解だ、話せば分かる。まずはそのデカい刃物をゆっくり下ろそう?な?」
「それが最後の言葉でいいんだねイツキ!ならもう容赦はしないよ!」
「だから待てって!!話を聞いてくれ!」
「う……ん」
俺たちが騒ぎすぎたのか、裸の幼女の意識が覚醒し始めた。丁度いい、俺の無実を晴らしてもらおう。
「ラルさんまずはそこの子に話を聞いてみてくれ、それからでも遅くはないだろ!?」
「ふん…聞いても変わらないと思うがね。一応聞いてあげるよ。ほらさっさと起きな」
「んぁ…おはよう」
「あんた一体誰だい?イツキとはどんな関係なんだ」
「ん…」
目が覚めた幼女は黄金色の瞳を俺に向け、ラルさんの質問を理解した後、口を開いた。
「吾は名前無い…。吾にとって父は父。あ、父。吾に名前付けて欲しい」
「トト?とと…あ!父か!あんたイツキの子供って訳かい!?」
「「えぇぇ!?」」
幼女の口から飛び出た言葉は誰にも予想がつかなかった。
◇
「さて、どういう事なのか説明してもらおうじゃないかイツキ」
とりあえず幼女に服を着せ(メアちゃんのお下がり)リビングに集まった。ラルさんに説明を求められたが、俺だって困惑している。それに子供が作れるようなら女性への警戒なんかしていない。
「説明してくれと言われても…俺にも何が何だか分からないんだ」
「あ、待って父。吾が説明する」
「君が?」
「ん、見てて」
そう言った幼女は椅子から降り、服を脱いで背中を見せながら言った。背中には蝙蝠の羽のタトゥーが入っていたが、みるみるうちにそのタトゥーから蝙蝠の羽が生えてきた。
更にスカートを破きながらサソリの尻尾が生えてきた所で俺達はその子の正体を知った。
「あ…破っちゃった…。ごめんなさい」
「いや…それはいいんだよ。アンタまさか昨日イツキが連れてきた魔物かい?」
「そう。詳しくは父に聞いて欲しい」
「俺?」
「ん、父鑑定出来るでしょ?吾自身自分の事は把握しきれてないから…お願い」
「確かに鑑定出来るが、なぜ君が知ってるんだ?」
「んん…野生の勘?」
幼女は羽をしまい込み、服を着ながらそう言うと首を傾げた。
(野生の勘と言われて釈然としないが、実際鑑定したら何か分かるだろう)
「分かった、それなら確認するからな【鑑定】」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〔名称〕マンティコア《希少種》
〔名前〕ーーーー
〔性別〕雌
〔LV〕5
〔危険度〕黄★★★★★
〔種族〕魔物 《混合獣種
〔固有スキル〕人化Ⅴ
〔固有スキル〕毒の尾Ⅷ
〔スキル〕強爪Ⅱ
〔スキル〕治癒速度増加IV
〔スキル〕打撃耐性Ⅲ
〔スキル〕毒耐性Ⅶ
〔スキル〕炎熱耐性Ⅱ
〔生命〕160
〔魔力〕560
〔体力〕111
〔剛力〕188
〔俊敏〕135
〔守護〕32
〔知性〕666
〔魔法〕雷 火 腐敗
〔幸運〕343
〔精神〕100
〔説明〕
この辺りでは滅多に見ないマンティコアの子供。希少種であるメラニズム個体である為、親に捨てられた。
〔称号〕
[イツキの従魔][霆「逕溯?]
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(なんだ?俺みたいに称号がバグっているが…今は放置するしかないか)
「えーっと、名称は…マンティコア?」
「「マンティコア!!??」」
「しかも《希少種》」
「「災害魔物じゃないか(ですか)!!」」
「でもまだ子供だぞ?」
「「そういう問題じゃないよ(ですよ)!!」」
なんでもマンティコアと言えば隣国に突如現れ、死と破壊を振りまいた災害魔物と呼ばれているらしい。今は子供で危険色が黄だが、大人のマンティコアは最低でも黒みたいだ。
更に《希少種》となると更に強さは跳ね上がるようで、もしかしたら黒の壁を超えて危険色赤になる可能性もあるとの事。
「イ、イツキ…アンタどこで拾ってきたんだい」
「マンティコアを街に運び込んだってなると捕まっちゃいますよお兄さん…」
「いや、スラムで拾ったって昨日言わなかったっけ」
「「有り得ないだろ(ですよ)!?」」
「吾は街の中で父に守られた。連れてきたのは毛深くて臭い雄」
そう言うとマンティコアは相当臭かったのか顔を顰めた。マンティコアが言っているのが本当なら昨日の3人の中に居た髭もじゃが怪しい。
「ラルさん、ちょっと俺この子を連れてギルドに行ってきます。連れてきたのが別にいるならまた他の魔物を連れてくる可能性もあるので」
「そうだね…イツキの子じゃ無いのは分かったし、その子がイツキの浮気相手じゃ無いのも分かった。ユラを襲ってた様に見えたのも事故だって事が分かったし、行ってきな。なんか嫌な予感がするからね」
「お兄さん疑ってごめんなさい…」
「大丈夫だよ、仕方ないさ。行ってきます」
ユラちゃんの頭をぎこちなく撫で、マンティコアに猫の姿になる様に頼み、ギルドに向かった。
◇
「……と言う事がありまして」
「ほぉ…街に魔物を、ねぇ」
見知らぬ受付嬢にムルブさんへの面会許可を取ってもらい、昨日拾った時の情報から話した。ムルブさんはこめかみに青筋を立てながら今は幼女になったマンティコアを見ている。見られたマンティコアは用意されたミルクを飲んでいたが、ムルブさんに見られているのに気づくと怯えながら俺に擦り寄った。
「ああ、すまねぇ。怖がらせるつもりは無かったんだ。でも、本当にスラムの人間がおめぇさんをこの街にいれたのか?」
「うん、吾が1人で今日のご飯を探してたら茂みの中に肉がちょっと入ってた。お腹が空きすぎてたから食べたら眠くなって…。起きたら毛深い雄が吾の首に蔓を巻いてきて怖くなって逃げた」
「それで追いかけられて逃げた先にイツキが居たと」
「うん。父が居たから嬉しかった。最初分からなかったけど」
最初分からなかったけど?この子に会ったことは無いはずだが…。もしかしたらイルルクさんに助けて貰った時にでも見かけたのかもしれない。
「しかし、コレはやべぇぞイツキ。スラムの連中が魔物を街の中に連れてきているなんてよ。これが手負いの魔物だったりしたらもっとやべぇ」
「手負いの魔物が死にたくなくて暴れますからね」
「魔物だって生物だからな。情報提供感謝するぜ。俺はこれから討伐者を動かしてスラムの調査に向かう。あー、その前に領主様にも知らせなきゃならんか」
「なんか手伝いましょうか」
「いや。いざとなったら手伝って貰うが、今は時期が悪い。ビッサーラの件があった数日以内にこき使う訳にはいかねぇからな」
そう言われれば確かに。納得した俺はマンティコアを連れて帰ろうとしたらムルブさんに星銀貨を渡された。口止め料と情報代らしいので有難くいただく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「そういえば父…。吾の名前、考えてくれた?」
ラルさん宅の借りてる部屋に帰りついて、一息ついた所でマンティコアは聞いてきた。
「名前か…」
正直な所、最初に見た時から1つしか頭に浮かんでいなかった。美人な顔に黄金色の瞳、かぎしっぽに見える尻尾(実際はサソリだが)
ただこの名前を付けてもいいのかは実際迷っている。ただこの名前以外、ピッタリだと思う名前が無かった。
(断られたらまた考えよう。気に入るかどうかは別として)
「気に入ってくれるかは分からないが一応あるぞ。ザクロって名前なんだが」
「ザクロ…」
やっぱりダメだったか?そう思ったが、マンティコアはもう1つ自分の名前を口の中で言うと、涙を零しながら抱きついてきた。
「吾は…吾はザクロ。父が帰って来なくてずっと寂しかった…覚えてくれてて嬉しい。ありがとう」
「その口ぶり…まさか、本当に?」
まさかとは思った。マンティコアの姿があまりにも似ているから、つい名付けてしまった。
本当は死んだ猫の名前を付けてはいけない。嫉妬して連れて行ってしまうから。
だけど、だけどこの子に似合う名前はこれしか思いつかなかった。
「お前…本当にザクロか…?本当に本当なんだな?」
「うんっ…ずっとずっと会いたかった…!」
「俺もだ…ごめんなザクロ…傍に居てやれなくてごめん…!!」
「忘れられたかと思った…嫌いになったのかと思った…優しい父をもう一目見たいって願ってた…!」
「嫌いなるわけないだろ…!よかった、本当によかった!!今までごめんなザクロ!!」
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