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22話

やっと産めた…修正だったり仕事だったりで進まねぇ…



ユラちゃんとマルカさんを起こし、俺は縛り上げた4人をユラちゃんを送り届けるついでにマルカさんに借りてきてもらった荷車に放り込みギルドに向かった。


向かう途中で尋常じゃないくらい注目されたりビッサーラの厚化粧が崩れまくってちょっとグロテスクになったせいで悲鳴が上がったりと散々だったが、なんとかギルドに着くとギルドマスターのムルブさんが出入口で待ち構えていた。


荷車に積んでいたゲロを吐きまくっている3人と、未だに気絶している1人を地下牢に放り込んだその後すぐに、ギルドマスターの部屋に連れてこられた。

どうやら事情説明を求めているらしい。そこで俺はムルブさんに、踊り子(鑑定)の事を隠しつつ捕まえるまでの経緯を話した。


「それで?ビッサーラが盗賊団《四足郭公(よつあしかっこう)》の盗賊長だと言うのか?」


「はい、鑑定スキルで確認しました。それに先程ビッサーラとロード、バルナ、マーザンの4人に襲われたので捕縛しました。詳しくは本人達に聞いたら良いかと。ところで、よく俺がギルドに来るのが分かりましたね」


「ビッサーラが黒なのは真偽官を呼んで確かめた。それと、別にイツキが来るのが分かっていた訳じゃない。ロープで縛った人間を荷車に積んで街中を堂々と歩いていたら俺の所に嫌でも情報が挙がってくる。

しかもその4人の中に討伐者ギルドの、あまり評判の良くない受付嬢が入っていると聞いたら俺が直々に出迎えるしかないだろ?なんせギルドの不始末だからな」


ああ、確かにそれは目立つ。何せ関所からマルカさんに借りてきてもらった荷車に、吐き過ぎてぐったりしている3人とこれ死んでない?生きてる?と聞きそうになるぐらいに気絶している1人を積んだ荷車でギルドまで運んで来たからな。


ちなみにマルカさんはユラちゃんの傍にいてもらう為に《緋色の架け橋亭》に居てもらっている。こんな事に巻き込んでしまって不安だろうしな。


「それにしても偽りの指輪でステータスを偽装している人間のステータスを全部見れるなんてな。確かイツキの職業(ジョブ)は踊り子だったよな?ステータスの詳細な情報を見れるのは鑑定Ⅶからだった気がするんだが、職業(ジョブ)が鑑定師じゃないイツキがなんで見れたんだ?」


やはり来たか。踊り子(鑑定)の事はあまり言いふらさないようにしたい。飯の種だし、何処から情報が漏れて菩薩に頼まれた邪神憑きに伝わるか分からない。偽装を見破る鑑定の事を知られたら、邪神憑きに殺される可能性が出てくるし適当に誤魔化すか。


「まぁ、その。色々ありまして」


「おお、すまないな。討伐者が自分の手の内を見せるような真似はしないか。……特にビッサーラの事があったからギルド側も信用しづらいだろ。とにかく今日は済まなかったな、ギルド側の落ち度で怪我させちまって。そういや怪我は大丈夫なのか?」


適当に誤魔化す前にムルブさんが勝手に解釈してくれた。手間が省けて助かるな。


「ギルドの売店で売っていたポーションで治るぐらいの怪我だったんで。もう大丈夫です」


「そうか。あー、そのポーションは幾らのヤツだ?ポーション代も込みであの4人の討伐料を払う」


「たしか銀貨のポーションです。それにしてもポーションってすごい不味いですよね……。アレを飲むともう怪我をしたくないと思いますよ」


俺がポーションの味を思い出しながら言うと、ムルブさんも死んだ目をしながら頷いた。


「ああ……。実際にポーションを飲みたくないって理由で、黒ランク討伐者から街のパン屋に生業を変えた奴いるぞ。日頃からパンを焼きたいとか言っていたが、職業(ジョブ)が討伐者向きの職業(ジョブ)しか出なくて嫌々続けていた奴でな。

中級パン職人の職業(ジョブ)が出た時は泣きながら雄叫びを上げていたぞ。ポーションなんかは効果が高くなると不味さも増していくからな。黒ランクだと依頼がひっきりなしに来るからポーションは必需品だったろうよ。金はあったから、すぐ店を出して今じゃ人気店らしいぞ」


そこまで不味いのがあるのか!?銀貨のポーションですら、あの世界一不味い飴を煮詰めたような味だったのに更に上があるなんて。


「辞めたくなるぐらい不味いポーションって何なんですかね。誰か美味いポーションでも発明してくれたら良いんですけど」


「そうだな。よし、話はこれぐらいにしとくか。金は明日までに用意するから、依頼を受けないなら明日の昼頃には来てくれ」


「分かりました。じゃあ俺はこれで失礼します」


上手いこと勘違いと話のすり替えで踊り子(鑑定)の話題を逸らし、ムルブさんとの会話が終わった。ギルドを出た俺は真っ直ぐ《緋色の架け橋亭》に行った。



「こんばんわー。部屋空いてますか?」


「あっ!お兄さん、おかえりなさい!」


「おにぃちゃんおかえりー!」


「イツキさんおかえりなさい。怪我は大丈夫ですか?」



《緋色の架け橋亭》に入ったら、そこは天国でした。ユラちゃん達が心配してくれるだけで、戦いで荒んだ心が癒される。


「もう、俺死んでもいい」


「ほう?ならいっぺん死ぬかい?」


「ちょっとラル!待ってよ!」


「っ、ラルさん……」


ユラちゃん達に癒されていると、カウンターの奥にある扉から般若を纏ったラルさんと、ラルさんを宥めるマルカさんが出てきた。


「イツキっ!あんたユラを危ない目に合わせんじゃないよ!」


「だからラルってば!ユラちゃんが危ない目に合ったのは私がドジ踏んだからなんだって!」


「いいや!その前にユラを宿に送ってからだってよかった訳じゃないか!大体、マルカだってっ!」


「待ってくれラルさん!マルカさんのせいじゃ無い。ラルさんの言う通り、俺の見通しが甘かったんだ。本当にすまない……。俺の浅い考えで、ユラちゃんを危険な目に合わせてしまった」


「イツキさん……」


「ーーーーーーっ、ああもう!謝らなくていいよっ!全く、そんなに深く頭を下げられたらこれ以上怒れないじゃないか。ユラも無事だったんだし、過ぎた事を言っても仕方ないさね!この話はもう終わりだよ!」


「ありがとう。そしてすまなかったラルさん。ユラちゃんも、怖い思いをさせちゃってごめんな。俺に出来る事ならなんだってするよ」


「はぇっ!?ほんとですかお兄さんっ!!や、やっぱり無しとかはダメですからね!?お兄さんに出来る事なら、なんだってしてくれるんですね!?」


ラルさんの怒りが収まった所で、今回の被害者、ユラちゃんにお詫びを提示したらユラちゃんが予想以上の食い付きを見せた。


「あっ、ああ。出来る事ならね。でもユラちゃん、ちょっと落ち着こうか?目が少し怖いかな〜って思うんだ」


「はっ!ご、ごめんなさい」


「いやいや、大丈夫だよ。マルカさんは何かあります?」


「私にもですか?」


「もちろん。マルカさんにもご迷惑をお掛けしましたので」


「いや、私は遠慮しますよ。元々はユラちゃんを無事に宿へ送り届けるのが私の役目だったのに、それさえもしくじってしまいましたから」


「あー。イツキ、諦めな。マルカがこうなったら領主様の言葉でも動かないよ。昔マルカとパーティーを組んでいた時の話なんだけど、領主様からの依頼で魔物を狩りに行ったのさ。

領主様の一人息子の誕生日のお祝いに、希少種を狩ってきて欲しいと言われてね。

でも、情報の伝達ミスで1匹だけの狩りのはずが2匹のつがいだったんだよ。その内の1匹をマルカが単身で狩っちゃってね。そしてマルカが狩った魔物は、傷だらけって理由で領主様にタダで譲ったのさ。

私は二つ名が付いたから満足だーなんて言ってね。あたし含めた他の皆は、マルカが1人で狩った魔物だから特に反対はしなかったけどさ。

ま、要するに任された仕事にはプライドを持ってるから、失敗したりしたら報酬を貰わないんだよマルカは」


「そうなんですか?しかし、俺の判断ミスで危ない目に合わせたのに……」


なおも俺が食い下がると、マルカさんが真面目な表情で話してきた。


「イツキさんの判断ミスだろうが、対処しきれずに捕まってしまった時点で私のミスですよ。それでもイツキさんの気が収まらないんでしたら、イツキさんに『貸一つ』って事でお願いしますね」


そう言ってマルカさんは、真面目な表情を崩し笑顔を浮かべた。マルカさんの『貸一つ』の言い方に、寒気を感じたが断れない俺はそれを了承した。



多少、口元が引き攣ったのは仕方がないと思う。



話の後ラルさんに部屋に空きがあるかを聞いたら、ユラちゃんとククル君にしがみつかれ、今日は家には泊まらないの?と言われた。ラルさんに助けを求めたが、苦笑いしながら


「宿に空き部屋はまだ無いから、今日も家に泊まっていきな。マルカも、今から帰るには遅いから泊まりな!寝る場所は子供たちと一緒になっちまうけどさ」


と言われて、マルカさんと一緒にラルさんの家に厄介になった。そしてその日の夕食後、ユラちゃんが爆弾を落とした。


「お兄さん!わたしのお願い、聞いてもらってもいいですか!?」


「は、ははっ。俺に出来る事だったらね。御手柔らかに頼むよユラちゃん」


「大丈夫です!無理な事じゃないですから!」


目をキラキラさせながら、ずいっと近寄ってきたユラちゃんに対して挙動不審になりそうなのを抑えながら返事をする。


「お兄さん、わたしをお嫁さんにしてください!」



ーーーーーーピシィッ!!


ユラちゃんの発言に、場が凍りついた。いつまでも反応を示さない俺に、ユラちゃんは不安げな表情を浮かべながら話しかけた。


「お兄さん聞いてますか?」


「あ、ああ。うん、聞いてたよ。でもごめんね。俺の耳、ちょっとおかしいみたいだからもう1回言ってくれるかな?」

「はいっ!わたしをお兄さんのお嫁さんにしてください!」


素晴らしい笑顔のユラちゃんを見ながら、チラリと一番暴れそうなラルさんを見る。しかしラルさんはユラちゃんの発言に頭が追いついていないのか、キョトンとしていた。

代わりにタスクさんからの射殺すような視線が痛い。普段の優しそうな雰囲気はなりを潜め、代わりに険呑な雰囲気が滲み出ている。


顔や口元は笑っているのだが、目は「絶対殺す」と物語っている。メアちゃんはメアちゃんで俺から距離を取ろうとしているし、マルカさんも信じられない物を見る目で俺を見ている。ククル君は……うん。可愛い。


現実逃避を始めた俺に、タスクさんが口を開いた。


「それで?イツキ君。ユラが君にお願いをした訳だが、出来るのかい?」


目だけが笑っていないタスクさんの言葉に、背中が氷の板を入れられたみたいにゾッとした。


ピロンッ


『絶望耐性』のLvが上がりました。

『精神汚染耐性』のLvが上がりました。


……マジですか?


どうやらタスクさんの視線と、オーラが見えそうな雰囲気で耐性スキルのLvが上がったらしい。ついでに俺のメンタル値もゴリゴリ削れていくのが分かる。このままじゃ胃に穴が開きそうだ。


「ユラちゃん?それは本気で言ってるのかな?見たところ、ユラちゃんは10歳か11歳だと思うんだけど」


「確かに、11歳ですけど。でも、わたしは本気ですよ!」


真剣な目でじーっとこちらを見てくるユラちゃんに、まずはなんで結婚なんて言い始めたのか聞いてみることにした。


「お兄さんの事が好きだからですよ!討伐者が暴れた時、周りの人は助けてくれなかったです。だけどお兄さんだけは助けてくれました。あの人達の言ってる事はよくわからなかったですけど、もしお兄さんが助けてくれなかったらひどい事をされてたのだけはわかるんです。あの時、助けてくれたお兄さんが好きになったんです!だからわたしをお嫁さんにしてください!」


ーーーーユラちゃんは頬を朱に染めながらそう言った。



「参ったな……」


俺はボソリと呟いた。多分ユラちゃんは勘違いをしている。危ない目にあった不安を、恋した時ものと勘違いしている。いわゆる吊り橋効果ってやつだろう。


じゃなきゃ顔どころか職業(ジョブ)までがおかしい人間を好きにはなれない。それをどうやって伝えるか悩んだが、良い案が浮かび上がらなかった為そのまま伝えてみることにした。


「多分ユラちゃんは勘違いしているよ」


「勘違い…ですか?」


「うん。ユラちゃんはあの黄星ランクの討伐者達が怖かっただろう?」


「こわかったです」


「その時に胸がドキドキしたと思うんだ。そのドキドキしている時に俺が助けた。怖い時のドキドキを、好きになった時のドキドキと間違えちゃってるんだよ」


俺がそう言うと、ユラちゃんはさっきまでとは違う種類の赤色に顔を染めて叫んだ。


「わたしは本当にお兄さんが好きです!こわかった時のドキドキと、好きになった時のドキドキを間違えてなんかいません!」


「そうだよイツキ。一目惚れと不安を一緒にしちゃいけないよ」


ユラちゃんが叫んだ後、状況を飲み込めたラルさんが口を挟んだ。しかし


「ラルさん、さすがに今回のは勘違いだと思いますよ。それに勘違いじゃなく本当に好きだった場合、それはそれでユラちゃんに苦労をかけますし」


「イツキ、なんでそんなに拒むんだい?あんた、幼い子が好きだから喜ぶと思ったのにさ」


ロリコンだと思われているようだ。しかし拒む理由か。あまり思い出したくない事だけど、ユラちゃんに諦めて貰うには言うしかないか。


「俺は女性や恋愛が怖いんだよ」


「どういう事だい?」


不思議そうな顔をするラルさん達に俺はこれまでの…地球での事を話した。小さい時に女性に性的に襲われた事。その事に病んだ母親からの暴力、暴言。

成長してからは、俺のことを好きだと言った子に、付き合えないと言った次の日には親の仇かのような目で見てきた事。

更に徒党を組んで俺を責めた事。生徒どころか導くはずの女性教師達までもが全て敵になった事。

様々な要因から俺が女性に対して警戒心を抱くようになった事を話した。


「それからは女性が近くにいるだけで身構えるようになったんだ。勘違いしない欲しいのは、俺は別に女性が嫌いな訳じゃない。俺としては将来は家庭も持ちたいと思ってる」


「そ、それならっ!わたしがおとなになる5年後までお兄さんの事を好きでいたらお嫁さんにしてくれますか!?」


「それは…」


「イツキ君、ユラの気持ちに答えてやってくれないか?」


「タスクさん?」


口篭る俺に意外な人から返答が来た。

さっきまで射殺すような冷たい視線だったタスクさんの表情は元に戻っていた。


「僕はねイツキ君。さっきイツキ君が言っていた不安と一目惚れの話、僕も考えていたんだ。もしイツキ君がそれに気づきながらもユラの願いにYESと答えていたら、僕の大事なユラを誑かす(ゴミ)は家を建てる際、基礎にでも埋める気でいたんだ。

でも、イツキ君はその考えを僕達に話して断った。だから僕は君を信用できる人だと思ったんだよ。そうなったらユラの願いは叶えてあげたいとも思った。実際に結婚するかどうかは5年後に決めてくれたら良いからお願い出来ないかな」


閲覧ありがとうございます

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