表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/41

1話

多少閲覧注意かもです



「…ゔ…あ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁぁぁ!?」


そんな絶叫と共に俺の意識は覚醒した。


「あれ…生きてる?なんで?俺、確かに足場踏み外して監督達がこっちを凄い引き攣った顔で見てきたのに」


そう思い出しているとふと違和感があった。地面が柔らかく、雑草が生い茂っている。もし奇跡的に助かっていたとしてもコンクリートに寝そべっているか病院のベッドだろう。


(死んで死後の世界ってやつか?)

そう思いながら一応胸に手を当てて見る。


「でも心臓動いてんだよなぁ…あ、あぁぁぁ!もしやこれはあれか!異世界転移ってやつか!?いやいや、まさかラノベじゃあるまいし現実なわけ…」


いきなりの出来事にぼんやりしていた俺はのそりと近づいて来たソイツ(・・・)に気づきもしなかった。



「ガァァァァァァァァァ!!」

「!!」



背後から響く咆哮に、気が緩んでいた俺は反射的に前に転がり込んだ。


…少し漏らしたが気にしてはいけない。


「やっべぇ…完全に気ぃ抜いてたわ。そりゃ動物もいるわ…な?」


目の前に居たのは腕が4本もあり、顔に赤く光る刺青を施した2m程の猿だった。


「うっそだろ!?あれか?魔物ってやつか!?いや、確かにワクワクするけど今は要らねぇよ!?」


そんな事を叫ぶ俺の事なんか、関係無いとばかりに殺しにかかる猿の攻撃をなんとか躱していく。


しかし殺伐とした喧嘩はしても、殺し合いなどした事の無い俺は猿の攻撃を1発、左腕に喰らってしまった。



「ぐゔぁ"…!!くそ。やっぱ夢じゃないか、めちゃくちゃ痛てぇ。腕がおかしな方に向いててやばいな…てか本格的に死ぬかも」


冷や汗を流しながらそう呟く。


殴られた左腕をちらと見ると威力を流しきれず骨が皮膚を破り逆方向を向いている。地球で言うなら複雑骨折だろう。


(これで異世界初の魔物?に勝てと。無茶言うな!)


しかしそうは言ってられなかった。なぜか生きている今、簡単に死ぬつもりは無かった。

それに何もしないで無理と言うのは性にあわない。

せめて武器になりそうなものは無いかと周りを見渡してみたが流石に平原だと中々見当たらない。


「せめて木でもあれば棍棒とかに出来そうなんだが…ある訳ないか」


猿の動きに注意しながら周りを見渡すが特にそれらしいものはない。


本当に俺はここで死ぬのか?ふとその疑問が脳裏を過ぎる。転移して多分30分(気絶してた時間は分からないが)経ってないなんて異世界転移で死んだ人間世界最速じゃないかと思う。


他にも転移した人間が居ればだが。


「俺は30分で死ぬのかーはっはっはー!って死んでたまるか!何か無いか…何か!」


諦めて欲しいと願いながら猿から視線を離さずに地道に移動していると猿の後ろに何かを発見した。

それはどうやら槍のようだった。なんでこんな場所にあるのかと疑問が浮かぶが今は気にしないでおく。

折られた左腕から突き出た骨から血が滴る度に身体から力が抜けるのが分かる。


猿の隙をついてあの槍でこの危機を脱しなければ大分まずい事になっていた。


「ぜってぇ生き残る…!」


呟いていた瞬間、猿が動き出した。

やるしかないかと内心思いながら覚悟を決める。


俺に向かって真っ直ぐ突っ込んで来た猿が、4本の腕の内の2つを使い左右を塞ぐ様に迫ってくる。後の2本は叩き潰す為なのか握り締めながら俺の頭上に振りかぶってきた。


このままではペーストにされてしまうが逃げ道を塞がれてる為、猿の後ろにある槍を取りに行けない。となると必然的に


「股下から行くしかねえよなぁぁ!!」


ズザァーー!!と勢いをつけ、猿の股の下をスライディングする。

人間死ぬ気になれば案外出来るようだ。滑り込んだ勢いで左腕に激痛が走るが気合いで我慢し、そのまま無事な片腕で無理やり体を起こし刺さっている槍を引き抜き脇に挟んで固定しながら猿に突き刺す。



「足場屋舐めんなぁぁぁぁ!!」


「ゥ"ボォア!!」

グチャリと猿の目を貫くようにに槍が刺さり、現代日本人としては慣れない嫌な感覚に顔を顰める。


「しかし俺も死ぬのは嫌なんだ。恨まずにせめて安らかに成仏してくれ」


そう祈ったがすぐに考えを改めさせられる事になった。

何故なら猿はまだ死んでいないようだったからだ。


「はぁ!?確かに貫通しているぞ!?」


確かに、猿の頭に槍は刺さっている。


しかし猿は腕を振り、槍の柄を軽々と破壊した後こちらを睨みつける。その目はいまだ爛々と輝き、俺を獲物として見ていた。


唯一違うのはさっきまでとは違い獲物に対する怒りを滲ませてる事だけだ。


「嘘だろ?」


俺自身の顔が引き攣っていくのが分かる。


もしやこの猿はアンデッドとかで聖魔法などの対アンデッドでしか倒せないのではないか?

または地球とは違って頭を潰したぐらいじゃ死なないのでは?


そう考えれば考えるほど身近に迫る死の恐怖で体がガタガタと震えてきた。


(今の俺じゃ勝てない)


武器は無くなり、貫かれた筈の猿は少しもダメージを負っていない。


聖魔法とかあったら試すことが出来ただろうが今は無い。


地球とルールが違うならもはやどうしようもない。


腕の痛みが夢などと言う甘い物じゃなく、現実(・・)と言う事を知らしめているのを実感してしまい、恐怖で自然と吐いていた。


そして、それはもちろん隙となり、車に跳ねられたような凄まじい衝撃が来たかと思うと一瞬視界が白く染った。


「ヴゥギャァァァァァァ」

「ガッ!!ーーハァ"ァ"…!!」


怒り狂った猿の怒声で意識が戻る。猿の渾身の蹴りが俺の腹にぶち当たり、蹴られた勢いで体が吹っ飛んでいた。

ただでさえボロボロだった左腕は半分千切れかかっており、止まっていた息を吐くと同時にビチャビチャと大量の血を吐いた。

腹の中で爆発が起こったような痛みが走り内蔵が幾つか破裂したかも知れない状況だった。


そして、目の前には多少鬱憤を晴らした顔に嗜虐的な笑みを浮かべた猿の顔が見えた。


「はっ…はっ…ちっくしょう…」


勝てない事実に圧倒的なまでに心を折られた俺は、自分が死ぬ未来を想像してしまい目を伏せた。

閲覧ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ