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14話



スキル 『挑発』を獲得しました。


そんなアナウンスが流れたと同時に身体が勝手に硬直する。その隙に先手をデハクに取られ、戦いは始まった。


「短剣技っ、【ディフェンスブレイク】!」


デハクがそう叫んだ瞬間、全ての短剣が一瞬光った。そして、4つの短剣を次々と投げつけてきた。


「んなもん避けたら良いだけだ!」


猿の攻撃に比べたら断然に遅い。幸いにも硬直は直ぐに解け、4つ全て避けたと同時にデハクの元に走る。これで殴れたら俺が勝てると思うが、デハクの顔はニタニタとした笑いが張り付いていた。


「何を笑って…っ!」


ヒュンッ!


短剣が戻ってきた!?


いや、よく見ると短剣の持ち手に細いワイヤーらしきものが付いている。それを引っ張って手元に戻したらしい。しかも上手いこと操って、刃先が俺を狙っている。


「危ねぇっ!」


当たりそうになりながらも、俺が次々と戻って来る短剣を避けたからか、デハクの顔が不機嫌そうに歪んだ。だが不意打ちだった為に最後の1本を避けきれず、肩で受けてしまった。


「おぉ!?」

しかしあまりダメージらしきものは無い。ただ少し押されたような感覚だけだ。これは守護が高いからか?


だがデハクはそれを見て笑みを深くした。


「くははっ、避けられた時はひやりとしたが無事に当たって良かったぜぇ!そら、次のを喰らえ!短剣技、【パラライズダガー】、【カースダガー】、【バーンダガー】!」


また短剣を投げてきた、これはさっきの攻撃で守護を下げてからの状態異常攻撃か。全部を避けるのはちょっとキツいから、バーンダガーだけは受けるしか無いみたいだ。


位置的には脇腹になるが仕方がない。短剣は俺の体に刺さった瞬間回収されるが、試しにその一瞬で短剣を掴めるか試してみる。

そう作戦を立て、バーンダガーを受けるがダメージは無い。ディフェンスブレイクはダメージを与えなければ発動しなかったのだろうと推測する。


そしてここぞとばかりに短剣を掴む。刃が手のひらに当たるが血すら滲まない。


「なっ!?くそがっ、離しやがれ!」


短剣を掴まれたデハクが焦りながらワイヤーを引っ張って手元に戻そうとするが、ステータス任せに逆に引っ張る。


剛力1000越えをなめんなよ。


「ぐおっ!?踊り子の癖に馬鹿みてぇな力を出しやがって!」


「やっと近寄ったな!」


「てめぇが引っ張って近寄らせたんだろう『バキョッ!』ぎゃっ?!!!」


何か言ってたが問答無用で殴り飛ばして宿の外に出る。あのままだと宿に被害がいきそうだったからだ。

左腕で殴ってあまり力を込めなかったからか、フラフラしながらデハクが立ち上がった。だがデハクの鼻は折れて、血がボタボタと噴出していた。


「ぐっ、ぐぞがぁぁ!もっ、もうブチ切れだぞ、でめぇぇぇ!!短剣技(だんげんぎ)っ【クリティカル・クアトロ・ブロー】ォォォ!!」


周りに居た通行人や、他の宿泊客から悲鳴が上がる。


4つの短剣がうっすらと赤色に輝き、デハクは目を血走らせながら走り出し向かって来た。片手に2本ずつ短剣を持ち猛獣の爪のように慣れた動きで俺の首を落とそうとしてくる。


だけどそれも、蝶々野郎の突撃に比べたら遅い。一撃必殺の攻撃だって当たらなければ意味が無い。

俺はデハクの攻撃を、ひらひらと避けながら距離を詰める。


(この反射神経の良さは軽業スキルのお陰だろうか?)


と考え事をするぐらいには余裕があったが、息を荒らげるデハクが半狂乱になりながら絶叫していた。


「ぐぞがっ、ぐぞがっ、ぐぞがぁっ!なんでだ、なんであだらねぇ!」


デハクは血の流しすぎで攻撃に力が入っていないし、目の焦点も合わなくなってきていた。別に殺したいわけじゃないから早いとこ気絶させる事にする。


「じゃあな、ゆっくり眠れ!」


「ぶざけるなっ、まだ、まだやれる!」


俺は叫ぶデハクを無視し、アッパーカットで意識を刈り取った。気分は昇竜○だ。



その後、最初に気絶させたザパルって奴を縛り、デハクから武器を取上げ、縛ってから赤銅貨2枚のポーションをかけた。今、宿泊客の1人が衛兵を呼びに詰所へ行ってくれている。


「ふぅ〜…疲れたぁぁあ」

今日1日で蜂に蝶に人間に、しばらくは戦いたくないってぐらいに戦った。こんなに暴れたのは仕事の取り合いで他会社から襲撃を受けた時以来だ。


「イツキ、大丈夫だったかい?」


「おにぃちゃん…だいじょうぶ?」


「お兄さん、ケガはありませんか?」


ラルさん達が奥から帰ってきた

天使が2人もいる…


「さっきまで元気じゃなかったけど、ユラちゃんとククル君の顔みたら元気になったよ!」


「あんたね…」


「いや、もちろん純粋な気持ちでだ…本当だぞ?」


ラルさんにジト目を貰ってしまった。基本的に大丈夫な人妻だがその目は精神力が必要になるから不意打ちはやめて欲しい。怖い。

俺が目を逸らしたらラルさんは大きなため息を吐き、苦笑しながら話を始めた。


「ところでイツキ、あんたさっき短剣が肩と当たって怪我してたろ。治療してあげるからちょっと服を捲りな」


「ん?ああ、大丈夫だよ。刺さらずに落ちて怪我してないからな」


「そんな馬鹿な事あるもんか!ほら、さっさと捲りな!」


強引なラルさんに無理やり捲られたが、もちろんそこに傷は無かった。


「どうなってんだい…」


「はははっ、気にすんなってラルさん」


「お兄さんほんとうに大丈夫…?」


「おにぃちゃんけがしてない?」


傷が無く唖然とするラルさんに笑いながら気にしないように言ったらユラちゃんとククル君が心配してきてくれた。


神よ…感謝します…。あ、こっちの世界の神って菩薩じゃん。じゃあ感謝無しで。


やっぱり扱いが酷いじゃないかー!


オーケー、何も聴こえてない。それより


「もしかして怪我してたら天使から治療をして貰えた…?くそっ!起きろ黄星の討伐者!」


「衛へ…「ラルさんストップ!冗談だ冗談!!」」


「まったく、怪我が無いなら大人しく椅子に座っときな!それとユラ、ククル!あんた達はイツキがアホな事しないように話し相手になってあげな!」


「 「お母さん(おかぁさん)わかった!」」


ウッ…やばい。


「ラルさん…」


「うん?どうしたんだい気持ち悪い顔して。嫌な予感しかしないけど一応聞いてあげるよ」


「この2人、嫁に貰っちゃダメかな?」


「あんたぶっ飛ばすよ!?」


多分俺は今最高に気持ち悪い顔をしていると思う。心のときめきが止まらないやばいやばいやばいやばいやばい。


萌えが強すぎてトリップしていたら目の前に星が散った。フライパンで叩かれたみたいだ。頭がくわんくわんする。


「ぐおぉ〜!?ラルさんそれは死ぬ!フライパンは死ぬって!」


「いっぺん死んでみなこのド変態!!」


スコーーンッ!!


「いってぇ!?」


「お母さん仕事をして!」


「おかあさんおにぃちゃんをいじめないで?」


「ククル君かわゆす」


「やっぱり仕留めるべきかねぇ!?」


4人でドタバタしていると、入り口からニタァとした顔をした、例えるならば下衆な盗賊頭の様な顔つきの男が入ってきた。


その姿を見て、ユラちゃんククル君が怯えた。俺もラルさんもまた気を引き締める。もしかしてさっきの2人組の仲間か?と思いつつラルさんに指示をする。


「ラルさん、また2人を連れて奥に行っといて。あ、まさか旦那さんだったりする?」


「いや、違うよ…分かった、下がっとく。ククル、ユラ、行くよ」


「う、うん」


「お兄さん…無理はしないでね」


「大丈夫、さっきも大丈夫だったろ?危ないから奥に行っててな」


「うん…」


ユラちゃんは心配そうに奥に下がっていった。まったく可愛いなぁ。

和んでいたら相手が見た目通りの野太い声で話しかけてきた。ちっ、人がいい気分でいるのに。


「おい、ここにデハクとザパルが居るだろう。その2人をこっちに寄越せ」


「いきなりだな。あの2人なら衛兵の取り調べと被害確認してから討伐者ギルドで裁かれる予定だから渡せねぇな」


「ああ?待っていても衛兵は来ねぇよ、だからさっさと寄越せ」


「寄越せと言われて誰が寄越すかよ。それに衛兵が来ないってどう言う事だ?」


「……」


ピリピリとした緊張感が広がっていく。しかしその緊張感は、新しく宿に入ってきた人物によって消し飛んだ。


「ムルブ、いつまで時間をかけてんだ?犯罪者の受け取りだけだろう。って、そこに居るのはイツキか?」


「イルルクさん?どうしてここに?」


現れたのは渋い声とファンタジーな大剣を持つ人物、イルルクさんだった。


「どうしてって…一般市民を襲おうとした挙句に、街中で抜剣してボコられたアホ共を迎えに来たんだよ。そこに居る、今の討伐者ギルドのギルマスと一緒にな」


イルルクさんはそういうと、男に向かって顎をしゃくった。


「ギルマス!?あの2人組の仲間じゃないのか!」


「あ、ああ。俺のギルドの討伐者が迷惑かけたみたいだからな。あいつらを迎えに来たのと詫びをしに来たんだ。俺は顔が怖いらしいから笑顔で話しかけたんだが…何か不味かったか?」


「いや、寄越せって荒っぽい言葉使いだったからてっきり…」

(あと顔が凄かったし)


俺の心の中が分かったのか、イルルクさんは苦笑しながら説明してくれた。


「すまんなイツキ。ムルブの奴が言葉足らずで。いつもこんな調子でしかも口下手も合わさっちまって、威圧しているような口調になっちまうんだ」


「ぬぅ、申し訳ねぇ…」


「じゃあ待っていても衛兵は来ないってのは…?」


「衛兵には途中で出会ってな。どうせギルドでも手続きがある事だしギルドに向かって行ってもらっている。それをこの盗賊面は…。はぁ、今の言い方じゃ誤解されても仕方ねぇだろうがっ!」


イルルクさんは拳骨をムルブさんの頭に落とした。もう一度言う。拳骨だ。


ゲンコツやげんこつなんてもんじゃない。漢字で書く方の『拳骨』。その素晴らしい一撃はムルブさんの頭に鈍い音とともに直撃した。


「ぐぉぉっ!い、イルルクの兄貴!俺が悪いのは分かったから、もう拳骨しないでくれよ…」


「ふんっ、お前がその口下手と盗賊面を治したらな」


不機嫌そうな顔でイルルクさんが言う。

一見、あまり好かれていない様に見えるが、イルルクさんの目は自分の子供を見ている親のようだった。

どうやら今のギルマス、ムルブさんの事は嫌いじゃないみたいだ。


「口下手は頑張るけど盗賊面を治すってどうすりゃええんですかい…俺にばかりそんなに厳しくしなくてもええでしょうよ」


まぁ、ぶつぶつと呟くムルブさん自身はあまり気付いてないみたいだが。とりあえずは…


「あの2人をイルルクさん達に引き渡しても大丈夫なんですね?」


「おう、しっかりとギルドまで連行していくぞ。ムルブ、黄昏てないでさっさと縄を持ってこい、バカどもを迎えにいくぞ。それと、口調が昔に戻っている。気をつけろよ」


「むぅ…わかりました、イツキ…で良いのか?案内してくれると助かる」


「了解です。そうだ、ムルブさん。あの2人の処分はどうなりますかね?」


まさか無罪放免と言うわけにもいかないだろうと思い質問する。ムルブさんは特に隠すようなこと無く2人の処分を口に出した。


「良くて2級の犯罪奴隷か1級犯罪奴隷の最前線…余罪が他にも出てきた場合の最悪は、死ぬまで魔物を狩り続ける『落人(おちゅうど)』行きだな」


落人(おちゅうど)?聞きなれない言葉が出てきた。疑問に思っているとムルブさんは説明してくれた。1級犯罪奴隷は最前線行き、それも一定の期間の間だけで、その期間生きていたら2級犯罪奴隷に引き下げられる。


落人(おちゅうど)は俗に言う死刑で基本"死ぬまで"魔物狩りだという。

実際に落人(おちゅうど)になった犯罪奴隷は魔物に食われて死んでいるらしい。


「魔物狩りも常時依頼のゴブリン狩りから緊急依頼の竜退治の肉壁まである。肉壁はもちろんだが、ゴブリン狩りも油断したら直ぐに食われる。ゴブリンとかは体が子供ぐらいだから口も同じくらい小さい。

つまりはじっくり食われて死ぬんだ。回収出来た(・・・)死体の顔は大体が恐怖に歪んでいるな。まぁ、そんな嫌な死に方をする罪に問われたい奴なんか居ないだろ?それが犯罪の抑止力になってるんだ」


なるほど。確かに生きながらにゴブリンに食われるのは嫌だな。それに回収出来た(・・・)って事は基本的に回収出来ないのか。そんな刑罰は受けたくないな。俺も気をつけよう。

閲覧ありがとうございます。

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