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20話



「イツキさんどうかしましたか?」


「い、いや。何でもないです」


マルカさんの呼び声で我に返る。まさか受付嬢を鑑定したら手掛かりどころか親玉だったとは思いもよらなかった。これからどうするか。今の所考えられるのは3つ


1、マルカさん経由でギルドに報告。

2、受付嬢に揺さぶりをかけて自首を促す。

3、金を受け取り、受付嬢が動くのを待つ。


2は相手の称号を見る限り絶対有り得ないから除外。1は一見安全だが、ギルド側に信用して貰えるかが問題。3はリスクがあるが、あの受付嬢のステータスなら大丈夫だと思う。


(しかし配下のロード、バルナ、マーザンの3人が気になる。その辺の情報をマルカさんから集めるか)

「マルカさん、少し聞きたい事があるんですが時間は大丈夫ですかね?」


俺がマルカさんにそう尋ねると、窓から見える太陽を確認したマルカさんから了承を得た。


「どうせなら小部屋行きませんか?売却金の引渡しもありますし」


「分かりました。あ、この子も連れて行って大丈夫ですかね?」


「大丈夫ですよ。ユラちゃんをここに置いて行けませんし」


そんな会話の後、俺達はマルカさんの案内で小さな会議室みたいな部屋に行った。


「さてと、何やらイツキさんは聞きたい事があるみたいですが、まずは売却金の引渡しからさせて貰いますね。

今回の黄星の討伐者、四星(しせい)のデハクと鋼盾(こうじゅん)ザパルの売却金が2人合わせて100万リル、金貨10枚です。

そこから《緋色の架け橋亭》への迷惑料を差し引いて金貨5枚がイツキさんへの売却金となります。一応使い易いように金貨5枚の内、金貨1枚分を大銀貨10枚と交換させて頂きました。ですのでイツキさんへの売却金、金貨4枚と大銀貨10枚です。ご確認ください」


「そんなに貰えるんですか!?」


予想外の金額に驚いた俺の反応はマルカさんには予想の範囲内だったのか冷静に返された。


「はい。あの2人、性格はあんなのですが一応黄星の5と“二つ名”持ちだったので。その分上乗せがありました」


「なるほど…。あれ?手数料とか取られないんですか?」


「今回の2人はギルド側が原因ですので。普通の盗賊等は多少手数料がかかるので注意して下さいね?」


「分かりました。それで俺が聞きたい事なんですが、ロード、バルナ、マーザンって人の情報を聞きたいんです」


そう言った瞬間、マルカさんの顔色が変わった。そしてマルカさんは、声を震わせながら聞いてきた。


「イツキさんは、その3人を見たのですか?」


「いや、見てないですけど……そんなにやばい奴らなんですか?」


「ええ……。その3人は未だに捕まらない盗賊団の一味で、その中でも特に有名な奴らです。元々は討伐者だったらしいのですが、魔物どころか周りの討伐者も殺したり、仲間を使い捨てにしたり、人間を実験台にしたので有名ですね。確か二つ名が付いていまして、怒壁(どへき)、外道、毒使いと所業の通りの二つ名が付いています」


想像以上にやばい奴らだった。これは保険を掛けておくか。


「マルカさん、実は更に話がありまして。俺が新しく設定した職業(ジョブ)の恩恵で鑑定が手に入ったんですよ」


「そうなんですか?鑑定 のLvによっては紹介できる依頼が増えますが、伺ってもよろしいでしょうか?」


本当は言いたくないが、もしもの時の為に信用できる人には話して置かなくちゃいけない。マルカさんとは付き合いが短いが、信用は出来る。


「はい、俺の鑑定は『鑑定Ⅹ 』でした。それであの受付嬢を鑑定したんですが「勝手に鑑定しちゃったんですか!?」っ、すみません。金品巻き上げられた他の討伐者から苦情が出てないのには、他に理由があるじゃないかと思って。


それで出た鑑定結果が、あの受付嬢の配下にロード、バルナ、マーザンの名前があったんです」


俺の言葉を聞いたマルカさんは、ピタリと動きを止めた。理解が追いついていないのか、しばらく(ほう)けていたが目に見えてうろたえ始めた。


「どっ!?どどどどういう事でしょうかっ!も、もしかして先輩が盗賊団《四足郭公(よつあしかっこう)》の盗賊長って事ですか!?いや確かにあの人ならやりそうですけど一応ギルド職員ですよ!?適正診断や犯罪歴の確認もありますしまさかそんな筈はっ!」


「ま、マルカさん落ち着いて下さい!」


「はっ!すみません!あまりの事態にパニックになってしまって!すぅー、はぁー。ふぅ、それで、続きを聞いてもよろしいでしょうか?」


どうやら深呼吸をして落ち着いたみたいだ。これでゆっくり話せる。俺は鑑定して分かった事をマルカさんに話していった。



「まさかあの先輩が《四足郭公(よつあしかっこう)》の盗賊長だなんて……。でも、だとするとどうやって犯罪歴を隠したんでしょうか。イツキさんが見た限りでは、隠蔽系の固有スキル等は持っていなかったんですよね?ギルドの魔道具は特異(ユニーク)級の最上位魔道具ですから先輩が持っている、特異(ユニーク)級の偽りの指輪程度なら見破れる筈なんですけどね」


「隠蔽系の固有スキルは無かったですが、魔道具調整って言う固有スキルならありましたよ。多分そのスキルで偽りの指輪って魔道具の性能を上げて、逆にギルドの魔道具を妨害したんじゃないですかね?」


「なるほど……。それでイツキさんは私にどうして欲しいですか?私に何かして欲しい為に、話したんですよね?じゃなきゃ、情報だけ聞いて後は勝手にやってますもんね」


クスリ、と苦笑いしながらマルカさんが聞いてきた。バレてたか…ならもう遠慮なくお願いしよう。


「分かっていましたか。マルカさんにして欲しい事はユラちゃんを宿に送り届ける事と、俺がもし今日1日宿に戻らなかったらあの受付嬢、ビッサーラを捕縛してギルド長に報告して貰いたい事です。

恐らくビッサーラは俺が持っている大金を狙って動くでしょう。そうなる様に仕向けるつもりですから。ビッサーラのステータスを見る限り俺に負ける要素は無いですが、配下の3人にぶち当たったらもしもの事があるかも知れませんし」


「ギルド長に報告するだけではダメなのですか?もし本当に盗賊長ならギルド長も動くと思いますが」


俺はマルカさんの提案に首を横に振りながら答える。


「それは俺も考えました。でもまだ実績が無い討伐者の言う事と、犯罪歴の無い受付嬢。ギルド長の立場からしたら、受付嬢の方を信じなければギルド職員との間に軋みが生じてしまう可能性がありますからね。

受付嬢側を信じなきゃいけないでしょう。そうしたら俺が告発した事で警戒してしばらく身を潜める。もしかしたら逃げるかも知れない。

それからじゃ遅いんですよ。今、やれる時にやる。リスクなんて承知の上です」


マルカさんは少し迷った後、他に良い考えが浮かばなかったのか、大きな溜息を吐いて了承してくれた。

しかしその話を聞いていたユラちゃんが泣きながら反対し始めた。


「なんで!?なんでお兄さんがそんな危険な事をしなきゃいけないの!?その人達、危ないんでしょ!?衛兵さんとか、べつの討伐者さんに任せたらいいじゃん!」


(泣かれると弱いんだけどな)

ユラちゃんは賢い子だから、例え話をしたら理解してくれるだろうと、口を開く。


「俺はまだギルドの新人さんだからねぇ。例えばだよユラちゃん。ユラちゃんの宿に昨日入ってきた新人の従業員さんが居て、昔から居る従業員さん。

メアちゃんにしようか。メアちゃんに向かって「コイツは嘘つきだ!俺から金を盗んだんだ!」なんて言ってもユラちゃんは新人さんを信じられる?」


そう言うとブンブンと頭を横に振るユラちゃん。その可愛さに頬が緩みそうになるのを引き締めながら話を続ける。


「そうだよね?その新人さんが今の俺なんだ。これからギルドの仕事を頑張って、皆からこの新人は信じてもいいかな〜って思われるようになったら、こんな危険な事はしないからね」


「絶対だよ?絶対だからね!?」


「うん、もちろんだよユラちゃん。心配なら指切りでもするかい?」


「ひっ!?ゆ、指切りですか?お、お兄さんの為ならわ、わたし。ゆび、指を…うぅっ……」


「イツキさん!?」


心配げな涙を浮かべていたユラちゃんだったが、指切りをしようと提案したら悲鳴とともに指を差し出してきた。更にマルカさんも責めるような声色で名前を呼ばれ、2人が勘違いしている事に気づいた。


「ちょ、ちょっと待ってユラちゃん!泣かないで!ユラちゃんが想像してる指切りじゃないから!後マルカさんも鬼畜を見る様な目で見ないで!これは俺の居た場所の呪い(まじない)で、小指と小指を絡めて歌うだけだから!いや本当に!」


俺の心の底からの説得でなんとかユラちゃんの涙とマルカさんの鬼畜を見る目から解放され、俺はユラちゃんと指切りをした。何故かマルカさんとも指切りをする事になったが、後から訴えられないよな?大丈夫だよな?



「それじゃあユラちゃんの事、お願いします。俺は金貨5枚も貰ったんで、市場をふらつきながら宿に帰りますね」


討伐者が周りに居ないのを見計らい、例の受付嬢には聞こえる距離でマルカさんに挨拶をしギルドを出る。

受付嬢を一目見ると、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。


これはかかるか?


俺は周りの気配に気をつけながら市場に向かう。注意は払っておくが、何か掘り出し物があるかも知れない。鑑定をかけつつ市場を巡る。すると、気になる鉱石を発見した。


詳しく鑑定するとーーー……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〔名称〕虹色鉛

〔階級〕希少級(レア)

〔用途〕無し

〔状態〕中は空洞?表面に何か掘られている。丸みを帯びた正方形

〔相場〕赤銅貨1枚〜赤銅貨5枚

〔説明〕

中が空洞?になっている丸みを帯びた正方形の虹色鉛。溶かした後、空気に触れると酸化して虹色になる事からこの名前が付けられた。しかし綺麗な虹色では無い上に脆いので、所謂クズ鉱石扱い。ビスマスとも呼ばれる事がある。表面に何か掘られている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おお!ビスマスか!」


しかも中々に大きい。10キロはあるんじゃないか?値段は赤銅貨2枚と激安だ。地球でなら1キロ5000円はする。これは買うべきだな。


「すみませ〜ん!このビスマスを買いたいんですが〜!」


「あん?ああ、虹色鉛の事か。しかし良いのかいあんちゃん。こいつぁクズ鉱石だぜ?まぁオレとしちゃあ、買ってもらえりゃあなんだっていいがな。どうせ売れ残りだから赤銅貨1枚でいいぜ」


おお!更に下がった!儲けたものだ。気分良く赤銅貨を1枚払い、アイテム袋に入れようとする。が、入らない。


(何故だ?確か中が空洞?って書いてあったな。もしかして中になんか入ってるのか?少し削ってみるか)


アイテム袋に何かあったか探してみると、片手剣の欠片が出てきた。


「しまったな…ギルドに返し忘れてた。まぁ無くしても大丈夫と言われていたし、記念に持っておくか。丁度いいし、これで少し削ってみよう。すみませ〜ん。店の横の場所借りていいですか〜!」


「好きにしろーっ!商売の邪魔はすんなよー!」


「ありがとうございま〜す!」


よし、場所も借りたし削るか。もちろん警戒は怠らずに。


ガリガリ…ガリガリ…


しばらく削ると穴が空き、黒いプルプルした物が見えてきた。なんだこれ。更に削り穴を拡げていく。ある程度穴が拡がったのを確認して、ビスマスの塊をひっくり返した。


ぷるんっ!!


その穴から出てきたのは、光を吸収しそうな程真っ黒で、ぷよぷよとした人の頭ぐらいのスライムだった。そのスライムはぷよんぷよんと周りを見渡すと(目が無いから見渡すとはおかしな表現だが)俺をじーっと見てきた。


「な、なんだよ」


ふと、手に持っている片手剣の欠片を見る。こいつ、欠片食うかな。好奇心のままに与えることにした。記念品だが1つくらいいいだろう。


「ほれ、食うか?」


「ぴぎゅっ!」


スライムは一声鳴いた後、俺の手から直接欠片を食べ始めた。


「スライムって鳴くんだ……。こうして見ると、案外可愛いな。けど、こいつどうしよう。今から危ないんだよな」


そんな俺の事情は関係無しに、食べ終わった俺の手のひらに甘えるようにくっ付いてきた。くっ!か、可愛い。


「とりあえずステータスを確認してから連れて行くか決めるか。無理そうならどこか隠れられる場所に隠れていてもらおう」


スライムを撫でながら鑑定をかける。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー〔名称〕スライム《亜種》

〔名前〕ーーーー

〔性別〕無し

〔LV〕30

〔危険星〕黄★

〔種族〕魔物 《スライム種

〔固有スキル〕吸収Ⅹ

〔固有スキル〕変形Ⅹ

〔固有スキル〕再生Ⅸ

〔スキル〕縮小化Ⅱ

〔スキル〕拡大化Ⅰ

〔スキル〕硬化Ⅹ

〔スキル〕打撃耐性Ⅶ

〔スキル〕斬撃耐性Ⅶ

〔スキル〕腐食耐性Ⅹ

〔スキル〕炎熱耐性Ⅷ

〔生命〕500

〔魔力〕238

〔体力〕520

〔剛力〕200

〔俊敏〕1107

〔守護〕1808

〔知性〕300

〔魔法〕無し

〔幸運〕100

〔精神〕890


〔説明〕

全身真っ黒なスライムの亜種。耐性系スキルのレベルが高く、狩ることは容易ではない。希少種であるメラニズム個体のスライムと勘違いされやすいが、メラニズム個体はツヤのある黒色。別名タンタルスライム


〔称号〕

[耐えし者][イツキの従魔]

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……?」


目がイカれたみたいだ。おかしな表記になっている。危険色は黄Ⅰと蝶々より下なのに固有スキルとか他のレベルが高い。もはやバグキャラだ。


そしてそんなバグキャラが、何故か従魔になっている。


「お前暴れたりしないよな?」


目の前のスライム、タンタルスライムの体を指でつつきながら呟く。タンタルスライムはくすぐったそうにぷるぷるした後、俺にしがみついてきた。


どうやってしがみついてるんだ。


離れそうにも無いから、せめて小さくなれないかと言うと、ポケットサイズの大きさになった。これならズボンのポケットに入れられるな。タンタルスライムなら戦いになっても1人で逃げられるだろうし連れて行こう。


ところでさっきから俺に視線を向けている奴がいる。様子見として放置していたが多分黒だ。


「とりあえずは定番の路地裏に誘き出してみるか」


そう呟き、店を後にした。

閲覧ありがとうごさいます。

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