15話
宿で暴れた2人組をイルルクさん達に引き渡した後は、特に騒動も無く1日が終わった。部屋に関してはラルさんの旦那さん、タスクさんが帰ってきて色々とラルさんから事情を聞いた後に
「そんな事があったんだね、ありがとうイツキ君。僕の子供達や妻を守ってくれて。あまり使ってない部屋だがら自由に使ってくれて良いよ。どうぞよろしくね」
と言ってくれた。ククル君からタスクさんは大工の親方をしていると聞いていたから、ゴツゴツした親方らしい人かと思いきや、普通に優しそうな雰囲気のおじさんが出てきたのはびっくりした。
なんでも職業が上級大工らしくて、『数学』や『目利き』、『測量』や『器用』等のスキルを覚えたのだと言う。そのスキルのお陰で大工の親方をやれているらしい。
そう言えば短剣使いのデハクが使っていた『クリティカル・クアトロ・ブロー』もデハクの職業、四刃操術士に就いたから覚えたんだったな。
…踊り子にはスキルが無いのだろうか?
そんな事を考えながら借りた部屋で眠りについた。
◇◆◇◆◇◆◇
〈 〈おーい、おーい!起きろー!〉〉
「ん…?あ…あ?」
誰か呼んでるみたいだ。しかし今日は色々あって疲れたんだ。まだ眠らせてくれ…
〈〈もう少しかな?そしたら…〉〉
スゥーーッ……
〈〈起っきろぉーーーーーーーーッ!!!!〉〉
「おわぁーー!?なんだ!何が起こった!?」
大音量の声で叩き起された俺は、覚醒しきれてない頭で周りを見渡すと辺り一面、星が煌めく夜空になっていた。その夜空に背が小さく、生意気そうな顔立ちをした坊主頭の少年が光輝きながら浮いていた。
「あー、君は誰かな?ラルさんの子供かな?」
この子が叫んだのか?ぼーっとしているせいか呑気な事を聞いてみる。それにしても、耳の奥が痛い。まだ音が反響している気がする。
俺の質問に対し、男の子はやれやれと首を横に振りながら話しかけてきた。
〈〈やっと起きたかー。あーあ、疲れた。まったく、僕が起こしてるのにグースカとイビキを掻くなんて…余裕だねぇ?〉〉
聞いた事のある喋り方と声に、俺の意識は一気に覚醒した。
「お前菩薩か!?小っさ!」
〈〈誰が小さいだ誰がーー!本っ当に君は酷い人間だね!死にそうになったのを救いあげて異世界に転移させて上げたのに菩薩とか呼ぶしさっ〉〉
「おおう、すまんかった。死ぬ寸前に転移させてくれたのは感謝しているよ」
〈〈ふっふー、すっごい感謝してよね!大体君を転移させるのにどれだけ苦労したか分かる?転移後、死なないよう気配り「ちょっと待てぇーいっ」…何?〉〉
話を遮られて不機嫌そうに俺を見てくるが知ったことか!良い機会だ、今までの不満ぶちまけてやる!
「気配りは嘘だろ!?転移した後すぐに猿に殺されかけたじゃん!それに俺の職業なんだと思う!?踊り子だぞ!
その状態で馬鹿みたいに強い虫と戦う羽目になったんだぞ!?受付嬢からも汚物を見る目で見られるし!俺は悪くねぇよっ!
それと菩薩っ!お前が付けた『菩薩の幸運』って面倒事を引き寄せるだけだろ!?固有スキルも酷でぇしなんなんだよ!なんなんだよちくしょぉぉぉぉぉ…」
叫びながら涙が出てきた。
あ、ダメだ。涙が止まらねぇ。
俺があまりにも本気で泣き始めたので不機嫌そうだった菩薩もオロオロとしながら慰めてきた。
〈〈ちょ、ちょっと泣かないでよ、ごめんって。まさかそんなにストレス溜めてるとは知らなくてさ。そ、そうだ!なんならもう少しだけ力をあげるからさ?ね?ね?泣きやもう?〉〉
「ふぐっ…ど、どうせ力と言っても、うっ…缶詰を2秒で開けられる力とかなんだろ?知ってるよちくしょぉぉーうっ!!」
〈〈だ、誰もそんな事を言ってないよ!ちゃんとしたのあげるから!と言うか逆に何なのその能力!?それに君、少しドラゴン〇ールのセ〇が乗り移ってない!?〉〉
「ふぐっ、ひぐっ…ふぅー、スッキリしたぜぇ〜。それで?どんな力をくれるんだ?」
〈〈切り替え早いねぇ!?てかそのセリフは年々若返ってるあの先生に怒られちゃうから少しは控えてよ…〉〉
げんなりとした様子の菩薩がなげやりに注意してくる。
「あの先生な、実際あれはどうなんだ?若返ってる様に見えるだけなのか?」
〈〈華麗にスルーしたね…はぁ、どうやらあの先生の先祖にエルフが居たみたいなんだよ。それであの先生の血にもエルフの遺伝子混ざってるらしくてね。年々その血が濃くなって若返ってるいるみたいなんだ〉〉
「マジかよっ!?でも耳は尖ってないぞ!?」
〈〈見た目の変化は無いみたい。でも僕の知る限り、紀元前からあの先生は生きているよ?あの漫画も第3部までは実際あった話みたいだし…〉〉
「ま、マジかよ…すげえな荒〇先生…」
〈〈名前出しちゃダメだって!菩薩パワーで隠すのキツいんだからね!〉〉
「ああ、すまん。それで話を戻すけど力ってどんな力だ?」
〈〈なんかもうテキトーに謝ってるよね…もういいや。とりあえず今僕に出来るのは君が元々持っていた全スキルの復元と君の固有スキルが進化出来るように改造、それと本来は無かった踊り子のスキルを付け足すぐらいかなぁ〉〉
元からあったスキルの復元?
固有スキルの改造?
本来は無かった踊り子のスキル?
「ま、待て待て待て!色々と聞きたい事があるんだが…いや、でも」
予想外の言葉に混乱し過ぎて頭が回らない。一体どういう事だ?そう慌てる俺に菩薩は仕方なさげに肩を竦めた。
ひとまず落ち着くために深呼吸を2、3度繰り返す。
〈〈大丈夫?ゆっくり1つずつ、説明するよ?〉〉
「ああ。頼む」
〈〈とりあえず君が元々持っていた全スキルの復元だけど。君さ、地球に居た頃色々してたでしょ?知り合いと一緒に狩りしたりアルミや銀を溶かして鋳造したり革や木を使って細工とかしたり。
こっちの世界に渡る時それらがまとめてスキルになってたんだけどね、こっちの世界に渡って来る時にその量のスキルが重荷になったんだよ。イメージ的には重量オーバーのエレベーターかな?だから一時的に取り外したって訳さ。僕預かりのスキルにしたら大丈夫だったからね〉〉
「そうだったのか。すまんな、手間かけさせて」
〈〈別にいいよー。じゃあ次ね?固有スキルの進化はこの世界には無いんだよ。レベルが上がって能力が追加されるだけ。だから元の固有スキルが強くないとあまり意味は無いのさ。
君の固有スキルは強いっちゃ強いけど、この世界の強者が持っているスキルには負けちゃうからね。だから改造して能力の底上げをするんだよ。下手に死なれたくないしさ。ただし、今の固有スキルから大きく変化させる事は出来ないんだけど〉〉
「確かに死にたくないからその改造は有難いな。改めてありがとな」
〈〈ふっふー!感謝してよね!さて、最後の踊り子のスキルだけど、この世界の踊り子って女性しかなれないんだよね。だからぶっちゃけた話、踊り子のスキルって女性用なんだよ。『妖艶』とか『魅了』とかね。
あ、魅了と言っても地球のちょっとエッチなラノベの様なキツイのじゃ無くてつい、その踊りを観てしまうような踊り子専用の魅了だね。だから男ながらに踊り子の君はスキルが無いんだよ。ここまでは良い?〉〉
「ああ、大丈夫だ」
そこまで聞いて納得した。確かに俺が『妖艶』や『魅了』を持っていたってどうしようもない。
世にいうイケメンだったらまだしも、ブサメンに近いフツメンの『妖艶』なんて需要が無い。
〈〈君は……ああ、地球で色々あったもんねぇ。それなら仕方ないかぁ。とりあえず踊り子の君に付けるスキルとしては『舞踏』とか『舞曲作成』かな〉〉
「『舞踏』に『舞曲作成』?それはどんなスキルなんだ?…まず戦闘スキルか?聞いただけだと日常スキルみたいだが」
〈〈『舞踏』も『舞曲作成』も元は日常スキルだよ。ただ、今から少し弄って君専用の戦闘スキルに改造するからね。効果とか使い方は起きてから確認してよ〉〉
「分かった、ありがとな菩薩。こんなにスキルをタダでくれて」
〈〈え?タダなんて僕、言ってないよ?〉〉
「!?」
〈〈君にはやってもらいたい事があるんだ。その為に一般的な地球人の君をこの世界…〘エルム 〙に連れてきたんだからね〉〉
閲覧ありがとうございます。亀ペースで書いております。それと、改稿が多くてすみません…言い回しが気に入らなかったりアドバイスを貰ったりして手探り状態で書いています。次の投稿は未定です(1ヶ月以内には更新出来るかと)




