18話
その不釣り合いな姿に呆然としていると、その女性が俺達に気づいて近づいてきた。
「すまない、仕事に集中していた。おや?君は…ラルの所のユラちゃんか?大きくなった」
「あれ?お姉さん、わたしの事知ってるんですか?」
「ああ、君が小さい時に来た事あるんだ。昔の事だから覚えてないのも仕方ない」
(鍛冶屋なのに凄く騎士っぽい…)
身長が180ある俺より小さいが、女性にしては高い。170ぐらいだろうか。
すらりと伸びた長い脚を強調するように、レザーレギンスと言われる物……わかり易く言うなら、某怪盗3世が追っかけている女怪盗が履いているアレを履いている。
そして上は、これまた溢れそうにでかい胸をスポーツブラ(みたいな形をした服)で押さえつけている。目元はきりりとしているが、頭の上に飛び出たアホ毛が気になる。
(耳のあれは…ヘッドホンか?円錐型なんて面白い形だがこの世界ではこの形が主流なんだろうか?)
疑問に思いつつ眺めていたら不意に声を掛けられた。
「うん?そっちの君は」
「ぅえっ!?あっ、はい!なんでしょうかっ!」
「大丈夫か?私の顔をじーっと見てましたけど、何かついているだろうか?」
少しジロジロと見すぎたか。そりゃ分かるよな。見るのに気を取られ過ぎて気づかなかったが、女性がかなり近づいてきていた。それに気づいて、背中に冷や汗をかきながら女性に答える。
「い、いえ、腕とか耳?が気になりまして…」
「おや、君は魔造人間を知らないのか?珍しいな」
心底不思議そうに、その女性が聞いてきた。また知らないワードが出た。先に菩薩にもらった本を見ておくべきだったか。それにしても……。
「魔造人間ですか?」
「驚いた。本当に知らないんだな。〘移動都市メルグリス 〙で生まれているのが私達、魔造人間だ。基本的には君たち人間と同じだが、それぞれ得意分野があってな。
私の場合だと鍛冶だな。私には合っていて不満は無いが、唯一不便なのは私達のような魔造人間は職業が、与えられた得意分野系統しかなれない事ぐらいだな」
他にも作ってみたい物があるのに困ったものだ。
と、説明してくれている女性の腕を見る。ならこれは篭手じゃなくて実際の生身(?)の腕なのか?その俺の視線に気づいた女性が、悲しげな笑みを貼り付けながら説明してきた。
「これが気になるか。一応しっかりとくっ付いているぞ。痛覚も、鈍いけどちゃんとある。耳もこんな形しているが音は聞こえるし叩かれたら痛いしな」
「っすまない、ジロジロ見てしまって。俺の居た村には貴女の様な人が居なくて、つい物珍しさで見てしまった。不快にしたなら謝る」
何かしらの地雷を踏み抜いたのを察知した俺は、即座に謝罪の言葉を口にした。その謝罪に、女性がおや?とした表情をした後
「君はこういう体に対して恐怖を抱いたり気持ち悪いとか思わないのか?」
と聞いてきた。が…意味が分からない。この世界だと気持ち悪いのか?
「なんで嫌悪感や恐怖を覚えるんだ?どちらかと言えば俺的にはカッコ良いんだが」
「え……」
まずい、何かまた変な事を言ったか?
「また何か、貴女に失礼な事を言っただろうか…?」
「いっ、いやいや!やっぱり君は珍しい人だな。稀に気にしないとかは言われた事あるが……ふふっ、カッコ良いか。女性に言うセリフじゃなそれは」
「そう言われたら確かに…すまない」
「ふふ、冗談だ。おっと、落ち込まないでくれ?これだと私が悪者みたいじゃないか」
そう言って笑いながらその女性は優しい目をした。
「んっ!?」
ゴシゴシ
……幻覚か?笑顔の周りに花やデフォルメされた動物が一瞬出たような…。
「どうかしたか?」
「あ、いや、何でもない。大丈夫だ」
クイクイッ
服を引っ張られる感覚に意識を向ける。そこにはわかり易くほっぺを膨らませて、怒りを表現しているユラちゃんが居た。
天使か、天使だな。
「お兄さん!2人だけの空気に入らないで下さいよ!わたしが誘ったのに仲間はずれなんて……ぐすっ」
や ら か し た
俺は涙目のユラちゃんを慌てて慰めた。その結果、ここでの買い物が終わったら一緒にお昼を食べる事で話がついた。もちろん俺の奢りだ。
◇
「話は終わったか?」
「ああ、もう大丈夫だ。な、ユラちゃん」
「うん!あっ!そうだお兄さん、今日は何しに武具屋さんに来たの?」
おっと、忘れる所だった。今日は大事な用があるんだ。思い出させてくれたユラちゃんにありがとうと言いつつ、ユラちゃんの可愛い顔を眺めてから女性に向き直ると怪訝な表情を浮かべていた。
「もしかして…君ってロリコ「いや違う」そ、そうか…」
女性の言葉を食い気味に否定したら信じきれてない様な目で見てきた。
ソノメ、ダメ、ダメージ、クラウ。
頭の中でカタコトの日本語を喋りながら今日来た用事を言おうとしたが、目の前の女性の名前すら知らない事に気づき、尋ねた。
「おや、私とした事が名乗ってなかったな。私の名前はミーミル・ヴァロツァーだ。ちなみにヴァロツァーは工場名、人間で言う名字になる。君はなんて名だ?」
「俺はイツキ、イツキ・キサラギだ。よろしく頼むミーミルさん」
「イツキ君か、これからよろしく頼む。それで今日は何の用だ?私に出来ることならある程度力になるよ」
やっと本題に入れたので、俺は蜂と蝶の素材をアイテム袋から出しながら今までの事を説明した。
「そんな事がラハの森でか…。それじゃあ私はこの素材をイツキ君用の防具に加工したら良いんだな?」
「はい、攻撃方法自体はまだよく分からないので。何せ俺の職業、踊り子ですからね。それなら防具に加工してもらって生き延びる確率を上げたいですし」
「分かった。それにしても踊り子か…珍しい事もあるものだな。とりあえず素材は預かろう。加工が終わったらラルの家に行けば良いか?」
ミーミルさんの顔が少しばかり引き攣っているがもう慣れた。
慣れたよ……。
「それでお願いします。ところで、どうやって加工するんですか?魔造鍛冶師って事は普通の鍛冶師とは違うんですよね?」
「わたしも気になります!」
踊り子ダメージ(今名付けた)を隠しつつ、気になる事を聞いた。ユラちゃんも気になっていた様で、話に参戦してきた。
「ふむ…そうだな。イツキ君のは後でじっくりやるから見せれないとして、この鉄のインゴットを使って剣を1つ作ろうか。丁度在庫も減ってきた所だしな」
そう言ってミーミルさんが手に取ったのは、ありきたりな鉄のインゴットだった。その鉄のインゴットに、ミーミルさんは何の気なしに齧り付いた。
「「え、ええぇぇっ!?」」
俺とユラちゃんが驚くのも気にせず、どんどん鉄のインゴットを食べるミーミルさん。そしてインゴットを食べ終わり、次にコークスと思わしき卵サイズの黒い塊をぽいぽいっと口に運んでいった。
もぐもぐもぐもぐ
ゴクンッ
「ふう、ごちそうさま。今から作るから少し離れて見ていてくれ」
呆気に取られた俺達を尻目に、ミーミルさんが両手を合わせて指を組み、何かを呟いた。すると、熱気がミーミルさんの両手から溢れ出した。
「少しばかり暑いが…気にしないでくれ」
そう言うとゆっくりと組んだ指を離し、徐々に合わせた手のひらも離していった。その離れていく手のひらの間に、鈍く輝く刀身の一部分が作られていた。
その刃は、手が完全に離れた頃には完全な刀身になっていた。
「ふぅー、とりあえずこれで原型は完全だ。後は軽く研いで、鞘と柄を仕上げたら終わりだ」
「す、凄いな…。俺の防具もそういう風に作られるのか」
「ああ、基本的な工程は同じだ。これは所謂鋳造扱いで、あまり良い代物ではないがな。これの階級は…うむ、一般級の中位ぐらいだな。
運が良かったら最上位になったりするがそんなのはごく稀だからまぁ普通の出来だな」
と、出来たばかりの刀身をコンコンと叩きながら説明してくれた。武具にも階級があるんだな。やはり菩薩からもらった本をちゃんと読むべきだったか?
俺が階級をよく分かってないのを察したのか、ミーミルさんは階級の説明までしてくれた。それによると
一般級低ランク討伐者の標準装備
希少級中ランク討伐者が持ってたりする。
特異級一般人が頑張って入手できる最大級
夢幻級高ランク討伐者が持ってる
秘宝級最高ランク討伐者 小国の国宝
伝説級最高ランク討伐者 大国の国宝
神代級勇者や魔王の装備等
更に武具のランクが
下位
中位
上位
最上位
と分かれているみたいだ。確か菩薩からもらった本は神代級……。よし、考えないようにしよう。
とりあえず俺の防具が何級になるかが楽しみだ。そう思いながらミーミルさんと別れ、約束通りユラちゃんとご飯を食べに行った。
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2020/05/26 ミーミルさんの口調を大幅に変えました。さらばゆるふわミーミルさん…




